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日本で一番ヘアドネーションを応援している美容室に、善意でつながる「次世代ヘアドネーション」について聞きました(後編)

次世代型のドナースタイルって?

  前編では、頭髪に悩みを抱えるお子さんたちに、献髪で作ったメディカル・ウィッグを無償提供するヘアドネーションの現場を見学させてもらいました。
ここからは、55JET代表の當間紀之さんに、サロンでヘアドネーションを応援するご活動について、うかがいたいと思います!

當間さんは、55JETが所属しているJAPAN HEIR DONATION &CHARITY(通称:JHD &C,ジャーダック)の、国内に4人しかいない認定講師のうちの1人。
ヘアドナーのカットや、ウィッグを必要とするレシピエントのお子さんのスタイルカットはもちろん、親子向けイベントなどヘアドネーションの認知拡大にも力を注がれています。

--ヘアドネーションの現場を見るのも初めてでしたが、お子さんの手元に届くまでにたくさんの工程があり、多くの人が関わっていることに驚きました。

當間さん「メディカルウィッグを寄付するというと、買ってあげればいいじゃないと言う人もいます。でも、現段階では、誰もお金を使わずに善意の元で行われる社会性のある活動だと思うんです。善意の気持ちを持つことが、世の中の仕組みもよくしていくという。
この活動って、年齢も性別も国籍も関係ないんですよ。思いがあれば、誰でも参加できるんです」

--ドナーになるのは、どんな方が多いのでしょうか。

當間さん「うちのお店だと、いまは子どもがものすごく多いです。前だったら大人7:子ども3ぐらいだったのですが、今はもう半々ですね。先日開催した親子イベントでも、男の子兄弟2人が来ていましたし」

--男の子がヘアドネーションしているんですか! 髪を伸ばす過程を考えると、相当な決意と勇気が必要ではないかと。

當間さん「あのねぇ、それねぇ、もう昔の話です!」

--ええっ!?

當間さん「その感覚はね、もう古い。古いんですよ(笑)
髪を伸ばしているとトイレに行くのも大変で、女は入っちゃダメなんだよってからかわれたとか、大変だったねって言うのが、ちょっと前まで。
僕らは“次世代のヘアドナー”って言っているのですが、いまは、男の子がヘアドネーションのために髪を伸ばしていたら、“もしかしてヘアドネーションで伸ばしてるの? 何組の〇〇ちゃんもしたんだよ。頑張って”で終わるんだそうです。
それを聞くと嬉しいんですけど、子どもたちの間では、今は髪を伸ばしてたらヘアドネーションで伸ばしてるのかなって思ってもらえるまでに広がっています」

--お子さんたちから広がっていると。

當間さん「子どものコミュニティーがありますからね。ヘアドネーションした子が学校や塾などで話すことで自然に、自分もやってみようかなっていう広がりが生まれていて。自分自身がちゃんと納得してくれているところがいいなと思っています。無理やり切るのではなく」

--髪を切ると目立ちますし、それ自体が活動のPRにもなりそうです。

當間さん「みんなそれぞれ気持ちを持ってやっていて、夏休みの自由研究でヘアドネーションする子も多いんですよ。そしたら学校で張り出されるじゃないですか。そこからまた広がって」

--自由研究では、どんなことを書いているのでしょう。

當間さん「“フルウィッグを作るには20人から30人のヘアドナーが必要。あともう一つ私が気づいたことは、女の子は長い髪に憧れる”って。可愛いでしょう。
31センチだと、ショートカットのフルウィングになるんです。レシピエントさん、特に女の子はあと数センチ長いものを届けると、すごく喜んでくれます。そんなお話もイベントなどで伝えるようにしているんですね。
そしたら “今回40センチ寄付したけど、今度は1メートル寄付したい”とか。その子にとっての最大の気持ちの表現ですよね」

応援しながら起こった変化

--活動を通じて、當間さんご自身に何か変化はありましたか?

當間さん「はじめは自分も、髪がないのはかわいそうと思っていたところがあります。でもいまは、髪がないのはただの状況、過程であるという見方になっています。
さらに言えば、ウィッグがない状態でも、つけていてもどちらでもOKで、ビューティ・おしゃれとしてのウィッグという選択肢になればいいなと。 まだ社会がそこまで成熟していませんが、そんな世の中になればいいと思っています」

--ウィッグの寄付という話を超えて、それぞれの選択肢や自由なあり方を受け入れる社会環境の醸成までお考えなのですね。
當間さんが思い描く世の中になるために、いま力を注がれていることはありますか?

當間さん「イベントをしたり、SNSを活用したり、活動のことを伝え広めることがまずあります。
理美容師さんの育成にも力を入れていますね。理美容師向けヘアドネーションセミナーも開催しています。技術的な共有もありますが、たとえば、お店に来たお客さんが切ろうかどうか悩んでると。測ってみたら28センチ。あと3センチ伸びたらドネーションできるよって伝えられたら、じゃああと3センチ伸ばして切りますってなる。
その瞬間、お客さんは、ヘアドネーションするために伸ばすんですよ。切るか切らないか悩んでたのが、切るって決断をして、切るために伸ばす。
そうしたことを全ての美容師がご案内できたら、ロスが無いし、お互い気持ちがいいですよね」

愛の連鎖でしかない

--普通に買うと医療用の人毛ウィッグは50万円ほどするそうですね。それを、すべて寄付やボランティアで。ヘアドナーになる人のアクションがなければ、そもそも素材が手にはいらない活動でもあります。

當間さん「レシピエントへの匿名性の配慮というのもあって、ドナー様には、髪の寄付をした後で、これは誰に届いて喜んでもらえているというのを報告できるわけではないんですね。でも、ドネーションしてそこだけで終わって欲しくないなというのもあって。
僕はレシピエントへのスタイルカットもするので、できるだけそのときの様子をお伝えするようにしてます。
クラウドファンディングでキーホルダーを作ったりもしましたよ。ドナーの方に渡して思い出してもらったり、周りの人にも伝えて欲しいなと」

--ヘアドネーションの体験を、周りの人に伝えてもらうことでも活動は広がってきますね。

當間さん「自分の髪はすぐ伸びなかったとしても、もし髪を切るならこんな方法もあるよって伝えてくれれば、それはもうヘアドネーションの活動をしているってことなので
そして僕らがやるべきことは、ドナー様から髪の毛をいただくお返しとして最高の技術で、素敵なスタイルにすること。それが僕らの感謝なんです。
可愛くなったね、綺麗だねって周りから反応があれば、ヘアドネーションしたんだよって言って欲しいですね」

--55JETさんでは、ヘアドナーの方に感謝の葉書や、クーポン券をお渡しするなど独自の取り組みもされています。
賛同サロンとして、みなさんご自身もボランティア活動をしながら、さらにドナーの方にもありがとうと。

當間さん「もう愛の連鎖でしかないので。僕、よく言っているんですが、ヘアスタイルの“HAIR”の、HとRの間には何があると思いますか?
そう、AI(愛)がある。
それから、HとRはなんだろうと考えて、つい最近見つけちゃった(笑)
Hはヒューマンなので、人間らしさ、人間がもともと持っているだれかの役に立ちたいっていう気持ち。もうこれはドナー様のことです。
そしてRはレシピエント、お子さんたち。ドナー様の気持ちが愛を持ってレシピエントさんの笑顔に生まれ変わる。僕たち美容師はその愛の橋渡し役なんです」

--おお〜、つながった!(拍手が起こる)
當間さんがご活動を進める中で、たくさんの出会いと気づきがあってこそ、降りてきた言葉なのでしょうね!

當間さん「こういった活動がニュースにならないくらい当たり前のこととして浸透することが本当はいいと思います。でもまだその状況ではないから、僕たちとしては、ウィッグが必要な子がいる限りこの活動を続けていきます」

ヘアドネーションは、年齢や性別や国籍も超えて、誰でも参加できる取り組みでした。お子さんにウィッグを贈る活動を、いまでは次世代ヘアドナーとして、子どもたちがしなやかに推進しているというお話に、驚きと希望を感じました。
自分が髪を伸ばせる環境ではなくても、ヘアドネーションを知り広めていくことが、活動への参加になります。mazecoze研究所も、その輪を広げる仲間になれたらいいなと思います。

當間さん、55JETのみなさん、ありがとうございました!

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  (mazecoze研究所 編集部/取材・撮影・執筆協力 ハル)
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