「いいこと」をみんなのものに。住みたい街ランキング常連の恵比寿で始まる地域通貨って何?<前編>
保手濱です。
聞いて聞いて。なんと住みたい街ランキング常連のあの恵比寿の街が、地域通貨を始めるべく準備中なんだとか!
みなさん、「地域通貨」って聞いたことありますか?
最近何かと話題の仮想通貨、ではありません。
目次
地域通貨とは
地域通貨とは、日本円やドルのような「法定通貨」ではなく、団体や個人などによって独自に発行され、
特定の地域やコミュニティの中で限定的に流通するお金(価値)の総称です。
法定通貨(円)との違いは?
1. 地域通貨は市民やNPOなど誰でも作り出すことができる
2. 地域通貨は限定された地域やコミュニティで流通する
3. 地域通貨は利子がつかない
4. 地域通貨は有効期限やマイナス利子をつけることができる
つまり、特定の地域やコミュニティ限定で、日本円と同じように物やサービスと交換できるお金(のようなもの)のこと。
限定的な通貨をわざわざ発行する理由や目的はざまざまですが、都心部に集中しがちな経済を地方に留まらせたり、通常は取引されない物やサービスを流通させるためなど、法定通貨(日本でいうと日本円)にはできない役割を担ったり、問題を解決するために発行されるそう。
(地域通貨の歴史は古く、ここでは説明がしきれない部分もたくさんありますが、面白いので気になる方は調べてみてね)
で、そんな地域通貨が恵比寿で始まる! 何を隠そう、恵比寿はまぜ研の運営母体であるゼオがある街じゃないですか〜! ついでに私たちが関わっているまごマガジン(仮)のチカクさんも、恵比寿です!
ほら、恵比寿が(私的に)アツい!
しかし恵比寿って東京のど真ん中ですよね? こんな都心で地域通貨発行して、どうするつもりなんでしょうか?
なんだかまぜこぜな匂いがしますので、話を聞きに行ってきました!
やってきたのは平日昼間の恵比寿のオフィス街。なんかやってますね。
「生活のマルシェ」ですって!野菜買いたいなー!
オフィス街なのに、地元に住んでいると思われる方々が次々と…。日常的にこのマルシェを利用しているのでしょうか。みんな顔見知りみたいで、このシーンだけ見るとどこか地方の街のよう。
そんな中、目的の人物を発見しました!
こちらがその方、恵比寿で地域通貨を始めようとしている、恵比寿新聞の高橋さんです。
恵比寿新聞さんは恵比寿の街の情報を発信している、新聞といっても紙ではなくてwebのメディアさん。メディアという枠にとらわれず、イベントやら何やら、本当に色々なことされているんです。
それはおいおいご紹介するとして、まずは気になる地域通貨のこと、聞いちゃいましょう!
ビルに囲まれたオフィス街で、「人」を中心に回っていく通貨になる
保手濱:高橋さん初めまして!今日はよろしくお願いします!
高橋さん:よろしくお願いします!
保手濱:さっそくですが、恵比寿で地域通貨を始められると聞きました。いったい何を?どうやって?なんのために?(質問攻め)
高橋さん:恵比寿ってすごく都心にある街ですよね。一見ビルばっかりで、「住むとこあるの?」ってよく聞かれるんですけど、ちょっと路地に入ると昔ながらの小さいお店があったり、ビルの上に大家さんが住んでたり。きちんと住民たちの営みがされている街なんです。僕はそんな恵比寿が大好きで、10年ほど前から恵比寿新聞で街の魅力を紹介してきたんです。そうしてこの街をずっと見てきてわかったのが、「ちょっとしたことで困っている人」と「小さなことでも社会貢献したい人」が結構いるということです。そして困っていることやできることは人によって違うということ。
そこで、地域通貨が媒介となって街の人たちの「いいこと」の交換がもっと増えると、街がより良くなるんじゃないかと考えました。
保手濱:地域通貨が媒介になるって、具体的にどういう風に使うのでしょうか?
高橋さん:これからスタートする地域通貨「エビス」は、いいことをしないともらえない通貨なんです。
例えば棚の上の物を取るとか、僕らにとっては簡単にできることでも、高齢者の方々には難しい。
逆に高齢者の方々も、刺繍が得意なおばあちゃんとか、今は引退したけど昔職人だったおじいちゃんとかが誰かの役に立てるかもしれないでしょ。地域通貨がそのマッチングの役割を果たしてくれれば、住民の方々の物理的・心理的な居場所づくりに役立つはずだと考えています。
頼まれごとをやってあげてエビスがもらえるなら、手伝うほうも嬉しいし、頼むほうも頼みやすい。
そしてエビスは信頼の証になる。たくさん持っている人は「いいことをたくさんした人」なんです。
保手濱:なるほど。これだと今まで遠慮していたことでも頼むようになって、結果的に「いいこと」の総量も増えそうですね!
地域通貨の流通で、恵比寿の人と企業の「いいこと」がつながり増えていく
高橋さん:でも地域通貨があるだけだと、助けてほしい人とできる人がなかなか出会えないので、窓口となるwebサイトを立ち上げます。そこでは自分のプロフィールと「できること」「やってほしいこと」を掲載できる。例えば、「本業はコピーライターなんで、あなたのお店のコピー書きますよ」とかでもいいし。でもその人も別の面では、何か困っていることがあるかもしれないでしょ。「足が悪くて重いものが運べないから手伝ってほしい」とか。
保手濱:そこで自分ができることを求めている人を見つけて、手伝ってあげると地域通貨がもらえるってことですね。
高橋さん:そう。逆に困っていることがあればできる人を探して「この人にお願いしてみようかな」って。顔も見えているから安心だし、さらに「いいこと」の交流が増えていくかなって。
保手濱:通貨というとついつい物との交換に使うものだと考えてしまいますが、「いいこと」と交換できる通貨なのですね。地域の交流が生まれづらい都心の街にぴったりの仕組みかもしれない!
企業のCSR活動をもっと豊かな、生きたものに!
保手濱:ところでこの地域通貨は、誰が発行するんですか?例えば日本円だと日本国が発行していて、それが流通しているんですよね。
高橋さん:予定では恵比寿の地元企業さんに発行してもらうつもりです。高齢者の方々も使うので、最初は非デジタル、紙幣型の通貨になるのですが、企業さんは発行する通貨のデザインを自由に決められるようにしようかと。
保手濱:そ、それはめちゃめちゃ面白いですね〜! 企業さんたち、こぞって発行したがりそうですね! そこから住民の方々に流通させるのはどうするんですか?
高橋さん:色々なパターンがあるかとは思いますが、例えば企業のCSR活動で、社員さんたちがたまに会社前の道路を掃除してたりしますよね。でもあれって掃除するだけで終わりで、住民との交流も特にないし、せっかくいいことしてるのにもったいない。だからああいう活動を住民巻き込んでやれないかなって。「エビスを払うので掃除手伝ってください!」って募集かけるんです。
保手濱:ここでもいいことしたらもらえるエビス、なんですね!
高橋さん:そうすれば、企業としてもCSR活動も地域に根ざした意味のあるものになっていくし、自社のロゴがデザインされた通貨が流通していく。
保手濱:よく考えられてるなあ。
秋ごろからスタートする予定の地域通貨「エビス」。ただいま色々な課題をクリアするべく絶賛準備中。またレポートさせていただきます!
(photo:木内和美 text:保手濱歌織)
後編→