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「いいこと」をみんなのものに。住みたい街ランキング常連の恵比寿で始まる地域通貨って何?<後編>

mazecoze研究所 │ 2018.03.30

前編

前編では都心の街、恵比寿で始まる地域通貨についてご紹介しましたが、ところでこのプロジェクトを主宰している恵比寿新聞さんとは一体何者なのでしょうか?

保手濱:恵比寿新聞さんってwebメディアさんですよね。なぜ情報発信以外にも色々なことをしているんですか?

高橋さん:恵比寿新聞はメディアといっても広告を一切取ってないんですよ。広告を取ると場合によっては思ってもないことを書かなきゃいけなくなる。僕はこの街の本当にいいと思うものだけを紹介したいんです。

保手濱:なるほど。私たちmazecoze研究所も広告を取っていませんが、それはオウンドメディア(企業等がなんらかの目的のために情報を発信しているメディア)だから。恵比寿新聞さんは誰にも頼まれてないけど恵比寿の情報を発信しているということになりますね。

高橋さん:僕は地方出身なのですが、うちの奥さんは生まれも育ちも恵比寿なんです。この辺って見てくれはビルだらけだけど、本当は人情味あふれる下町なんですよ。ここ(マルシェ会場)のお向かいは町会長が住んでて、いつもマルシェをやっていると上から降りて来て、「聖護院大根あとで持ってきて」とか言ってくるし(笑)。

インタビュー中もたくさんの人が訪れて立ち話をしていきました

高橋さん:見た目はここ20年くらいで随分変わったけど、人は全然変わらなくて。そういうところが大好きで。 東京に出てきてから色んなところに住んだけど、僕にはやっぱりこの街が一番なんです。飯食えないときも食わしてもらったりとか、本当にお世話になってきました。住んでいる人たちも漫画みたいに濃いキャラクターがたくさんいて面白いから、その人たちをアーカイブできたらなーと思って恵比寿新聞を始めたんです。
今では恵比寿だけじゃなくて全国に系列の新聞が発足しています。中目黒、富ヶ谷、立川、戸塚、田町、おきたま、大塚、渋谷、富士河口湖町、自由が丘、下田、阿蘇西原、麻布十番、鎌倉、秋葉原、天王洲アイル。それぞれの地元で僕のコンセプトに共感してくれた人が始めてくれて、今ではこんなに増えました。

立ち上がったばかりの阿蘇西原新聞の編集長さんがいらしてました!記念にパシャ!

高橋さん:そうしていると情報を発信しているとどんどん繋がりが増えていって、今では地元の企業さんからイベントの依頼が来たり。
例えばサッポロビールさんとやっているのは「エビスビールに合う逸品グランプリ」というイベント。地元の飲食店さんに参加してもらってこの街の名前の由来でもあるエビスビールに合う料理を投票で決めるというもので、2015年から毎年続いています。

エビスビールに合う逸品グランプリ

高橋さん:イベントと言っても、この辺に住んでたり働いている人が必要としていることを僕が代わりにやっている感じですね。 このマルシェも、八百屋さんとか魚屋さんとか近隣の個人商店がどんどんなくなっていて、生活の場としてのお店が必要とされていると感じて始めました。観光客とかエンタメとしてのマルシェではなく、住んでいる人や働きに来ている人の日常的な場所として運営しています。

保手濱:この街の人の魅力を発信し続けてきた高橋さんにとっては、どういうものが求められているか手に取るようにわかるんですかね。他にはどんな取り組みをされていますか?

メディアを媒介に人が集まり、爆発的に増えた地域の営み

高橋さん:2016年からうちの事務所を開放して「恵比寿じもと食堂」というのをやっています。 「ご近所付き合いの力で課題を解決する食堂」をテーマにして、食材をお米屋さんや農家さんから提供してもらい、近所のおばちゃんおじちゃん達が無償でご飯をつくりにきてくれてます。子どもたちだけで遊びに来れて、ワンコインで栄養価の高い手作りごはん食べられます。今まで月に2〜3回、計48回開催して、のべ約1400人の方が遊びに来てくれました。通っていると顔見知りも増えていくので、新しいご近所付き合いが増えていきます。

恵比寿じもと食堂

高橋さん:あとは例えば僕たち去年から「恵比寿じもと工務店」というのをやっているんです。最近このあたりの高齢者を狙って、ちょっとサビを取れば直るドアをわざわざ全部交換したりして高額を請求するリフォーム詐欺が増えていて、そういう業者をぶっつぶそうぜって地元の仲間と結成しました。もう350万くらいの取引があるんですよ。 ここの仕事も地域通貨「エビス」で支払えるようにするつもり。

保手濱:出た、エビス。今までの活動が全てピピピピっと繋がっていきますね。

高橋さん:でもね、地域の繋がりって、すごく繋がってくると重くなってくるんですよ。PTAと一緒で(笑)。だから緩くてやわらかくて、ふわってしたのってなんだろうなと考えたんです。それって「趣味」とか「好きなこと」が共通言語だなと気づいて、「恵比寿の部活」を始めました。

「恵比寿料理部」の活動の様子

高橋さん:今は200人くらいの部員がいて、その中で10個くらいの部活ができています。相撲部とか、マルシェ部とか。部活によって活動時間や内容は違って、例えばランニングの部活が料理部のメンバーと一緒に活動したり。「グルメRun」っていって走りながらグルメを食べるんだけど、走ったカロリーより食べたカロリーのが多いの(笑)。 あとこないだは狩猟部が発足しましたね。免許を持っている方がいらっしゃって、その方がいろんな所へ連れてってくれるんです。あとあと…

保手濱:ちょっとちょっと! いろんなことやり過ぎですよ(笑)! よくそんなに時間ありますねー!

高橋さん:どれもこれも僕が一人で全部やっているわけじゃなくて、僕はサイトを立ち上げてきっかけだけ作って、あとはまわりで「こんなのやりたいと思ってます」って人がいたら他の人もみんなわぁ~ってなるんです(笑)。

保手濱:そうしてすぐに盛り上がるのって、すでに恵比寿という街で人と人の繋がりの地盤があるんでしょうね。恵比寿新聞というメディアを中心にして、人の交流が目に見えるものになったことにより、総量が増えた。地域通貨で狙っている形と同じですね。高橋さんが目指す地域の姿はどんなものですか?

高橋さん:地震が起きたときに近所に助け合える人がいるかどうか、をテーマにやっています。この街に住む全ての人がそうなるといいなと思っています。

恵比寿新聞さん、取り組みひとつひとつが濃厚すぎてさらりとしかご紹介できませんでしたが、恵比寿という街が人を中心に回っているということがわかりました!これからの展開も楽しみです!

高橋さん、ありがとうございました!


恵比寿新聞 http://ebisufan.com/news/

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