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福祉経営こそ未来志向で。実践と共創の試行錯誤で介護市場の発展に貢献し、心豊かな未来社会をつくる(株式会社ケアビジネスパートナーズ 原田 匡さん)

平原 礼奈 │ 2022.04.12

maze研ひらばるの「自由ぽい人とダイバーシティを語ろう」とは?
つかみどころがなく、だからこそおもしろい人それぞれの多様性の見方を探究するため、ひらばるが敬愛する「自由ぽい人たち」と、それぞれが大事にしている多様性の話をする企画。脱線が多く、ゴールもない。

久遠チョコレートでつながった原田さん!

やっとお会いできた原田さん。ケアビジネス研究会「先進事例インタビュー」撮影の席で

こんにちは。
mazecoze研究所のひらばるです。

2017年から広報として参画している久遠チョコレートのご縁でつながった、原田さんという方がいます。
原田さんは福祉経営にイノベーションを起こすいろんな取り組みを推進されていて、その理念と実践力と知識の深さがはんぱなく。一方で型にはまらない自由ぽい雰囲気も醸し出されていて、とっても素敵な方なのです。

あら、この対談コラム「自由ぽい人とダイバーシティを語ろう」にぴったり。
ということで、ご登場いただきました!

次世代の福祉経営に向かうために必要なこと

原田さん(左)。ケアビジネスパートナーズの中嶋さん(右)と。原田さんが話すとたちまち場が和気藹々とした雰囲気に!

ひらばる
原田さんとは久遠チョコレートのご縁で2021年末にはじめて知り合い、今年に入ってダダダっと数回お会いする機会をいただいています。今日は原田さんご自身の事業の根幹についてぜひ教えてもらいたいです!

原田さん
よろしくお願いします。いろんな取り組みに幅広く関わらせてもらっている中ですが、主軸となっているのは介護福祉事業者向けの経営支援です。

ひらばる
私、ふだんから障害福祉事業所の方々と一緒に活動しているのですが、「介護」とか「経営」という言葉を聞いた途端、少し遠い世界のことのように感じてしまいました。介護福祉事業者の方に向けた経営支援について、教えてもらいたいです。

原田さん
大きな括りで言うと、まず、介護福祉経営には3つの課題があると考えています。
1つめは時代に合わせた新規事業を作ること。
2つめは組織づくり
3つめはブランドづくりです。

現在の介護業界は、介護報酬の単価やルールまでさまざまなフォーマットが国から示されていて、国のフランチャイズビジネスのようなあり方です。でも、少子高齢社会の中で、いつまでも社会保障費で全てを賄える状況でないことは明白だし、介護福祉の経営者にはさまざまな情報や連携のもと価値ある事業づくりをしていくことが求められていると思います。

同時にこれからの福祉事業を担う人たちがいきいき働ける組織を作り、またその能力をエンパワーメントしていくことも大切ですし、福祉の世界を知ってもらう、選んでもらうためのブランディングや広報もより必要になるなと。そんなことを考えながら活動しています。

ひらばる
事業・人・ブランドという3つの視点でお話を聞くととてもわかりやすいです!介護福祉だけではなく、あらゆる福祉事業にとって地続きにある課題ですよね。
こうした課題に対して、原田さんはどんな行動を起こされているのでしょう。

原田さん
次世代型の福祉サービスの発掘や共創、情報提供という切り口から取り組んでいます。
たとえば新規事業の面では、ジョイントベンチャーの形で「ショッピングリハビリカンパニー」という会社を立ち上げました。介護支援を必要とする方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、買い物を通じたリハビリをしていただく取り組みです。商店街や商業施設とも連携することから、持続可能なまちづくりにもつながっていきますよね。

「買い物×リハビリ」島根県雲南市のモデル。商業施設内に総合事業通所型介護施設を作り商業施設と自治体の連携を行う
画像提供:ケアビジネスパートナーズ

リハビリもできるショッピングカート「楽々カート」を使えば、買い物をしながらリハビリできるのだそう
画像提供:ケアビジネスパートナーズ

笑顔あふれるリハビリ。素敵!
画像提供:ケアビジネスパートナーズ

ひらばる
めちゃくちゃ素敵なお取り組みですね。買い物ってわくわくするし、ショッピングで体を動かす身体機能面だけでなく、精神面でもとってもよいリハビリになるのでしょうね。

コミュニティの力で実践と共創を促進する

ケアビジネス研究会で開催される勉強会の様子
画像提供:ケアビジネスパートナーズ

原田さん
それから全国の介護経営者や経営幹部と新たな価値を起こす場をつくろうと、「ケアビジネス研究会」という団体を立ち上げています。毎月全国各地域をめぐって勉強を開催したり、先進事例インタビューを届けたり、「科学的介護経営」実践講座をするなど、様々な情報交流の機会を持っています。

ひらばる
介護福祉界のコミュニティですね。経営者は孤独だとも聞く中で、会社を横断してつながって業界の課題を共有しながら学び合えるのはとっても価値がある場だなぁと感じます。

原田さん
ケアビジネス研究会のみなさんは視座が高く、地域をもっとおもしろくよくしたいという強い思いを持って活動されています。自分にとっては志を共にする同志のような存在ですね。
ほかにも福祉経営者向けセミナーや研修は、先日数えたらこれまで延べ1,359回実施していました(2021年12月末日現在)。こうした活動の中で、久遠チョコレートの夏目代表とも出会ったんですよ。
情報発信のためのメルマガ「ケアビジネスSHINKA論」も平日は毎朝発行していて、先日2200号を突破しました!

ひらばる
原田さんて、3人くらいいらっしゃいますか?(笑)

原田さん
関わる方の思いを前に進める具体的なソリューションを一緒に作って実践していくやり方が自分には合っているんだなと思います。

まず自分でやってみる。交わりながら、福祉の世界へ

ひらばる
原田さんはどうして経営支援、それも福祉業界でのお仕事をすることになったのでしょうか。

原田さん
大学卒業と同時に父の会社を手伝うことになり、そこで組織づくりの方程式をじっくり考えて実践する機会を得たことがはじまりかなと思います。
それから31歳のときに父の会社を辞めて、経営コンサルティング会社に就職しました。そこではフランチャイズという具体的なツールや方法論、経営拡大のためのパッケージを提供する仕事に携わり、私は主に飲食とサービス業を担当して、店舗の全国展開支援や、全社組織変革支援などをしていました。

ひらばる
さきほど「国のフランチャイズ」という言葉が原田さんから出て、おもしろい見方だなぁと思ったのですが、原田さんご自身がフランチャイズという事業形態の支援に深く関わってこられたんですね。

原田さん
そうなんです。その後は、大企業向けのコンサルファームにも就職したのですが、1年持たなかったですね。自分がやりたいのは生産性を高めることを追求するシステマチックなビジネスよりも、オーナーさんと一緒に作っていく事業だと気づいて。
それから独立・開業支援サービス『アントレ』のセミナー講師をしたりしていたのですが、あるとき「デイサービスの介護施設を全国に広げたい」という介護事業者の方が来て、全国展開スタートアップ支援をしました。フランチャイズで数百店舗まで拡大したんですよ。

ひらばる
すごい数! それまでビジネス畑のど真ん中にいた原田さんの目に、介護福祉の世界はどんな風に映りましたか?

原田さん
問題山積だと思いました。業界調査やマーケット調査をする上で、いまは介護報酬が高いけれど、社会保障費にもたれかかるこのビジネスモデルは、どこかで難しくなるだろうと。そのときに経営発想の視点が必要になると確信したんです。
いま時代は大きな変革・転換期に直面しています。介護業界は未来があると同時に社会的な意味のある事業です。この業界の経営改革、組織改革をお手伝いすることで心豊かな未来社会を生み出していきたい、というのが原動力になっています。

ひらばる
介護福祉経営の3つの課題のお話にもつながりますね。原田さんがこれまで培われてきた経験や能力が、なんだかすべて仕組まれていたかのように紡がれて、福祉経営支援のお仕事になっていったんですねー。

原田さん
コンサルだけをしていると、頭でっかちに、理屈で勝負しているような気分にもなって。業界を特化していく必要があると自分自身感じていたこともあります。
フランチャイズにしても本部しか見えていないこともあったので、「まずは現場を知らないと何も始まらない」と、現場視点を持つため高齢者デイサービスを経営する経験もしました。
日本社会事業大学専門職大学院のビジネスマネジメントコースも受講しましたし、多くの実践者や有識者と交わりながら、実践を通じて自分自身知見を深めていったんです。

ひらばる
自分も一緒にやってみる、という原田さんのスタイルは、そのときからだったのですね。これからの時代に、原田さんやケアビジネスパートナーズさんのような存在はさらに求められていきますね。私も介護の世界についてこれからいろいろ教えてもらいたいです!

原田さん
ケアビジネスパートナーズの「ケア」には、高齢や障害などいろいろな多様性が含まれています。福祉マインドを持った企業経営でみんなが幸せになれるしくみを社会につくって、世の中を明るくしていきたいですね。
ひらばるさんからも、色々お話を聞かせてください!

ひらばる
今日はとっても学び深いお話をお聞かせくださりありがとうございました!

そしてなんと。ケアビジネス研究会の「先進事例インタビュー」で、ダイバーシティをキーワードに私もお話しさせていただきました!(あっという間に公開されてそのスピードにも脱帽)
本物の先進事例を推進する福祉経営者の方々が登場する中に迷い込んでしまった感はんぱなかったですが、インタビューを受けながらたくさんの気づきをいただきました。原田さん、ケアビジネスパートナーズのみなさん、ありがとうございました!


プロフィール 原田 匡さん

株式会社ケアビジネスパートナーズ代表取締役社長
「他業界の経営支援で培った知見」「自らのデイサービスでの実体験」「福祉業界の経営支援で培った知見」を融合させながら、「ケアビジネス研究会」を基軸とした実戦的な経営支援活動を行っている。
著書に「介護元気化プロジェクト(エル書房)」「介護事業所の経営の極意と労務管理・労基署対策・助成金活用(日本法令)」。寄稿雑誌に「デイの運営と経営(QOLサービス)」「通所サービス&マネジメント(日創研)」「介護ビジョン(日本医療企画)」「シニアビジネスマーケット(綜合ユニコム)」等多数。

株式会社ケアビジネスパートナーズ
ケアビジネス研究会

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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