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この川崎の片隅で体感した映画音響革命「LIVE ZOUND」【中編】

平原 礼奈 │ 2017.04.10

「映画音響革命軍」司令官の美須社長登場!

前編では、映画音響システム「LIVE ZOUND」がわずか1年で誕生するまでの開発ストーリーをうかがいました。開発ご担当の藤本さんと山室さんのお話を夢中になって聞いていると、会議室の扉が開き、すごいイケメンが登場! 株式会社 チッタ エンターテイメント代表取締役社長の、美須アレッサンドロ氏です! LIVE ZOUNDには「映画音響革命」という刺激的なキャッチフレーズがついているのですが、これを考案したのはなんと美須社長なのだとか。 「LIVE ZOUNDを映画音響革命としたのは、今の映画館の常識や当たり前を覆したいという意味と、構想から一年経たずに一気にスタートアップしたというのがあります。でも、新しいパイの発掘には時間はかかるだろうなと。そこまでの道のりは我慢だよなと。革命ってやっぱり一日では成し得ないので」と美須社長。 なるほど、LIVE ZOUNDという存在だけでなく、それをじわじわとお客さまに浸透させていくという意味でも「革命」だったのですね。
「LIVE ZOUND」の語源は、様々な意味が含まれています。SOUND(音)のSをひっくり返してZにしたのは、音= SOUNDをより進化させるという意味もあるとのこと。
さらに、「映画館に来てくれた人が、Twitterなどで拡散してくれるのですが、彼らと全員で革命軍だと思っています」と美須社長は続けます。 「LIVE ZOUND」を体験した「革命軍」の皆さまの反応を、一部ご紹介しましょう。
  • 空気が揺れる!
  • 戦闘と歌のシーンの迫力がぱないのと、重低音で座席が本気で震えてやばい。音量も滅茶苦茶でかいのにキンキンしない絶妙な音だった。
  • やっぱ圧倒的に音の迫力とか臨場感が違うね!
  • 念願のマッドマックスB&Cをライブザウンドで観戦するが、連日の睡眠不足も手伝って圧倒的な音圧に何度か気を失う。
  • チッタのライブザウンドとかいうやつで観たけど音の圧がやばかった!戦闘シーンの作画とかほんと神
(一部引用 抜粋)
お客様の興奮した様子と、「LIVE ZOUND」の漲るエネルギーが伝わってきますねー。 一度LIVE ZOUNDを体験すると、他ではもう観れないといったコメントも多いようです。mazecozeLIVE ZOUND隊も、広報担当として革命軍に入れていただきましたよ!

空間と体で聴く音

さらに、思いもよらぬところからも、LIVE ZOUNDへの反応があったのだそう。 「LIVE ZOUNDは、聴覚障害のあるお客様からの支持も多いんです。これまでは、聴くという行為を字幕によって体験していたものが、LIVE ZOUNDなら体で感じられることで、一歩進んだ映画体験ができたと。あぁ、そういう風に観ていただけるのか、と思いました」と藤本さん。 「音が塊で飛んでくる」という声もあるように、耳が聞こえなくても体で感じることができるLIVE ZOUND。今回、その存在を教えてくれたひらばるの友人でエッセイストの松森果林さんも耳が聞こえません。その彼女も「映画館にある“ただの空気”が、“響きと振動を伴った立体感ある空気”に変わる」と言い、今では足しげくLIVE ZOUNDに通っているそうで。 LIVE ZOUNDを開発する時点ですでに、聞こえない人でも楽しめるように、というバリアフリー発想があったのでしょうか?
「はじめは、ただ良いモノをつくろうというのが先でしたね。映画体験をもっと高めようというのが基本的にはあるので。上映してみて、いただいたコメントの中に、音をあたかも物理的なものとして捉えているような文章があって。それを見てあぁ、これってそういう風に使えるんだって。でも、エンターテイメントの底上げをすることは、そういうことだとも思っています」と、美須社長。 今あるものを100良くすれば、あらゆるお客様の映画環境もより良いものになる。「バリアフリー発想が先行していたら、全然違うものになっていたかもしれない」とおっしゃるように、特定の人をケアするという発想ではなく、誰にとってもさらに至福の映画体験を生み出すというイノベーション発想で行動を起こしたからこそ、バリアフリーやUDの部分も包括していったというあり方が、なんとも素敵だなあと感じました。 もちろん、多様な特性のあるお客様に対応した「バリアフリー上映」にも積極的です。 従来、邦画には字幕がつきませんが、日本語字幕付きのLIVE ZOUND上映を行ったり、視覚障害のある人には、音声ガイド「UDCast」とiPod touchの無料レンタルを開始したりと、様々な取り組みも進めているそう。 「いま、社会全体がバリアフリーという方を向いていると思うんですが、映画館ってやっぱり娯楽というところがあって、バリアフリーという観点からいうとまだまだ遅れている部分があるんです」とおっしゃいながらも、LIVE ZOUNDをきっかけに、多様な映画ファンとの交流が生まれ、より良い映画体験に向けたしくみづくりが進化していて、そんな取り組み自体も「革命」のように思えました。 >後編では、いよいよLIVE ZOUNDを体験します! (撮影:ユイネハヤト 協力:ナカイユウヘイ 取材・執筆:ひらばるれな)
LIVE ZOUND
研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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