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友達やめた。はお守りの言葉。コミュニケーションと多様性 × 今村彩子さん(ドキュメンタリー映画監督)

平原 礼奈 │ 2020.09.17
映画『友達やめた。』より。まあちゃんと今村監督【©2020 Studio AYA】

自由ぽい人たちと多様性を語る連載、はじめます

こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。
これから「自由ぽい人とダイバーシティを語ろう」という連載をはじめます!

maze研ひらばるの「自由ぽい人とダイバーシティを語ろう」

もっと気楽に、ディープに、ダイバーシティについて話したい。
つかみどころがなく、だからこそおもしろい人それぞれの多様性の見方を探究するため、ひらばるが敬愛する「自由ぽい人たち」と、それぞれが大事にしている多様性の話をする企画。脱線が多く、ゴールもない。

ゲストはドキュメンタリー映画監督の今村彩子さん

オンライン取材に応じてくれた今村彩子監督

第1回目のゲストは、ドキュメンタリー映画監督の今村彩子さんです。

私が今村監督と出会ったのは、2012年のこと。
監督の『珈琲とエンピツ』(2011)という作品を、海辺で上映するイベントのMCを努めたのがはじまりでした。

その後、監督自身が沖縄から北海道まで自転車で日本縦断するロードムービー『Start Line(スタートライン)』(2016)の試写会でも取材をさせていただいて。
その時の記事:監督、漕いで凹んで体当たり! 映画『Start Line』に宿る意志と勇気。

監督自らスクリーンに映り、怒りも喜びもすべてさらけ出す姿に惹きつけられてきました。

9月19日からは、新作映画『友達やめた。』(2020年)が劇場公開とネット配信されます。

『友達やめた。』作品情報

【©2020 Studio AYA】

わたしたちって、ややこしい。
あなたの常識は、わたしの非常識。
わたしの普通に、あなたはドン引き。

空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用につき合うことができない、アスペルガー症候群の、まあちゃん。理解があるような顔で、内心悶々としたものをかかえる、映画監督のわたし。些細なことで、ふたりの仲がギクシャクするたび、これって、彼女がアスペだから? それとも、わたし自身の問題なの? わかり合おうとしなくちゃ… いい人でいなくちゃ…ああ、でも! まあちゃんと友達でいるために、わたしは自分たちに向けてカメラを回しはじめた…はずが、たどりついた答えは、友達やめた?!

『友達やめた。』公式サイトより引用)

作品を試写させていただくと、そこには、今村監督とまあちゃんというふたりの主人公の、おだやかな日々の中で起こる、内心おだやかでない出来事の数々が。

私はすがるような気持ちで夢中で映画を見ていました。
なぜならそのとき、自分も今村監督と同じようにコミュニケーションに激しく悩んでいたからです。

監督は、映画の中ではじめこそ自分を抑えていたけれど、途中でまあちゃんに「友達やめた。」って言っちゃうし、爆発して大喧嘩までしちゃう。
私と同じように悶々としてると思ったら、まったく違う行動を打ち出していく監督に、ええー!?と驚きの連続でした。

些細なことで自己肯定感を奈落の底に突き落とす、でも時に幸せな気分にもしてくれる、アメとムチみたいな「コミュニケーション」って一体なんなの?
一人では生きられない人間の生存戦略として、コミュニティを作っていく中で必須になったというコミュニケーション能力が、いまだ手探り状態なのはどういうことだろう。

映画を撮り終えた監督といま、コミュニケーションと多様性について話してみたい。そんな私情入り乱れた動機で、今回対談を申し込んだのです。

ふたりの葛藤、映画を通じ糸口を探す

上段中央:今村監督、右:『珈琲とエンピツ』プロデューサーで今回は手話通訳をお願いした真美さん、左:ひらばる

8月上旬、いよいよ今村監督と再会(オンラインで)の日がきました。

おなじみ「mazecozeオンライン取材同行体験」にもたくさんの方が参加くださり、監督も「公開取材は初体験!」と言いながら、快く応じてくださいました。
(取材の様子を動画でもご紹介していますので、「手話×字幕×音声×取材同行体験&取材動画」の記事もぜひご覧ください)

ひらばる
お久しぶりです。今日は、ありがとうございます!

今村監督
お久しぶりです。映画の編集をするスタジオから参加しています。
取材同行体験ということで、ちょっとドキドキしてます(笑)

ひらばる
いろんな視線が交わって、いつもの取材とは違う感じですよね(笑)
監督とまあちゃんの交流が描かれた『友達やめた。』を見て、監督とコミュニケーションについて話してみたくなったんです。

読書家のまあちゃん。個人的にまあちゃんの家でのシーンが好き【©2020 Studio AYA】

今村監督
3年前にまあちゃんと出会って、2日目に「うつとアスペルガーがある」とカミングアウトを受けました。私はその時、「大丈夫。分かり合える」と思ったんです。
でも、仲良くなるにつれて、ぶつかることが増えていきました。
はじめは「まあちゃんがアスペだからしかたない」と我慢していたんです。

ひらばる
生まれつき耳がきこえない監督と、アスペルガー(現在は⾃閉スペクトラム症、ASD とも表現される)のまあちゃんは、社会的にはマイノリティ。だから「仲良くなれる」と考えたとおっしゃていましたね。
ふたりは趣味が一緒だったり、手話という共通言語を持っていたりして、共有できるものがたくさんあるんだなと思いました。
でも、だからといって人間関係まるごとOKなんてことはないんですよね。

今村監督
ええ、嫌なことがあっても私が我慢すれば事は収まると思っていましたが、そうはいかず…。とうとう喧嘩になって、その時に「不快! 葛藤! 映画を撮る!」と、この文字通りLINEで言いました(笑)

ひらばる
監督がまあちゃんに、「ひとりで葛藤するのいやだから、映画にしてみんなを巻き込もう」と提案するシーンがすごく印象的でした。
映画の終盤で描かれる大喧嘩のシーンも、すごかったですね(笑)私、大人になってから友達とああいう喧嘩したことないなって、前のめりで見てしまいました。

今村監督
あはは。そうだったのですね。温泉旅行での出来事です。旅館の部屋にあった和菓子を、家族に持ち帰ろうと置いていたら、まあちゃんが自分のカバンに入れようとして。もしまあちゃんが「いい?」って聞いてくれたら「いいよ」って答えたかもしれないけれど、何も言わずにだったので怒りが湧いて。
いい年した女ふたりがお菓子なんかで大喧嘩する? と情けなく思いながら(笑)
それまでは「アスペだから仕方ない」と我慢していたのですが、それでは問題が解決しなかった。感情むき出しになり、激しい口論になったのは、あのときが初めてでした。

ひらばる
今村監督とまあちゃんがお互いを大事に思っていることは映像からずっと伝わってきていて、その上での激しい喧嘩だから、ちょっといいなぁとか思っちゃったりして。
でも、まあちゃんが「嫌のままでいい、“排除”でいい」と言った時には、胸がぎゅーっと苦しくなりました。監督に共感したり、まあちゃんの気持ちを想像したり、客観的な立場で見たり、自分の感情が行ったり来たり揺さぶられて慌ただしかったです。

今村監督
ありがとうございます。アスペルガーを理解しましょう、という映画にはなっていないんです。そういう映画だったら、まあちゃんは撮影をOKしなかったそうです。
どうしたらまあちゃんと仲良くやっていけるのかを模索し、葛藤する内容なので、観る人によっていろんな立場から様々なことを感じてくれるのかもしれませんね。

被写体になることで、自分とは違う見方に出会える

じわじわと、取材も盛り上がってきました

ひらばる
映画を通じてまあちゃんと、そして監督自身に向き合っていくプロセスが、今回のドキュメンタリーの見どころだと思いました。自分が被写体になって、撮影もするスタイルって、まさにまぜこぜですよね。

今村監督
ええ、そのきっかけは、『珈琲とエンピツ』でした。
初めて自分が出演して、ナレーションも自分の声と手書きの文字で表現したんです。今日の手話通訳もしてくれているプロデューサーの阿久津真美さんが「ナレーションは自分でやったらいいんじゃない?」と。
主役のろうのサーフショップ店長の太田さんと出会って、コミュニケーションで大切なのは、会話の手段ではなく、相手に“伝えたい”という思いなんだというふうに自分の考え方が変わりました。公開後、「良かったよ」という声をたくさんいただいたんです。
私の声は聴者とは違うけれども、それは、誰にも真似できないものですよね。だからこそ余計に伝わってくるという感想もいただきました。上手い下手にこだわる必要はなくて、考えていることを自分の立場で伝えていく、それが大事なんだと気づいたんです。

『珈琲とエンピツ』
コミュニケーションは声で話すことだけではない。手話だけでもない。
筆談、身振り、そして、笑顔。
相手に気持ちが通じれば、何でもありだ。
一番大切なのは、伝え方ではなく、相手に伝えたいという気持ち。
珈琲とエンピツ HP
​>DVD販売ページ
映画監督・今村彩子オフィシャルウェブサイトより引用)

ひらばる
その後の『Start Line(スタートライン)』も、監督の挑戦の物語です。

『Start Line(スタートライン)』
生まれつき耳のきこえない映画監督が、自転車で沖縄→北海道日本縦断の旅へ。
コミュニケーションの壁にヘコみ、涙しながらも走り続ける57日間の記録。
伴走カメラマン哲さんの叱咤激励、聴力を失った旅人ウィルとの出会い…
ニッポン中のためらう人に観てほしい、一篇の勇気のおすそわけ。
​>Start Line(スタートライン)HP
映画監督・今村彩子オフィシャルウェブサイトより引用)

今村監督
『Start Line(スタートライン)』も、「コミュニケーションが苦手な自分を変えたい」という私の悩みがテーマです。自分の情けないところ、カッコ悪いところもさらけだしました。
ここでも映画を観た方々が、「実は自分もコミュニケーション、苦手なんです」と話してくれました。耳が聞こえる人も同じように悩んでいて、きこえる人はみんな問題なくコミュニケーションが取れると思い込んでいた私は、ビックリ。初めてきこえる人を身近に感じました。
そんな経験をしてきたので、今回も「こんなに苦しいなら映画にして、苦しみを解放しよう。そしたら、何かが見えてくるかもしれない」と思ったんです。

ひらばる
映画を撮ることが、監督ならではのコミュニケーションのあり方なのですね。

今村監督
はい。『友達やめた。』は、まあちゃんと私だけの悩みですが、自分と異なる他者と付き合うことは普遍的なテーマだと思っています。また、映画を見てくれた人のいろんな感想や意見から気づけることがあります。映画を作るたびに本当に励まされるし、救われるんですね。

多数派・少数派の前に、多様性を知ることからはじめよう

【©2020 Studio AYA】

ひらばる
映画の中で、多数派と少数派の話が出てきます。「ふだん少数派の立場で物事を考えてきた」監督が、まぁちゃんから見ると「一般の脳みそ」を持った多数派になり、戸惑いを感じたと。

今村監督
ええ、まあちゃんに「一般の脳」って言われたんですね。初めての経験でした。
それまでは自分の脳みそを見つめたことがなくて(笑)
自分のことをずっと少数派として捉え、その価値観で生きてきました。それが突然逆の立場になったので、どう行動していいのか迷ったんです。
それで、わかったことがあります。これは、聞こえる人が初めて聞こえない人に出会った時の感情と似ているのではないかと。相手を傷つけたくない、失礼なことを言ってしまったらどうしようという怖さや居心地の悪さってあると思います。

ひらばる
私はろうの友人といる時に、自分ひとりが聴者ということが何度かありました。すると、みんなの手話が速くて読み取れないし、話に入れない体験をして。突然自分がマイノリティになったんですね。
そのとき初めて、いつも聞こえない仲間に「わからなければ話を止めてね」とか言っているけど、いざその立場になると話の腰って折りにくいことが身に染みました。
色々な立場になることでわかることがあるし、多数派・少数派というのは状況や環境によって、また物事の捉え方によっても変わってくると気がつきました。突き詰めると、誰もがマイノリティであり、多様性を持つたった一人ということだと思います。

今村監督
ええ、「少数派のまあちゃん」として見ると、そこから先に進まなくなってしまいます。「まあちゃんはアスペルガーだから仕方ない」と自分の中で考えるとき、どうしてそういう行動するのかな? と考えるのを止めてしまう、思考停止になってしまうんですね
「アスペルガーのまあちゃん」ではなく、「まあちゃん」と接したいと思うようになりました。

ひらばる
そう思うようになったのには、きっかけがあったのですか?

今村監督
まあちゃん自身、どこからがアスペルガー症候群によるもので、どこからが自分の性格なのか分からないと言っていました。だとしたら、私はもっと分からないし、そこで区別をしようとするのは意味がないと思ったんです。

ひらばる
なるほど。やっぱりまずは、それぞれに違う感覚、多様な価値観があることを知ることが大事なのですね。そういえば、今村監督と真美さんとはじめてご一緒したイベントのテーマは「知ることからはじめよう」でした!

わかりあえないことも受け入れられる関係性

【©2020 Studio AYA】

ひらばる
知ることができた、のその先なんですけど。
はじめは仲が深まっていくのがうれしくて楽しいのに、だんだんと微妙に噛み合わないみたいなことも起こってきたりして。関係性が成熟したということでもあるのでしょうけど、また違う悩みが生まれてきたりもします。

今村監督
まあちゃんとも、話をしたり質問したりしながら仲良くなっていきました。そうして徐々に相手を知っていくと、「これはこうでしょ」みたいな感じでわかった気になってしまい、相手に聞くことが減るんですね。でも、これはよくないと思います。だって、相手はこういう人だという思い込みが強くなると、何か違和感があったときに、しょうがないって勝手に納得して我慢するようになってしまうから。人間は100%わかりあうことはできません。だからこそ、常に相手を知ろうという気持ちを大切にしたいと思います。

ひらばる
コミュニケーションの難しさってなんだろうって考えた時に、それぞれが違う背景をもって生きていることがあると思います。感覚もみんな違うのに、それは目には見えなくて。行動や言葉尻だけではない、その人の本質的な部分にアクセスしないと気づけないことがたくさんあるのに、いつしかわかった気になって、表面上の合う合わないで判断してしまうこと、あるなぁ。。

今村監督
温泉旅行の大喧嘩の後、もしかしたらまあちゃんの行動には理由があるかもしれないと思って聞いてみたんです。そうしたら「勝手に取っちゃダメって理解はしているけど、お菓子を残したままでは準備してくれた人に申し訳ない。どうしよう……と思っていると、相手の存在が消えてしまった」と。なるほどって思いました。

ひらばる
まあちゃんにはまあちゃんの理由があったのですね。そういう意味でも、監督とまあちゃんがはじめた、ふたりのルールをつくるという取り組みがとてもおもしろいと思いました。

今村監督
「二人の新常識」をふたりで作りました。相手のものを食べるときには聞くとか、叩かないとか、そういったことを互いに決めて紙に書いて。
まあちゃんは、「いただきます」とか「ありがとう」とか、挨拶をしないんです。私の中で挨拶は一般常識だったんですけど、じゃあその一般常識って何のためにあるのかなと考えたら、それはきっと、人と人がお互いに気持ち良い生活をしていくためにあるものだと。私の常識を、まあちゃんに当てはめて正そうとするのは違うなと思って。

ひらばる
そういう新たな関係性を作れるところがとても素敵です。

今村監督
ありがとうございます。でも、自分には理解できないことが起きて、まあちゃんに理由を聞いても「やっぱりわからない」「理解できんわあ」ということもあります。それでいいと思うんです。
疑問に思ったことを「アスペだから」って自分の中で完結させるのと、相手に聞いて「それでもやっぱりわからない」というのは全く違います。相手に聞く、話し合うという経験を積み重ねて、お互いわかりあえない部分があっても一緒にいられることを知りました。

友達やめた。はお守りの言葉

【©2020 Studio AYA】

ひらばる
映画のタイトルでもある「友達やめた。」は、まあちゃんとの関係に葛藤した監督が出した一つの答えなのですが、どきっとしました。

今村監督
「友達やめた。」は、私にとってはお守りみたいな言葉なんです。
一番苦しい時に日記に書いた言葉です。それまでは、いい友達にならなきゃとか、相手のことをそんなふうに思っちゃダメだって、自分に言い聞かせてきたんですけど、「友達やめた。」と書いたら解放されたように感じました。自分の首を絞めていたのは自分だったんです。
気持ちが楽になることで肩の荷が下りて、心に余裕が生まれ、まあちゃんとの新しい関係性を考えることができました。

ひらばる
「友達やめた。」の後も、私から見ると監督とまあちゃんの友達な関係はつづいていて。関係そのものを分断するのでなく、自分の心の持ちようを変えること。視点を変えることが大事なんだと思いました。

【©2020 Studio AYA】

今村監督
まあちゃんにはいいところがたくさんあります。
私に自信を持たせてくれました。まあちゃんは知らない人に声をかけるのが苦手なので、私がお店で注文をします。電話も苦手なので、私が電話リレーサービスで宿の手配をします。これらは今までは、聞こえる友達がやってくれたことでした。いざやってみると意外と簡単で、ああ、私もやればできるんだと。こういうふうに自信を持たせてくれた人は、まあちゃんが初めてでした。

ひらばる
その時々で、距離をおきたいときもあるけど、やっぱり好きで、尊敬する部分があって、それでもつながりたい人っていますよね。対人関係にもいろんな選択肢があることに気づいて、それを自分で選べるといいなと思います。

今村監督にとって多様性とは、映画とは

【©2020 Studio AYA】

ひらばる
改めまして今日のテーマは、コミュニケーションと多様性なのですが、監督にとって「多様性」ってどんな意味を持っていますか?

今村監督
はじめは「多数派が少数派を尊重する」という意味で掴んでいました。だから、私は尊重される側だって(笑)
でも、改めて多様性の意味を調べると、wikipediaでは、「幅広く性質の異なる群が存在すること」なんですね。
たとえば、きこえない人の世界にも多様性があります。きこえない人って一口に括られがちで、そこには多様性がないように見えるけど、実はその世界に入ってみると、実に様々。難聴者や片耳難聴、中途失聴者、ろう者などあり、また、手話話者、手話を使わない人、人工内耳をしている人、補聴器を使う使わないとか、考え方もコミュニケーションの方法も色々です。当然ぶつかることもあります。
私は成長する過程で、はじめは難聴、そのあとろう者、いまは耳のきこえない人というように、自分のアイデンティティーが変わっていきました。自分の中にも多様性があるんです。
自分と異なるバックグラウンドの人と会うときには、しんどいとか疲れることもありますが、逆に知らなかった世界を覗いてみることができます。多様性に目を向けることは、自分の輪郭を知ることにもつながると感じています。なので、大事にしたいです。

ひらばる
多様性の輪郭ってなんだろうって、maze研でもよく話しているんです。それってたぶん面や線ではなく、点々が見方によって形を変えながら浮かび上がってくるようなものじゃないかなとか。だからいろんな視点をもつための探究をしようというのが、mazecozeのテーマでもあります。
監督から輪郭という言葉や、多様性が新しい世界の扉を開くイメージをいただいて、とても勇気づけられました。
最後に、映画を撮ることは監督の人生に何をもたらしているのでしょう。

今村監督
映画を撮り始めたのは二十歳の頃です。当時は社会に対して、少数派であるろう者のことを理解してほしいという気持ちが強かったです。
映画を撮る中で、自分も変わっていきました。共通する動機は「今ある状態から抜け出したい!」「次のステージに進みたい!」ということかな。
映画を撮ることで、自分の思い込みの激しさにも気づきます。そう思い込むことで苦しんでいただけだった、壁を作っていたのは自分だったんだと後になって気づくこともあります。自分を見つめることは、自分の小ささ、未熟さを知ることなので、辛い部分、受け入れがたい部分もありますが、その分、世界が広がります。世界は豊かなんだと感じられると、心が潤います。これからも、どんどん思い込みを外して自由になっていきたいと思います。

ひらばる
監督の映画自体が、監督にとって実験で挑戦の場なんだと知りました。その時々の監督の価値観に刺激をもらっています。色々お話しさせていただいて、うれしい時間をありがとうございました!

今村監督
『友達やめた。』は『珈琲とエンピツ』からつながっていて、今日、そのことを知っているプロデューサーの真美さんと、ひらばるさんがいたからこそ生まれた対話になったと思います。取材同行体験も、皆さんの反応が見えたので、安心して進めることができました。素敵な企画をありがとうございました!

ありがとうございましたー!

今村監督とお話しして。
コミュニケーションは、異なる背景や感性をもち、常に変化する相手と自分との掛け合わせで、そのパターンこそ多様であること。さらに、外だけでなく自分の内側で進化させていけることなど、いろいろな視点に気がつきました。

自分が自分らしくありながら、相手に対する想像力をもって、心地よいコミュニケーションをつくっていくことは、やっぱり、意思を持って探究し続けるしかなさそうです。

一体いつまでコミュニケーションに翻弄されたらいいんだー、、と悩みは尽きませんが、今村監督とお話しして、それ自体をもっと楽しんでいけたらいいな、とちょっとわくわくしました。
今村監督、ありがとうございました!


『友達やめた。』映画公開情報

一緒に映画を鑑賞した娘が描いた今村監督とまあちゃん

9/19(土)より劇場公開とオンライン配信を同時スタート
新宿K’s cinemaほか全国順次公開!

劇場公開情報
ネット配信情報
「まあちゃんとわたしのムービーダイアリー」

今村彩子(いまむら・あやこ)監督

【©2020 Studio AYA】

1979年生まれ。大学在籍中に米国に留学し、映画制作を学ぶ。劇場公開作品に『珈琲とエンピツ』(2011)『架け橋 きこえなかった3.11』(2013)、自転車ロードムービー『Start Line(スタートライン)』(2016)がある。また、映像教材として、ろうLGBTを取材した『11歳の君へ ~いろんなカタチの好き~』(2018/DVD/文科省選定作品)や、『手話と字幕で分かるHIV/エイズ予防啓発動画』(2018/無料公開中)などをも手がける。初めての著書となる「スタートラインに続く日々」(2019/桜山社)には、本作の原作とも言える「アスペのまあちゃん」が収録されている。現在、『架け橋 きこえなかったあの日』を制作中。

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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