〈ほしいもの創出プロジェクト第1弾 最終回〉ガーミンジャパンさんに聞きました。Garminってどんな会社? Garminの活動量計やボディバッテリーってどんなもの? そして“Garmin友の会”についても……!
発達障害当事者ライター宇樹義子×mazecoze研究所
「ほしいもの創出プロジェクト」
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目次
思考実験の結果=“Garmin友の会”から、Garminさんへの取材が叶いました
こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。
多様性に光を当て、問いを立て、アクションを考えることからテーマオーナー(話題提供者)がほしいと考えるものを生み出そうとする「ほしいもの創出プロジェクト」。
これまで4回にわたって、テーマオーナーである宇樹義子さん(発達障害当事者ライター、mazecoze研究員)と、プロジェクトメンバーのくらげさん、ひらばるで、宇樹さんがほしいものについて考えてきました。
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そして、宇樹さんが提案してくれたのが、“Garmin友の会”というコミュニティのアイデアでした。
「自分の疲れを自覚するのが不得手な人も多い発達障害という特性に、Garminのウェアラブル製品に搭載されている独自の機能で、体力の残りやストレスのレベルを表示してくれるBody Battery (ボディバッテリー)がとても役に立っている」と言う宇樹さん。“Garmin友の会”は、その活動量計の情報をシェアしたり、役に立つ情報をアップしていくコミュニティです。
そこから「Garminという会社やBody Batteryについてもっと知りたい、“Garmin友の会”への感想も聞いてみたい」と考え、取材のお願いをしましたところ、なんとご快諾!
2020年6月に、オンラインでお話をうかがうことができました。今回はそのインタビューをお届けします。
Garminってどんな会社? GPSの世界的企業が生み出した生活に寄りそうデバイス
インタビュー参加者
●お話をうかがった人
ガーミンジャパン株式会社
コンスーマーディビジョン マーケティング部 熊山 康夫さん(写真右)
●取材に同行した人
当プロジェクトのテーマオーナー、発達障害当事者ライター、mazecoze研究員宇樹義子さん(写真左)
●インタビュアー
mazecoze研究所代表 ひらばるれな(カメラが起動せず声だけ参加…)
ひらばる
「今日は、ほしいもの創出プロジェクトでGarminさんについてうかがう時間をくださりありがとうございます」
熊山さん
「おもしろい話だなぁと思いました。記事を読んで知的好奇心をくすぐられました。ほしいもの創出プロジェクトの、対話を通じてものを作っていくアプローチがとてもおもしろいと思います」
ひらばる
「うれしいです! 私たちのプロジェクトの話をする前にまず、御社について教えていただけますか?」
熊山さん
「Garminは、1989年に技術者、研究者の2人がアメリカで起こした会社です。
現在設立から約30年経ちますが、はじめの15年ほどは、航空機や自動車、船などのGPSナビゲーションシステムで成長してきました。2000年代初頭のアメリカでは、車のナビの多くはGarminという状況まで拡大しました。
その後、スマホが出てきてカーナビの代わりになるようになった頃、車のナビゲーションから派生して、ナビを時計型にしてしまおうと新たに展開するようになりました。GPSで記録を取ったり、いろいろなデータが見られる時計として、ランニングや登山など用途も広がったんです。スマートウォッチという言葉自体が一般的になる少し前のことです」
ひらばる
「時代の流れに合わせて、ウェアラブル製品を展開されるようになったのですね」
熊山さん
「ここ15年ほどは、トップアスリートの方々に愛されるブランドになり、3年半前に日本の現地法人ガーミンジャパン株式会社ができた時には、アスリートの方々が進んでGarminを使ってくださる基盤ができていました。
そこで、もっと幅広い方にGarminのことを知っていただきたいなというのが現在取り組んでいるところです。
Garminといえばフルマラソンだよね、みたいな感覚がある中で、普段の生活が便利になったり、時短に繋がったり、日常から役に立てるデバイスでもあることをもっと伝えていきたいと思っています。
私はガーミンジャパン設立後広報としてその普及活動をしているので、その流れの中で今回のお話をいただいて、今日はうれしくてしょうがないんです(笑)」
発達障害のある人に役立っているうれしさと可能性
ひらばる
「取材をお願いしたときに、宇樹さんが書いたnote「発達系女子がハイテクガジェットで極限までライフをハックする沼にハマり、なぜか癒されちゃった話」の記事をご存知だとお返事をいただきました。どこで記事のことを知ったのでしょうか」
熊山さん
「公私にかかわらずGarminに関わるいろいろな情報を目にする中で、宇樹さんの記事を知ったのは本当に偶然でした。通勤の電車でTwitterを見ていて、あ、Garminと」
ひらばる
「記事を読んだご感想は?」
熊山さん
「Body Batteryが発達障害のある方々に役立っているというのは素直にうれしかったです。誰に、そしてどんな行動を起こすことに役立っているということが実感できたのが大きいですね。
Garminのウェアラブル製品には、体の中をデータで知ることができる様々な機能が搭載されています。Body Batteryもその一つで。私も普段Body Batteryを見ていて、仕事で怒られると減るなぁとかは何となく感じていたのですが(笑)
でもそれを見て、自分が何か次の行動を起こすということは直接なかったのですが、数値によって休憩を取るなどの具体的な判断基準になっているんだと。当初から発達障害のある方をターゲットに作った機能ではありませんが、新しい使われ方や価値の置き方をされていることに発見がありました」
ひらばる
「プロジェクトメンバーのくらげさんも、“これまでは休みといえば土日だったけれど、Body Batteryを見ることで体の状態に合わせて休みをコントロールするようになった”と教えてくれました」
熊山さん
「最近、発達障害についてのお話がメディアなどでよく取り上げられていますよね。もちろんメディアで取り上げられる前から発達障害をお持ちの方はいらっしゃったのですが、社会的な関心ごとになっている中で、Garminとしてもお役に立てそうだというのが嬉しいです。何か新しい可能性を感じています」
Garminの活動量計、Body Batteryの魅力
ひらばる
「Body Batteryについても教えていただきたいです。Garmin vivosmart4などに搭載されているGarmin独自の機能であるBody Batteryが、宇樹さんにとっては体調管理のために必要不可欠な存在になっているんですよね」
宇樹さん
「vivosmart4を使い始めたのは、2019年の10月くらいかな。くらげ君が、とにかくBody Batteryって機能がいいというからGarminのものを買おうと決めていて、その中でもいちばん軽くてしなやかだったのがvivosmart4でした。感覚過敏がある自分にもつけやすいことがわかって、これ一択でしたね」
熊山さん
「Body Batteryは、普段の生活の中で自分の体の状況を知り管理するのに役立つ機能として、2年ほど前に生まれました」
ひらばる
「熊山さんは、この機能をまだ知らない人に説明するとき、どのようにお話しされていますか?」
熊山さん
「詳しい説明はwebサイトの“Body Batteryのよくある質問”や製品情報にも記載されているのですが、自分が説明するときには、ひらたく言ってしまうと、RPGゲームのヒットポイントです(笑)」
ひらばる
「それ、前に宇樹さんも言ってました!」
熊山さん
「なぜヒットポイントかというと、どれだけ筋肉隆々でその人のレベルやポテンシャルが高くても、エネルギーが枯渇してしまうと動けなくなってしまったりしますよね。Body Batteryはそれを測る指標だと言えば、説明しやすいかなと思っています。自分の総合的なエネルギー燃料、そういうものだと思います」
宇樹さん
「体の電池残量かな。100が一番高くて、たぶん5以下にはならない。5になるとあと一発殴られたら終わりみたいな(笑)」
熊山さん
「生き返れなくなっちゃうので、5で一応ストップみたいな(笑)」
宇樹さん
「私は薬などを調整して、前日によく寝られると、朝起きたら100になってます。だいたい日中に神経を消耗しちゃって、寝る時には25を切ってることが多いかな。私の体感だと、数値が25を切るとかなりぐったりします」
ひらばる
「25を切るとつらいとか、自分の中でのイエローカード的な数値感があるということですよね」
宇樹さん
「そうそう。それがどの程度普通なのかはわからないけれど。私の場合、昼までに50を切っていると結構やばい、昼寝しないとなとか。でもその場合は、昼寝してもなかなか休息状態にならないことも多いかな。
やっぱり夜の睡眠は大事で、特に寝始めてすぐの深い睡眠時間が重要だなというのは、Garmin Connectのログを数日単位で見続けていくうちにわかってきます」
熊山さん
「睡眠の専門家の方から、寝た後90分が深い睡眠だと良い睡眠が取れているというお話を聞いたことがあります。それがBody Batteryの回復具合にも関係しているのではないかと」
ひらばる
「テクノロジー的にはどのようになっているのでしょうか?」
熊山さん
「詳細のアルゴリズムは対外的には公表できないのですが、ただ、この裏側の緑色になっている心拍の動きで、心拍が上がったり下がったりする変動の幅からいろいろなデータを入手しています。
睡眠の質もそうで、流れている血流の変化を元データ、Garminが独自に開発したアルゴリズムから数値が抽出されています」
健康のためにGarminにできることを情報発信
ひらばる
「いまこの状況の中で、“Garminが健康のためにできること”という情報の発信にも力を注がれています」
熊山さん
「これまでも日常のヘルスケアとしてご活用いただきたいという思いで進めてきましたが、現在はさらに、自分の体は自分で気をつけなければと言う意識が高まっていると思います。でも、健康意識はあっても、それが直接スマートウォッチへの関心へと結びつきにくい人ももちろんいらっしゃるので、こういうことを知ることができますよ、というのをまとめてお伝えできればと思いました」
熊山さん
「睡眠の質を高めましょうとか、心拍数の変化を見ながら運動の負荷を考えましょうとか、どこに気を使えば数値がよくなるのかという視点でまとめています。
すごく不安だと思うんですね、自分が今どんな状態なのか。それをデータで表すことで、客観的に自分をすることができる部分で、Garminがお役にたてるんじゃないかという思いでいます」
“Garmin友の会”についてGarmin熊山さんのご感想は?
ひらばる
「さいごに、ほしいもの創出プロジェクトについても少しお聞かせください。
“IT”というテーマで宇樹さんが提案してくれたのが、フラットな関係性の中で、Body Batteryの情報をシェアしたり、コメントしあったり、役に立つ情報をアップしていく“Garmin友の会”というコミュニティでした。こちらについてご感想をいただけますか?」
熊山さん
「まず、“Garmin友の会”ってすごくいいなと。そして、Garminの人間としては、とても嬉しいネーミングだなと思いました(笑)
実は、コミュニティという意味では、Garminってこれまでも、人と人との会話がGarminを支えてくれているという歴史があります。Body Batteryに限らず全般に言えるのですが、口コミや人とのつながりの中で、コミュニケーションをしながら機能を活かしてもらっているんです。
たとえば、ランニングでどんなメニューを組めばいいかとか、負荷をどれくらいにしたらいいのかなど。デバイスだけでは完結できない部分を、コーチや仲間や人との対話の中で補い合うという関係性が、なんとなくできているんです。友の会のように言語化はされてきませんでしたが、実は昔からあったコミュニティでもあったのかなと思いました」
宇樹さん
「実際、私自身もくらげ君からの口コミで知りましたしね。情報の末端に自分もいたわけで」
熊山さん
「Body Batteryについては、時計のバンドからはなかなか想像しにくいところがありますよね。自分の活動とデータを照らし合わせることでその魅力をようやく実感できるというか。使っていただいてじわじわわかってくる機能だと思うんです。
今回、発達障害のある方が使ってくださっていると。社会生活をする上で、ご苦労も多くある人たちに、Body Batteryが役に立っていて、そしてそれをつなげるコミュニティがあるというのは、すごいポテンシャルを感じています。データをとっていただいた人のリアルなコメントがあってこそ魅力をより発揮できる機能だなと思いました」
ひらばる
「今日は、たくさんのお話をうかがうことができ、とても勉強になりました。ほしいもの創出プロジェクトの第1弾は今回で終了になるのですが、最後にご感想をいただけてうれしかったです」
熊山さん
「発達障害のある人にもひとつの選択肢として活用いただけることと、新しい形でGarminを知ってもらえること。全方向に良いことが起こるなと感じています。
この取材に限らず、お役に立てることやご相談したいこともあると思いますので、これを機によろしくお願いいたします」
宇樹さん
「ぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございます」
編集後期
今回、Garminさんにお話をうかがうことができて、“Garmin友の会”のようなコミュニティが、実はこれまでのGarminの歴史の中でも脈々と受け継がれていたことを知りました。
本当に良いものは、人が媒介しながら伝わり広がっていくのだなぁと感じています。
取材が終わって、秒でvivosmart4を注文しました。
この数ヶ月、Garminな日々を送っています。
これまで「痛いとか熱があるとかではないんだけど、なんとなくだるい、体調悪いなぁ……」と思っていたのと同じ身体感覚のときにBody Batteryを見たら8でした。
体の声を無視してきたことに気がついて、以前よりも意識して休息をとるようになりました。いまは、1日のはじまりと終わりにBody Batteryの数値をチェックして、その日を振り返ることが日課です。
私の場合、ストレスレベルが高いときにがくーんと数値が下がるので、そんな日は自分をいたわり、逆に寝る前でも30以上あればほくほくしながら夜更かしします。
自分の体のことを客観的に伝えてくれるGarminに安心感と癒しを感じ、いまでは相棒のような存在に!
「ほしいもの創出プロジェクト 第1弾 発達障害当事者ライター宇樹義子×mazecoze研究所編」では、ITをテーマに宇樹さん、くらげさんと対話をしながらプロジェクトを進めてきました。
機能のアイデアに行き着くのかなと思っていたら、出てきたのは、“Garmin友の会”というコミュニティ。宇樹さんの感性の素晴らしさを感じました。
今回の思考実験は、さまざまな状況の中、実証には進まずアイデア段階で着地することになったのですが、いつかどこかで時が来て、フラットに支援的に発展させていく関係性を育むことができたら素敵だなと思っています。
そして、ほしいもの創出プロジェクトは第2弾へ。
またご報告します!
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。