Hiroshima/Interview:ゲストアーティスト 大前光市さん -いまを感じ、世界が変化し、自分に近づいていく-
※この記事は、mazecoze研究所が「True Colors CARAVAN」広報チームとして企画制作した“マガジン”を、当メディアにも転載するものです。True Colors CARAVANの開催と連動して随時連載いたします。
Vol.5:True Colors CARAVAN in Hiroshimaステージレポート!
Hiroshima/Interview:ゲストアーティスト 大前光市さん ▶︎▶︎この記事
Hiroshima/Voice:広島に集ったみんなの心に咲いた花
True Colors CARAVAN in Hiroshimaのゲストアーティストとして、今日のすべてのステージに立ってくださった義足のダンサー大前光市さん。
大前さんが広島で感じたことは? 大前さんにとっての居心地の良い社会とは?
ゲストパフォーマンスステージが終わって、最後のステージに向かう合間の貴重なお時間をいただき、お話を聞きました。
目次
CARAVAN in Hiroshimaの感想は「熱い、ラク、楽しい 」
-今日広島で、True Colors CARAVANに参加されて、いかがですか?
大前さん
熱いし楽しい。純粋に楽しいですね。
かしこまってかっこつけず、素のまま出ればいいのですごくラクです。ギリギリ路線で遊びまくっています。
-ギリギリというか、超えている感じも(笑)見ていてとても楽しいです。
大前さん
もうちょっと切り込んでみようかな(笑)
-昨日はリハーサルにも参加されて、そこから今日まで。大前さんから、出演者と観客とスタッフとか、そうした境界線を感じさせない雰囲気が醸し出されているように感じています。
大前さん
リハーサルではI4Pのメンバーや、今回の舞台には残念ながら参加されなかった車いすダンスの方々も一緒に、和やかな雰囲気でしたね。
ここには上も下も先輩後輩もなく、その人だけ。それぞれの人たちが集まって、何も比べる必要もない場なので。
パフォーマンスで一緒の動きをするときも、普通は完全に揃えたりするけど、自分なりにアレンジしても「大前さん角度が違いますよ」とは言われないんですね(笑)コンセプトが違うから。それがすごくラクで、楽しいんです。
自分の外を感じ続け、場と融合して変化する
-大前さんは踊りながら見る人にずっと語りかけているかのようです。今日の舞台は、何を思いながら踊っていたのでしょうか。
大前さん
自分のソロの場合は、曲の世界観を目の前に出して、その風景を感じながら踊っています。そこに鳥が飛んでいるとか、空気の匂い、いまどんな場所にいるかとか。
-それは、広島で踊っているから変わってくるものでもありますか?
大前さん
あります。ちょっと変化しました。
踊りの中には夜の月を表すものもあるんだけど、昼間だし、太陽が見えてる(笑)広島暑いぜ、みたいな。もちろんそれで変化するわけです。
-そうした変化を大前さんはどう捉えていますか。
大前さん
楽しんでいますよ。そこにいったほうが正解なので。
振り付けをきちんと表すよりも、いま目の前にいる人を、あるものを感じているほうが正解だと思っています。そうしたら迷わないんです。感じる力を伸ばすということ。
みんなコンプレックスがあるとか、人と比べたりして悩むじゃないですか。だけど何かに没頭したら悩まない。踊りはそれができるんです。だから楽しい。
-トークステージでも「自分に近づいていく」というお話をされていました。それは、踊りながら内省していく感じなのでしょうか。
大前さん
基本的には外ですね。自分の中には入っていかないです。自分の頭を外に出していかないと表現にならないので。僕は、自分の外を感じられている持続時間のことを集中力というのだと思っています。
True Colorsはそれぞれの色。それ以上でも以下でもない
-大前さんはご自身を「義足のダンサー」と表現されています。躍るときにもいろいろな義足を使われています。大前さんにとって義足はどんな存在ですか?
大前さん
なぜあえて「義足のダンサー」と言っているかというと、それがただの特徴と捉える時代がやってきてほしいから。
今はまだ義足=ハンディキャップのダンサーのように捉える人もいるんですね。良い悪いもなく、ただの特徴。義足は義足でしょう。背が高いとか低いとか、髪が長い短いと同じ。そういう時代がやってきてほしいと思います。
True Colorsっていうのは、それぞれの色、そのまま、以上。みたいな。それ以上でもそれ以下でもなく、それぞれにしかない色があるということですよね。
義足も僕の事実。それを特徴としたほうが記憶に残せてキャッチーじゃん、そういうふうに考えています。
-大前さんの義足は光ったりカラフルだったり紙吹雪が出てきたりして、見ていて大興奮でした。
大前さん
オブジェみたいでしょ(笑)
今回のパフォーマンスも、あえてこういう特性がある人たちがいますと伝えているだけで、当たりまえのことを当たりまえのようにしようぜ、ということですよね。
特別な人たちが頑張っているわけじゃない。障害のあるなしではなく、みんな違う一人一人だから。
-次のパフォーマンスの時間が迫っています。そろそろ取材を終えたいと思います。
大前さん
1分前まで大丈夫。余裕っす(笑)
-すごい、あらゆる境界線がなさすぎて(笑)緊張はしないのですか?
大前さん
この舞台はしない。失敗してもなんとかなるやつ。どれだけ遊ぼうが(笑)
そして本当にギリギリまで取材に対応してくださった大前さん。
舞台上でもそうでなくても、風がビュービュー吹いているような、かと思ったら凪いでいるような、人を惹きつける魅力に溢れた方でした。
大前さん、ありがとうございました!
崇徳高校新聞部記者さんと大前さんの一問一答も一部ご紹介!
-大前さんにとって、ダイバーシティとはなんですか?
大前さん
ダイバーシティは、ふつう。名前の数だけ、それぞれがあるということ。
-パフォーマンスをするときに一番大事にしていることは?
大前さん
今そこで感じているときの感覚からくる感情、きもち。
風が吹いているのに風を感じなかったら、お客さんには共感されないし、目の前に私がいるのに何も感じていない、みたいになるから。
-高校生に伝えたいことはありますか。
大前さん
夢は形を変えて叶う。変化は進化だ。
夢を持っていても、叶わないかもしれない。でもそれをまずもっていることが大切。そのうちに段々と形を変えて、自分にフィットしていく。
そのためには、自分のものさしを定めて、自分にとっての価値を高めていくこと。それは感覚的なものだから、自分の感覚を大切にした方がいい。
僕もなりたかったダンサーとは違う形で自分の夢を叶え、夢を追い続けています。
大前 光市さん
交通事故により足を失った義足のダンサー
大阪芸術大学舞台芸術学科舞踊コース卒業
リオ・パラリンピック閉会式にソロ出演したことをきっかけに世間から注目されるようになり、第64回紅白歌合戦にて平井堅と共演、その後のNHKスペシャルにて特集される。ラスベガスにてJABBAWOCKEEZ『Jreamz』に出演など、舞台だけでなくテレビ、ラジオ、CM、GQなどのファッション雑誌やメディアへの出演多数。最近では、しながわ2020スポーツ大使、横浜2020文化プログラムプロデューサー、東京2020聖火ランナーも務めた。東京2020パラリンピック開会式にも出演。「ぼくらしく、おどる」(学研プラス)著者。
取材・執筆:平原礼奈(True Colors CARAVAN広報チーム)
撮影:鈴江真也
取材日:2022年6月18日、19日
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。