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石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」

未来のヒントを見つける「スタディケーション」

石田 恵海 │ 2022.05.18

ゴールデンウィーク(GW)の疲れがいまだ取れず、ひしひしと年齢を感じています。観光地ならではの死闘ともいえるGWの忙しさでもたくさんの感激があったのだけど、なかでもサイコーに楽しかったのが、なんと! 新婚旅行のアテンドです。

今春から北杜市内の「土・水・森・火」に関わる生産・加工事業者さんの現場を1日がかりで巡ってご案内した後に「Terroir愛と胃袋」でディナーを召し上がっていただく「八ヶ岳スタディケーションコース」というプランをはじめ、「旅と裸足」に宿泊して翌日も生産者を巡る1泊2日プランもつくりました。そのツアーを新婚旅行でいらっしゃりたいというのです。
GWなのでお断りしようかとも思ったのだけど、新婚旅行と聞いたら俄然やる気が出てしまって、おまけに受け入れ先の農家さんたちも「新婚旅行で畑来たいってスゴいっすねー!」と面白がってくださって、北杜市のみんなでお祝いしちゃおう!というようなノリでお迎えしたのでした。

わたしたちが暮らす山梨県北杜市は観光地でもあるので「ワーケーション」をキーワードに企業誘致を促したり、地元企業に事業化させようと補助金を出したりとがんばっていて、おそらくどの地方も同様にワーケーションの地として選んでもらおうといろいろがんばっている。
だけど、わたしはずっとワーケーションという言葉にモヤモヤしていて、休暇で楽しみにいった地で、いつもの仕事してどーすんの!と思っちゃうんだよね。せっかくいつもとは空気も環境も人も風土も違うところに来ているのだから、その土地だからこそ学べる未来につながる仕事をしないともったいないじゃん!と。

ビジネスは異業種・異文化・異年齢、異地域など異なるモノ同士が交わることで、ビジネスとなる課題の発見や価値の創造につながるとはよくいわれること。ワーケーションはいつもとは異なる場所へ行って仕事をするわけだから、まさにそのチャンスがあるわけなんだよね。
コワーキング施設をつくる。ホテルの部屋を広く改装してワークスペースをつくる。それも大切なこと。だけど、マイナスイオンたっぷりで、星は空からこぼれ落そうで、鹿は人口よりも多いような土地に来て、いつものように部屋にこもらせるよりも、我がまちを知ってもらって、新しいビジネスのヒントになりそうな未来を見つけ学ぶための「ワーク」をしてもらう。ワーケーションとはそんなクリエイティブな旅であってほしいという想いがわたしにはある。だから、あえて「スタディケーション」という「学ぶ休暇」という表現にしたのだよね。

そうしたら、第1号のお客さまが新婚旅行できちゃった。これは面白い!と愛と胃袋イチオシの生産・加工事業者さんを巡ってもらうことに。
まず、うちのレストランに卸していただいている野菜の農家さんの畑への案内からはじまって、平飼い養鶏場でたまごつめ体験(その場でごはんを炊いて、卵かけごはんのアウトドアランチ)、森の野生化をしているラボで森案内とオリジナル野香茶づくりを体験後、Terroir愛と胃袋でディナー。そして、旅と裸足に宿泊した翌日は、ディナーで召し上がっていただいた八ヶ岳湧水鱒の養殖場にご案内し、養殖場に自生するクレソン摘みと生け捕りにした鱒を捌く体験。そんな1泊2日のスタディケーション!

地方の観光地活性化を考える場ではどこも「体験体験体験体験」いうのだけど、おそらくやったことのない体験をするという「体験そのもの」が重要ではなくて、その体験を生業としている人と交わった時に、そこにライフスタイルやその人なりの哲学や人生が垣間見え、考えさせられ、自分の生き方を内省する。その内省こそが旅そのものであり、旅の醍醐味なのではないか。という仮説を立てていたのだけど、今回、新婚旅行のアテンドという検証によって、ますますやっぱりなーという思いを強くしました。「スタディケーション」、今年の流行語大賞を狙うよ(笑)。

ぺちゃくちゃ交換日記
-都会と田舎でそれぞれ子育てしながら暮らす、ふたりのワーキングマザーの七転八倒な日常を綴る日記-

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交換日記は月のはじめと真ん中頃に往復する予定です。

研究員プロフィール:石田 恵海

つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
Terroir 愛と胃袋

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