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石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」

わたしたちがレストランで在ること

石田 恵海 │ 2020.12.15

判断に迫られる感覚の強い年、本当にそうだね。しかも、重要度の高い決断をさせ続けられる1年だったよね。うちも今年はクラウドファンディングにはじまり、開業に延期に休校に資金調達に休業に業態転換に復活に……ともういろいろありすぎて思い出せないくらい。

それでも、この1年を振り返って思うのは、何といっても圧倒的な自分のちから不足。それと、お客さまや生産者の方、地域のみなさんに支えられて今の暮らしがある、というあたりまえのしあわせへの感謝。そのふたつだなーって思う。

わたしたちは一時期、レストランを休業して、おうちフレンチセットや、八ヶ岳食材を贅沢につかったラーメン、他の食のアーティストたちとコラボしたデザートのネット通販をしたのだけど、本当はもっとメニューを増やして楽しい通販を提案する計画をしていたし、わたしたちの休業で生産者さんに迷惑をかけてはいけない、通販で八ヶ岳食材を盛り上げたいと意気込んでもいた。

だけど、わたしたちがずっとしてきたことはレストランだから、調理して、パッキングして、配送業者におわたしして、お客さまが召し上がるタイミングがわからないお料理をお客様にお届けする、という通販の流れに、めっちゃ不安! お客さまが満足されているかどうか見えない! お料理に自信が持てない! あー、もう耐えられない‼ と続けることができなかった。

第一線で通販をされてきた方には通販の技術とシステムとノウハウ、お客さまの信頼があるわけで、いくらネット通販を素人でもカンタンにはじめられるようになったからとはいえ、レストランで求められる料理と、通販で表現できるものは全然違うし、自分たちが目指すべきことはそこじゃないんだ。やっぱりわたしたちのフィールドは、レストランなんだとあらためて思い知ったんだよね。

わたしたちが自信を持ってつくり上げた空間で、その目の前のお客さまに最高の状態のお料理をお出ししておもてなしする。それがレストランの真骨頂であり、お客さまの笑顔のフィードバックでわたしたちは生かされているのだ、と。

休業明け、「レストランでお食事だなんて、本当に久しぶりです!」と涙を浮かべるお客さまに、「わたしこそ、こうしてお客さまにサーブができてしあわせです」とわたしも涙ぐんでしまったのだけど、そんなシーンが弊袋ではいまだに繰り返されている。レストランの社会的存在意義みたいなものを強く感じるし、お客さまにもっとご満足していただきたいと思うようになった。

そのために、わたしたちはレストランとしてより高みを目指そうと、近頃、技術向上への投資をはじめたんだ。休業中、シェフは天然酵母でパンを焼くことを学び、わたしやサービススタッフはハンドドリップでコーヒーを淹れることを学んだのだけど、今はみんなで毎週、ソムリエの資格を目指すワインの勉強会を開催したり、1月には三ツ星レストランのサービスを学ぶ準備をしているところ。 「不要不急」と表現されて今自粛させられていることのほとんどは、人間にとって「必要不可欠」なことというのも見えてきた。だから、今のうちに深くしゃがんで、もっと高く跳ぶんだー!

ぺちゃくちゃ交換日記
-都会と田舎でそれぞれ子育てしながら暮らす、ふたりのワーキングマザーの七転八倒な日常を綴る日記-

2020.12.15 エミ わたしたちがレストランで在ること
2020.12.02 ばる 次の人たちに
2020.11.16 エミ 開拓者魂たちの気配
2020.11.03 ばる 紅葉と体験を探しに
2020.11.02 エミ 秋深まり、田んぼにのぼり⁉

交換日記は月のはじめと真ん中頃に往復する予定です。

研究員プロフィール:石田 恵海

つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
Terroir 愛と胃袋

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