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視覚障害がある人から「もし、1年後目が見えなくなると分かっていたらどうする?」と問いかけられたら。タキザワケイタさん、中川テルヒロさんに聞く、新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」開発物語

平原 礼奈 │ 2021.05.20

気づきを深化させる新感覚ワークショップ開発秘話に迫ります

こんにちは。
mazecoze研究所のひらばるです。

先日、「視覚障害者からの問いかけ」というワークショップのレポートを寄稿していただきました。
そのときごとに異なる「問いかけ」を真ん中に、しかも、視覚障害のある人がファシリテーターとなって進められるワークショップ。

私自身これまで多様な立場や感覚を擬似体験するような研修の企画をしてきたこともあり、その真意や開発背景を知りたくなりました。

そこで今回は、「視覚障害者からの問いかけ」開発者のお二人である中川テルヒロさんタキザワケイタさんにお話を聞かせていただけることになりました!

取材前夜。タキザワさんから「明日、クラブハウス(clubhouse)でやりませんかー?」とさくっと提案を受け、急遽公開取材をすることに。
さらには取材中に、視覚障害当事者でもある中川さんからひらばるに「問いかけ」をしていただく運びとなりました。
なんともドキドキ、そして楽しかった当日の雰囲気を、この記事ではできるだけありのままにお届けしたいと思います!

※取材はクラブハウスで実施しました。規約に則りタキザワさん、中川さんから事前に記事化の承諾をいただいています。

お話を聞かせてくれた人

中川テルヒロさん

一般社団法人PLAYERS 理事
後天性かつ進行性の視覚障害のため、左目が全盲、右目の視野が健常者の1%という状態。PLAYERSのメンバーとして社会課題の解決に取り組んでいるほか、ユニバーサルマナー検定の講師やソフトウエア開発を行なっている。また、ライフコーチとして人生に変化を起こしたいクライアントのサポートもしている。


タキザワケイタさん

PLAYWORKS Inc. 代表、一般社団法人PLAYERSリーダー
インクルーシブデザイナー・ワークショップデザイナーとして、新規事業・組織開発・人材育成など、企業が抱えるさまざまな問題を解決へと導く。一般社団法人PLAYERS にて、新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」や、テクノロジーで点字ブロックをアップデート「VIBLO by &HAND」、顔が見える筆談アプリ「WriteWith」の社会実装など、社会課題の解決に取り組んでいる。筑波大学 大学院 非常勤講師、青山学院大学WSD講師、&HANDプロジェクト リーダー等

タキザワさんと中川さんに、話題のクラブハウスで公開取材

ひらばる
こんにちは。今日はよろしくお願いします。
昨夜、タキザワさんから「クラブハウスでやりませんか」と突然(笑)私、登録していただけで、初体験なのですけども。

タキザワさん
すみません、きのうの今日でクラブハウス(笑)
クラハーのナカガワさんが教えてくれると思います。

ひらばる
クラハー! 心強いです。では、“Start a room”してみます。あら、早速聞きに来てくれている人の顔がみえますね!

中川さん
はい、自分の知り合いも、そうでない人も、クラブハウスに入っている人は聞きに来られます。公開です。

ひらばる
ここでの会話はオフレコで、記録したり共有したりは本来ダメだそうですね。スピーカーの許可をとっていればOKとのことで、改まして、今日はタキザワさん、ナカガワさんの承諾を頂いた上で進めさせていただきます。
まずはじめに少し、自己紹介をいただけますか。タキザワさんはもう何度も登場いただいているので、そうですね、今ハマっていることなど。

タキザワさん
はまってること、クラブハウス(笑)いろんな使い方をためしています。

ひらばる
プレイヤーズのMTGでも使っているとか。

タキザワさん
はい。今後ワークショップでの活用も考えています。挙手してもらって他の人の意見を聞いたりもできるかなとか思っています。

ひらばる
すごいー。楽しみです。
中川さんはお会いするのがはじめてです。

中川さん
プレイヤーズの理事をしていて、視覚障害の当事者です。普段このワークショップのファシリテーションをしたり、ソフトウエア開発の仕事や、ミライロさんのユニバーサルマナー検定の講師やライフコーチなど、いろいろな活動をしています。

ひらばる
ライフコーチって、どんなことをするのでしょうか。

中川さん
クライアントさんの悩みが多岐にわたるのですが、仕事、結婚に関することもあれば、自分がやりたいことが続けられないので助けてほしいとか、最近だと本を書く作業をする人が自分一人だと執筆がはかどらないので、話を聞くようなこともしています。

ひらばる
えー、おもしろい。クラブハウスでも、“クラブハウスの保健室”というルームや“視覚障害者とその周りの人たち”というクラブを定期的に開催されていますね。

中川さん
“視覚障害者とその周りの人たち”というクラブは、視覚障害の当事者だけでなく、その家族、仕事で関係する人、関心のある人などがつながる場所としています。例えばみんなで視覚障害者の防災対策について考えてみたり、視覚障害者の就職や仕事の状況を共有したりしています。
あと、クラブハウスはいろんな側面から話せるなと思っていて。たとえばある書籍の著者さんがその本について一人で話すことが難しいとなったときに、僕が聞き手として質問しながらいろんな人を会話に巻き込んで、ということもしています。

ひらばる
ファシリテーターやインタビュアーのようなことを、クラブハウスでされているんですね。そういう立ち位置がSNSの中に生まれているって、とても新鮮です。

中川さん
そう思います。クラブハウスは登録さえしていたら誰でも入れるというところも魅力ですね。

ひらばる
mazecozeでもZoomでの取材同行体験というのをはじめていますが、自由に聞いてもらえるという面ではクラブハウスとてもいいなと感じました。

タキザワさん
クラブハウスは最近※ボイスオーバー(VoiceOver)に対応したんです。それで、視覚障害の人が次々と参入されて、ボイスオーバーの練習部屋なんかもあって。先日たまたまそのルームに入ったら、僕以外みんな視覚障害者で。
「タキザワさん、手をあげてもらっていいですか」「はい」とかやりとりしながら、みなさんの練習台になるというおもしろい体験をしました(笑)

※VoiceOver:iPhoneの画面に映し出されている文章を読み上げる機能

ひらばる
視覚障害のある方にとっては、クラブハウスの場はマッチングする感じでしょうか。

中川さん
この間、クラブハウスで視覚障害の人が集まる部屋に入ったんですけど、「こういうふうに話すって僕たち昔からやってたよね」とか「自分たち向きだよね」という人がけっこういましたね。僕もその通りだなと思っています。
今こうして話していても、僕が目が見えるとか見えないとか関係ないので。視覚障害者に向いているツールだなとタキザワさんとも話しています。

ひらばる
なるほどー。一方、クラブハウスは音声ツールなので、聴覚障害のある人は参加しにくいのかなと。何か方法があるのか、もしご存知でしたら教えてください。

タキザワさん
そうですね。レコーディングできないというルールがあるので、聴覚障害のある人が参加するのは難しい面が多いと思います。実験的にUDトークで文字にして使ってみるなどの取り組みはあります。
僕自身は、クラブハウスを聴覚の人が使えるようにするというより、たとえばビジュアルだけのコミュニケーションとか、聴覚障害の人の特性に合わせたSNSを作ったら楽しいな、とも思っているんです。逆に手話がわからない僕らは参加できないとか、そういう世界があってもいいのかなって。

ひらばる
参加したいと思う人が参加できるUDやアクセシビリティは大事ですけど、いまあるバリアをすべてをバリアフリーにするのと少し視点をずらして、色とりどりの選択肢を作って楽しんでいけたらというお気持ち、わかります。

ゼロからイチを生み出すPLAYERSと、アイデアを社会に定着させるPLAYWORKSの関係性

ひらばる
クラブハウスの取材みたいになっちゃったので(笑)ここからは「視覚障害者からの問いかけ」について聞いていきたいと思います。
このワークショップはタキザワさんがリーダーをしているプレイヤーズ(一般社団法人PLAYERS)が開発したのですよね。一方で、タキザワさんは、プレイワークス(PLAYWORKS Inc.)という会社も起業されています。この2団体の目的や関係性について教えてください。

タキザワさん
プレイヤーズは、多様なプロフェッショナルからなるプロトタイピングチームです。いま約10名のメンバーがいて、全員が本業をやりながらボランティアで関わっています。 デザイナーとかエンジニアとか、中川さんのような障害当事者のメンバーもいます。
主に社会課題に取り組んでいて、当事者や企業とのワークショップを通じて、サービスやプロダクトを短時間で形にしていくような、ゼロ→イチを得意としています。

中川さん
社会課題や社会的弱者の人に寄り添うことをずっとやってきたのが、プレイヤーズの色になっていると思います。

タキザワさん
自分のスキルを仕事以外や、社会貢献に活用したいというメンバーが多いです。それをチームで協力しながらチャレンジしています。

中川さん
僕もその一人です。何か自分からできることがあるんじゃないかなと思っていて、関わるようになりました。

タキザワさん
活動の中で見えてきたプレイヤーズの課題が、事業主体になりにくいという部分でした。メンバーがプロボノだから難しい面もあったんです。プレイヤーズが生み出したものを、責任を持って関わり続けて社会実装させたい。そんな思いからプレイワークスという会社を立ち上げました。

ひらばる
課題から生まれたアイデアを定着させていくために起業されたんですね。

タキザワさん
すごいタイミングでした。コロナ禍で。

ひらばる
いち早くオンラインでのワークショップにも取り組まれていて、すっごいな、タキザワさんって思ってたんですよ。

タキザワさん
今振り返ると最高のタイミングだったなと。社会状況の変化に対して早く行動しながら学んでいくことが問われる中、会社の経営者として秒で意思決定できる立場になれたのは、ほんとにいいタイミングでした。

ひらばる
まず思ったことを行動して、その先に見えてきたことにまた取り組んでいくことができますもんね。
タキザワさんと中川さん、お二人の出会いは?

タキザワさん
インクルーシブデザインのワークショップがあって、息子と参加したんです。そのときにたまたま僕のグループでリードユーザーをしていたのが中川さんでした。

中川さん
その二週間後に、ミライロさんのユニバーサルマナー検定で、僕が講師をしているときに、タキザワさんが受講者でいらっしゃって。その偶然があって、一緒にやっていく流れになったということですね。プレイヤーズの打ち合わせにも行くようになって、なし崩し的にメンバーに(笑)

ひらばる
多様な人が引き寄せられて集まることで知見が深まっていっているんだなぁ。それがプレイヤーズさんの魅力だと感じます。

ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」はこうして発案された

ひらばる
「視覚障害者からの問いかけ」を生み出されたきっかけは、中川さんだったとうかがっています。

中川さん
視覚障害者向けのコンテンツをプレイヤーズで考えようということになったんです。とはいえメンバーがまだ視覚障害のことをよくわかっていないから、まずはヒアリングしたいという話で。それを横で見ていて、なかなか対話が深まらないなと気づきました。そこで、むしろ逆に視覚障害当事者から質問をしてみたら、理解が深まるんじゃないか、対話の密度が高まるんじゃないかと考えたのがはじまりです。

ひらばる
視覚障害者側からの質問が、なぜコミュニケーション密度を高めると思ったのでしょう。

中川さん
タキザワさんに「中川さんだったらどうしたら仲が深まると思いますか」って聞かれたときに、「僕だったら僕から質問しますね」って答えたんです。もともとライフコーチをしていたり、人の話を聞くことが好きというのがあったからだと思うんですけど。

ひらばる
ライフコーチの活動などで、中川さんご自身が「問い」によって社会との関わりを深めてきた土壌があったからこそだったのですね。

中川さん
聞いていた側が逆に問われてみると、お互いに気づきが多かった。それをプレイヤーズ内でやってみて、回数を重ねておととい10回目だったんですけど、気づきの種類が本当に多いです。

タキザワさん
こうした質問って、普通は視覚障害者に困りごとを聞いたりして、問い詰めがちになることもあると思うんです。一度質問をされる側になったうえで質問をすると、質問の仕方も変わるんじゃないかと思いました。

中川さん
見えない当事者からも、自分たちから聞く経験があまりないので聞きたいことが聞けてよかったとか、気持ちが楽になったと涙する方もいました。自分から対話をリードする経験も、いままでと違う筋肉を使う良い経験になったという声もあります。

タキザワさん
メンバーの中でこの企画って何が価値なの?ってずっとディスカッションしてきたんですけど、これというのがなかなか定まらなかったんです。
ディスカッションをしていく中で大事だなと思ったのが、相互理解ではないということ。極論、理解ってできないと思っているんですよ。問いかけに対して答えがないかもしれない。そんな簡単じゃないと思うんです。けれどもそれについて立ち止まって考えてみる。答えが出ないかもしれないけど考え続けていく、その行為が大事なんじゃないかと感じています。言葉として表現すると、相互探索。お互いに違いを見つけ合いながら楽しんでいく、それが価値なのかなと思います。

ひらばる
障害者と健常者という二軸だけでもないですもんね。いろんなレイヤー、視点、関係性が交差していて、だから考えるきっかけをえられることに価値があるのだろうなと感じます。
ちなみに、問いを作っているのは、だれがどうやって?

中川さん
毎回3名ぐらいの視覚障害当事者の方が問いかけ役としてワークショップに参加してくれます。プレイヤーズ側から視覚障害の当事者に「こういう質問をしてくださいね」とは言っていないんです。基本的には、本人が一番気になっている質問を問いかけてもらっています。

ひらばる
参加される視覚障害者の数だけ、質問も変わると。

中川さん
はい。Zoomのブレイクアウトルームを3回するのですが、参加者に対して3回とも同じ質問をする人もいますし、話しているうちに他の質問をする人もいますし、いろいろです。

ひらばる
毎回問いが変わるから、何度参加してもいいですね。

中川さん
視覚障害といってもみんな同じではないということも知れる場になると思います。一人だけのことを聞くと、視覚障害者ってこういう人だと思ってしまうかもしれないですが、3人の話を聞くと、本当に視覚障害と言っても色々なんだなと気づいてもらえるので。

タキザワさん
今日はひらばるさんが、問いかけられてみるっていうのはどうですか?

中川さん
あぁ、この場でね。それはすごいいいかもしれない。

ひらばる
え! 問いかけ、られたいです(笑)

中川さんから問いかけられてみる!

中川さん
では。もし一年後見えなくなると分かっていたら、その一年間どういうふうに時間を使いますか? その瞬間にパタっと全盲になるということです。

ひらばる
準備期間が1年あると……。そしたらまずは、基本的な生活ができるためのベースを整えると思います。スマホの使い方、白杖での歩き方、それから音で情報を得られるいろんなツールを調べて使いこなせるようにしたいです。
それから私、ニンニクが大好きで味覚が狂っているので(笑)味覚を整えて、研ぎ澄ませたいかな。目を閉じても色々な味を感じられたほうがいいですよね。

中川さん
でも多分、見えなくなっても味覚は変わらない可能性大大大ですよ。街中歩いていてガーリックの匂いにつられてイタリアン入っちゃうとか。

ひらばる
あそっか(笑)1年で私の舌が高尚な舌になるのはあきらめたほうがよさそうですね。

中川さん
準備系以外で、やりたいことないですか? 一年間ずっと準備してるのもつまらないと思うんですけど。

ひらばる
並行してやりたいのは、見えなくなったらできなくなること、視覚でしか得られないことを記憶にストックしておくとかかなぁ。

中川さん
家族の顔をもう一回ちゃんと見て覚えておきたいという人も、これまでのワークショップでけっこういらっしゃいました。

ひらばる
子供は成長して顔も変わっていくので、さわることで違いに気づけるようにする感覚も身につけられたらいいかもしれません。あぁ、いろんな方向で考えられますね。
1年間ってけっこう時間があるので、いろんな葛藤や心の変化があるだろうなとか、できることもあるし、できないこともあるだろうし、ちょっと、思いを馳せました。

中川さん
じゃあもう一つ質問してもいいですか? 視覚障害者を恋愛対象や結婚対象として見られますか?

ひらばる
私は見れますね。

中川さん
それは、何か理由がありますか?

ひらばる
実際に障害がある人とお付き合いしたことがありますし、その人が好きだったら特性の違いはあんまり関係ないのを体験しているからかもしれません。もちろん不便さとか、できないこととかもあると思いますが、一歩踏み込むと、相手と自分の人間性との関わりの面が濃くなってくるので、そこは誰と付き合うにも同じなのかな、と。

中川さん
そうですね。では、最後の問いです。都庁やスカイツリーの形を言葉だけで説明してください。

ひらばる
形を言葉で。じゃあ、スカイツリーいきます。すっと長い。つんとしてます(笑)

中川さん
あのー、他にも塔っていろいろあると思うんですけど(笑)

ひらばる
ですよねー。スカイツリーは、いまのところ東京で一番高くて、スリムなんだけど先っぽがとんがっているんです。人が入ることができます。
あの、スカイツリーを詳しく説明できる人に取材に行って、それをシェアするというのはどうでしょうか(笑)

中川さん
ワークショップでその質問を受けた人は困ってましたね(笑)
とか高さとか場所とか、いつできたとか他との違いとか、大枠から細かいところまで説明できたらいいですけど、そもそもそこまで詳しく知らないとかね。

タキザワさん
スカイツリーとかって、僕たちは見た目で完全に覚えているじゃないですか。たとえば全盲の人にとっては、いまひらばるさんが話してくれた情報がすべてになることがあるんですよね。スカイツリーはそういうものなんだってインプットされる。

ひらばる
あー、そうか。さっきのは謝ったほうがいいかもしれない……。

中川さん
視覚障害者って、普段言葉だけの世界で生きているんですよね。

問いと対話はその後、生活に溶け込んでいく

ひらばる
問いかけてもらって、頭のいつもとは違う部分がヒリヒリしている感じがします。

中川さん
タキザワさんが言ったみたいに、正解のない問いをかけられるということだと思うんです。そういう意味で、このワークショップは単体ではなく、その後の生活に続いていくと思っていて、そこが僕はいいなと感じています。

ひらばる
内省しますよね。問いに対してぽろっとでてきた答えが、今の自分の価値観だったりするわけで。あとからじわじわくるなというか。今夜もあのときこう答えていれば、とかこっちの視点もあったんじゃないかとか、きっと考えると思います。

タキザワさん
ワークショップでシリアスな問いに、「頭の中では答えが浮かんでるけど、申し訳ない気がして言えなかった」っていう感想もあったんです。でも、言えなかったっていう体験をここでしたということにも意味があると思っていて。

ひらばる
問われたときに、誰も傷つけない答えにしたいという思いってあると思います。そう思う自分自身のことを知れるのもきっと探索ですね。

タキザワさん
ワークショップを通じて、障害者との溝や壁がよりくっきりとしたという感想もありました。おそらくその人は、壁を乗り越えられると期待してワークショップに参加して。でもむしろ境界線がはっきりしたというネガティブな感想でした。同時に、壁や溝があることが明確になったので、それをどう乗り越えるべきか考えられるようになったという言葉もいただきました。

ひらばる
答えがないからこそ、タキザワさん、中川さんにとってもワークショップをやるごとに気づきがありますよね。

中川さん
いつか、ここで得られたことを本にしたり、レポートしたらいいんじゃないかなということを話しています。

タキザワさん
100人とか大勢の視覚障害者から順番に問いかけ続ける音声コンテンツとかね(笑)

ひらばる
修行感、ある(笑)
いま、課題に感じられていることはありますか?

タキザワさん
ワークショップに参加できる人数を、視覚障害者3人と晴眼者6人と決めているので、どうスケールさせていくかという課題はありますね。

ひらばる
今後の展開もぜひ教えていただきたです。

中川さん
いろんな形があると思います。活躍の場を提示して広げたいと、視覚障害のあるファシリテーターを育てることも力を注いでいます。
企業研修としても提供していきたいと思っています。SDGsを推進する企業さんも増えていますし、まず問いかけられてから、次は自分たちが知りたいことを聞く、というセットにしたほうがより深まるんじゃないかなと思うので。
学生さんや子供たち向けにやったらもっと面白い対話ができるんじゃないかなとも考えています。そういう展開もしていけたらいいなと思います。

タキザワさん
聴覚障害者でもやってほしいという声もあります。それはそれでチャレンジしてみたいなと思っています。また、クラブハウスでもこのワークショップをやってみようと進めています。

ひらばる
これからの展開がまた楽しみです!
さいごに、ひらばるからお二人に「あなたにとってダイバーシティってなんですか?」という問いを投げかけたいと思います。mazecozeでの取材でいつもさせてもらっている、これまた答えのない問いです(笑)

タキザワさん
難しいのが最後にきたなー(笑)

中川さん
僕も固まってますけど(笑)

タキザワさん
そうですね、自分は中川さんと出会えたことにすごく感謝しています。障害がある人との出会いがこれまでなかったので、僕の知らない世界を教えてくれてたことに感謝しています。違いをお互い楽しむとか、どうしても壁とか課題はあるので、一緒に乗り越えていくというのがダイバーシティの楽しさだと思います。

中川さん
重たい問いですね。自分は問いかける側だけでいたかったです(笑)
ダイバーシティは日本語で多様性って言うと思うんですけど、そもそもみんな多様なのに、改めてこのワードが出てきてるっていうことだと思うんですね。
自分も視覚障害として、ダイバーシティというワードが出てきた時に関連する人だと思うんですけど、たとえば視覚障害が背の低い人と同じくらいの感じでダイバーシティと語られたらいいなと思っていて。それは自分の中で、視覚に障害があるということがまだまだ大変なこと、辛いことがあるなと思うからです。とはいえ、背が低い人だってそのことで大変だと感じている人はきっとたくさんいて。みんな大変だしみんな違うよね、というのが、ダイバーシティというものを聞いた時に感じたことです。

ひらばる
ありがとうございます。お話、とても学び深くたのしかったです。あっという間の1時間でした。

中川さん
ありがとうございました。クラブハウスで聞いてくれている人も、ありがとうございました。

ひらばる
そう、クラブハウスでも。みなさま、取材にご参加くださり、ありがとうございました!

「視覚障害者からの問いかけ」情報

オフィシャルサイト:https://toikake-blind.jp
PLAYERSのメンバーで視覚障害者でもある中川テルヒロ氏が、「視覚障害者は 健常者から質問される機会は多いが、逆はあまりない」「オンラインであれば 障害の有無に関わらずフラットに対話できる」という経験から、これまでの立場を逆転したワークショップを発案

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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