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「レトロ」が流行る理由

mazecoze研究所 │ 2022.02.25
フィルムカメラ(μ–Ⅱで)で撮影した写真

「日本写真芸術専門学校」3年制写真科フォトソーシャルビジネスゼミ(PSBゼミ) × mazecoze研究所 特別企画!
フォトソーシャル科の学生さんたちに、“いま自分がもっとも関心があるソーシャルトピックス”について取材・執筆していただきました。

私がいま思うこと驚いたこと

初めまして、今井と申します。日本写真芸術専門学校フォトソーシャルビジネス科3年で、春に卒業する予定です。4月からは就職も控えていてドキドキではあるのですが、その前にここで投稿させていただけることになったので最近思うことや驚いたことを書いておこうと思います。

個性や多様性は一括りにできない

メディアではよく「Z世代」などと呼ぶが、私はその呼び方が嫌いだ。なぜなら様々な個性や価値観、生活スタイルなど多様化が進む中で世代を一括りにして説明することなどできないと考えるからだ。

私も世間では若者離れが叫ばれている車やバイク、PCやオーディオを筆頭に、黒物家電、最近はフィルムカメラなど今時の年齢にそぐわないと思われそうな趣味を楽しんでいる。現代は昔と違い、他者と同じようなスタイルを拒む性質があると感じる。

例えば1980年代はバイクや車が流行り、「暴走族」や「走り屋」などが社会問題にもなったと耳にする。また、1990年後半から2000年代初頭初頭をピークに「ガングロ」が渋谷や原宿に溢れるなど「この世代はこれ!」というような明確な流行があったように思える。

しかし現代では後述する流行に「有線イヤホン」がある。それはAirPodsを筆頭に、無線イヤホンが大量に流通したことによるアンチテーゼがEarPodsなどの有線イヤホンであり、つまり世代は違えど、「他者と被らない個性と価値観の多様化」こそが今の社会のトレンドなのだと言えるだろう。よりシンプルな生き方を模索する「ミニマリスト」や「地方への移住」もそのひとつではないだろうか。

その中でも近年密かに「レトロ」が流行している。それはいかにも古そうなヴィンテージ品に限らず、「レトロ」風新アイテムや時代と逆行していそうなアイテムまで様々だ。特にインスタグラムやTikTokなどSNSで盛り上がる傾向にあると見られる。では具体的にどのようなものが流行っているのかを見ていこう。

なぜ令和の時代に「レトロ」を求めるのか

まずはダイソーから発売された「Bluetoothスピーカー(レトロタイプ)」。
レトロなラジオを彷彿させるデザインとBluetoothに対応した利便性、実際に物理操作できる音量操作ダイヤルが魅力だ。一般的に100円ショップの音響製品は音質がイマイチと言われがちだが、この製品ではレトロなデザインとそのデメリットとも思われそうな品質が魅力へと進化し「ニューレトロ」とも呼べるものではないだろうか。また、よくある100円ショップのBluetoothスピーカーは音量調整を行う際にシリコンでできたボタンで操作する商品が多く操作感に欠けるが、この商品では感覚的に操作でき、デザインも秀逸なダイヤル操作可能な点も人気を博し、品薄状態が恒常化している。もしも見かけることがあれば是非手に取ってもらいたい商品のひとつだ。

Bluetoothスピーカー(レトロタイプ)紹介YouTube https://youtu.be/jM5a_WE0oJU

次は先述した有線イヤホンだ。Bluetoothによる無線接続が当たり前となりつつある現代で今更何故?と思うかもしれない。きっかけは海外セレブの発信が発端とされており、iPhoneの付属品で付いてくるEarPodsが「頑張りすぎないアクセサリー」として人気だという。2021年後半に入ってからはとあるTikTok投稿をきっかけに“有線イヤホン”がトレンドワードに急浮上し、『今買うべき、有線イヤホン』という記事を掲載するモード紙が現れるほど。おそらく誰もが一つは持っている製品だと思うのでアクセサリーの一つとしてスタイリングを楽しんでみてはどうだろう。

インスタグラムアカウント「@wireditgirls」より引用掲載

最後に、ここ数年の密かな流行りでもあるフィルムカメラについて語ろうと思う。私もハマるフィルムの世界にはデジタルでは表せない魅力があると感じる。フィルムの写し出す絵は、デジタルにはない空気感や「エモさ」を感じられるところが魅力だ。現像しなければ撮影した写真を見ることができない点や、たくさん撮れないからこそ1枚1枚を大切に撮影する感覚が新鮮で楽しい。

もちろんデジタルの方が画質や美しさなど優れている点も多いが、フィルムにはそれ以上にロマンを感じることができる。特に現代では現像した写真をスマートフォンで受け取ることができ、すぐにインスタなどのSNSにアップロードできるようになっていたり、富士フィルムの「写ルンです」本体の「ダサ可愛い」見た目と手軽に買えるハードルの低さが流行の後押しをしている。

私が実際に使用しているフィルムカメラのオリンパスOM−1(左)とμ–Ⅱ(右)。特にμ–Ⅱは母からのおさがりで、軽くてどこへでも持ち歩けることができるのに綺麗な写真が撮れる。母が愛用していたのも納得である。

O M–1で撮影。実はフィルムを洗濯してしまい、追加料金を払ってなんとか現像してもらったため色が変化してしまっている。そこもフィルムの味と楽しんでいる。

μ–Ⅱで撮影。古いカメラなのでどこか隙間があるのか左下部分に感光した形跡がある。そこもフィルムならではで面白いところと言える。

μ–Ⅱで撮影。光がぼんやりと滲んで歩道とのコントラストが美しい写真。デジタルに引けを取らないフィルムの表現力も未だ健在だ。

技術革新が価値観や好みの多様化を進化させる

ではなぜ「レトロ」が流行るのか。それは技術革新が価値観や好みの多様化を進化させたからではないだろうか。言ってしまえば現代の製品は便利すぎるのである。一時期「ミニマリスト」という考え方が世間を賑わせたように、増えすぎた機能や快適すぎる製品に飽きてしまったと私は考える。しかし、本来ユーザーが求めて企業が技術革新等で課題解決したにもかかわらず流行がそれを否定してしまうとはなんとも不思議な現象だと感じる人も多いのではないだろうか。だが、このような製品が生まれたからこそユーザーは選択肢を多様に持つことができ、「これしかないから使う」から物への愛着や個性のある生活スタイル「これが使いたくて使う」へと変化し、より自身の生活が豊かな「他者と被らない個性と価値観の多様化」になっていくのだろう。

●参考サイト

ヤマンバ、イベサー、ガングロ…ギャル・ギャル男はどこに消えたのか? 【 「ギャル文化」と「渋谷」をめぐる歴史を紐解く】
2021年、有線イヤホンが流行中。その“レトロ”さが若者にウケているらしい

<プロフィール>今井拓真

1997年11月22日生まれ、愛知県知立市出身。
高校卒業後、IT系資格取得を目指す専門学校へ入学。卒業後、約1年ほどシステムエンジニア職を経験したが、趣味の写真に一度挑戦してみたいという気持ちから日本写真芸術専門学校フォトソーシャルビジネス科へ入学する。主にポートレートやスナップを撮影することが好きで「きたもとだいにんぐプロジェクト」では食をテーマとして人にフォーカスした、ありそうでなかったinstagramアカウントを設立(https://www.instagram.com/kitamoto_dining/)。
その後アカウントの運営を北本市産業観光科に移譲し、北本市観光サイト「きたこれ」の公式instagramとして更新されている。

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