Vol.11 SCHOOL OF LOCK! こもり校長(⼩森隼さん)とぺえ教頭(ぺえさん)にインタビュー -SOCIAL LOCKS! で生徒や“多様性”や自分と向き合って-
※この記事は、mazecoze研究所が「True Colors CARAVAN」広報チームとして企画制作した“マガジン”を、当メディアにも転載するものです。True Colors CARAVANの開催と連動して随時連載いたします。
目次
SOCIAL LOCKS! 課外授業で、CARAVANに多様な対話を生みだしてくれた、こもり校長とぺえ教頭にお話を聞きました
こんにちは。True Colors CARAVAN広報の平原です。
4月に東京を出発してから名古屋、広島、札幌、大阪、北九州とめぐり、10月に最終目的地である別府へと辿り着いたTrue Colors CARAVAN(以降CARAVAN)。
CARAVANを語る上で欠かせないプログラムの一つが「SOCIAL LOCKS! 課外授業」でした。
SOCIAL LOCKS! は、TOKYO FM/JFNのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」とTrue Colors Festivalのコラボレーションコーナーとして、2021年12月よりスタート。
メインパーソナリティのこもり校長とぺえ教頭が、リスナーである“生徒”さんたちの声に耳を傾け、違いや生き方への思いをシェアしてきたラジオの中の学校です。
CARAVANでは、SOCIAL LOCKS! がラジオからステージに飛び出して、様々なゲストのみなさまと、各都市で対話の場を繰り広げてくれました。
ラジオと課外授業を行ったり来たりしたこの半年間で、こもり校長とぺえ教頭が感じたことは? 別府でのCARAVAN を終えた2日後にお二人のもとを訪ね、いまの思いを聞きました。
「皆勤賞がほしい」と思えた場のあたたかさ
-半年間、SOCIAL LOCKS! 課外授業で全国を一緒に旅してくださりありがとうございました。ぺえ教頭は、7都市すべてにご参加くださいました。
ぺえ教頭
今の私にそんなことができるとは思いませんでした。どちらかというと人と関わることを閉ざしていたので、最初は不安のほうが大きかったんです。
でも、どの会場に行ってもお客さまがあたたかくて、めずらしく「皆勤賞ほしい」みたいな気持ちになって(笑)
分かち合おうという空間が、私を後押ししてくれたと思います。7都市すべて回りきれたことが私にとっての収穫です。
こもり校長
CARAVAN、めちゃくちゃ暑かったのをよく覚えています。大阪もものすごく暑くて。
僕自身、コロナ禍になってからこうして全国を回れることの凄さや大変さも感じてきたのですが、各地に行くと、世の中がどんどん戻ってきている実感が湧きました。
何よりSCHOOL OF LOCK! という番組をやらせてもらっている中で、これまで生徒と直接会うことがなかったので、素敵な機会をいただけたなと思っています。
-生の対話が目の前で繰り広げられるのがなつかしいような、うれしい気持ちで課外授業を見ていました。CARAVANでの印象的なシーンがあれば教えてください。
ぺえ教頭
普段ここで、毎晩のようにラジオから声を届けているのですが、私たちが届けたいと思っている言葉が実際に届いているかどうかはわからなかったんですね。
初めてこのイベントで「ラジオネーム○○です」みたいに会えたときに、「あー、つながれた」って。やってきたことに意味があったんだって実感できた、一番はそれかな。
-広島では、これまで2回ラジオに声を届けてくれていた生徒のメグリンチョさんがステージに登場してくれました。
ぺえ教頭
生徒に会えるとすごくうれしくて。別府でもミステリアスなクレープソルジャーが来てくれたり。番組を作っている人たちが一方的にSOCIAL LOCKS! を示しているのではなくて、生徒も多様性のある社会に向けて関心を持って行動してくれているんだなってうれしく思いました。
こもり校長
僕は名古屋が印象的でしたね。ショッピングモールだったんですけど、ステージまでの動線が、表を普通に、生徒たちの前を通っていく感じで(笑)
ぺえ教頭
アスナル金山だ(笑)
こもり校長
生徒たちがたくさん来てくれて「私◯◯です!」「僕◯◯です!」って。いつも聞いてくださっている方が実は50代だったり。名古屋は特に、生徒のことを直接感じられたなっていう現場でした。
一番の感謝は、生徒が番組を信じて声を届けてくれたこと
-課外授業の根っこになっている、ラジオのSOCIAL LOCKS!についてもうかがいたいと思います。毎週の放送後記を拝読して、こんなにたくさんの学生や10代の方が、多様性への思いを声に出しているってすごいなぁと。約11カ月番組を続けてきての思いをお聞かせください。
ぺえ教頭
葛藤しながら生きている10代の強さや希望みたいなものが露骨に現れて、それを感じられた時間だったなと思います。
私自身もそのくらいの頃、どうしたら自分らしさを手にできるんだろうとか、そもそも自分らしいって何?って考えながら生きてはいたんですけど、こんなに身近に気軽にその思いを発信できる場ってなかったから。葛藤は葛藤のまま終わってしまっていた気がするんです。
ここで「ちょっとした気づきでもいいから誰かに声を届けたい」って抱えている思いを表現してくれて、やっぱり言葉にして誰かに伝えるって大きなことだと思いました。番組を通して少しずつみんなが納得できるような世の中になっていく気が、なんとなくしたような時間でした。
-ぺえ教頭はいつも生徒さんたちに優しく寄り添って、絶対的な味方でいたのが印象的です。
ぺえ教頭
時には慎重にもなりました。LGBTQのことは私がちょっとわかったりするから話せるんだけど、障害のことになると私もこもり校長も当事者ではないから、もしかしたらこの言葉が何か傷つけることになってしまわないかな、どうやって伝えるのがいいんだろうって。でも、生徒のどんな言葉でも受け止めようという気持ちでやってきたつもりではあります。
こもり校長
毎週声が届くというのは、ものすごいことだなと。自分が思っていることや自分のことを話すのって怖いと思うんです。それを急に、「SCHOOL OF LOCK! がSOCIAL LOCKS! っていう新しいコーナーをやるから声を届けてくれ」って言ったときに、ここまで番組や僕たちのことを信用して行動を起こしてくれたことに、何よりも感謝を感じました。信じてくれてありがとうございますっていうのが一番の思いです。
-「こういう特性があること、知らなかった。聞かせてくれてありがとう」と知らないことにも素直に向き合われていて。そうした佇まいだからこそ、安心して声を届けられる場になっていたのではないかなと感じました。
こもり校長
知っていなきゃいけない、みたいな世の中の圧力ってありますよね。いまって、違いや多様性を題材とする時に、全てを理解していないと語っちゃいけないとか、叩かれてしまう世の中だと思うんです。それって違うと僕は思っていて。
たとえば、僕らが気を遣っていたことが、生徒からの「こうやって決めつけないでほしい」いう声が届くことで、勝手な決めつけや区別することになっていたんだって気づくことも多かったんです。
大切なのは「知っているよ」というスタンスでいることではなくて、素直に向き合うことなんだって逆に教えてもらったというか。
ぺえ教頭が目の前にいてくれたのも大きかったですし、生徒のみなさんの声があって、僕も徐々に等身大の自分で話すことができたのかなって、振り返って思いますね。
ぺえ教頭
生徒から届く言葉や思いがあまりにも素直だから、私たちもそれにつられてより素直になっていったというのもあるかもしれないよね。
SOCIAL LOCKS! の授業は「気づき」がテーマだったから「ここで気づけたらいい」っていう気持ちでやれたことが大きかったと思います。
自分のことを一番わかってあげることも多様性のひとつの形
-SOCIAL LOCKS! やCARAVANを通じて、ご自身に起こった変化はありますか?
ぺえ教頭
人生思い通りにうまくいかないことを、誰かのせいにしても自分を幸せにしてはくれないんだなっていうのをすごく実感した。
ここ1年ぐらい、私はどこか心が開放的でない部分があったので、そういうときってうまくいかないことを何かのせいにしてみたり、自分以外のところに違和感を探そうとしてしまいがちなんですけど。
SOCIAL LOCKS! で一人ひとりの話を聞いていると、みんなが自分として闘おうとして、声を挙げて幸せを掴みにいっているんです。その感覚を教えてもらったなって思います。
多様性っていうと、どうしても誰かに理解してもらうというのが先行しがちだけど、自分を一番わかってあげることも多様性なんだろうなって、CARAVANを通じて感じました。
-ぺえさんは毎回書いてくれた黒板でも、“自分を大切にして自分らしくあれるように”というメッセージをいつも伝えてくれていたなと思います。
ぺえ教頭
毎回しっかりと意味を持たせた言葉を書き続けてきたんですけど、最後の別府では「幸せになろう」って書いたの。最終的にはそこだよねって(笑)
自分のマインドだけは忘れないで、信じて生きていってほしいなっていう思いで書きました。
こもり校長
僕は、等身大で向き合うことが大切なのかなって。この世の中、わかったふりをしてしまったり、あなたのことを考えてますよっていうのが時に押し付けになったり。
わからないものはわからないし、逆にあなたも僕のことがわからないでしょって。お互いがお互いを思い合うがゆえにコミュニケーションを一緒にとりましょうっていう、それが大事だとものすごく思いました。
それぞれの居心地の良さを持って、この世の中を生きていく
-CARAVAN の母体であるTrue Colors Festivalは、多様な人がまぜこぜになってパフォーミングアーツを楽しみながら「居心地の良い社会」に向かっていく取り組みです。
お二人それぞれにとっての居心地の良い社会とは、どのような状態でしょうか。最後にお聞かせいただきたいと思います。
ぺえ教頭
いま一つ思いついたのが、「適度な無関心」っていう言葉でした。
多様性ってどうしてもみんなで分かち合って理解し合うみたいな感覚で聞こえると思うんですけど、適度な無関心がないと、たぶん無理(笑)苦しくなる人が多い気がするんです。自分が相手のことを全部理解することは不可能だし、自分のことを100人いたら100人に理解させるのも到底無理な話で。
認め合う社会とは言いつつも、適度な無関心があったほうがラクに生きられるし、居心地が良いというところで考えたら、そのくらいがベストかな。
こもり校長
やっぱり「冗談を言い合える社会」がいいですよね。みんなちょっとピリピリしすぎちゃってる。冗談が言えないとか、全部本気で喋んなきゃと思っちゃっている気がします。繊細さは大事ですけど、緩急も必要だなと。
「なーんてね!」って言える世の中が、心地の良い状態だと僕は思います。
-ありがとうございます。とーやま委員にも別府で言葉をいただいたのですが、「答えを決めない社会」とおっしゃっていて、今日のお二人の言葉にもつながっているなと感じました。貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました!
プロフィール
こもり校長(GENERATIONS from EXILE TRIBE ⼩森隼さん)
「SCHOOL OF LOCK!」4代⽬校⻑
2020年4月から「こもり教頭」として「SCHOOL OF LOCK!」でパーソナリティーを担当。2021年10月より「こもり校長」を務める。
2012年11月GENERATIONSパフォーマーとしてメジャーデビュー。
10代の時にはSCHOOL OF LOCK!の熱心なリスナーで、番組愛に溢れる。
ぺえ教頭(ぺえさん)
「SCHOOL OF LOCK!」5代⽬教頭
2021年10月より「ぺえ教頭」として、「SCHOOL OF LOCK!」のパーソナリティーを務める。パープルやピンクを基調にしたド派手なファッションスタイルが有名。部活後に迎えに来てくれた父の車の中でSCHOOL OF LOCK!を聴いていた、元リスナー生徒。
-曖昧さを許し合う社会へ-
広島、札幌、北九州、別府を一緒に巡ってくれた
とーやま委員にもお話を聞きました!
SOCIAL LOCKS! 課外授業に参加して、すごく楽しかったです。
いま、時代も社会も日々めちゃくちゃ変わっていっていますから、柔軟でいるために、自分の考えも変わっていかないとって思うんです。
でも、僕なんかはラジオを聴いて新聞を読むくらいなので、自分だけで変化のきっかけを掴むのには限界があるじゃないですか。今回CARAVANを通じて、自分の人生からは想像もできないような人生を歩まれている方々と出会うことができて、なるほどって思うことしかなくて、世界が広がりました。
CARAVANを思い返して頭に浮かぶのは、僕が行った一発目の広島で、ラジオで声を届けてくれていた子がステージに上がって来てくれた光景ですね。
自分で言葉を発して、それが電波に乗ってこもり校長とぺえ教頭に伝わって、さらに広島に足を運んでくれて、実際に会えて。その様子を横から見ていて、SCHOOL OF LOCK! をやってきて良かったって思いました。
彼らにとっても人生の良い瞬間になったらいいなって。毎日は無理かもしれないけれど、何年かに一度でもこういう素敵な瞬間があれば、生きていけるんじゃないかなって思うんです。
自分にとっての居心地の良い社会は「答えを決めない社会」ですかね。
いつの頃からか、まぁみんな答えをはっきりつけたがるなって。みんなが意見を言える時代だから、それは良いところもあるけれど、意見の違う人を受けつけないみたいな面もありますよね。固定された自分の価値観を押し付けたり、相手を打ち負かそうとしたり。
考えが違うもの同士が出会って「なるほど! そういう考えがあるのか、自分はこういうふうに思ってるんだけど」って歩み寄ったり、全部は相容れないけどここの部分は混ざりあったりとか、そういう風にしていけたら良い社会になるんじゃないかなっていうのを最近特に思っています。白か黒かだけでなくてグレーがあってもいいし、もっと曖昧さを許し合っていけたらいいですよね。
プロフィール
とーやま委員(グランジ 遠山大輔さん)
2010年4月から2020年3月までSCHOOL OF LOCK!の校長を10年勤め上げ、退任。
2021年4月からSCHOOL OF LOCK!の教育委員会メンバーに。
委員会では実質的に一番の"若手"。各所からのクレーム・相談・雑用に忙殺される日々。
取材・執筆:平原礼奈(True Colors CARAVAN広報)
撮影:オオハザマノリト
取材日:2022年10月25日
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。