「だれでもクリエイティブ」プロジェクト始動!
だれでもクリエイティブ
クリエイティブ・ディレクター田中淳一さんの感覚感性を分解し隊
●すべての記事を読む
目次
クリエイティブは、ものがたりづくり!?
こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。 みなさんは「クリエイティブ」という言葉からどんなイメージがふくらみますか? 辞書を引くと、創造的、独創的などと出てきますし、広告やデザインの仕事では、制作物やコンテンツ、またそれを作る人の職能(デザイナー、コピーライター、イラストレーター、フォトグラファーなど)や部門のことを言ったりしますよね。 ほかにも、オシャレでセンスよくてユニークでカッコいい感じ(私のざっくりとしたイメージ笑)などなど。 仕事や暮らしの中での接点によって、クリエイティブの捉え方は人それぞれかもしれません。 そんな中、「クリエイティブは、ものがたりづくり」だと言う人がいます。 国内外の広告業界ど真ん中から地域へと繰り出し、全国各地の土地や人や自治体の魅力を発信しているクリエイティブ・ディレクターの田中淳一さんです。おいしそうなごはんとうれしそうな田中さん
私がふるさと松山の友とおもしろいよねーと話していた松山アニメ“マッツとヤンマとモブリさん”も、マッツとヤンマとモブリさんポスター(画像提供:POPS)
トメさんの演技に夢中になった“Go!Hatto登米無双”も、登米無双2ポスター。2も出ていたとは!(画像提供:POPS)
おもしろいなぁと思っていたあれもこれも田中さんのお仕事でした。 田中さんがこれまでクリエイティブ・ディレクションで携わった地域は、2020年4月現在、33都道府県以上にものぼるのだそう! そしてなぜでしょう。作品を見れば見るほど、田中さんを通して表現されるものに、やさしい眼差しを感じます。 「高校時代によく行った店がでてるー」とか「これが松山の方言だよ」とか、思わずシェアしたくなっちゃうくすぐったさも。 初めてお会いした田中さんは、クリエイティブを生業にする人の楽しさ知識の深さをビシバシ感じながらも、落ち着いていてどこか掴みきれない透明さを感じる人。そして服が派手でした。 「⽇本の地域は“ものづくり”においてとても⾼い素養を持っていて、これからの国内、海外マーケットにおいて⾼い可能性を秘めていると思います。 でも、地域に圧倒的に不⾜しているのは“ものがたり”。それは、⾃分たちのモノを“ものがたり”にして伝えていく発想や意識、スキルなんです」と田中さん。 個性豊かな地域の資源に、さまざまなクリエイティブ視点をかけあわせることで “ものがたり”が生まれていくのだと。それは、地域の多様性×クリエイティブの多様性。えー、おもしろい!地域のものがたりづくりをみんなの手に
ここで出てきたのが、田中さんが語られている地域ってなんだろうという「?」です。 田中さん「広告代理店から独立してPOPSという会社を立ち上げる時に、Creativity for Local, Social, Globalというスローガンを掲げました。 僕の中の地域とは、英語でいうlocalのことです。日本語には“地方”という言葉もあるのですが、それは“中央”に対する対義語みたいなニュアンスがあって。英語のlocalだと、地元の、とか、ある特定の地域の、を意味して、いわゆる田舎、というニュアンスはないんです」 私、これまで地域も地方も意識せずに使っていました。だから「東京と地域」みたいな対比の感覚があったり。だとすると、田中さんの見方では、東京も地域の一つということに? 田中さん「東京は大き過ぎてlocalという概念は当てはまらないけど、例えば、高円寺はlocalだと思うんですよね。地元は? と聞かれて東京と答える人はあまりいなくて、東京の人でも、中野とか、北千住とか答えますよね。そんな感覚です。 ぶっちゃけ、僕の中では東京というくくり以外で地元を示す土地を地域と呼んでます。結局の定義は、東京ではないってこと?(笑)」 なるほどー! だれにとっても暮らしている土地だったり出身地だったり、それぞれの地域をもっていると思うと、何気なく使ってきた地域という言葉に親しみがわいてきますね。 地域の仕事を進める中で田中さんが課題に感じるようになったのが “クリエイティブ格差”だといいます。 田中さん「これまで、都会や⼤⼿企業だけがクリエイティブ資源の有⽤性を知り、ノウハウを活⽤してきたと思います。自分は、そのことに対する後ろめたさがあって。ものがたりを作れるクリエイティブの力を地域や個人がもつと武器になる。それを知ってほしいし、クリエイティブが多様に使われる機会をつくっていきたいんです」 そうした思いや、近年の地域でのクリエイティブ⼈材需要の⾼まりもあり、田中さんは各自治体で、地域クリエイターを養成する講座の先生もされています。「おおいたクリエイティブ実践カレッジ」のクリエイター等養成講座
田中さん「全国の⾃治体や地域企業と仕事をする中で、彼らが求めているのは、現状を把握するための視点の持ち⽅、コンセプトの開発の仕⽅、そしてそれらに基づいたアウトプットまでの道筋だと気づきました。自分は着想と企画と定着と言っているんですけど、そうしたことを時間をかけて共有していくと、みなさんどんどん変わっていくんですよ」 田中さんは一人しかいないけど、田中さんの思いやスキルを地域の人に伝搬していけば、ものがたりが次々と生まれ広がっていくのですね。 ものがたりは心地よい消費やコミュニケーションを生み出すこと。 「いま生きている時代は自分で楽しくしたい」。ものがたりづくりの先に、田中さんが大切にされている理念があることも教えてくれました。田中さんの感性感覚を分解したい!
話は少し戻ります。 田中さんをご紹介くださったのが、太陽のように煌くPRパーソンで日本各地で地域と食のプロジェクトを展開していて私のことをねえさんと慕ってくださる福留千晴さんでした。 そもそもは福留さんが田中さんと書籍の企画を進められていて、その書籍の内容こそ、田中さんが目指されている「クリエイティブ格差を埋めるための、ものがたりづくりができる人材を創出する本」だったのです。 お話をうかがって、「出版社、どこかいい出版社……」とぼんやり考えているタイミングで、かの有名な書籍『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』をプロデュースされた、英治出版の下田理さんと8年ぶり超偶然に再会! 英治出版さんはソーシャルイノベーションや経営、スキル、キャリアなどのジャンルで素晴らしい本をたくさん出版されているし、ティール組織は福留さんの愛読書だと言っていたし。 これはもう、とりあえずみんなで会おう! 企画の持ち込み会議をセッティングさせていただくことにしました。たぶん下田さん、私のこと極うっすらとしか覚えていなかったと思う。でもすぐに日程を調整してくださって、本づくりの人の好奇心と包容力ってすごいなーと感動しました。右から下田さん、福留さん、田中さん。 福留さん、ふせんびっしりのmy『ティール組織』持ってきちゃってる。
2020年2月のはじめに実現した企画会議では。 田中さんと福留さんの思いを聞いて、下田さんは「その先に見えているものはなんですか」、「読んだ人にどんな行動を起こしたいですか」、「人を巻き込むノウハウがもう少しあればいいかも」などなど、どんどん切り込んで視点を広げてくださいました。下田さんすげーのひとことです。 そんな3人の熱意ほとばしる編集会議を横目で見ながら、いつものように、「mazecozeでも何かできるんじゃないかな」欲がじわじわと。 田中さんの中にある感覚を、mazecozeの場を使ってで引き出していけたら、ものがたりづくりの素材としてゆくゆくは本づくりの役にも立つはず。それはきっと、田中さんにとってもいいことなはずだし、出版企画の前進にもつながるはず(ちなみにまだ書籍化が決定したわけではありません) 会議終了後、すぐさま福留さんと私とでやろーやろーと盛り上がり、スッポンのようなくらいつきの私たちにたじたじの田中さんも「それいいですね!」と言ってくださり。 mazecozeの新プロジェクトがはじまりました。 その名も「だれでもクリエイティブ -クリエイティブ・ディレクター田中淳一さんの感覚感性を分解し隊」! 田中さんの地域クリエイティブ事例をもとに、着想・企画・定着の道のりにひそんでいる感覚感性を、だれにでも身につけられるところまで分解してみよう、という実験です。我らスッポンシスターズが田中さんに質問しまくります。 その先に目指すのは、だれもがクリエイティブの知恵を持ち、自分で楽しいコミュニケーションや消費のあり方や多様な選択肢を生み出せる世の中! 観念した田中さん、「発信してまぜこぜにしていくことってとても大事だと思います。双方に気づきがある、振り子の幅を大きくしていくことですね」と言ってくださいました! それではこれから、田中さん率いる「だれでもクリエイティブプロジェクト」の新連載がはじまります。みんなでものがたりづくりを楽しんでいきたいと思います!プロジェクトメンバー
だれでもクリエイティブ プロジェクトメンバー。田中淳一さん
株式会社POPS クリエイティブ・ディレクター 宮崎県延岡市出身。早稲田大学第一文学部演劇専修卒業、旭通信社(現ADK)入社。 ほぼ全業種の大手企業で多くのキャンペーンを担当し、2014年10月退社。同年、クリエイティブ・ブティックPOPS設立。現在、全国【33都府県以上】で自治体やローカル企業のブランディングやプロモーションを担う一方、大手企業やローカル企業のグローバルコミュニケーション、GOOD DESIGN EXHIBITION2017-2017のクリエイティブ・ディレクション、長編コンテンツの脚本なども手がける。 Spikes Asia、ADFEST、NY festival、BDA、short short film festival&Asia、ACC賞、日経広告賞、毎日広告デザイン賞、消費者のためになった広告コンクール、トロント国際映画祭公式上映など国内外受賞歴、国際広告祭の審査員歴、各地の大学や公共機関などでの講演も多数。東北芸術工科大学客員教授。 >POPS福留千晴さん
NORTHERN LIGHTS代表 鹿児島県出身。実家は大隅半島で芋焼酎の芋を育てる農家。 早稲田大学国際教養学部卒業。カナダ・モントリオールへの留学で映画学を専攻。 広告会社を経て、中小企業や自治体においてブランディング・PR及び商品企画開発、コミュニティづくりを担当。2017年、経産省「BrandLand Japan」にて全国12商材の海外展開プロデューサーに就任。 現在、地域と食のしごと「NORTHERN LIGHTS」を主宰し、各地でのプロジェクトに携わる。焼酎唎酒師、日本ファシリテーション協会修了生、日本デザイナー学院ソーシャルデザイン科講師。坂本彩奈さん
株式会社POPS プランナー/プロジェクトマネージャー 埼玉県出身。2019年POPS入社。東北芸術工科大学 企画構想学科卒業。 大学では企画の発想・構成・実践について学び、卒業制作では山形県上山市でアートイベントを企画・実施した。ひらばる れな
mazecoze研究所代表 愛媛県出身。「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。 人材教育会社にて障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。ダイバーシティプランニングを行う「hullabaloo」代表、ソーシャルデザインのしくみをつくる「PReNippon」共同代表、ノウフクPROJECTファシリテーター、久遠チョコレート広報など、様々なプロジェクトを推進。 >記事一覧研究員プロフィール:平原 礼奈
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。