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石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」

学びと暮らしがつながる瞬間

石田 恵海 │ 2021.08.15

そうか、ばるさんは不惑にして童心に還る、なんだね。わたしは近頃、勉強ってやっぱり楽しいって思っているところです。

ソムリエ資格試験のために講師を招いて、毎週みんなで勉強しているという話は、以前この日記にも書いたと思うのだけど、先に言っておく。つい先日の試験でサクラ散ったばかりです。でも全然悲しくないの。だって、個人的に勉強をする時間をまったくつくれないまま試験前日を迎えていたから、散って当然なのです。

だけど、この分野だけは自信を持って点数を取るぞ!という自分だけの目標をつくって挑んだので、その点においてまったく悔いはないのだ。それに、ここにきてやっとワインを学ぶことが楽しくなってきたのでした。それは結びついていなかった学びと自分の暮らしが、急につながったことにあります。

自由教育の小学校に通う長男は「食」にかかわるプロジェクトを行うクラスで、小麦を育てていて、「なかなか育たない」とか「鳥に食べられる」なんていう話をよく聞いていて、ちょうど最寄り駅まで送る車のなかでそんな話を聞いていた時、黄金に光ってもうすぐ収穫という小麦畑の脇を通ったのでした。で、わたしが「あの黄金色の畑が小麦だよ。ほら、あそこも、あそこも」と言ったら、後部座席で長男が「わー!」と歓声を上げたのでした。

学校で小麦を育てて見ていただけの世界が、日々の暮らしの風景のなかに実は存在していたと知り、彼のなかで学びがつながったんだなーと。かあちゃん、運転しながら、ほくそ笑んだよね。こういう学びと暮らしがつながった瞬間、自分がいままで見てきた風景が一変して急に色を帯びる。その長男の「わー!」に立ち会えたことがとってもうれしかったのです。

そんな長男の「わー!」に匹敵することが、40代も後半に差しかかったわたしにも起きたのですよ! ソムリエ試験の学習のなかで、ぶどうの生育と栽培作業をフランス語で覚える必要があるのだけど、醸造行程もフランス語で覚える必要があって、それとごっちゃになってなかなか覚えられないでいたのです。完全に覚えなきゃいけないもの、という視点で見ていた。

ところが先日、ある醸造家さんがSNSでまだらに色づくぶどうの写真とともに、ヴェレゾン期(着色期)を迎えたこと、それにより果粒の軟化や酒石酸やリンゴ酸などの減少、ブドウ糖と果糖の増加について紹介していて、まさに教科書のなかで学んでいたものが、現実として日々流れるSNSのなかに登場して、長男同様、日常の風景が一変! まさにヴェレゾンとなったのでした。自分のなかでつながった瞬間、学びが深まるんだよね。散って、つながって、やっとワインの世界を学ぶことが面白くなってきたなと実感しています。

ソムリエはお客さまの要望に応えてワインを選ぶ手助けをする役目。よりワインをお客さまに楽しんでいただくために知識を深く広く持つことが目的であって、その結果としてのソムリエバッチ。バッチを持っていてもお客さまを楽しませられなかったら意味がない。だから、資格を取ることだけに惑わされないで、お客さまにいかにワインを楽しんでいただくか。そこに一意専心しながら、これからもワインの大海で知識を深め、広げていこう。そんなことを思いながら、サクラ散った帰りの電車で「一意専心」という名のビールを飲んだのでした(ワインじゃなくて、ビールかよ!)。

ぺちゃくちゃ交換日記
-都会と田舎でそれぞれ子育てしながら暮らす、ふたりのワーキングマザーの七転八倒な日常を綴る日記-

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交換日記は月のはじめと真ん中頃に往復する予定です。

研究員プロフィール:石田 恵海

つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
Terroir 愛と胃袋

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