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灯台になる仕事。日本を代表するサインデザイナーが教えてくれた「情報を伝える視点」の深め方(株式会社アイ・デザイン 児山啓一さん)

ひらばる れな │ 2021.10.19

maze研ひらばるの「自由ぽい人とダイバーシティを語ろう」とは?
つかみどころがなく、だからこそおもしろい人それぞれの多様性の見方を探究するため、ひらばるが敬愛する「自由ぽい人たち」と、それぞれが大事にしている多様性の話をする企画。脱線が多く、ゴールもない。

ゲストはサインデザイナーの児山啓一さんです!

児山さんとひらばる、『世界ピクト図鑑』をもってはいチーズ

こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。
私の人生を語るうえでなくてはならない存在に「共用品ネット」という市民ボランティア活動グループがあります。

老若男女多様な特性の人が集まって“だれもが共に利用しやすい共用品や共用サービスを考える”活動で、私は学生時代に入会してから、ここで出会う人たちのおもしろさ、知識の豊富さ、そして「この人たちは世の中を動かしているんだ!」という実感に夢中になりました。

maze研研究員としてご一緒しているぐろさんも、これまでの記事で紹介したユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林さんも、UDジャパンの内山早苗さんも、フクフクプラス/シブヤフォントの磯村歩さんも、UDトークの青木秀仁さんも、みーんな共用品ネットの仲間です。

たくさん話して飲んでイベントをして、そこからまた気づいて。そんな関わりの中で、私自身ダイバーシティの根っこを伸ばしてくることができたと感じています。

その共用品ネットのメンバーを絶妙のバランスでまとめる代表を長く務め、本業では空港や駅のサインデザイナーとして大活躍しているのが、本日初登場の児山啓一さんです。

児山さんがこの度『世界ピクト図鑑 サインデザイナーが集めた世界のピクトグラム』という書籍を出版されたとのことで、児山さんのこと、サインデザインの世界をまるごと教えてもらうべくお話を聞きました!

サインを構成する3つの要素とは?

児山さん。お久しぶりですー!

ひらばる
児山さん、『世界ピクト図鑑』のご出版おめでとうございます。約1000点、世界26か国、80都市のピクトグラムの数々が掲載されていて見応えがありました。

児山さん
事務所の整理をしていたら、2005年くらいにデジタル化してから集めてきた世界中のピクトグラムがかなり溜まっていたので、昨年の春頃から出版に向けて動き始めました。

ひらばる
本の中の全てのサインを、児山さんが世界を旅して見つけたというのが素敵です。
今日はまず、サインについての基礎を教えてもらいたいと思います。

児山さん
サインの3つの要素は、文字・色・ピクトグラムだといわれています。
ピクトグラムは先日、2020年東京オリンピックの開会式でも注目されました。日常の生活でも駅のサインや街中の案内図などで頻繁にお目にかかると思います。
一目でその意味が伝わるため、難しい文字や専門的な用語を知らない人や言語が違う国の人にも理解しやすく、高齢者や障害がある人への配慮の観点からも世界共通のユニバーサルデザインとして役立つと言われています。日本産業規格(JIS)ではピクトグラムのことを「言語によらず情報を伝達するために用いるある固有の意味を持った視覚的に知覚される図形」と定義し、公的には図記号と呼ばれています。

ひらばる
文字・色・ピクトの3つの要素が入ったものが一般的にサインと言われているとは知りませんでした。オリンピックのピクトグラムショーの話も出ましたが、児山さん的にはいかがでしたか?

児山さん
50種類ものピクトを、限られた人数と装置で見せてくれた点では素晴らしかったと思います。
でも、自分は冷めた(笑)
おもしろいかどうかは別として、本来の造形の趣旨が感じられなくて、それをこの場でやるのか、というのが残念でしたね。
まず、頭がデカかった! 本来八頭身の均整がとれたピクトのバランスが崩れて、仮装大賞コメディーのようになってしまって。あのピクトグラムは、1964の東京五輪の時に、山下芳郎さんという人が1人でつくった競技シンボルです。何も描かれていないところにも服や体の形が見えてくるように白と黒を使って見えない線がすごくうまく描かれた、とてもきくばりがあってできたピクトです。でも先日のショーでは、全部あからさまに見えちゃって、それが省略されて茶化されたことでストーリーが感じられなかった。偏屈かも知れないけど、そこがいやでしたねぇ。

ひらばる
なるほどー。うちの子たちめちゃくちゃ盛り上がっていて、私もただ楽しい!と見ていただけだったので、児山さんの視点、勉強になります。ちなみにもし児山さんが演出を任されていたとしたら、どんなショーにしましたか?

児山さん
私が同じことを頼まれたら、本物のアスリートに衣装を着けてお願いしたと思います。たとえば新体操のボールではバレエのようにゆっくりと舞ってもらいます。そうすることでピクト造形者に対するオマージュとして、まさに舞踏が成立すると思います。

ひらばる
見てみたいです! ピクトグラムって、キャラクターデザインとも通じるものがあるように感じるんです。どの角度から見てもそのキャラクターだとわかるという意味で。

児山さん
ピクトグラムもキャラクターも、きちんとしたものを作っていれば適応性が強い、ということだと思います。ピクトの作成では、0.01㎜の線をどうするかで悩むんですね。それほど全体のバランスを意識して作ることで、実際に使われるときに多少伸ばされたりつぶれたりして形が崩れても、耐久性のあるきれいな造形ができあがります。
作ったその瞬間には良いものができた!と興奮するんですけど、翌日は嫌になることも多々あります。いろんな角度からそのサインを俯瞰して見るために頭を冷やす時間を作るというのがとても大事だと思います。

ひらばる
そうやって生み出されるサインは、日常の中でどのような役割をもっているのでしょうか。

児山さん
こんなかんじ↓

  • 話しことばや文字に代わるという役割では、特定の言語に依存しないので、知らない言葉の国でもピクトを見れば意味が通じる(はず)です
  • 難しい言葉や漢字がわからなくても意味がわかる(はず)です
  • 文字のようにスペースを必要としないので、(文字に比べて)大きく表示できるので、視力のよくない人にも見やすく、遠方からも見やすい(はず)です

ひらばる
サインって、すごくたくさんの役割があるんですね。さきほどサインの3つの要素として、文字・色というのもありましたが、色については、カラーユニバーサルデザインなどに配慮してつくられているのでしょうか。

児山さん
白黒のサインというのも要件によってはありますが、いまでは色も意味を持つものと理解してサインに積極的に使われています。
たとえば、命に関わる「禁止・注意・指示」のサインの色は国際的に決まっています。これについては道路標識もサインと基本の色が同じです。
2018年からJIS(日本工業規格)安全色というのが改定されて、カラユニバーサルデザインが採用されました。UDの新JIS安全色では、色覚の多様性に対応した検討がなされて、色も修正され、同じ赤や黄色でも色味が変わったんです。

ひらばる
カラーユニバーサルデザインが導入されたのは、わりと最近なんですね!

児山さんがおもむろに取り出した本。『キッズペディア マークの図鑑』。
この本も監修されていたとは!

児山さん
この『キッズペディア マークの図鑑』という本の表紙には数種類の黄色のサインが描かれていますが、それぞれに少し色味が違うでしょう。黄色はレモンイエローのような感じに、それから赤はだいだいっぽい色味に変わりました。ただこれは、日本人の色覚に合わせて改訂されています。

ひらばる
色覚も人種によって違うとは知りませんでした。短い時間で、サインというものについてたくさん知ることができました。

日本の神秘サイン? サインデザイナーが実感するサインのすごさ

「えーっと、テキスト44ページ」
途中から児山先生の講義になってた

ひらばる
サインの基本を教えてもらったので、ここからは児山さんのサインへの思いをうかがいたいです。児山さんが感じるサインのすごさってなんでしょうか?

児山さん
そうだなぁ。矛盾がないことですかね。公共のサインは、誰かのためにウソでも商品を売らなければならないことがなくて、見やすさとか、わかりやすさとか、真実を追求していればよいので、自分自身に矛盾がないと思います。
それからサインは寿命が長い。広告だと一週間とか、長くても一ヶ月というものがある中で、サインは長期間そこにあるのは魅力です。ただ一方で、製品や広告のように売れるとか面白いといったポジティブな評価を受けることはほぼないので、その点では不満が鬱積する仕事でもあるかな(笑)

ひらばる
いま、あらゆる場面で持続可能であることの大切さがすごく言われていますが、サインデザインってまさにそうだと感じます。

児山さん
そうですね。もちろん駅などは耐久年数が決められて、老朽により取り替えられるものがありますが、それでも息が長いよね。トイレはそこが無くならない限りずっとついているし、20年平気でついているサインもあります。

ひらばる
矛盾がなく寿命が長いサインをデザインするために心がけていることはありますか?
児山さんと話していると、あらゆることを深く洞察していろんな文脈を読んでいるなぁといつも感じるんです。自分が浅はかに思えるほどに(笑)

児山さん
一度、共用品推進機構の星川さんから「児山さんって探偵みたい」と言われたことがあった。聞くことばっかりするから(笑)
デザインするときは、まずは現状をリセットすることと、それから追求することだと思うんだけど。自分が納得しなくちゃいけないというか、知らないとできない、いい加減にものがつくれない性格なのかもしれません。

ひらばる
探偵(笑)でもたしかにその雰囲気あります。ではサインを作る時には、まずあらゆることを調べてから整理していくようなやりかたですか?

児山さん
ただ、雑をすべて取り除いてしまうと面白いものができないと思います。ユーモアまで削ぎ落とされないように意識しながら、いい加減さを多少加えて、おもしろさとまじめさの接点を探す、ということかなぁ。

ひらばる
おもしろさとまじめさの接点! それって公と私、みたいなことでも言えますか?
サインデザインは公共性の高いものの代表格のように思っていましたけど、話をきいていると、「公」を担保した上で作り手の「私」が入っている絶妙のバランスがあるのかなと感じました。

児山さん
そうかもしれません。ただ、その「私」は「自分がこのデザインをした」と知らしめることではないと思います。サインデザインにおいては誰がサインをしたかというのは極力わからないほうがいい。無意識のうちにみんながわかってくれることが望ましいし、自己を主張しないでものを伝えるのが我々のデザインのあり方かと。でも、その中で受け取る人がちょっとくすっとなったり、善意が広がっていくようなデザインをしていく、そこに私を交えていくという感じかもしれないですね。

ひらばる
めちゃくちゃいいお話!

児山さん
ちょっと例を見てみましょうか。これから紹介する3つのサインは、アムステルダムのスキポール空港のものです。では、テキスト44ページから。

ひらばる
テキスト44ページ、はい。

児山さん
これは出発フロアのWelcomeサインですけど、飛び立つ飛行機に顔があって笑っていますね。

ひらばる
かわいい。

児山さん
それから次は、金属製品の持ち込み注意ピクト。鍵のデザインなんだけど、僕はこれが好きで。3つある鍵の形がそれぞれ違ってなんかいいじゃないですか。

ひらばる
絵本にでてくる鍵みたいですね。

児山さん
きわめつけはこれ。「自分の手荷物と財布に気をつけて!」を表すサインなんだけど、下に置かれたバッグ、パンツから飛び出た長財布を、瞳のサインが凝視しているというもの。
このサインの作者と話をしたときに「長財布を尻ポケットから半分出したまま、荷物を忘れて買い物に奔走する旅客、特に日本人のためにつくったんだよ」と話してました(笑)

ひらばる
たしかに長財布がぴょこんと出てる人、多い(笑)
サイン一つひとつからいろんな物語が連想されて、なんだか愛着が湧いてきます。

児山さん
それから先ほどのアムステルダム・スキポール空港のサインデザイナーが「これぞ日本の神秘だ!」といってとても喜んだ日本のサインがあります。

日本の神秘サインがこれ!
「順路/THIS WAY」と書かれた看板だが、矢印が両側にある。

ひらばる
え、これですか? たまにこういうサインを見るような気がしますけど。

児山さん
ある日本庭園の出口案内の立て看板に矢印が両方向あるものです。
よくよく考えてみれば、例えば丸い池のどこかで、どっちに回っても出口に行けるケースなど山のようにあるのでそんなに不思議ではないのですが、白クロはっきりしたい欧米人として、とても魅力的だったのだと思います。

ひらばる
なるほどー。曖昧さや柔軟さもサインに包括されている、それが日本の神秘ということでしょうか。日本の八百万の神的あり方かな。

児山さん
日本の八百万の神は何でもありで、ほんといい加減ですが、まあこれも多様性ということで(笑)

だれかの灯台になる仕事

ひらばる
ところで、児山さんはどうしてサインデザイナーの道に進んだのでしょうか?

児山さん
はじめはコマーシャルフィルムなどの映像をやりたくて、サインなど眼中にありませんでした。
ベビーブーマー第一波後期の就職難で電通も博報堂も落ち、どうしようかと悩んでいた時に、大学の講師に来ていた村越愛策()に誘われ、入社してそれ以来半世紀近くいるだけ、です。

※村越愛策氏:工業デザイナー。株式会社アイ・デザイン創設者。千葉大学教授、昭和女子大学講師、JIS案内用図記号原案作成委員会委員長、日本工業標準調査会ISO案内用図記号国内委員会主査など。2019年にご逝去された。

ひらばる
村越さんとの運命の出会いで、サインデザイナーの道がひらかれたと。成田空港の開港時のサイン計画もアイ・デザインさんですよね。

児山さん
そうですね。当時会社は成田空港の仕事をしていて、一応、反体制派を気取っていた身としてはハンケツ状態で毎日過ごし、成田開港の日を日本で迎えたくなかったので、数日前に羽田から出国し、開港後に中華航空で羽田に帰ってきました。

ひらばる
当時のことを詳しく知らないのであれですけど、歴史を感じます(笑)
ところでサインデザインと似た言葉でインフォーメーションデザインがありますよね。その違いって何なのでしょうか?

児山さん
これは日本と世界のサインデザイン界の置かれている立ち位置の違いが根底にあると思います。日本でのサインデザインの位置付けは、せいぜい看板デザインよりは少しシステマチックなことをやっている程度。近年はバリアフリーやUDに世の中が注目するようになってきたので多少陽の目を見る機会も増えてきたようは思いますが。
海外、特にヨーロッパでは「情報デザイン Information Design」という分野が確立しています。日本と比べると定義がもっと広いです。
それは、日本よりも人種や言語的にも多様性がある海外において、言葉によらないコミュニケーションや定義が必要だったから、情報というものにより重きがおかれたというのもあるかもしれません。
海外の同業者から「お前の仕事は立派なInformation Designだ」と言われて目が覚めたような気がしたことがあります。というわけで、今さら開眼しても遅いのですが、今は、「公共サインの仕事でよかった」と思っています。

ひらばる
児山さんがこれまでサインデザイナーとして歩んできた中で忘れられないエピソードがあれば、ぜひお聞きしたいです。

児山さん
先日、共用品ネットメンバーの芳賀優子さんが、私の本の出版について、次のメッセージをご自身のFacebookに書いてくれました。

ロービジョンの私は、学生時代から全く無意識のうちに、児山さんがデザインされたサインやピクトグラムに助けられて、毎日池袋駅をフラッと闊歩していました。

学校が護国寺にあったので、池袋はそれこそ庭のようなところでした。就職して、共用品の活動を始めて、ふとしたことからいつも目印にしていたサインが児山さんのデザインだと知りました。視力0.02弱の私でも目印にするほど、見やすいサインでした。ものすごく感動したことを、今でもはっきり覚えています。

海外に旅行をしても、わたしにとって、その国のサインが見やすいかどうかは、とても重要な要素です。池袋が庭だの、マドリッドの地下鉄サインが見やすいだのと脳天気に歩けるのは、各国で真摯にサインの計画から完成までトータルに向き合う、児山さんのようなプロのサインデザイナーのおかげなのです。これからも脳天気に歩けるように、どうかお力添えを♪

<芳賀優子さんの文章より引用>
芳賀さんの灯台。池袋の電話コーナー。2010年撮影

児山さん
たぶん10年以上前に共用品ネットの定例会で、池袋の話をしていた時に芳賀さんが「池袋駅でいつも私が目印にしているサインがある」ような話をしてくれて、詳しく聞くと「えっ、あの電話コーナー?」と、意気投合したのを覚えています。
そのサインは私が入社して間もなく、おそらく1975年頃にデザインしたもので、当時はパソコンも何もありませんから原寸文字を手で書いていました。盤面に余裕があったので平体にしましたが、「コーナー」のカタカナの字組が簡単そうでかなり難しく、悩んだのを覚えていたので、「これが芳賀さんの灯台になっていた」と知ったときは驚きました。
たまたまこの場所が暗く、また30年以上も変わらず掲示されていたので目印になったのでしょうが、この話は私のサインデザイン人生で一番うれしかった、忘れることのできない話です。

ひらばる
だれかの灯台になるって、なんて素敵なお話……。
芳賀さんは海外旅行の達人ですから、以前私も旅行に行く時に芳賀さんから「こんなふうに現地の人とコミュニケーションしたり、街を歩いたらいいよ」ってたくさん教えてもらって、楽しい旅になりました。世界のあちこちにサインデザイナーたちがつくった灯台があって、芳賀さんが自由に世界を歩き回れることが、めぐりめぐって私の世界も広げてくれたんだなぁー。なんだか胸がいっぱいになります。
では、最後に児山さんにとって多様性とは、という問いを投げかけてみたいと思います。

児山さん
私の専門のサインでいえば、昔から伝えたい一つの情報を表すために、視覚情報に限定されてはいるものの、多様な人に向けたユニバーサルデザインを実行していたと思います。
でも、最近悩んでいるのはトイレのピクトグラムです。
一般的に男と女の形状と(特に日本では)色彩で男女を区別します。形状は男女の差を明確にするためにはできるだけ特徴を出す必要があり、男性は広い肩幅、女性は胸とスカートを強調することが良しとされてきました。
ところが最近はLGBTQの認知が社会化して、自認する「性」と違う方のトイレを利用しなければならなかったり、このピクトグラムを見ることで、男女区別を強いられる脅迫観念のようなものを感じたりしていることが明らかになってきました。
ほかの例では、改札口からホームに誘導する場合でも常に最短ルートを案内してきましたが、人によっては階段よりエレベーターがよかったり、あるいは、人の動きについていけず、敢えて人のいないルートを選ぶ人もいることがわかってきました。
このようなことを見聞きしているうちに、今まで「わかりやすく」することは「区別をつける」ことで、白か黒か、右か左かをはっきりさせることを信念としていたデザイン方針に「迷い」が生じています。確かに多くの人=大多数の人に便利な情報を提供することは世の中の効率を考えれば間違いではないのですが、効率と円滑とはちょっと違っていて、伝えたい情報は一つとは限らない、もう少し選択肢に幅を持たせないと、世の中ギスギスしてしまうことに今更ながら気づきました。この選択肢のことを多様性といってよいのかどうかわかりませんが。
決断力の無さを多様性でごまかすこともよくないのですが、あと数年、「老害」と言われて世間から取り残されないために、次のことを心して円満な家庭と会社を維持できれば幸いです。

ひらばる
逆に問いを投げかけられたような気分になりました。答えが一つではないというのは、サインデザイナーにとっては難しい課題であり、絶えず終わらない挑戦なのですね。
でも、公共機関を使う1人として、時代や人に合わせて常に自問自答しながら、よりよい案内を届ける方法を模索している人たちがいることをとても心強くありがたく感じます。児山さんたちの挑戦をぜひまた教えてください。今日はありがとうございました!

おまけ 児山さんが好きな世界のピクト3選&児山さん作のピクト

児山さんが好きな世界のピクト3選&児山さん作のピクトを、児山さんのコメントとともにご紹介します!(以下、児山さんより)

児山さんが好きな世界のピクト3選

本の中から次の3点を選びました。

オーストリア 道路標識 横断歩道注意
ピクトグラムではなくオーストリアの歩行者横断道路標識ですが、なんともすこやかで、さわやかで、のびのびしていて、世界共通でありながらローカル性たっぷりのこの造形、「やられた!」と思いました。

スイス マインフェルト 登山道標識
「アルプスの少女ハイジ」の舞台、のどかで美しいマインフェルトを歩いたときの写真です。
ハイキングルートは距離表示がよいか、時間表示がよいかいつも揉めるのですが、ここでは、言葉はなくても、「子連れの場合は2時間くらい余裕みて」がきちんと伝わるよいサインだと思いました。

オーストリアの進入禁止サイン
普通、ピクトグラムは顔を描かないのですが、ここでは、一本の線で見事にヘルメットをあらわし、楕円形の口が叫んでいます。そして、これも通常の禁止ピクトグラムは赤色の斜線を中の絵にかぶせる(赤斜線の方が上)のがルールなのに、敢えてルールを無視してまで危険を訴えるこの迫力に拍手です。

児山さんが携わったピクト3選

JIS図記号 津波注意
津波は暴風雨の荒波とは異なり、高低差のある波が数メートルの段差として岸に押し寄せることを言います。圧倒的な水量と危険性を、波と周囲の黒枠を一体化させることで表現することができました。

JIS図記号 鉄道
JIS図記号は、描きぶりを統一するため、あるデザイン事務所に一貫して最終デザインをお願いしています。ただし、唯一、この鉄道ピクトグラムのみが児山が先行して作成したものです。電車といえばだれもが思いつくパンタグラフや枕木は次第に形状が変化するので止め、変わらない字幕と鉄道の基本要素であるレールをモチーフにしました。ボディ側面が直線ではなく、少しくびれているのも特徴です。

JR東海新幹線   
造形の難しさではJR東海新幹線N700系ですが、まだ、不満が残ります。

JR西日本新幹線     
JR西日本の新幹線は汎用性を狙ったものです。

居眠り注意
いねむり注意ピクトグラムは大学の講義の時に使いました。首の落ち具合が我ながらの秀作です。

プロフィール 児山 啓一さん

1950年岡山県生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒。株式会社アイ・デザイン 代表取締役。主に空港や鉄道の公共サインを専門とするデザイン事務所を主宰するかたわら、図記号標準化のためにISO/TC145/SC1公共案内用図記号の国際委員および国内主査を務める。

研究員プロフィール:ひらばる れな

mazecoze研究所代表・編集長
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育会社にて障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。
ダイバーシティプランニングを行う「hullabaloo」代表、ソーシャルデザインのしくみをつくる「PReNippon」共同代表、ノウフクPROJECTファシリテーター、久遠チョコレート広報など、様々なプロジェクトを推進。

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