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※この記事は、mazecoze研究所が「True Colors CARAVAN」広報チームとして企画制作した“マガジン”を、当メディアにも転載するものです。True Colors CARAVANの開催と連動して随時連載いたします。

True Colors CARAVAN、最終目的地の別府に到着!

こんにちは。True Colors CARAVAN広報チームの平原です。
2022年10月23日(日)にTrue Colors CARAVAN(以降CARAVAN)の黄色いバスは、大分県別府市に到着しました。これまで東京での出発式、名古屋、広島、札幌、大阪、北九州をめぐり、この別府が旅の終点、最終目的地です。

開幕直前、CARAVANの企画を中心となって推進してきたクリエイティブ・ディレクターの森下ひろきさんにいまの思いを聞くと、「途中でぶつかることもあったけれど、お互いのことを知って思いやりながら進んできて、いまようやく最後の会場に来られたのがすごく嬉しいです」とこれまでを噛み締めるように。
CARAVANを主催する日本財団DIVERSITY IN THE ARTSの大塚千枝さんは、「いままでの積み重ねを一緒に持ってここに来たなぁと感じています。人それぞれ違いはあるけれど、それを知り理解し合って一緒に居心地の良い場所を作っていきたいと取り組みを進めてきました。別府では誇らしい、素晴らしいものができるのだろうなと期待しています」とおっしゃっていました。
それでは“True Colors CARAVAN in Beppu”をレポートしてまいります。

“ミクストバス、ミクストカルチャー”の別府で。乙武洋匡さんと長野恭紘別府市長、日本財団尾形武寿理事長が登場!

ファイナルステージの会場になったのは、心地よい風が吹き抜ける別府市役所中庭の市民ひろばです。今回のCARAVANは大分県と別府市が後援をしてくださり、リハーサル会場から控え室まで別府市役所の会議室を貸していただきました。
休日の市役所を「どうぞ!」って開けてくださるなんて、あまりにオープンでウェルカムで逆にそわそわしてしまったのですが、このあと別府市長のお話を聞いて納得。別府市は多様性推進の先進地だったのです。

11時15分。開場すると、赤ちゃんから高齢の方、車椅子ユーザーや手話で話す方、隣の別府公園で同時開催されていた大分県農林水産祭「おおいた みのりフェスタ」に来ていた方などが続々と集まってきました。

11時30分。オープニングステージです。4月のCARAVAN出発式でみんなを見送ってくれた乙武洋匡さんが登場!

「最近、毎週のように友人が誰かしら別府にいて、自分の周りで別府がきています!」と話す乙武さん。

「こんな晴天のもと、開催できてうれしく思っております。今日久しぶりに別府に参りました。本当に楽しみにしていたイベントです!」と乙武さん。

2019年よりTrue Colors Festivalのアンバサダーを努める乙武さんは、コロナ禍でも “あらゆる違いを超えて、アーティストも観客もまぜこぜになって楽しむダイバーシティな芸術祭”をスタッフ一同、工夫しながら進めてきたことを振り返ります。

と、そこでなんと、スペシャルゲストとして長野恭紘別府市長と、尾形武寿日本財団理事長がご登壇!

舞台袖にいるときからにこにこ笑顔で観客や乙武さんを見つめていた長野市長。「ようこそ、世界の温泉首都別府へ!」と歓迎の言葉をいただきました。

乙武さんは、「今年4月に東京をスタートし全国7都市を巡ったCARAVANの旅は、ここ別府が最終目的地です。最後の場所に別府市を選んだのには訳がありました。それは、別府市がダイバーシティ&インクルージョンを考えるうえで、重要な、欠かせない都市だったからなんです」と続けます。

乙武さんに応えるように、「別府って、なんでもありの街なんです。もともと温泉は混浴。そして今は障害がある方も、世界で一番生き生きと輝いて暮らすことができる街だと思います。留学生も世界90カ国以上からいらしています。“ミクストバス、ミクストカルチャー”の街。ダイバーシティ&インクルージョンという言葉で表現しなくても、みんながそれを地でいき生活しているのが別府です。究極のダイバーシティでありインクルージョンなのかなと私は思っています」と長野市長。

日本財団が世界中の70の大学(日本では3校)に設置しているSylff(ヤングリーダー奨学基金)プログラムのうちの1校が別府にある立命館アジア太平洋大学だというお話や、リハビリテーションにスポーツを取り入れ1964年の東京パラリンピックで日本選手団団長も努めた別府市の中村裕博士のこと、そして中村博士が1965年に創設した「仕事こそが自立への道。No Charity, but a Chance !(保護より機会を)」という理念で企業等とのさまざまなコラボレーションも推進する「社会福祉法人太陽の家」など、出てくる出てくる別府市のソーシャルイノベーション!

長野市長は「キャラバンの最後を別府に選んでいただいて本当にうれしく思います。思い出に残る素晴らしい一日にしていただきたいなと思います。だれもが最高に幸せに過ごせる町、別府をこれから一緒に皆さんで作っていきたいです!」と締めくくり、会場を後にされました。

尾形理事長も、「お互い学び合いながら社会実現を加速させたい」と話し、11月に開催されるTrue Colors FestivalTHE CONCERT 2022の告知もされていました。

乙武さん、長野市長、尾形理事長、あたたかいオープニングをありがとうございました!
そして尾形理事長の「DJ啓太、ミュージックスタート!」という掛け声で、ステージはパフォーマーたちに引き継がれます。

CARAVAN Performers×地域パフォーマー「レッツダンスでガッツ元気の会」コラボステージ

12時。徳永啓太さんのアップテンポなDJがスタートし、CARAVANバスが中にいる人たちの動きで上下に揺れはじめます。そしてCARAVAN Performersがステージへ。みんな晴れやかな笑顔! 会場はもう手拍子で溢れています。

地元別府で活動する「レッツダンスでガッツ元気の会」のみなさんも元気よくステージへ。

「仲間やリーダーさんと一緒に踊ることが大好き。私たちには障害がありますが、元気に踊る力には自信があります。この元気を多くの方に見ていただきたい」と伝えてくれた「レッツダンスでガッツ元気の会」さん。

大分大学教育学部の教授でいらした麻生和江さんが24年前から主宰し、障害のある方と大学生をつなげ、ダンスや表現を共に楽しむ活動をしているパフォーマンスグループです。今日は20歳から55歳までの9名のみなさんが出演してくださいました!

前日に行われたリハーサル&ワークショップには、大分市で開催されたイベントへの出演直後に鮮やかな黄色い衣装のまま駆けつけてくれた「レッツダンスでガッツ元気の会」のみなさん。

出演者、関係者全員で円になっての自己紹介では、「踊ることが好き」「歌が好き」「音楽が好き」など、みなさんの好きなことを教えてくれました。

お互いを知り合うワークショップでは、くっついたり離れたり、目を見つめあったりそれぞれの表現で身体を動かしていきます。会場の熱気が高まり、みんなの笑顔が溢れていきました。

休憩中に「こんなに盛り上がると思わなかった! 他の人とコラボができて楽しいなと思いました」と話してくれた会のメンバーの真穂さん。愛璃さんも、美里さんも、「楽しかった!」と笑顔で教えてくれました。

ダンスを教えてみんなをリードする役割のリーダーさんも、「プロの方々と一緒にすると聞いて、私たちにどんなことを求めているのかなとか、どんなものをつくっていけるのかなと不安があったんです。でも、ワークショップをして、みんながこれまで見たことのないような動き、やったこともない創作をしていて。一期一会でこんなこともできるんだって。この時間を作ってくれてありがたいです。みんな踊る気です!」とお話ししてくださいました。

かのけんさんと息の合った即興コラボをしている麻生和江さん

主宰の麻生さんも、「私はみんなの今まで見たことがない姿を見たので、とてもうれしいです。発見がありました。超発見しました! みんなすごく楽しんでいます」とおっしゃっていました。

たった数時間の間に、みなさんの不安や戸惑いの表情が「安心、楽しい、もっと踊りたい!」に変化していく様子を目の当たりにして、リハーサル&ワークショップの時間の大切さを改めて実感しました。

CARAVANを語る上で欠かせない鑑賞サポート。日本語音声ガイドナレーターの船本由佳さん、手話通訳者さんも前日から参加して情報を集めたり伝えたりしたりながら、場を見守っていました。

場面をステージに戻しまして、ここからは「レッツダンスでガッツ元気の会」のショーケースです。今日は一人ひとり違うカラフルなTシャツで登場。

全力で表現するみなさんの少しはにかんだ笑顔がとっても素敵。舞台袖でCARAVAN Performersたちも踊っています。

次のTrue Colors ダンスバトルでは、これまでとは趣向を変えて、「レッツダンスでガッツ元気の会」のみなさんとCARAVAN Performersのミックスチームで楽しいコラボを魅せてくれました。

1組目の先攻は、テコエ勇聖さん&大地さん。それぞれの動きがいつしか同じ振りつけになり、即興の組み合わせ技も!

後攻はこーでぃーさん&雅美さん。エアボクシング風ダンスでテコエさんと大地さんを攻めまくります(笑)開場からは拍手と笑い声!

最後は4人が交わりながら。身体から溢れる自由な対話、伝わってきます!

2組目の先行はEriさん&世莉香さん。地面に手をついて転がったり足を伸ばしたり、のびのびと舞う世莉香さんに寄り添うEriさん。途中からは世莉香さんがEriさんの動きを吸収し踊りを変化させていく。目が離せませんでした。

後攻はかのけんさん&結衣さん。K-POPが大好きという二人のキレキレダンス。かわいい!

最後のラウンドはCARAVAN Performers対決、リーダーDAIKIさん vs. かんばらけんたさんです。

14歳でクランプに出会ったDAIKIさん。飛んで跳ねて回っていつも以上に激しく、感情が身体に乗って炸裂しています。太陽みたいな笑顔!

後攻、かんばらさんの車椅子を最大限に生かした唯一無二のダンスパフォーマンス。みんなをどう楽しませるかをいつも考えているかんばらさん、今日もこれでもかと魅せてくれます。

かんばらさん得意のウィリーに、DAIKIさんが駆け寄って。あー、ずっと見ていたい。

MCのテコエさんが「皆さんの心の叫び、熱い応援の拍手、ありがとうございました。バトルの勝敗は……決められませんよね。一人ひとり自分の色があってかっこよくて最高でした!」と締めくくります。

そして、CARAVANのお馴染み、会場にいるみなさんも一緒にコラボレーションダンス。

眩しい太陽に照らされて、種をまき、芽が出て、花が咲く。最後に両手を天に向けてひらひら揺らす手話の拍手も振り付けに組み込まれ、色とりどりの花が咲き誇る様子が目に浮かびます。

ステージから降りたかんばらさん、かわいいお客さまと。

「レッツダンスでガッツ元気の会」のみなさま、ありがとうございました!

ラジオから飛び出した対話の場SOCIAL LOCKS!課外授業。向井太一さんインタビューも

​​12時50分。CARAVAN を語る上で欠かすことができないSOCIAL LOCKS! 課外授業が始まりました。

この課外授業は、TOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」とTrue Colors Festivalのコラボコーナーとして昨年から放送されているSOCIAL LOCKS!が、ラジオから現実世界に飛び出した、というもの。

主に10代の多様な生徒(SCHOOL OF LOCK!ではリスナーさんのことを生徒と呼びます)から届いた悩みや相談の声に、こもり校長とぺえ教頭が耳を傾けそれぞれの考えを伝え合ったり、ゲストの方々と多様性について語り合う場です。

答えや正解ではなく、知ることから広がる道や安心できる居場所を考えていくようなリアルな対話の数々が、CARAVANの旅をさらに価値深いものにしてくれました。

別府でのSOCIAL LOCKS!課外授業の様子はこちらの記事(公開後にリンクいたします)をご覧ください。

今回、SOCIAL LOCKS!にゲストとして参加くださった、福岡出身のシンガーソングライター向井太一さんからもメッセージをいただいたので、ご紹介します。

シンガーソングライター 向井太一さん

―SOCIAL LOCKS !課外授業に参加したご感想をお聞かせください
トークセッションで人前に出ることがあまりないので、貴重な体験をさせていただきました。課外授業でのお話は自分に当てはまる部分も多くて、みなさんがおっしゃっていたように、心が軽くなるような気持ちになりました。
穴澤さんの「物事の見方を変えると世界が変わって生きるのが楽になった」というお話も、状況は少し違いますが、僕自身も今の職業を続けてきた中で、自分のことを疑ったりこれまでなかったコンプレックスに気づいたりしてつまずくことがあったんです。でも、考え方次第でそれすらも力に変えることができました。
乙武さんが最後に「いままでのことを否定せずに、新しいことを作り上げていく」とお話ししてくれた世界になったら素敵だな、自分もそういう風に考え行動したいなと思いました。たくさん学ばせていただきました。

―向井さんにとっての「居心地の良い社会」とは、どんな社会ですか?
安全な場所がある社会だと思います。それはどこでもよくて、学校や職場に無理やり居続ける必要もないし、自分の安心できる場所や安心できる人たちは、自分で選べるから。自己中と言うと悪い言葉に聞こえるかもしれませんが、自分自身を第一に考えるって人生を豊かにする上ですごく大事だと思うんです。そういうことをみんなが感じてくれるといいなと思ったし、感じている人たちがたくさんいるんだなって今日知ることができました。

ゲストパフォーマンスステージ、穴澤雄介さん×CARAVAN Performers

14時。本日のスペシャルゲスト、穴澤雄介さんのゲストパフォーマンスステージです。ヴァイオリン・ヴィオラ奏者、作編曲家、ラジオパーソナリティーとして国内外で幅広くご活躍の穴澤さんは、先日のTrue Colors SPECIAL LIVEや、6月にアゼルバイジャン共和国で開催されたTrue Colors Festival in アゼルバイジャンにも出演されました。

まずは徳永啓太さんのDJタイムからスタート。

バスのクラクションが鳴り、HARUKIさんとDAIKIさんによるヒューマンビートボックスとクランプダンスのセッション。

CARAVAN Performersも集合し、ステージ全体を使ったパフォーマンス。
今回初参加のこーでぃーさんは「SOCIALWORKEEERZのメンバーがつないでくれた思いを背負いながら多様性を地域に届けていきたい」と話してくれました。

そして、穴澤さんご登場!
まずは、CARAVAN Performersと一緒に音遊びをします。穴澤さんのヴァイオリンのリズムを手拍子で真似るPerformersたち。滑らかで早い演奏を手拍子に変換するのに苦戦している様子に、開場からは拍手が沸き起こります。

穴澤さんのソロステージ、1曲目は『伴に走る』です。
極上の音色、太陽の光を浴びながら聴く贅沢な時間にうっとり。

2曲目の『Sakura Sakura』では、音源を使わず「ルーパー」と呼ばれるその場で演奏を録音した音を重ねてループ再生する機械を左足で駆使しながら、右足にはタンバリン、そしてヴァイオリンを演奏する穴澤さん。器用すぎます。

かんばらさんも登場し、車椅子の上で逆立ちしたり回転したりと動きは激しいのですが、静かな音に寄り添うような繊細な表現に引き込まれます。

3曲目は『うちのわんこ』。穴澤さんが飼われていた犬をモチーフにした曲とのことですが、この曲がまぁーかわいくって!
穴澤さんはまず、ヴァイオリンの音色の特徴としてドレミファソラシド以外のいろいろな音が出せることを教えてくれました。「だから音マネも結構できちゃうんですよ」って、通り過ぎる救急車の音やレーシングカーの音を披露。びっくりするほどその音でした。

「目が見えないので耳と指の感覚を頼りに弾きながら、ヴァイオリンの特徴を楽しみ活かした作曲もしている」と話す穴澤さん。まさにこの曲も、途中で小型犬がキャンキャンと甘える鳴き声がヴァイオリンで表現されていたりして、楽しいー。穴澤さんの口笛も透き通るような音色で、自由自在に音を操る方なんだなぁと感じました。

「テレビの影響もあり、ヴァイオリンっていうとこの曲を思い浮かべる方が多いようです」と言って、『情熱大陸』のテーマ曲も、穴澤さん流のアレンジで演奏してくれました。

Eriさんとのコラボレーションです。穴澤さんの周りをしなやかに、時に凛々しく舞うEriさん。途中から何十回転と回り続けます。
「回転するのはいくらでも大丈夫なんですけど、靴が脱げそうで少し焦りました」ってステージ後にお茶目に笑って教えてくれたEriさん。ステージではそんな様子を微塵も見せず、天女のようでした。

5曲目は、『この星を歩こう』。演奏の前に、穴澤さんがお話ししてくれました。
「私は生まれつき目と心臓に病気があって、小学5年生までは見えていたのですが、心臓の手術をして視力が下がるようになり、高校に入る頃には白杖や点字を使うようになりました。その後、光も見えない状態になりました。
実は、私が障害児で生まれてくることはお腹にいるときからわかっていたんです。母が風疹にかかったので、お医者さんから“お腹のお子さんには障害があるかもしれません”と宣告されたそうです。
産むのを諦めようかという話もあったそうなのですが、父が“心臓も動いている状態であきらめるは、俺は気が済まない”と言い張ってくれて。そのおかげで私はこの世に生まれてくることができました。父の言葉がなければ皆さんともお会いできていなかった、そんな人間なんです。
障害があって、生きるのがつらいなと思ったことも何回かはありました。でも今は本当に、この障害をもって、障害者として生まれてきて本当によかったなと。幸せな毎日です。もし見えなくならなかったら、なにも人生の勉強をしない人間になっていたと思うこともあるんです。いまのこの身の上が、いまの幸せな毎日をくれたなと心から思っています」

「子どもの頃は運動制限があり50m走までしか走っちゃだめだったけど、3回の手術で今やフルマラソンを完走するまでになりました」と穴澤さん。

穴澤さんは、「この地球という星から1つ命をもらったことに感謝して書いた曲です。今日は地球への感謝に加えて、お集まりくださった皆さんへの感謝の気持ちも込めて弾きたいと思います」と続けて、演奏がはじまりました。

とてもあたたかい、優しいメロディーが流れ、胸がいっぱいになりました。
穴澤雄介さん、心に響くステージをありがとうございました!

最後は、穴澤さんとCARAVAN Performersのコラボダンス!

穴澤雄介さんインタビュー
-心の成長をくれたのは、障害だった-

今日CARAVANに参加して、とても楽しかったです。
いろいろな障害のある方が出演されていましたけれど、輝いている人たちばっかりでしたね! その一方で、障害などを気にして塞ぎ込んでいる方もたくさんいらっしゃると思うんです。そういう方たちにも届いたらいいなって思いました。
いろんな人にこうしたステージを見て勇気や可能性を感じていただきたいですし、同時に自分を認めたり表現したりする途上にある人たちもいっぱいいるんだよ、生き方もいく通りもあるよということも知っていただきたいなって、そんなところまで考えてしまいました。

「居心地の良い社会」というところでは、私はもうすでに居心地がいいんです(笑)
どうしてそうなれたんだろう、私はそう感じているんだろうって考えると、やっぱり自分の生き方が変わったからかなと思います。不自由なことや不便なことはもちろんいくつもあります。でも、周りにどうあってもらいたいかというよりも、自分がどう生きるかにシフトしてから、自分で居心地の良さを作ってこられたのかなと。

そういうふうに思えるようになったのは、自分が障害者になってからです。
私、見えていた頃ってすごくせっかちだったんです。でも、目が見えなくなるとせっかちが許されないないじゃないですか。電車のベルが鳴っていて、走れば乗れるというときでも、私は歩くのが遅いので間に合いません。
昔、見えなくなる途中の弱視の頃には、無理に乗ろうとして柱にぶつかって大怪我したりしていました。視力が低下してせっかちな自分が許されなくなってきて、それに慣れない頃はいちいち悔しがっていたんですけど、だんだんと「いいよ、乗れなくても。次があるし」と思えるようになったんです。
心の成長をくれたのは、私の場合はやっぱり障害でした。そうすると見える世界も変わってきて、同じものをそんなに悪く捉えなくて済むようになってきましたね。違うことをおもしろく感じられるようになってきました。自分が人と違うことを認められるようになったし、自分とは違うものも認められる性格になってきて。今は、違うものや知らないことに出会うのがすごく楽しみなんです。
そうした物事の捉え方や気持ちが広がっていくと、差別や偏見ってなくなるような気がしています。

フィナーレステージ。CARAVAN Performersからのメッセージ

穴澤さんを大きな拍手で送り出した後、CARAVANのフィナーレを飾る、エンディングセレモニーです。
CARAVAN Performers が登場し、一人ずつメッセージを伝えてくれました。

かんばらけんたさん
スタートした時は、全然違う身体だからこそおもしろい、というのをお客さんに感じてもらえたらと思っていたんですけど。3都市、4都市と行くにつれて、コラボする地元パフォーマーの方からも「こんなダンス初めて見ました、おもしろいですね」と言ってもらったり、裏方のスタッフの方に「かんばらさんとずっとしゃべりたいと思ってたんです」って言っていただいて。はじめはステージがお客さんに届けばいいなと思ってたけど、思ってもいなかったところまで届いたっていうのがうれしいです。

徳永啓太さん
今日はお越しいただきありがとうございました。プライベートな話をしてもいいですか? 10分前に知ったんですけど、愛媛県に住んでいる両親が、たまたまいま別府にいて、これから来るそうです。最後だし、いいことを言おうかなと思ったんですけど、今、混乱中です。親が来ます。

会場は爆笑。そしてこの後、ご両親も無事にいらしゃいました。フィナーレステージに偶然いらっしゃるなんて、すごい引き寄せ。

テコエ勇聖さん
人間っていうのは幸せに対して貪欲な生き物なので、現状に満足されている方はたぶんいないと思うんです。幸せに向かう力を一旦俯瞰して見て、現状に満足はしていないけれど、考え方をちょっと変えるだけで、伝え方をちょっと変えるだけで、変わることがあるんじゃないかなと思っています。見える世界が変わってくるのかなって。変わることを恐れずに、変化していくことを楽しんでいただけたらなと思っています。
最後に僕の好きなアーティストでこんな歌詞を歌っている人がいます。
“不可能なんてないよ、可能だらけさ。絶望なんてないよ、希望だらけさ(FUNKY MONKEY BΛBY'S『悲しみなんて笑い飛ばせ』より)”そんな言葉を胸に秘めながら、今後も頑張っていきたいと思います。皆さんも一緒に人生、頑張りましょう!

こーでぃーさん
多様性という言葉は10年前、20年前はここまで広がってなかったと思うんです。この取り組みでは多様性がある文化を広げるために、全国いろんなところにパフォーマーが集まって回ってきました。皆さんに受け取っていただいて、次の世代に、今ここにいるちっちゃい子たちに私たちが伝えていって、さらに多様性という文化が10年後、20年後、当たり前な世界になっていってほしいと僕は真剣に思っています。

Eriさん
このパフォーマンスを通して、ちょっとでも日々の生活の中で、ほんの少しの思いやりと、ほんの少しの優しさと、ほんの少しの気付きで、みんながとっても過ごしやすくハッピーになる。そういうきっかけを作れたら、とってもうれしいなと思っています。

HARUKIさん
ビートボックスにも表現というものがあって、僕にはそれは欠かせなくて、いろんな音や自然現象などが含まれています。自分の声を録音して自分の音楽を聴いたりしているんですけど、悲しい時と、うれしい時と、気持ちが音に集まってきます。うれしい時の音楽はうれしくなったりするんです。音楽は大切です。これからもビートボックスを頑張ります。

HARUKIさんはスピーチのときに、CARAVAN Performersのマネージャーとして毎回CARAVANに参加してくれた姉の美咲さんへの感謝と、家からいつも応援してくれているお父さん、お母さん、弟さんへの思いを伝えていました。この場にはいないけれど、たくさんの人に支えてもらってCARAVANが実現していることを、改めて教えてくれました。

次にかのけんさんは、手話とパフォーマンスを交えて。

かのけんさん
今回のCARAVANのテーマは、花です。たとえば、赤い花の種を買って植えてみます。芽が出て、膨らんで、花が咲いたら、青かった。でも皆さんは青い花を見て、「え〜!捨てちゃえ」とはなりませんよね。「まあいいんじゃない?」ってなるんじゃないでしょうか。そんなふうにいろんな色があっていいですよね。
私は耳が聞こえません。よく言われるのが、壁です。「壁を乗り越えたんだね」と言われます。でも、この壁は僕が作った壁ではないんです。なのに、僕が頑張って乗り越えるものなのか。そもそもどうして壁があるのか。この壁って何かなっていうのを、皆さんにも考えたり話し合ってみてほしいなと思います。そういうきっかけに、ちょっとでもこの機会がなるとうれしいです。

最後は、リーダーのDAIKIさんです。

DAIKIさん
全国に、僕たちの思う多様性の種をまきに来たんですが、各地を去った後も、みなさんがその種を受け取ってそれぞれの日常の戻っているのかなって考えるのがすごい楽しくて、ワクワクして。僕は、ここにいるすべての人の数だけ普通があるなと思っています。そもそも普通ってそういうことなんじゃないかなと思うので、それを皆さんに大事に思ってもらえたらいいなと。正直、終わりたくないです! やっぱり、だめですね……。僕は命を懸けて、こういう活動をしています。もう、これしか生き方が分かんねえっす。これで、僕は全か所で泣きました!

みんなに「ありがとう!」と伝えるDAIKIさん

DAIKIさん
……CARAVAN Performersのみんな。今日まで本当にありがとう。
個人的な話をすると、生まれつきやらなきゃいけない手術が去年の12月にありまして、その手術が決まった次の日ぐらいに森下さんから、「DAIKIくん、こんな企画やらない?」ってCARAVANに声をかけていただきました。6月復帰予定だったんですけど、それがモチベーションになって、リハビリを気合で頑張ったら、3月に現場復帰させていただきました。僕と一緒に演出・振り付けをした伊豆牧子さん、そして森下さん、お二人の声かけで、リーダーって何だろうとか、ただ舞台を作るのではなくて、エンターテインメントも言葉もパフォーマンスも届けたい。その先に感動があればいいなと思ってきました。
障害をもっているから感動が生まれるんじゃなくて、もっているからこそ自由って何だろうって戦い続けて、求め続けて、僕たちは今、ここに立っています。みんながいないと自分だけではできなかったので、リーダーとして務めさせていただいたこの半年間が、人生の中で誇りになっています。

今日来てくださった皆さまの、未来につながりますように。いろんな人いるんだなって、ただ、それだけでもいいですし、知ることを怖がらないでください。知るところから一歩目が始はじまると思うので。何かあれば、またどこかでつながれたらうれしいです。今日はありがとうございました!

「最後に、皆さんも一緒に!」とDAIKIさんの声かけで、観客席で見守ってくれていた穴澤さんも再登場し、みんなで最後のコラボダンスです。

バラバラなみんなが集まって、試行錯誤しながら全国を巡り、各地での出会った人々と響き合いながら練り上げられてきたステージ。お客様、スタッフからの鳴り止まぬ拍手の中で、CARAVANのすべてのプログラムが終わりました。

しっかりと心にまかれた種は、それぞれのタイミングで色とりどりの花を咲かせ、少しずつでも着実に「居心地の良い社会」を実らせていくのだと信じて。その過程も愛しみながら、私も日常に戻っていきたいと思います。
CARAVAN Performersのみなさん、お疲れさまでした!
CARAVANにご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

True Colors Festivalアンバサダー 乙武洋匡さんからのメッセージ

-4月の出発式で、「わくわく感と、今日無事に出発できてほっとした気持ち」と話してCARAVANチームを送り出してくださいました。そして最終地点となった別府にも駆けつけてくれて、CARAVANが終了したいま、どんなお気持ちですか?

乙武さん
ステージでのCARAVAN Performersの息がぴったり合っていて、DAIKIくんが最後のMCで「ぶつかってきたし、語り合ってきたし、その中で進みながらここまでやってきた」と話していた言葉と、あの一糸乱れぬパフォーマンスが重なり合ったときに「あ、これがCARAVANの本質なんだろうな」と思いました。
個性と言ったら平たい言葉になっちゃいますけど、あまりにでこぼこの大きなメンバーが一つのユニットになって、本当に大変だったと思うんです。それを観客から見て美しいパフォーマンスに仕上げてくれて。6都市、7都市と巡ってきたここまでの彼らの道のりを思うとじーんとくるし、これが僕らの目指している社会なんだろうなって、ぐっときました。

―乙武さんにとっての「居心地の良い社会」とは、どんな社会ですか?

乙武さん
「選択肢を増やそう」ということを、ずっと言ってきています。そこにこんな選択肢があったらいいよね、こういうオプションもあったら社会が豊かになるよね、もっと幸せになれる人が増えるよねというふうに、どんどん選択肢を増やしていくことが多様性、ダイバーシティなのかなと思っているんです。
そのためにはやっぱり「違いを認める社会」のあり方が大事なのかなと。一人ひとりが違ってあたりまえなんだとそれぞれが感じられたら、目の前にいる相手も、自分自身の居心地も良くなっていくんじゃないかなって。自分に足かせをはめていたのは実は自分だった、ということもあるので。一人ひとりが違っていいんだというメッセージは、自分をゆるめることにもつながるんじゃないかなと思います。

そして、True Colors Festival THE CONCERT 2022へ

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・⾔語・国籍など多様で、個性豊かな⼈たちと⼀緒に楽しむ「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」を、⽇本全国に広げる新たな取り組み「True Colors CARAVAN」。

全国CARAVANを終え、次は「True Colors Festival THE CONCERT 2022」へとバトンをつなぎます。CARAVANがスタートしたのは、新型コロナウイルス感染拡大によるTHE CONCERTの開催延期があったから。その間も止まらず全国にダイバーシティ&インクルージョンの種をまきつづけようという趣旨でこれまで各地を巡ってきました。

そしていよいよ11月19日、20日に東京ガーデンシアターで開催される「True Colors Festival THE CONCERT 2022」にはアメリカン・ポップの女王、ケイティ・ペリーさん、『ジャパニーズポップ』アイコンきゃりーぱみゅぱみゅさんが、世界12カ国の約100名のパフォーマーと共に多様性の祭典を繰り広げます。
出演者、チケット購入などの詳細は、下記リンクの公式ページをご覧ください!

True Colors FestivalTHE CONCERT 2022

これにてCARAVANの全行程が終了しました。でも終わりというよりは「次、なにしようか!」とそれぞれが未来を見ているようなわくわく感が漂う現場だったなぁと思います。
このCARAVANマガジンは、もうあと少し続きます!

取材・執筆:平原礼奈(True Colors CARAVAN広報チーム)
撮影:濱本英介(AcePhotographic)
取材日:2022年10月22日、23日

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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