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Vol.12 CARAVAN Performers座談会-True Colors CARAVANの旅を終えて、それぞれにまかれた種-

平原 礼奈 │ 2022.11.15

※この記事は、mazecoze研究所が「True Colors CARAVAN」広報チームとして企画制作した“マガジン”を、当メディアにも転載するものです。True Colors CARAVANの開催と連動して随時連載いたします。

CARAVAN Performers座談会を開催しました!

こんにちは。True Colors CARAVAN広報の平原です。
10月23日(日)に最終目的地である別府へと辿り着いたTrue Colors CARAVAN(以降CARAVAN)。最終公演を終えて、ステージを彩ったCARAVAN Performersと、彼らを取りまく様々な役割のスタッフのいまの気持ちは?
東京→名古屋→広島→札幌→大阪→北九州→別府と7都市を巡った半年間に起こった“変化”とは?

ほっかほかの気持ちをみんなで共有する「CARAVAN Performers座談会」と称した意見交換会を、10月28日(金)にオンラインで開催しました。残念ながらタイミングが合わなかったメンバーもいるのですが、そこでの対話をレポートします。

CARAVAN Performers

CARAVAN Performers座談会 参加者

CARAVAN Performers
DAIKIさん、かんばらけんたさん、かのけんさん、Eriさん、HARUKIさん、徳永啓太さん、TOMOYAさん、NAGAさん、YU-Riさん
チームCARAVAN
森下ひろきさん(クリエイティブ・ディレクター)、伊豆牧子さん(演出・振付)、星野美咲さん(CARAVAN Performersマネージャー)、山小田安希さん(プロジェクトマネージャー)、そがべゆかさん(事務局)、平原礼奈(広報)
オブザーバー
True Colors CARAVAN主催 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 大塚千枝さん、横田紗世さん、田村武さん
情報保障協力
手話通訳者さん2名

CARAVANが終着して、いまの気持ち

別府での公演終了後、初めてCARAVAN Crewで集合写真(写真に写っていないCrewもたくさんいます)撮影:濱本英介

平原
約半年間のCARAVANが終わってまだ一週間経たない中ですが、みなさんはいまどんな気持ちですか?

かんばらけんたさん
いまの思い……長かったような短かったような感じですね。

DAIKIさん
半年間、今年のメインの取り組みとして駆け抜けさせていただきました。まだ終わった気がしなくて。来月もどこかに行くんじゃないかなっていうのが僕の実感です。

Eriさん
あっという間だったんですけど、その言葉で済ませられないくらい中身の濃い時間を過ごさせていただきました。始まる前は不安なことばかりでしたが、みんなとたくさん話し合っていろんな課題に取り組んでいった結果、自分の中で不安だったことがどんどん解消されていって、最後の別府では本当に気持ち良く終えられたのがとてもうれしかったです。

徳永啓太さん
僕は、やっと終わったって感じです。

HARUKIさん
終わって悲しい気持ちもあるんですけど、最高でした!

かのけんさん
最近は都内での舞台活動が多かったので、色々な地域にダイバーシティ&インクルージョンのことをパフォーマンスを通じて伝えに行く、というイベントに参加したのは初めてでした。訪れた地域にはどんな考え方があるのかなとかお客さまの目的は何だろう、など考えて参加する中で、新しい発見や学びがたくさんありました。

SOCIAL WORKEEERZ:YU-Riさん
私が参加したのは1回だけでしたが、ここまででこんなにあったかい集団ができたんだなぁっていう思いです。いまみなさんの表情を見ていて「やりきったんですね」って。各地域に種をまいて、これからは私たちだな、次に行くぞという気持ちでいます。
※SOCIAL WORKEEERZのメンバーは、CARAVANの各都市にリレー形式で参加してくれました

SOCIAL WORKEEERZ:NAGAさん
SOCIAL WORKEEERZとして出発式の恵比寿と名古屋に参加させていただきました。名古屋の時は「まだ始まったばかりなのにこれからどうなっていくんだろう」って(笑)でも、回数を重ねるごとに、たくさん言い合ったりぶつかることもあったからこそ、最終的には相手への思いやりを素直に行動に移せるようになったんじゃないかなって思います。

SOCIAL WORKEEERZ:TOMOYAさん
「種を花にしていく」というコンセプトのプロジェクトでしたが、広島で出演させていただいて、そこで出会った地域パフォーマーとも、熱い関係やストーリーがまだまだ続いています。これからもジャックと豆の木くらい、芽を伸ばしてきます!
それと「日本を代表するパフォーマーのメンバー、みんなかっこいいぜー!」って、いつもそう思っています(笑)

森下ひろきさん
僕にとってのスタートはこの半年間よりももっと前になるんですけど、何よりもパフォーマーのみんなもスタッフも同じメンバーでゴールできたことが一番うれしいですね。いまは無事に終わって良かったとほっとしている自分がいて、まだ寂しいというところまで気持ちがいっていない感じです。

伊豆牧子さん
障害がある人とパフォーマンスを作るというのは私にとって初めてのことでした。障害というよりは、新しい人と一緒にやるんだっていう気持ちでやってきました。
ぶつかることもあったり、時間をかけて進んできて、言葉にできないくらいの大切な時間をもらったなと思っています。これから生きていく中で、みんなからもらったものが自分の中でどんな風に変化していくんだろうって、いまワクワクしています。

星野美咲さん
今後もみなさんと、お仕事でもそれ以外でも、HARUKI含めてつながっていけたらうれしいなって思っています。

そがべゆかさん
事務局という立場で、見えないところでみなさんが普段感じていることを、私も一緒に感じさせていただいた時間でした。自分自身の今後の生活やライフワークにも関わるような1年になったと思います。

山小田安希さん
もともと福祉の勉強をしていたのですが、新たに学ぶことも多く、今後の企画につながる気づきをいただいたなと思っています。
あと、みんなと飲むお酒がめちゃくちゃ美味しくて(笑)CARAVANが終わってもこの関係を続けていきたいです。

CARAVANを通じて起こった変化

撮影:安彦幸枝 コピー:安藤寛志 デザイン:柿沼智恵

平原
CARAVANでの時間を通して、ご自身やチームに起こった変化があれば教えてください。

かんばらさん
僕個人として見ると、あまり変化はなかったかな。周りのメンバーは変わったなと思います。スタッフの方と、色々言わなくても通じる関係になったのが特に大きな変化でした。パフォーマーとしては、HARUKIにできることがどんどん増えていって、ステージ上での自信ある姿を見て、一番成長したなと思いました。

平原
HARUKIさんは、ヒューマンビートボックスだけでなく、いつしかコール&レスポンスやコラボダンスの振りも完璧に覚えてパフォーマーに混ざって踊っていましたね。

HARUKIさん
僕は、最初と最後の違いは、相談する回数が増えたことだと思います。北九州あたりから、悲しい時やうれしい時に相談ができたなって。その相談がないと、人は生きていけないと思うので。

啓太さん
北九州でいま感じていることを聞かれた時にも「人に頼る」というのを答えました。自分がどういう風に人に頼れるかが重要だと思っていて、それはどこまで相手に心を開示するかというのと一緒なんですよね。
僕も最初は何でもかんでも自分でやろうとしていたんですけど、CARAVANのパフォーマンスで「多様性とは」って伝えるだけじゃなくて、自分たちも頼り合うことをしなくちゃいけないんだなって。だんだんと頼れるようになったのは、個人的な心の変化でした。

平原
HARUKIさんの「相談ができるようになった」というのと、啓太さんの「人に頼る」という変化もつながっているように感じます。

DAIKIさん
初めはお互いにわからないことや、障害への配慮がないということへのぶつかりがすごくあったと思います。このチームでやっていくうえでドキュメンタリー番組ができるんじゃないかというくらいぶつかってくる中で、どんどんぶつかり方が柔らかくなっていって、純粋にお互いが得意なことや苦手なことを理解し合おうとする姿勢になっていったんじゃないかなと思います。そういう仲になれたことが、僕はうれしかったですね。

かのけんさん
「何をやるんだろう」というところから始まって、みんなと一緒に悩んで考えを持ち寄って話し合いながら進んできました。
ゼロから何かを作るというのは本当に久しぶりで、これからどうなるかわからない中で、自分の気持ちも交えて作品を作ったのは、今回が初めてかもしれません。そうした過程で僕自身の気持ちにも変化があったと思います。

NAGAさん
5月の名古屋の後、久しぶりに参加したのが9月のTrue Colors SPECIAL LIVEだったんですけど、なんかみんなの雰囲気が全然違うじゃんって。思ったことをふらっと言い合えていて、空気感がすごく良くなっているなって思いました。

森下さん
NAGAちゃんは一番ぶつかっていた名古屋を見ているので、よけいに高低差を感じるんじゃないかな(笑)

NAGAさん
めっちゃありましたね(笑)

TOMOYAさん
僕、はじめお手伝いで出発式前日のリハーサルに入らせていただいたんです。まだこれから振付を揉んでいくみたいな状態で、これで明日の出発式に立つというのを見ていて。その後、広島でのリハーサルに合流したら、雰囲気が柔らかく変わっていました。広島では大前(光市)さんがいてくれたこともあって、みんなの笑顔がさらに増えて笑いのある現場で良かったなって思います。

広島で、ゲストアーティストの大前光市さんと出演者で集合写真。撮影:鈴江真也

Eriさん
私もパフォーマーのチームワークが一番大きな変化だと思います。
それから出発式の夜に、スタッフのみなさんとの集まりがありましたよね。今回ラストの別府でもスタッフのみなさんとの打ち上げができて。半年間、毎月顔を合わせてきた方々なんですけど、そんなにお話しできていない方もいて「あのときこういうふうに動いていらっしゃった方だ」と感じられて。パフォーマー同士の関係性のさらに大きな輪で、CARAVANに関わっている方々との関係性にも変化があったなって感じます。

YU-Riさん
私自身の中の変化はシンプルで、地域パフォーマーや今まで出会っていなかった人たちと出会えて、関われる人の範囲が広がったなっていうのが大きいです。

伊豆さん
出発式の時はみんなが「どうなっていくんだろう」という感覚だったと思います。毎回新しい地域で活動する方々やゲストの方と何か形にしなくてはいけないというのもあって。どうなっていくのかなっていう手探りを繰り返す中で、みんなも変化していったなと感じます。
前日のワークショップのその時間でしかコミュニケーションがとれないけれど、一緒に時間を過ごすことをしっかりやって、そこから明日のステージに向かっていこうって。ライブ感、ナマモノ、それが好きだから私はこういう仕事がやめられないんですけど、CARAVANの人たちとも、それができたと思います。

別府でのリハーサル&ワークショップの一場面。撮影:濱本英介

平原
別府での前日リハーサルのとき、地域のパフォーマーの方が「はじめは不安だったけど楽しい!」「発見がありました」っておっしゃっていて。本番のステージだけではなく、CARAVANでは前日のリハ&ワークショップと2日間をかけることで起こる価値がすごかったんだなって改めて感じました。

森下さん
「こうあるべき」みたいなことをそれぞれが持っていると思うんですけど、その人にとってのあるべきと僕にとってのあるべきは少し違っていたりするんですよね。序盤はそれを押し付けあってバチバチしていたけれど、後半になってきて「いろんなあるべきがあるんだな」ってみんながわかってきた時に、このチーム変わったなって思いました。一緒に過ごしている中で「あるべきはないべきなんだ」って、許しあえるというか、受け止めるというか、そこに少しずつたどり着いていったと思います。

知らないの先の世界を知るために「関わる」こと

大阪にて、ゲストアーティストの「音遊びの会」のみなさんとのステージ。撮影:鈴江真

平原
それぞれにとっての変化は、みなさんが大事にしたい価値観だったり、社会や未来に届けたい意志だったりすると思うのですが、ここからは「私もこう思った」とか「自分はこういう視点で見ていた」などコメントをいただきながら、いま出てきた変化を掘り下げていきたいです。

森下さん
予測できないことが初めは怖かったんですよね。
障害のある人たちとはじめてステージをつくる。僕らがこれまでつくってきたやり方にはめた方がスムーズにつくれるんじゃないかって。でもことごとく予測しないことが起きて、これがみなさんに受け入れられるステージになるかというのもわからなくて……。
相手のことを受け入れられて、楽しめるようになってきたのが、大阪の音遊びの会さんのときじゃないかなと思うんです。HARUKIのMCもアドリブでのびのびしてて、パフォーマンス中に「これいつになったら終わるのかなー」って言ったと思うんです。僕もステージで何が起こっているのかよくわからない部分がたくさんあったのですが、何が起こるかわからないところまでを楽しめるようになって、2つくらい階段を登ったんじゃないかなって思いました。

DAIKIさん
名古屋まではどうしたら同じ方向を歩めるだろうって悩みました。一体これは何を伝えたいプロジェクトなんだろうっていうのが自分の中で落とし込めていなかったし。
そんなときにプロデューサーの森下さんや、テクニカルチームや主催のDITA(日本財団DIVERSITY IN THE ARTS)さん、スタッフのみなさんが声をかけてくれて、すごくあたたかい人たちに囲まれてやらせていただいているんだなって。
演者だけの関係性で、スタッフさんがかけ離れたところからやっているプロジェクトだったら正直僕、無理だった気がしていて。パフォーマーだけでなく、すべてのクルーのみなさんが、すごく近い距離にいてくださったおかげで、たくさんの人に支えられているのを感じられて、それが自分を変えたのかなって思います。だんだんと「こうしなきゃ!」から「こうしたい!」という意見が飛び交うようになっていきました。

森下さん
ひとことで言うと「関わる」ということだと思います。
今回のプロジェクトの背骨にはパフォーミングアーツという表現があるのですが、僕ら自身も、見に来てくれたお客さんも、演者とお客さんという関係じゃなくていかに関わることができるか、がCARAVANの魅力だったのではないかと。予想し得ないことも関わらなくてはわからないし、誰かの“あるべき”を超えてその人を受け止めるという事も関わらないとできないと思うんです。障害のある人のことも、関わらないとわからないなって思いました。関わることで知る、それが大事だなって今回すごく思いました。

それぞれの関係性と共に、パフォーマンスも進化していった

別府にて、ゲストアーティストの穴澤雄介さんとCARAVAN Performersのコラボダンス。撮影:濱本英介

平原
最後に、CARAVANで心に残っているエピソードや、これは知っていてほしいというお話など、ぜひお聞かせください。

Eriさん
私の中でHARUKIが大きくて。はじめのほうは具合が悪くなっちゃったりすることもあったんですけど、徐々にそういう時間がなくなって。みんなが積極的に、でもナチュラルに、いっしょにやろうよってコミュニケーションをとるシーンが増えていったと思うんです。
ステージで、かのけんが私にクラップをふるシーンがあるんですけど、最後の別府ではそれをHARUKIといっしょに返せて、出発式とは違うパフォーマンスの形を体現していて、隣で一緒にパフォーマーとして立てたことが最高だなってうれしかったです。

HARUKIさん
僕が忘れられないのはGOMESSさんのいる北九州です。歌の歌詞に意味が込められていて、感動しました。その勢いで自分のパフォーマンスも発散できて。GOMESSさんと一緒にやれたのが最高な北九州でした。

北九州にてGOMESSさんのゲストパフォーマンスステージ。撮影:濱本英介

啓太さん
僕、DJだけやるという契約だったんですけど、広島でマキさんから「振付の中に入ってほしい」と言われて入ったんです。それが良かったということで札幌でももう一回やりましょうとなって。いつもの通り僕が「何!?」って嫌がってたんですけど(笑)テコエくんに「一回やりましょうよ!」って口説かれまして、「じゃあやりますよ」って言った時に、かんちゃん(かんばらさん)が「啓太くんのところに行って絡むから」って言ってくれて。うれしいなって思ったんですけど。いざ僕がステージに上がった時、目の前にかんちゃんがいたんですけど、こっちを全く見ず、全く絡まず、ものすっごい綺麗に踊ってたんですよ。俺はね、かんちゃんの綺麗な踊りを一番近くで見てた(笑)

一同爆笑

その時のシーンがこちら!かんばらさんの表情と啓太さんの目!(笑)ゲストアーティストは田川ヒロアキさんでした。撮影:鈴江真也

かんばらさん
ね、俺そういうとこあるよね(笑)雨だったからね、雨さえなかったら絡んでたかなー。田川さんとの即興のステージが終わった直後でもあって、テンションが上がっちゃっていたかなー。それはね、申し訳ない。今後変わっていけるように頑張ります(笑)

画像:True Colors SPECIAL LIVEの記事より

TOMOYAさん
僕はNHKホールでやったTrue Colors SPECIAL LIVEがとても印象に残っていて。ILL-AbilitiesとMORIKOJAPANとのセッションだったんですけど、ダンスバトルの終わり方が決まっていない中で、「そのままやってみよう」みたいな空気になって、あのステージに乗っているすべての人の本来のパフォーマンスが120%くらい発揮されたなって思っています。その瞬間の多様性感というか、空気自体がクリエイティブだったし、ノーマライゼーションだったし、HIPHOPの力で成せたことだなと思って今日これを語るためにここに参加したくらいです。

ステージに上がる人、それを支える人、見に来てくれる人、現場にはいない人、みんなで創り上げた “True Colors CARAVAN”

いつの間にか子どもも参加して人数が多くなっている座談会

美咲さん
私もお話しさせていただいてもいいですか?
私が毎回HARUKIに同行できたのは、家で協力してくれた家族がいたからです。
いま私には一歳の息子がいて、遠征に行くために早朝に出発して泊まって翌日の深夜に帰る間、その他のリハーサルの時にも、母と弟と父とが家で子どもを見てくれていました。私は目に見えてHARUKIの手伝いをしているので、みなさんから「ありがとう」っていっぱいお声をかけていただいたんですけど、見えないところで家族が全面的に協力してくれていたから、HARUKIはこのイベントに参加させていただくことができました。
知的障害のある人がこうした大きな取り組みに参加するのは、家族総動員でなければ叶わないということを、頭の片隅に少しでも置いていただけたらうれしいなという気持ちでいます。

かんばらさん
状況は違いますが、うちも遠征中は、妻が子ども2人の面倒を見て、ワンオペでやってくれたおかげで成り立っていました。ありがとうございます。

平原
みなさん各地域に来るために、啓太さんも人より早く起きて準備をしたり、かんばらさん、YU-Riさん、美咲さんも小さなお子さんがいていろいろな調整をされたり、見えないところでそれぞれがたくさん無理をしていたと思います。そうやってやっと現地に集まれていることがあたりまえではなくてすごいことだなっていつも感じていました。

DAIKIさん
僕、障害者手帳がないんですよ。社会的には障害者としては扱われていないんですね。世の中には、見える配慮が必要な人だけではなくて、見えない心の配慮が必要な人って無限にいて。それで苦しんでいる人がたくさんいます。
僕はプロとして踊りにいっているので口には出さなかったんですけど、満員電車でリハーサル会場に行くのはしんどかったですし、重たいキャリーバッグを持って県外に行くのも、それだけで正直疲れちゃうこともありました。振付の中で、マキさんのペースだけで作ると僕には難しかったり、みんなの意見を取り込みすぎると追いつかなかったりとか、そういう部分もありました。
相手を知り切ることは難しいと思います。でも、マキさんが移動中にさりげない声かけをしてくれて後ろからカバンを持ってくださったりして。それぞれみんな、そういう歩み寄りがあったと思います。
見えるものだけ、聞こえてくることだけがその人の悩みで葛藤なのかっていうところを踏まえた上で、信頼関係を得て歩み寄れる人であってほしいなっていうのがいま伝えたいことですね。

伊豆さん
今回のCARAVANは、初めて出会う人たちばかりでした。
私はHARUKIが踊れることを知っていたので、ステージでも踊ってほしいなという気持ちが強くあって、でも突然お願いして慌てさせてしまうこともありました。「どうしても無理だったら言ってほしいけど、自分で頑張ってできると思ったら、他の人も一緒なのでやってほしい」と話をして。
啓太くんにもどこだったかな、「僕を信じて任せてもらった気がする」と言ってくれた時があって。そう言われた時に、自分自身が任せていなかった、押し付けだったんだなって気づいたんです。
私はこれまで自分の感情を押し殺して生きてくることが多かったんですね。自分の中でなんとかして解決しようと。でも、一人ひとり向き合って話すこと、相手が何を考えているか聞くことが大事なんだなって。
それを意識するようになって、自然と関係性が変わっていったのかなと思います。DAIKIがいつも言っていることなんですけどね、教えられました。ありがとう。みんな大好きです。

森下さん
これだけたくさんの多様な人と半年間、日本各地でともに時間を過ごしたわけですけど、この時間がぴたっとなくなって関わらなくなった時に、人って元に戻っちゃうと思うんですよ。だから関わり続けないといけないって。関わり続けたその先に障害のある人とかない人とか、ダイバーシティとかそういう言葉が消えていく世界があると僕は思っているので。それ自体を当たり前にしたいなと思っています。
今回は、CARAVANというプロジェクトを立ち上げさせていただいたんですけど、僕はここにいるみんなと関わり続けたいし、みなさんも出会った人たちと関わり続けることで、ダイバーシティ&インクルージョンが少しずつ日常化していくんじゃないかなと思います。ありがとうございました。

最後にみんなで指文字の「き」と「車」(CARAVANバス)の表現をかけあわせて作った「CARAVAN」の手話表現!

オブザーバーとして参加くださった
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS(DITA)
のみなさまからもメッセージをいただきました

田村さん
このフェスティバルでは半年も続くプロジェクトは初めてでした。この半年で、出演者もスタッフもDITAのメンバーも、みんなの視野がちょっと広がったと感じています。
続けることで、気づかなかったことにも気づいて、その気づいたことをやってみることまでできたので、それがこれまでのプロジェクトにはなかった新しいことかなと思っています。ここまで来られたことに、皆さんに本当に感謝しています。ありがとうございました。

大塚さん
CARAVANが始まってから、私は最後に参加させてもらいました。8月にやっと行けたときに、「自分の居場所はなかなかないだろうな」と思っていたら、場がとてもあたたかかったんです。途中から来たのに、居心地が良い場所にしてくださっていた。それがとてもうれしかったです。
別府ではもう、「ダイバーシティ&インクルージョンはもうすでにここにある」という気持ちになって、それが一番良かったなと感じました。仲間に入れてくださってありがとうございました。

横田さん
出発式の前のリハーサルにも参加して、そこから全ての会場を見させていただきました。
初めは、これまで別のプロジェクトでご一緒してきたバラバラにパワーのある人たちが一同に会していることに、ただただすごいなって圧倒されました。
出発式を終えて進んでいく中で、もともと私がそれぞれに抱いていたイメージとは違う、新しい一面や魅力を知ることができて、表情や関係性まで変化していく様子がすごく感じられて。みなさん自体がここでさらに変化していくなんて、当初思ってもいなかったので。それを目の当たりにできたことに、感謝しています。ありがとうございました。

True Colors Festival THE CONCERT 2022

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・⾔語・国籍など多様で、個性豊かな⼈たちと⼀緒に楽しむ「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」を、⽇本全国に広げる新たな取り組み「True Colors CARAVAN」。

全国CARAVANを終え、次は11月19日、20日に東京ガーデンシアターで開催される「True Colors Festival THE CONCERT 2022」へとバトンをつなぎます。
アメリカン・ポップの女王、ケイティ・ペリーさん、『ジャパニーズポップ』アイコンきゃりーぱみゅぱみゅさんが、世界12カ国の約100名のパフォーマーと共に多様性の祭典を繰り広げます。
出演者、チケット購入などの詳細は、下記リンクの公式ページをご覧ください!

True Colors FestivalTHE CONCERT 2022

取材・執筆:平原礼奈(True Colors CARAVAN広報チーム)
取材日:2022年10月28日

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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