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ものがたり2 | ロジカルにかける橋。田中式“感性”思考法と「Go!Hatto 登米無双」

平原 礼奈 │ 2020.08.19
タイトルデザイン:POPS 坂本彩奈さん 

プロジェクトの説明
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観光映像大賞作品を、取材同行体験しながら分解します

こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。

地域の魅力を発信するクリエイティブ・ディレクターの田中淳一さんと一緒に、その思考過程に宿る視点やノウハウを分解する「だれでもクリエイティブ」プロジェクト
だれもがクリエイティブの知恵と力を持ち、地域で多様なコミュニケーションを生み出せることを目指し進めています。

今回の題材は、「Go!Hatto 登米無双」です!

アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)」で第6回観光映像大賞を受賞し一躍有名になったこの作品も、田中さんが2016年に手がけたもの。動画に込められたものがたりや意図について、今回も質問&質問&質問させていただきました。

オンライン取材が板についてきたスッポンシスターズ(福留さん、坂本さん、ひらばるによる田中さんを質問攻めにする陣営)ではありますが、今回は初めての挑戦も。
記事になる前の取材現場の臨場感をシェアできたらいいなという思いから、mazecoze研究所の取材にオンラインで同行していただける「取材同行体験」も実施しました。

取材同行体験の様子。主役の田中さんが小さすぎるのですが、これもオンラインのリアル。

当日は、映画『築地ワンダーランド』の遠藤尚太郎監督と、早朝のフランスから編集者のchisaさんがご参加くださり、いつもの取材が、国を超え様々な視点が飛び交う楽しくほどよい緊張感のある時間に。なんとも不思議な初めての感覚でした。取材同行体験はこれからも続けていきたいと思います!
それでは本題へ。

ロジカルシンキングの限界突破

ひらばる
本編1の反響を、いろいろな方からいただいています」

田中さん
「今帰仁ベンチはだいぶ前に作った短編ですが、改めて知ったという人もいましたし、地域のクリエイターからの反応が大きかったですね。こうやって作っているんだ、結構考えているんですねみたいな反応もあって(笑)」

福留さん
「私の周りでは、全国津々浦々の方がおもしろがってくれました。印象的だったのは、地域のプロモーションをずっとやられている方が、“普段企画をする中でロジカルシンキングの限界を感じていて、そこをどう突破するかというのをクリエイターのプロセスから語られることがなかなかないのですごくおもしろい“と」

ひらばる
「“右脳と左脳どちらも使った田中さんのクリエイティブワークのプロセスの納得感が大きい“、というコメントもありましたね」

メモ:田中式クリエイティブ3原則

クリエイティブ企画は課題を解決するためにあるという前提のもと、着想→企画→定着の工程をたどってクリエイティブワークをすること。

着想:課題の発見とコンセプトの設定
企画:コンセプトに沿ってアイデアを開発していく作業
定着:アイデアを形にしていく作業

福留さん
「不透明なことが多い時代に、ロジカル&左脳で乗り切れる局面ばかりではないと私も実感していて。そのあとの限界突破的な部分ですよね。ここはもう少し淳一さんにお聞きできたらうれしいです」

田中さん
「ロジカルシンキングの限界は、皆さん気になるところかもしれませんね。そこがクリエイティブなんでしょうけど。右脳の時代というか、左脳と右脳のハイブリッドというか。ビックデータも大事だけど、それをどう読むかという感受性が備わっているか、もしくはそれをもとうとする意志があるかどうかが分かれ道な気が個人的にはしています」

ひらばる
「田中さんは、ロジカルシンキングの限界を感じたりするんですか?」

田中さん
「自分はなかったんですよね。皆さん感じるんだなっていうのがひとつ気づきで。福留さんも限界感じたりしてます?」

福留さん
「しますします、超してます(笑)地域のプロモーションで、動画やコピーや何かを作る時にも、理屈では100パーセント正しくても必ず共感してもらえるわけじゃないというのはすごく感じていて。ロジカルに積み重ねた上で、最後、人にとっかかりを作るようなものに変換することを淳一さんはされていると思うんです。ロジカルだけでは説明できない最後のジャンプの部分というか」

田中さん
ロジカルシンキングはすごく大切で、それをしないとアウトプットは出てこないと思います。アニメーションのシナリオ作成なんかはロジカルの塊で、劇中の登場人物たちの一挙手一投足には理由があります。このキャラクターはものが落ちてたときに拾う子ですか? 拾わない子ですかとか、右足から歩きますか、左足?とか。まさに0から1を生む作業。そうしたバックボーンからコンテンツができあがるので、突き詰めすぎても限りはないですね」

福留さん
「そこからものがたりづくりに進める、ということですよね」

田中さん
「ものがたり性が大事という話はよく出てくるのですが、作ったもの設定した世界に対してすべてに理由があり、逆を言えば伝えるという目的に対して無駄なものが何もないということだと思います。なので、つくったものがたりに対して“なぜこういう台詞なんですか? なぜこういう行動を取るんですか? ”などどこから突っ込まれても答えられるというか。
ジャンプという意味では、それを表現するときに、理屈で固めても見てもらえないし、今の情報過多時代、宣伝の顔つきをしているものは嫌われがちというのがあるので。理屈を積み重ねたうえで、“あなたにこれを分かって欲しい!知って欲しい!”みたいな恣意的な形跡がなくなって、自然に感情に染み込んでいけるようなアウトプットを作ることがクリエイターのやることかなと」

メモ:深く潜った後に見える光

思考の海の中に深く潜り、潜れば潜ったほど、底の混沌さをしかと認知してから上を見上げた時の差し込む光が美しく見えるイメージ。思考の海へのダイブが浅いと、その光の輝きのありがたみが足りない気がします(笑)」と田中さん。

クリエイティブワークの7割ほどの時間を割くというその着想工程こそ、ロジカルの積み重ね。地域の課題、課題を取り巻く環境、時代性など多方面にフラットに触手をのばしているのだそう
「それらを無視して伝えるためのコンテンツはできない。自分の場合は徹底的に考え続けます」

福留さん
「気になるのは、ロジカルなものって言語化できるし共有しやすいですよね。それを感情や情緒的な価値観に変換するときに、バックグラウンドとか文化とかいろんな要因があって、人によって捉え方が違ってくると思うんです」

田中さん
「そこは、ハリウッド映画やジブリのようなものを目指す、ですかね。たとえば映画好きな人だけが良いと思うものを作るのではなくて、このシーンは誰でもうるってくるよねっていうところ。単館ロードショーものも好きなんですが、仕事の場合、やはり全国ロードショーものを目指すことが求められます。文化や民族や世代を超えて誰もの感情の琴線に触れる部分をすごく考えますね」

ひらばる
「本質的に人が共感しやすいところを探しているんですね」

田中さん
「僕らは投資される側なので、地域のブランディングやプロモーションでヒットは目指さなきゃいけないというのは、常に考えています」

ひらばる
「前回も、“最大公約数に向けて伝えることを念頭において設計している”と教えてもらいました。ロジカルシンキングの限界という話で始まりましたけど、限界というよりロジカルと感性のいい関係をつくるコツのようなのものがあるのかなと思いました」

田中さん
トランスフォームしなくちゃいけないというか、伝わる形に変えることですね。やっぱりちゃんと伝わらなくちゃいけないので、それを一番大事にしています」

センセーショナルを巻き起こせ。「Go!Hatto 登米無双」

田中さんと一緒にみんなでGo!Hatto 登米無双を鑑賞。なんだかものすごく贅沢な時間。

ひらばる
「ここからは本日の題材であります宮城県登米市の「Go!Hatto 登米無双」について、田中さんの着想・企画・定着の流れで、作品に秘められたあれこれを分解していきたいと思います」

メモ:「Go!Hatto 登米無双」作品情報

舞台:宮城県の北部に位置する登米市。岩手県との県境にあり、登米郡8町と本吉郡津山町の合併によって2005年に誕生した。

Go!Hatto 登米無双

第6回観光映像大賞受賞作品。のどかな登米市に突如現れた謎の集団。彼らの目的はなんと、名物“はっと”を御法度にすることだった。 市民が悲嘆に暮れる中、立ち上がったひとりの女性、トメ。封印していたトメの秘技・登米無双が今、蘇る!
(登米市シティープロモーションYouTubeチャンネルより)

NOVEMBER 2016 - , client:登米市
STAFF:CD&脚本&CW/田中淳一

登米無双2
登米無双3

田中さん
「“登米市って知名度が全くないんです。日本で最低ランクなんです。なんとかそれを盛り上げたい”というのが市の方からのオーダーで、課題でした。
まずは名前を知ってもらいましょう! その上で、センセーショナルな刺激が必要だと思いますというのは、はじめに伝えました。いろんな自治体が趣向を凝らした動画を出している中で、後発で、しかも名前の知られていない登米市が名前を知らせようなんていうのは、そんな簡単なことではないですよ、そこは自覚しましょう!と(笑)」

ひらばる
「名前があまり知られていない中で、センセーショナルに。かなり難しい課題のように感じてしまうのですが」

田中さん
「どうしようって思って。登米市に行って、地元の方へ取材をしました。登米市って9つの町が合併して2005年にできた市なんです。意外と地域意識もバラバラで、なかなか同じものが見えてこなくて。でも、そんな中で見つけたのが郷土料理の“はっと”でした。 “はっと”はみんな食べると言っていて」

メモ:はっと

歴史と風土が育んだ地域食豊かなお袋の味
もちもちの食感がやみつきになる、登米市に古くから伝わる郷土料理「はっと」。「はっと」は、小麦粉料理の一種です。小麦粉に水を加え、耳たぶ程度のかたさになるまでよく練り、適当な時間寝かせる。そして、熟成した生地を指で薄く伸ばしながらしょうゆ仕立ての汁で煮込んだり、お湯でゆでて、あずき、ずんだなどに絡めたりします。だしや具材は、登米地方の中でも地域や家庭によってさまざま。地域の特色が味や具材で表現されたお袋の味です。(登米市webサイトより引用)

福留さん
「動画の鍵を握る食材ですよね。なぜ“はっと”に注目したのか気になってたんです」

田中さん
「このエリアのソウルフードとしてみんなをつなぐものとしてあったので、決めました。やはり地元の人がある程度納得してくれる素材の方が、地域の人も味方になってくれます」

ひらばる
「はっとを見つけていく着想の過程で、登米市が持っているいちばんの価値はなんだと感じましたか?」

田中さん
「提案した登米市のブランディングコンセプトは、“登米はうまくてたくましい”でした。地元の方と色々お話しして、ワークショップもする中で、登米市ってどんなところですかって聞いたら、“ここでは餓死することはないです”とか“サバイバルには強いです”って高校生をはじめ、いろんな世代の方が言っていて、おもしろいなぁと。
米どころだし、登米耕土と呼ばれる土地が肥沃なんですよね。それからもともと地域のつながりが強く、東日本大震災の時にも、沿岸部の方が避難してきた時に、登米の人たちが食事を提供したりしていたそうです。食べ物で困っている人がいたら、絶対になんとかしてあげたいという地域性なんだろうなというのを感じました。うまい食があり、助け合う強さがある、それを一つのアイデンティティとしてやっていきませんかと」

メモ:ワークショップ

田中さんは、着想の段階で地域の人たちと、「まずは自分たちで地域の魅力を掘り起こしてもらう」ワークショップをよく実施している。

ワークショップはできれば世代別のグループをつくってもらうなど工夫し、特に高校生、20〜30代の人たちなど、これからの地域を担う人たちの意見を注意深く見るようにしているのだそう。

「地域では意外とこの世代の想いが見えにくかったりするので」と田中さん。

ひらばる
「登米市シティプロモーションでいまも使われているシティブランドメッセージ “うまし、たくまし、登米市”が誕生したんですね。市の方はどんな反応でしたか」

田中さん
「一点だけ直しが入りました。はじめ、“うまし、つよし、登米市”としていたんです。でも、強いだと弱いとの比較になり、たとえば震災の時に沿岸部は弱くて登米は強いというのは違うよという配慮があって。被災された人やその地域だからこそ抱いたり配慮したりする感情があるんだと僕自身気づかされました。優しい土地柄なんだなと思いました。
そこで、つよし、を、たくまし、に変えて提案したら、 “確かに自分たちはたくましさは持っている”と。はっともきらびやかな食べ物ではないけれど、うまいものがあるんだという自負はあったのでいいですねって受け入れてくれました」

福留さん
「淳一さんの目を通して、自分たちがもつ魅力に気づいていったというのはきっとありますよね」

田中さん
外の目から気づくというのはあると思います。“食べ物がなくて困っている時にあげるの当たり前じゃないですか”っていうんですけど、それをワークショップの場でいろんな人が言うってなかなかないので。おもしろいな、地域性だなって」

ひらばる
「いろんな地域を知っているから、地域らしさや地域の多様性に気づくというのもあるんでしょうね」

田中さん
え、そんなものを? と思っていることが僕からするとどこにもない宝だったりというのはしょっちゅうです!」

オリジナルのシンボルが生まれるまで

(画像提供:POPS)

ひらばる
「 “うまし、たくまし、登米市”というコンセプトや、郷土料理のはっとを発見して、完成した動画が登米無双。その間に一体なにが、と(笑)」

田中さん
「メディアとかの取材でもよく、なんで登米無双って聞かれたんですけど(笑)
自分的にはやっぱり積み重ねで。コンセプトの整理ができて、そこにあるたくましってなんだろうと考えたときに、自分たちの食べ物を取り上げられたらめっちゃ怖そうだなとか。そこはクリエイティブジャンプなんでしょうけど。
動画では、主人公のトメが先祖から受け継いだ木棒を持って戦うんですね。登米市は津山杉など木材が有名なので、一子相伝の棒術を使う主役にしようとか。
はっとについて調べていく時に、語源として御法度にされたことではっとという名前になったという由縁も知りました。
自分でストーリーを描いているようで、実は登米に元々ある色々なパーツを再編集していった感覚なんです。深く調べるほど、芯が決まった時に、いろいろなものがわーって集まってきて組み上がる」

メモ:時代性を掛け合わせる

「トメ単体ではメジャーになりきれないだろう。トメが何をやったらいいか」と考えた田中さん。たとえば参考にするのが、YouTubeでバズっている動画。当時、意外性やギャップのあるコンテンツに若い人たちが反応していることが多く「トメおばあちゃんがめっちゃ強いっていうの、いいかも」と。着想の段階では、時代的、外的な要因も参考にしながら企画につなげていくのだそう。

福留さん
「ロジカルシンキングの話でもありましたが、この企画に関してはどの部分が田中さんのジャンプだったのでしょうか」

田中さん
主人公をおばあちゃんにして、それがめっちゃ強かったのがジャンプかなと思います。
課題を解決していくため、登米市の名前を知ってもらうには、主人公をトメにしようというのだけは決めていました。ここは感覚なんですが、トメって言ったらおばあちゃんしかないなとか、自分の記憶の中から引き出して。
何かシンボルを作りたかったんですよね。タレントさんや既存のキャラクターのような借り物ではない地域オリジナルのシンボルを」

ひらばる
「シンボルを作りたかったのは、なぜだったのでしょう」

田中さん
「オリジナルのシンボルをつくるのは、コミュニケーションコストはかかります。が、うまくいけば、自分たちのヒーローが誕生し、それは市民にとっての財産になっていき、市民の地域への誇りにも還元していくと考えました」

企画を腑に落ちる形にする定着の視点

(画像提供:POPS)

ひらばる
「次に、動画の脚本作りや撮影といった、定着のお話を聞かせてください」

田中さん
「映画みたいに撮ろうというのがありました。荒唐無稽な話じゃないですか。おばあちゃんがチャンバラみたいなことをして食べ物の恨みを晴らすって(笑)
これはちゃんと撮らないとダメだと思ったんです。ともすれば悪ノリにとられてしまう企画を、しっかりとしたクオリティで作ることが、センセーショナルでありながらも伝えたい本質への関心を高めるというか。コンテンツの質の良さは、結果的に地域のブランド力にも反映していくと思います」

ひらばる
「登米市の美しい風景やはっとのおいしそうな感じ、それからトメさんのアクションも全部、見ていて惹き込まれました」

(闘うトメさん。画像提供:POPS)

田中さん
「トメ役の金子さんは、オーディション当時62歳でした。1ヶ月くらいアクションの鍛錬をしてもらい、当日撮影に臨んでいただいて(笑)スタントマンなしです!」

ひらばる
「ひぇー。すごい! 動画のメイキングも作られていますよね。これも定着の一貫なのでしょうか」

田中さん
「制作チームがコンテンツの一つとして撮っています。出演者の多くは地域の人たちなんですけど、登米市民は出たがりじゃないんですよ。オーディションしたら人集まらなくて、なんとか出てもらって。メイキングを通じて参加した人にも喜んでもらったり、今回は出なかった人にも楽しそうって感じてもらったりと、市民を巻き込みたいというのもちょっとありました」

メモ:地域の人たちを巻き込む

登米無双のメイキング動画では、出演された登米市民のインタビューや、撮影現場の建物名、オフショットなどが紹介されている。
Go!Hatto 登米無双メイキング

登米無双2のメイキングには、現熊谷市長も畜産農家役でご出演。「もともと私も農家ですから役柄はピッタリあっていた」とコメント。

「出たがりじゃないというのも、地域性。最後は楽しんでやってもらえました」と田中さん。

(登米無双2のワンシーン:画像提供:POPS)

ひらばる
「作品を公開した後の反応はいかがでしたか?」

田中さん
「立ち上がりの反応は良かったのですが、おばあちゃんを戦わせるとは何事だとか白目向いているじゃないですかとか。そういう声もチラホラいただき(汗)。
実際、自分としても、結構ギリギリを攻めたのはありました。でもそれは1番最初にしていた、“名前を売るのはそんな簡単な話ではないですよ”という話で。担当の方々が、ある意味、共犯者として理解し信頼してくれていたのはありがたかったです」

(画像提供:POPS)

福留さん
「観光映像大賞を受賞して、何か変わりましたか?」

田中さん
「この賞、それまでは県単位での受賞だったそうなんですが、初めて市町村単位での受賞。しかも全国でも知名度の薄い登米市がとったと。名だたる映画人がいるところで、登米市長が壇上で、登米の方言でスピーチしていたのが印象的でした。
市の外の人たちから認められたことや、日ごとにPVも増えて、取材もくるような状況の中で、“このちょっとセンセーショナルな動画をきっかけに、登米市に興味を持ってくれる人が確実にいるんだ”という風向きに変わったと思います」

ひらばる
「シリーズ化にもなりました」

田中さん
「1年だと難しいですよというのははじめに言っていました。2はトメに農業移住者のサチという弟子ができて、倒されたボスが復讐に来た時に一緒に戦うというものでした。
生活者が自分の時間を費やしてでも見てみたいコンテンツをつくり、その中で登米市のことを知りたくなるきっかけをつくるのが、僕らがやらなくてはいけないことだと思います」

ひらばる
「さきほど話されていた、より多くの人の琴線に触れるもの、という視点ですね」

福留さん
「淳一さんは、常に2以降のことも考えて動画を構成すると聞いたことがあります」

田中さん
「そうですね。3年くらいはできるフレームで考えるというのは、地域の仕事ではいつもそうしているかなと思います」

ひらばる
「今日もたくさんのことを分解させていただきました」

福留さん
「質問をしながら私も淳一さんの言葉をふせんにまとめてみたんですけど。数々の名言がありました。今回もたくさん学びをいただいて、ありがとうございます」

あんなに質問しながらオンラインホワイトボードを活用してこんなにまとめていたシスターズの福留さん。

ひらばる
「私も記事を書きながら、分解したことを自分の中に落とし込むのが楽しみな時間です。田中さん、最後に一言お願いいたします」

田中さん
“困難は分割せよ”と言うデカルトの言葉があります。それを知ったとき、自分がやっているのと一緒だなと思いました。
ロジカルシンキングの話もありましたが、クリエイティブって難しくて得体の知れないような気がするのですが、やるべきことを分割したり、着想・企画・定着に工程を分けたり、着想の中でもさらに分割していくことでわかることがあると思います。分割したものが一気に立ち上がる瞬間も。大変だなと思った時に、自分の作業を分割するのは結構いいのかなって思います」

(分解対談終了)

〈Go!Hatto 登米無双〉田中さんの感性感覚分解エッセンス集

(画像提供:POPS)

「ものがたり2」で分解した、田中さんの感性感覚エッセンスをまとめました。みなさまのクリエイティブワークのご参考に!

  • ロジカルシンキング論理的思考、物事を体系立てて整理する思考などと言われる。クリエイティブワークをする基盤となり、それをしないと良いアウトプットは出てこず、突き詰めすぎても限りはない
  • ロジカルシンキングの限界突破:論理や理屈を積み重ねた先に見えてくる、右脳への創造的なブリッジ
  • クリエイティブジャンプ:これを分かって欲しいといった恣意的な形跡をなくし、自然に感情に染み込んでいけるような創造的アウトプットを作ること
  • 左脳と右脳ハイブリッドの時代:ロジカルシンキングを大事にしながらも、それを感受性や感情で読み解いていくこと
  • ものがたり性:伝えたいことを陳列するのではなく、ひとつの文脈に昇華して能動的に知りたくなるように仕立てること
  • ロジカルを感情や情緒的な価値観に変換:伝わる形に変えるために、文化や民族や世代を超えて誰もの感情の琴線に触れる部分を探すこと
  • センセーショナルな刺激:登米市の知名度を上げたいという課題に対して田中さんが必要だと考えたもの
  • ワークショップ:地域に暮らす人たち自身に地域の魅力を掘り起こしてもらうために行うもの
  • どこにもない宝:田中さんが外の目からすくいあげるその土地らしさや地域性のこと
  • 再編集:地域に元来ある色々なパーツを集め、再編集してストーリーにすること
  • 地域のシンボル:市民の地域への誇りに還元し、市民にとっての財産になっていくオリジナルの象徴のこと
  • コンテンツの質:定着の段階で、映像や制作物などのクオリティにこだわること。伝えたい本質への関心を高め、地域のブランド力にも反映されていく
  • 市民を巻き込む:地域プロモーション活動を通じて地域の人を巻き込み喜んでもらうための工夫(メイキング動画をつくるなど)
  • 共犯者:クリエイティブワークを行う課題や目的を共有し、壁が立ち塞がっても前に進む力となる人や関係性のこと
  • シリーズ化:地域のことを知りたくなるきっかけをつくり定着させるため、田中さんの場合、3年くらい続けられるフレームで考えること
  • 困難は分割せよ:デカルトの言葉。難しく捉えがちなクリエイティブワークでも、やるべきことを分割し、工程を分ける中で見えてくることがあるはず、と田中さん
研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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