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Vol.8 True Colors CARAVAN in Kitakyushuレポート!

平原 礼奈 │ 2022.10.05

※この記事は、mazecoze研究所が「True Colors CARAVAN」広報チームとして企画制作した“マガジン”を、当メディアにも転載するものです。True Colors CARAVANの開催と連動して随時連載いたします。

最終地点が見えてきた北九州、それぞれの思いを胸に

こんにちは。True Colors CARAVAN広報チームの平原です。
2022年9月11日(日)に、True Colors CARAVAN(以降CARAVAN)の黄色いバスは、福岡県北九州市に到着しました。4月の東京での出発式から名古屋、広島、札幌、大阪と巡り、ここ北九州へ。そして次の別府がCARAVANの最終地点となります。

終わりが見えてくるとなんともさびしいもので、この旅で作り上げてきたステージのどの瞬間も目に焼き付けたいという気持ちでこの日に臨んだのは、きっと私だけではないはずです。北九州ではスペシャルゲストのGOMESSさん、CARAVAN Performersのみなさんからも、いま感じていることを聞きました。3つの記事でお届けしてまいります。

CARAVANの物語はリハーサルからはじまっている

9月に入って少しは涼しくなったかと期待していたのですが、イベント当日は朝から強烈な暑さ。10時になり、リハーサルが始まりました。

常々思うのですが、このリハーサルがなんとも贅沢な時間なのです。
いまをときめく表現者たちが、初めての人もお久しぶりの人も混ざりあい、少しの緊張感とおだやかな雰囲気の中で本番に向かって理解を深めていく様子。
同時に、音や映像や動きを細やかに確認するスタッフさんたち。熱くなりすぎたステージを氷で冷やす人も。
みんな汗だくで真っ赤になりながら、でもなんとも心地よい空気が流れるのは、回を重ねるごとに積み上げてきた信頼関係あってのものだと思います。

“自閉症と共に生きるラッパー”GOMESSさんのリハーサルが始まると、みんなの意識がステージに集中します。「My name is GOMESS、よろしくどうぞ。なんかいい感じな、歌いやすいです」というマイクチェックの声さえもリズムに乗って人を惹きつけ、「すごない?」とざわめくスタッフたち。

前日に行われたリハーサルでダンスを披露するイマ☆タカ Dance Familyさん

パフォーマンスステージに出演してくださる、イマ☆タカ Dance Familyさんもいらっしゃいました。前日のリハーサルでみっちり3時間、自己紹介から身体を通してお互いを知り合うワークショップまでご一緒したみなさんです。昨日があって今日また会えると一段とうれしくなるのですよね、CARAVAN Performersと顔を合わせてにっこり。

前日リハーサルで緊張をほぐすワークショップの様子

「世界で活躍する方々とのコラボにメンバーも緊張していたのですが、リハーサルを通じて気持ちががっちり合わさり、みんないま、楽しさのほうが勝っています」と代表のイマ☆タカさん。

さらに今回は、True Colors SPECIAL LIVE応援サポーターのYouTuber 難聴うさぎさんが北九州にかけつけ、2日に渡ってCARAVANを取材してくださいました。

自撮り棒で撮影もしながらCARAVAN Performersを取材する難聴うさぎさん

>難聴うさぎさんによるレポート動画

今回のイベント会場は、「THE OUTLETS KITAKYUSHU」というショッピングモールの中にあったので、リハーサルの段階から買い物に来ていた方が足を止めて集まってきてくれました。とにかく暑いので、みなさんに配ったCARAVANうちわが大活躍。

日本語音声ガイド、手話通訳、日本語字幕など、鑑賞サポートチームも着々と準備を進めています。

1会場に関わるスタッフはおよそ100名。主催の日本財団DITAさん、制作、進行、設営、音響、事務局、PR、お客さまサポートなど、中には今日が現場ラストの人も、一期一会の人もいます。表に出ることはないけれど、CARAVANを支える人たちの存在が、“居心地の良い社会”に向かうステージを強力にサポートしています。

今日も絶対素敵な1日になる、と胸を高鳴らせていると、CARAVAN PerformersリーダーのDAIKIさんがふわりとやって来て、「リハの時点で泣きそう、全部泣きそうです」と呟いて去ってゆかれました。これまで全会場に雫を落としてきたDAIKIさん、今日も泣くの確定じゃん。
さあ、いよいよステージがはじまりますよ!

パフォーマンスステージ:子どもから大人までみんなの心に種を撒く

12時半。DJ徳永啓太さんの音楽が空間を包み込み、いよいよパフォーマンスステージ開演です。
音に合わせて黄色いCARAVANバスが上下に揺れ、「プップー!」とクラクションが鳴ると、CARAVAN Performersがさっそうとバスから降りてきました。何度見ても大好きなシーン!

HARUKIさんとDAIKIさんによる、ヒューマンビートボックスとダンスのセッション。

テコエ勇聖さん、かんばらけんたさん、かのけんさんの、爽やかでいて真似はできないポーズ!

風のように舞うバレエダンサーのeriさん。

SOCIALWORKEEERZよりYU-Riさんも初参加です。

「CARAVANは、全国各地にダイバーシティ&インクルージョンの種をまき、この街に、そしてみなさん一人ひとりの胸に、未来に、花を咲かせるプロジェクトです。今日、お会いできて本当にうれしく思います。楽しんでいってください!」
DAIKIさんが呼びかけます。

パフォーマーの気持ちが外へ外へと向かい、お客さまと一緒に楽しもうという気持ちが伝わってくる晴れやかなオープニングとなりました。

地域とつながるCARAVANで「知る」がひらく

コール&レスポンスからは、イマ☆タカDance Familyのみなさんもステージに上がって、ショーケースを披露してくださいました。

北九州一陽気な先生と噂されるダンサー・振付家のイマ☆タカ(今村貴子)さんが初めにソロで。

メンバー全員がステージに出てきて、踊ることが大好き、という思いが溢れるパフォーマンス!

「踊ればそこは劇場空間になる」をモットーに活動されているイマ☆タカさんは、CARAVANへのご参加について、
「お声がけをいただきCARAVANのwebサイトを見たときに、ダイバーシティ&インクルージョンへの思いが、私がしたいことにとても近いと感じ、出演を決めました。私自身、障害のある方と一緒に踊るようになって、とても愛しい存在になっています。もちろん一人ひとりに気遣いが必要になることもあるけれど、それ自体、それぞれが違ってひとまとめにはできません。その人を知ることで自分の世界も変わるんです。まずは知ることが大事で、そこからひらいていくものがあると思います」
とおっしゃっていました。

True Colors ダンスバトルでも、イマ☆タカDance FamilyとCARAVAN Performersが魅せてくれましたよ。

1組目の先攻は、音楽に合わせてお茶目に踊るテコエさん。パフォーマーたちもノリノリです。

後攻は、華の50代コジ☆コジさんと、ダンスが大好きな19歳のしんさんによるCARAVAN初の2オンです。

リハーサルでも「踊るのが楽しくてうれしい!」と言ってくれていたしんさん。テコエさんと踊りを合わせて、ほんとに楽しそう!

2組目は、YU-Riさんから。2児の母となり、仕事と育児を両立させながらさまざまな立場の人たちがダンスで繋がれる環境づくりを進めています。かわいいからかっこいいまで踊りの幅が広くて素敵!

後攻は、中学校1年生のまゆさんです。小1からイマ☆タカDance Familyに入り、お母さまによると、踊るのが大好きで楽しくて仕方ないとのこと。伝わってきてますよー!

最後の勝負は、DAIKIさんから、熱い思いが響いてくる渾身のクランプ!

後攻のしおりさんは、昨日は「緊張しています。でも、リハーサルでやったように、自分を表現しながら踊ってみたい」とおっしゃっていました。笑顔がはじけてとっても魅力的。

最後は会場のお客さまも一緒にコール&レスポンスをして、パフォーマンスステージが終了しました。この日、パフォーマンスステージは夕方にも行われました。みんなの体力半端ない。

イマ☆タカDance Familyのみなさま、ありがとうございました!

ゲストパフォーマンス:GOMESSさんの言葉が轟く唯一無二のステージ

14時30分、いよいよ本日のスペシャルゲスト、GOMESSさんのゲストパフォーマンスステージです。独特の思想、ライフスタイルでジャンルや体裁に収まらない多様な表現をし続けているGOMESSさん。

「なるべく水分とって、できるなら塩分もとって、体調、気を付けてください」とお客さまをいたわり、DAIKIさんからの紹介を受けて、
「あんなに陽気な紹介をされると、本当に太陽が……。気づきました? 僕が暑いからみんな気をつけてくださいねって言ったら、太陽がさっきより出てきたんですよ。こうやって生きてきたなと思いますね」とひとこと。
GOMESSさんの言葉は続きます。

「僕はね、今からただ、しゃべるだけ。頭の中に浮かんでいる言葉を、少しずつリズムに乗せてしゃべるだけです。
・・・俺は、なおまだ生きてる。人々の前に立ち、言葉をしゃべっている。ただしゃべっているだけだが、あれがラップと呼ばれるのか、あるいはこれが音楽といわれるのか、まだ俺にはわかりやしないが、俺は確かにこれは音楽だと感じながら、自分の中にあるリズムに言葉をのせて発した・・・
あとどれくらいの人生、続くかもわかりませんけれども、少なくとも今日という今日、たった今を謳歌できれば俺は、今日の勝者、そう信じ、今日も生き延びようと思います。今日は本当に暑いですけれども、びびって逃げたぜ、太陽も」

すると太陽が再びカーッと昇り、GOMESSさんを照らします。なんだか神々しくもある不思議な空間になっていました。

1曲目なので自己紹介を、と歌ってくれたのは、自身の障害を歌にした「人間失格」です。コラボするのはかんばらけんたさん。

かんばらさんは、これまで幾度となく共演してきたGOMESSさんと、CARAVANのステージに立てることへの特別な思いを語ってくれていて、大切にこの時間を踊っているのが伝わってきます。

曲が終わると、かんばらさんは手話で「ありがとう」と言い、GOMESSさんと拳を合わせてステージを降りて行きました。
2曲目は「夕」。

曲の終わりに続けてGOMESSさんが語りはじめます。

「My name is、僕はGOMESSっていう名前でラッパーだったり詩人だったり人間だったり。
・・・今日、俺なんぞのライブを見てくれて、どうもありがとう。ありがとう。1分1秒でもありがとう。なかなか九州でライブすることもあまりないので、精いっぱい生きたぜって、残して帰る。それが、見てくれる人が生きてきた、あるいは、今日生きていた存在証明になる」

3曲目の「し」ではDAIKIさんがステージに上がり、歌に乗せて感情を激しく表現するクランプ。

「DAIKI、かっこいいぜ、ずるいぜ。でも、頑張ってきたからああなってるんだよ。俺はダンスを何も頑張ってないから、ダンスができない。俺のほうがラップはうまいから、DAIKIより。そういうもんだ」とGOMESSさん。

4曲目は「カーテンのない部屋」、5曲目はGOMESSさんにとって大事な歌だと言う「伝説」です。伝説になりたかった少女の切ない歌詞とメロディーに合わせて踊るeriさんがただただ美しくて目が離せません。

6曲目の「Poetry」では、歌詞にはない今このときのGOMESSさんの言葉が差し込まれていました。

「俺は、透明だと思うんだよ。俺も、お前も。それを色として見せるのか、それは形として触らせるのか、それは音として聞かせるのか・・・全部俺は同じだと思うんだよな。違うけど。生きていくから。Life time you living 今生きるそれが歌になる」

そして最後は、CARAVAN Performersも全員ステージに集い、CARAVANのテーマソングが流れ、踊り出します。GOMESSさんはステージの端に座りその様子を眺めていたのですが、おもむろにラップを口ずさみはじめます。HARUKIさんのヒューマンビートボックスもかけ合わさります。
「True Colors ひとつとしてない同じ色 CARAVAN この旅は続く お前の道 俺の道 この旅で交わる。真っ赤な空とうるさい太陽に祝杯を」
……なんて贅沢な時間でしょう。

すべてのパフォーマンスが終わると、みんなで拍手をしあい、「ありがとう、ありがとう。生きてきたぜ、生きてきただろ」と伝えてGOMESSさんのゲストパフォーマンスステージは終了しました。

GOMESSさんには終了後にインタビューもさせていただいたので、ぜひこちらの記事もご覧ください。

GOMESSさん、ありがとうございました!

DAIKIさんからのメッセージ、よしあきさん&難聴うさぎさんインタビュー

この日のステージのラストは、DAIKIさんからのメッセージです。

DAIKIさん
「僕たちは、見た目も障害ももちろんですし、住んでいる場所、生まれた場所、育ち方、全部違います。ここまで本当にぶつかってきました。もう嘘偽りなく話させてください。それは、お互いの理解しあう気持ちだったり、どうしたらみんなで同じ方向に進めるかとか、本当にたくさん……」

「泣かないで!」ここでパフォーマーからの声援が入ります。

DAIKIさん
「いろんな方向にみんな思いが違って、本当にぶつかってきました。僕も、全員苦しいときがあったし、楽しいときだけじゃないです。ステージは楽しくするんですけど、楽しいことはラクじゃないって僕はいつも感じています。この舞台は本当に多くの、裏方とは呼びません、テクニカルチームやTrue Colors Crewとの方に支えられています。
次の別府がラストです。ここ北九州も、各地で出会った仲間たち、お客さま、一人一人ともお別れで、正直さみしいです。
明日からみなさまの日常に戻っちゃうんですけど、その中で、今日ここで起こったことを頭の片隅、心のどこかにしまっておいて、いつか思い出していただければと思います。
こうして僕しゃべっていつも泣いちゃうんですけど……。本当にこの仲間たちが大好きで、毎回出会う方たちが素敵で、楽しみでワクワクしていて。種を蒔いているって何度も言ったんですけど、その種を一人ひとり持ち帰っていただいて、でっかい自分だけの花を咲かせることを、僕らも楽しみにしています。また必ず再会しましょう。今日は本当にありがとうございました!解散!」

いつも泣いちゃうDAIKIさん。でも、いつも変わらず同じことを、同じ感度で心から語り続けられるDAIKIさんの存在あってのCARAVANです。

SOCIAL LOCKS!課外授業にゲストとしてご参加くださったよしあきさんと、True Colors Festival応援サポーターの難聴うさぎさんからもメッセージをいただいたので、ご紹介します!

>SOCIAL LOCKS!課外授業の様子はこちらの記事ご覧ください

よしあきさん

―SOCIAL LOCKS!に参加したご感想をお聞かせください
お話をするイベントが久しぶりで、しかも自分がこれまで知らなかったことについて知ることができたのでとても勉強になりました。対談の中で、自分にはなかったみなさんの考えを聴くことができて、もっと広い視野が持てたなと思えたんです。
見てくれたみなさんにもこうした情報が伝わっていったら、僕を含めみんながより生きやすい楽しい生活が送れるのかなと、すごく素敵な気持ちになりました。

―よしあきさんにとっての「居心地の良い社会」とは、どんな社会ですか?
自分に自信を持たせてくれる社会が大切なのかなと思います。
僕自身、置かれた環境の中でどんどん自信がなくなっていた時期もあって。でも周りの人の力で自信を取り戻してから、楽しく生きていけるようになり、物事もうまくいったんです。だからやっぱり自分に自信を持てる環境があることは重要なのかなって思っています。

難聴うさぎさん

―応援サポーターとして2日間に渡って北九州CARAVANを取材されて、いかがでしたか?
応援サポーターとして私を選んでくださったことが本当にありがたくて、期待に応えられるように活動していきたいです。
私は障害があってもみんなと変わらない、個性の一つだと思っています。たとえば髪の色や目の色のように、生まれ持った個性だから、みんな普通に接していいんだよというのを伝えたいです。
一人ひとりの方が目的に向かって、みんなを楽しませるためにがんばっているCARAVANでの姿を見て、ぜひ自分のYouTubeでも発信したいなと思いました。

―難聴うさぎさんにとっての「居心地の良い社会」とは、どんな社会ですか?
難聴をもっている私にとっての居心地の良い社会は、みんなの言葉がわかる世界です。その方法はなんでもあると思っていて、たとえばVRや字幕メガネで言葉が文字になって浮かんでくるとか、手話も言語として義務教育に組み込んでほしいですね。聴こえる人にとっても手話で会話ができると遠くにいても話せたり、静かな場所でも伝え合えたりすると思います。いろいろな選択肢を増やして、テクノロジーも進化して、言葉が理解しあえる社会になってほしいなと思っています。

北九州でのCARAVANを彩ってくださったみなさま、ありがとうございました!

True Colors SPECIAL LIVEにも出演! CARAVANは次の地へと向かいます

歌や音楽、ダンスなど、私たちの身近にあるパフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・⾔語・国籍など多様で、個性豊かな⼈たちと⼀緒に楽しむ「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」を、⽇本全国に広げる新たな取り組み「True Colors CARAVAN」。

あとは最終の地、別府を残すのみ……と思っていましたら、なんと9/22に開催される「True Colors SPECIAL LIVE」にCARAVAN Performersも出演するという情報が! CARAVANマガジンでも当日の様子をレポートします!

True Colors SPECIAL LIVE情報

そして全国CARAVANは、最終地点となる大分県別府市へ!

お近くの方もそうでない方も、2022年10月23日(日)にぜひ、遊びにいらしてください。

True Colors CARAVAN in Beppu詳細

取材・執筆:平原礼奈(True Colors CARAVAN広報チーム)
撮影:濱本英介(AcePhotographic)
取材日:2022年9月10日、11日

研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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