かつて股関節の手術をして長く入院した病院へ久々に訪れ、その診察待ちでこの日記を書いています。お店が繁忙期に入る前に検診をと思っていたのに、うかうかしていたら予約が取れず、繁忙期真っ只中になってしまった。ヘトヘトの体を押して早朝家を出た。そして、しっかり検診まで待たされることになると想定してパソコンを持ってきたというわけだ。
わたしは自分の人生には結婚や出産や子育てというものはないだろうと思って30代半ばまで生きてきたのだけど、生まれつきの変形股関節を治すために、この病院で股関節を回す大手術をしたら、人生も回ってしまった。とは経歴などを聞かれたときによく話すエピソード。
現在の夫になった人とは、この手術からの快気祝いの場で出会ったのだった。彼は結婚願望の強い人で、私にはそれがとっても珍しく、面白く映ってしまって、つい結婚してしまった。そうしたら、すぐ長男ができ、あれよと次男ができ、想像もしていなかった年子男子の子育てというのがはじまった。
これがめちゃくちゃ大変で大変で面白くて、男児ふたりでもう十分!と思っていたのに、八ヶ岳に来て、もうひとりいてもいいなーと思ったら、三男もやってきてくれた。しかも、わたしは長く編集者をしていて、ずっとその道で食っていく予定だったのに、レストランのマダムに転身して10年も経ってしまった(仕事観は編集者のままだけど)。その選択のすべて、わたしにとっては想定外のことだった。結婚も出産も育児も移住も転身も。
先日、三男の6歳の誕生日に、夫は三男が好きなプリンをつくり、次男はキャンドルに火を着けてあげようとして三男と喧嘩し(笑)、そして長男はハッピーバースデーの曲をピアノで弾いてくれた。わたしの人生にこんなシーンがあるなんて想像したこともなくて、じわじわとこどもたちの成長としあわせ感を感じながら、思ったんだよね。人生というものは先を想定していないほうが、しあわせ度高いんじゃね?って。
現役の編集者時代、起業やビジネスにかかわる記事をよくつくっていたのは、ばるさんもよく知ることと思う。その世界だと失敗やトラブルに遭わないように、いかに先を読むか、計画をしっかり立てるか。そういうことが成功に近づくヒントだと説く。それはもちろん間違っていない。
だけど、想定外のことが起きるのが人生であり、成功=しあわせかというと、またそれも違うように思う。「想定外」という言葉からは失敗やトラブルをイメージしやすいけれど、しあわせというのも、あたりまえの日常のなかに想定外にじわりとやってくる。
めちゃくちゃ待たされると思った診察だったのに、想定外に早く名前が呼ばれて、急いでパソコンを閉じた。
「お久しぶりで、すいません」となつかしい先生の顔を見たら「久しぶり! いや~、なに、いま、山梨にいるの? ぼく、山梨出身だよ。なにしてるの、山梨で?」と開口一番に言われた。えー、そうなんですか! 結果、わたしの足の話よりも、レストランの話で盛り上がってしまった。
「1年に1回くらいは足の写真撮りにいらっしゃい」「先生もレストラン、いらしてくださいよ」
これぞ、僥倖! 想定外、バンザイである。
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つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
→ Terroir 愛と胃袋