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石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」石田恵海とひらばるれなの「ぺちゃくちゃ交換日記」

誕生日、自ら業を狩りにいく

石田 恵海 │ 2022.02.16

つい先日、48歳の誕生日を迎えました。わたしって業の人だよなーと実感するタイミングが時々あるのですが、まさにこの誕生日の日、それを実感する出来事がありました。

我が家はわたし以外みんな、ウインタースポーツを楽しむ人たちで、移住した先がスキー場まで20分というアクセスの良さも手伝って、夫のスキー熱もヒートし、三兄弟もメキメキと上達しています。

わたしは生まれつきの変形股関節症で、スキーとクラシックバレエはNGと幼いころから医師に止められていたので、一生、雪のあるスキー場に行くことはないと思っていたのだけど、30代で股関節手術をしたら、スキーもクラシックバレエも解禁になってしまった。とはいえ、その後、スキーをはじめるチャンスもつかめぬまま40代の後半へ。

我が家は夫と長男、三男の3人はスキー派で、次男だけスノーボード派。それが気になって「ほっしゃん(次男)だけスノボだから、わたしもスノボ、はじめようかな?」と言ったのが昨年。「えーっ!? いいよ。オレひとりでいいから!」と次男は共感してくれませんでしたが(どうやらわたしの足を心配してくれたみたい)、夫の「スキーは年齢が高くなってもできるスポーツだし、両足を固定するスノボと違い、スキーは片足ずつ動けるからスキーにしたら?」という意見に、子どもたちも大きくうなずくので、48歳の誕生日にスキーデビューすることになりました。

で、ここからはスキーとまったく関係ない話になります。
デビュー当日、変なクセがつかず、上達も早くなるということで、1日スキースクールに入ることになったのだけど、超初心者レッスンを受ける人はわたしひとりで、幸か不幸かマンツーマンレッスンに。
講師の方は60代くらいの男性。スキー道具の名称や道具の扱い方など初心者に向けた話をしてくださるので最初は安心して聞いていたのだけど、ストックのストラップを手首に正しく回す方法を教えてくださる際、講師の方がわたしの手首のストラップのねじれを直しながら「こういうこと、若い女の子にしたら怒られちゃうからね」と笑ったのでした。ふむ。
わたしはもちろん若くはない。だけど、若い女性は怒るから手に触れそうなことをしてはいけない? 若くない女性は怒らないから手に触れそうなことをしても問題ない? 小さな違和感がありました。

その後、いよいよスキー板を付けて歩く練習、滑る練習へと移っていったのだけど、なんていうか、ちょいちょい小馬鹿にしてくるのだよね。バランスを崩して転びそうになって思わず「わっ!」と声をあげると「ワーキャー、ワーキャー。はははっ!」。転んで倒れると「体、硬そうだもんね。それじゃあ夕飯の時間になっても一生起き上がれないね」と見かねたわたしの手を引いたと思ったら、「あー、重い! 重い!」。一事が万事そんな調子で、わたしは悲しくなってしまって、これ以上小馬鹿にされて自分をキズつけられたくないという一心で、その後は転ばないということに集中したおかげか、結果、思ったより上達できた感じがありました(笑)。

いくら相手が初心者でも、この講師の方はわたしと同年齢の男性には、おそらくわたしと同じ態度はしないはず。何なの、これ? 女性だからってバカにしてるの? あ、もしかして、これが世にいう「おばさん扱い」というヤツ? かつてうちの母がおばさん扱いされたと怒っていたことを思い出し、そうか、そのタイミングがわたしにも回ってきたってことかと、怒りと悲しみがおさまり、ちょっとニヤリとしたのでした。

わたしは子どもができた途端、それまで楽しんでいた飲食店に子連れでは行けなくなったり、子連れで入店できたとしても不便な思いやせつない気持ちになった自分の経験から、わたし自身が経営するレストランはお子さま連れOKで、離乳食までも用意している。そういうくやしさやせつなさ、怒りといった経験を力や事業に生かしてきた。
今回のことで、わたしは年齢を重ねていることで起きる悔しさやせつなさを力や事業に生かせるチャンスが巡ってきたことを知り、心キズついたにもかかわらずニヤリとし、自分は業の人間だなーと実感したのでした。なんだかわたしらしい誕生日じゃない?(笑)

ぺちゃくちゃ交換日記
-都会と田舎でそれぞれ子育てしながら暮らす、ふたりのワーキングマザーの七転八倒な日常を綴る日記-

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交換日記は月のはじめと真ん中頃に往復する予定です。

研究員プロフィール:石田 恵海

つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
Terroir 愛と胃袋

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