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身体性をどこまで拡張できるか、人類を孤独から救うオリィ研究所「分身ロボットカフェDAWN ver.β」

福留 千晴 │ 2021.06.22
吉藤オリィさん

こんにちは。研究員の福留です。

普段、地域における課題解決に多く携わらせていただいている私ですが、今回は前職の同期にお誘いいただき、吉藤オリィさん率いるオリィ研究所が新しく展開する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」のオープン初日にお邪魔させていただきました!

実はこのカフェ、2018年から合計4回、期間限定として開催されており今回が初の常設店としての展開なのですが、昨年初めて体験させていただいた夫から鼻息荒く、「ねぇ凄かったよ〜!」と話してもらうのを、「ふ〜ん。。(うらやましいな)」と聞いていただけなのでした。

個人的には、障害者支援も含むダイバーシティ&インクルージョンの観点からだけではなく、普段多く取り組ませていただいている各地域社会における連携の可能性もあるのではないかという期待も大いに寄せながら体験させていただきました。

「身体至上主義」の社会で新たなつながりを生みだす

オープニングセレモニーにてスピーチをされるオリィさん

実はこの日は急遽参加となったため、午前中から始まったセレモニーは打ち合わせの合間に自宅から視聴していました。冒頭、代表の吉藤オリィさん(オリィさんのプロフィールについてはもはや説明不要だと思います)からの力強いメッセージで幕を開けました。

  • 人類はなぜ体がひとつしかないのか?
  • 「身体至上主義」によって社会が形成されているが、人は生きている限り外出困難や寝たきりになる
  • 物理的な分断が進む社会において、そのつながりを再構築する実験の場がこのカフェ


実は2年前、出産に際して約2ヶ月寝たきりになった経験があるのですが、その時に経験し、まだ消化しきれていなかった感情や思いをガツンと表現いただき、もはやその後の打ち合わせに身が入らなくなりました(笑)

スピーチされる乙武洋匡さん

アドバイザリーとして参画される乙武洋匡さんからも、ご自身の経験を経て「自分は社会から”想定されていない存在”であることを認識した」とのスピーチをいただき、私はもはやこの辺りで涙が出そうになっていました。なんと素晴らしい言葉を話される方々なんだろう、そしてどれぐらい多くのハードルを越えてこられたんだろうと。
そして”想定されていない存在“、それはまさに産後、子育てをしながら個人事業主として働いてきた自分が常に感じていた感情でもありました。そんな思いを抱きながら、浮き足立って会場へ向かいました。

最新のテクノロジーが可能にする、本来あるべきコミュニケーションの形

今回、お声がけくれたのは前職の同期・小塚仁篤くん。

なんと5年ぶり?の再会だったのに、「おつかれ〜」だけで違和感なく会えるの、同期って素晴らしい。今回、「分身ロボットカフェ」のコンテキスト・デザインを手掛けた小塚くんの案内で会場内を体験させていただきます。

久々に会った小塚くんは少しだけオリィさん風になっていた

「分身ロボットカフェ」で働くパイロットの方々

現在、「分身ロボットカフェ」で働く方は総勢約50名(2021年6月時点) で、皆さん様々な障害や、自宅から出ることのできない理由を抱えた方々です。そして皆さんとってもお話好き!私も負けじとお話好きなので(笑)、仕事を忘れて色々な方とお話を楽しんでしまいました。一部、海外から参加されていた方もいらっしゃったようですが、皆さん、島根県、福岡県、広島県など、普段であればコロナ禍も相まってなかなかお会いできない人たちに会えたり、話せる唯一無二な場所。会場全体があらゆる境界を越えて、ともに人とのつながりを信頼しているような、なんとも形容し難く素晴らしい場所でした。

分身ロボット「OriHime」とパイロットの「とっつぁん」

日本各地(たまに海外)のパイロットの方々とは、この可愛いけどスーパーすごい遠隔操作ロボット「OriHime」ちゃんを通して会話します。会場側の参加者(私)は、基本的にパイロットの方のプロフィールと顔写真が掲出されたiPadを見ながら、音声を通じて会話を進めます。そして、些細なパイロットの方の感情や思いが、細かい「OriHime」の仕草や動きを通じて伝わってきます。

パイロットと相談しながらメニューを選ぶ参加者

さらになんとここはカフェでもあるので、素敵なドリンクやフードのメニューをパイロットの方と一緒に相談しながらオーダーをお願いします。これがなんとも楽しそう。

ドリンクを運ぶ「OriHime-D」

オーダーを受けたら、今度は遠隔労働を可能にするこの「OriHime-D」が各ゲストのテーブルまでドリンクやフードを運んでくれます。(この黒い線の上が「OriHime-D」の動線)この未来感、すごすぎる。

パイロットであり、システムエンジニアでもある「こやさん」

私が今回、がっつりお話させていただいたのはこちらの「こやさん」こと、小柳大輔さん。千葉県のご自宅からの勤務です。私がちょうど今年で36歳なので、その年に発症されたこと、お子さんがいらっしゃること、また13ヶ月の入院生活のことなどなど、色々とお話しさせていただきました。
年代が近いせいなのか?こやさんの持たれる噺家さんのような素敵な雰囲気のせいか?(ご本人にお伝えしたら笑ってくれました笑)、初めて会話したような気が全くしない、不思議な時間でした。これが最新テクノロジーの力と、それが可能にする人間同士の本来あるべきコミュニケーションの形なのか、と思いながらあっという間に時間は過ぎてしまいました。

こやさんは、元々システムエンジニアとして多様な要件を各所とまとめるお仕事をされていた背景もあり、このパイロットのお仕事もとても楽しまれていて、パイロットの活動だけではなく、動画配信やイベント等で精力的にご活動されていて(本当にすごい)、またどこかでご一緒できると良いねと挨拶して別れました。そして最後に、こやさんが記念写真を撮ってくれました!(写真は後日Facebookにて送信いただきました)

パイロットの方々から見えている風景がクリアでびっくり(こやさん撮影)

世界は”健常者”と呼ばれる一定の人たちによってつくられている

普段、何気なく生活していると、自分がいわゆる”健常者”(この定義も非常に曖昧であると思っている)であるという認識すら持つことが難しいほど、この社会や枠組みは一定の”健常者”と呼ばれる人たちによって形成されている。そして障害や地域など、あらゆる境界を越えていけるのは、当然ながらその境界を認識することからである。今回いただいた経験を通して、そんな当たり前だけれど、重要なメッセージをいただいたように思います。

実は私の親戚にもALSの子がいるのですが、本人が向き合う現実には、あまりにも私にできることがないような気がしていて、常に自分の無力感を感じていました。でも、特別な医療や専門知識がなくても、これからの時代はこうやって最新テクノロジーの力を借りながら、多様に関わり続けていくことが可能になる。そんな希望にも似た、ひとつの解釈の形をいただけた気がしています。

また、普段関わっている地域のプロジェクトにおいても、コロナ禍でより遠隔交流や体験の重要性を模索する動きが急速に加速しているので、あらゆる地域格差や教育、文化格差などの是正もここからどんどん加速していくのだなという個人的な希望も持てました。

このあたりのテーマについては、mazecoze研究所でも引き続きオリィさんご本人への取材機会を模索しながら、深掘りしていきたいと思っています。

  • 障害と健常という心理的、物質的境界の捉え方
  • 地域社会や物理的距離感を解消するための拡張の方向性 などなど


今回、「分身ロボットカフェDAWN ver.β」は念願の常設店ということもあり、私は次回息子を連れて滞在したいと思っています。オリィさんが冒頭のスピーチでおっしゃっていたように、子どもたちの世代には「不自由を遺さない」、このような多様な関わり方が当たり前になる日が来ることを信じています。

「分身ロボットカフェDAWN ver.β」
来店には予約が必要なOriHime接客席と、予約不要の一般席があります。
公式サイトをご確認の上、ご来店ください。
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-8­-3 日本橋ライフサイエンスビルディング3 1F


研究員プロフィール:福留 千晴

「地域と食のしごと」NORTHERN LIGHTS代表/mazecoze研究所広報・新規事業開発
鹿児島県出身、実家は大隅半島で芋焼酎の芋を育てる農家。カナダ・モントリオールでの映画学専攻や10カ国以上へのバックパッカー経験、広告会社勤務を経て、現在は中小企業や自治体においてソーシャル&ローカルデザインのプランニングからプロデュース、クリエイティブ、PRまで一貫して行う。2017年、経産省「BrandLand Japan」にて全国12商材の海外展開プロデューサーに就任。焼酎唎酒師、日本デザイナー学院ソーシャルデザイン科講師。
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