ライター、編集者、プレゼンテーター必見! 会話を「見える化」する次世代アプリ「UDトーク」がすごいんです。【前編】
「文章と話し言葉の中間くらいのコンテンツってなんか面白いかもねw」
Shamrock Records(シャムロックレコード)株式会社代表
青木秀仁さん
目次
青木さんが作ったすごいアプリに一同興奮!
最初にひとこと。この記事はステマではございません(笑)
先日、出前講座をした共用品ネットでは、聞こえない人と聞こえる人をつなぐための字幕表示に「UDトーク」というアプリを活用していました。本日のマゼコゼストの青木さんは、「UDトーク」の開発者です。
この「UDトーク」、ライターなら泣いて喜ぶ「自動テープ起こしツール」としても活用できるとのことで、mazecoze研究所でも即刻導入を決定(法人プランで)!
使い方のレクチャーを受けるときに、青木さんに開発秘話やあれこれ聞いちゃおう、その内容を「UDトーク」に文字起こししてもらって、そのまま記事にしちゃおう〜。というのが今回の取材の趣旨でございます。
取材日は6月8日(水)、公開日は6日10日(金)という、当研究所的には奇跡の超スピードでアップするに至ったこの記事。
以下長文ですが、青木さんのトークをまるごとお楽しみください!
(文章としてご覧いただけるように、15%ほど編集を加えております。でも、テープ起こしとして使う分には編集不要な音声認識レベルです!)
ここからは、「UDトーク」にお任せ……
ひらばる:では青木さん、よろしくお願いします。今日は、初めての取り組みをしているところなんですが、なんと青木さんが開発をしたUDトークというアプリを使って、音声を即時で文字に起こしてもらい、それをそのまんま原稿で出してしまおうという取り組みでございます。
まずUDトークについて青木さんに説明してもらってもよろしいでしょうか。
青木さん:はじめまして、青木と申します。UDトークってアプリを開発しているんですが、これはですね、音声認識を使って、日本語をまず日本語に変えるというところからスタートして、聴覚障害の方とのコミュニケーションもこれでやってみようというふうなアプリです。はい。
開発の動機は不純?
ひらばる:聴覚障害の人とっておっしゃいましたけど、どんな経緯でどんな目的で開発されたのかっていうのを、ぜひ教えてください。
青木さん:はい。よくこういうのを作ってるとなんかすごく社会的な意義だとか、それこそ今だったらオリンピック・パラリンピックとか、福祉の面で見られるんですけども、実は全然そんな動機はなくて、あるとき、難聴者の友達ができたんですよ。
そこで、全然コミュニケーションをとる方法が僕にはなくて。ひらばるさんが仲良くしている松森果林さんなんですが。
彼女と初めて会って、向こうは手話だったり、しゃべりもするんですけども、こっちが言ってることを伝えられなくて。ものすごく興味が湧いたんですね。何とかできないかなと思ったときに、ちょうど僕音声認識の仕事をやっていて。
プログラマーとして、アプリも開発ができるので、この組み合わせで何か作ればコミュニケーションできるんじゃないかなと思ったのがきっかけです。
もう本当にその友達とコミュニケーションをとるために、というのが。
阿部:音声認識の仕事って、どんなものだったんですか?
青木さん:音声認識の技術では実はもう10年以上前から取り組まれてるんですが、認識率が上がらなくて、難しいねって言われた時代がかなり長かったんですよ。
その中で、例えば議事録を作るっていう所に関しては結構音声認識は進んでいて、あまり知られてないんですが、今では多くの自治体なんかでも、音声認識でやってますから。
僕はその音声認識の会社で議事録を作成するシステムを開発したんですよ。で、そこからフリーとして、音声認識を使ったものをもうちょっといくつかアプリで作って、今に至りますと。
超人気アプリも多数輩出
阿部:他には、どんなアプリを作っているのでしょうか。
青木さん:普通のアプリいっぱい作っていて、例えば「声シャッター」ってアプリがあるんですけど。
ひらばる:声シャッター、なんかのアプリ部門で一位を取ってましたよね!
青木さん:そう、ガンガンテレビで紹介されてたくさんでてるんですよ。このアプリでうちの会社有名なくらい。
「UDトーク」の使い方は、ユーザーが想像すればいい
ひらばる:もともと青木さんが持っていた開発者としてのノウハウに、人との出会いとコミュニケーションしたいって気持ちをかけあわせて「UDトーク」が生まれたという話だったんですけど。
聞こえない人とのコミュニケーション支援ツールというのとは違う使い方でmazecoze研究所では、取材後のテープ起このために、このアプリを活用したいと思っています。ほら、どうしても文字起こしを後回しにしちゃう人たちの集まりなので。「UDトーク」なら、取材時にアプリを使ってそのまま文字化してテキストファイルにできたり、レコーダーで録った音源を再生しながら文字化したりもできるって教えてもらったので。
そんな感じで意外と知られてないけど、こんなおもしろい使い方もできるよっていうのがあれば、教えてください。
青木さん:そう。このアプリを福祉関係の人に見せると、日本語を日本語の文字にしてみせるので、聞こえない人のためだよねって当たり前に思うんですけども。僕はそういうとこであんまり展示とかをやらないで、全く関係ないところでやっています。そうすると、まずこのアプリの用途が皆わかんないですよ。
日本語を日本語の文字で見せて何に使うの? って。そこで例えば僕はそういう展示するところでわざと動画の音声を消したりとかして「今動画で何言ってるかわかんないですよね」と、ここで横に字幕があるとわかりますよねって。すごいうるさいとこなんかでも使うとわかりやすいですよねっていうふうな感じの紹介をするんですね。だからまず、紹介をしてくるところで気づきを与える必要があるわけですよ。
「UDトーク」はそのきっかけなんです。アプリのサブタイトルには「コミュニケーション支援・会話の見える化アプリ」ってつけてるんですけども、会話が見えるようになったらわかることが多くなるんですよね。
そして、あとはもう使う人で考えてくださいということになります。
まぜこぜさんみたいな用途もありだし、会議で聞き逃していたことが後からわかるということで気づきを得る人もいるし、僕自身がわからないところを、使う人が発見してくれることもあります、うん。
プレゼンテーションイベントでも常設に
ひらばる:六本木ヒルズでやっている「Hills Breakfast」にも導入されていますよね。それはどういうメリットがあるんでしょうか。
青木さん:はい。「Hills Breakfast」は六本木の朝活イベントなんですが、1ヶ月に1回、六本木で働いてる人や街の人たちが集まって、いろいろ話しています。20枚のスライドを1枚につき20 秒で自動的に送っていって400秒で終わるっていうトークイベントなんですよ。
僕も1回登壇したんですけども、リハーサルを入念にやって400秒で「UDトーク」を全部説明できるようにしていきました。でもプレゼンは、人によるんですね。急いでしゃべる人もいるし、慣れている人もいるし。
喋ることがメインになってくるイベントなので、聴覚障害の人も含めて音声のバリアフリーっていうところとは一番遠いイベントなんですよね。僕は、2年ぐらい前からかかわっていて、音声認識機能向上のために、話す音声を録らせて欲しいというところから始まりました。
それで最近、難聴の方が登壇することもあったりとかして、1回プロジェクターに全部出してやってみたら、次にきた人が、今回は字幕ないのっていうふうに言ったらしくて。
もう面白いからやってみようってことになって今月のHills Breakfast からUDトークが常設になりました。
UDトークです、はいおもしろいねっていうふうなのが、そういう道地が良くて。正直、福祉の目当てで、これは正しいことだからとかやらなきゃいけないとかでなくて。人間の動機はやっぱりエンタテインメントが1番なので、僕はやっぱり音声認識を長年やってきたこともあって、新しい技術ってのに触れてもらいたいんですよね。イベントでもこういうのをやると集客の要素になるとか、あとはサービスとして良いっていうふうなことを皆さんに気付いてもらえればいいかなと、うん。
※「UDトーク」の基本の使い方については、こちらをご覧ください
いじわる言われても、へっちゃら笑
ひらばる:あえて聞こえない人のためにっていう所とはもう全然違うところからプロモーションして、青木さんすら気付いてなかった可能性が見つかってそれもおもしろがってっていうのが、青木さんらしい。
でもそれが実は、なんか聞こえない人にとっても便利ならしいよ、外国の人とも話せちゃうみたいってのが、本当のユニバーサルデザインの形なのかもしれないですね。
ちなみに、文字の認識率の話で、青木さんが取り組みを始めた頃から一緒に活動してたので間近に見ていて、その頃は認識率が良くなくて「やっぱり手話通訳ないとダメだよねー」なんていじわる言ったりしてたんですけども。
ぐんぐん認識率が良くなられて。その仕組みについてもちょっと教えてもらっていいですか。
青木さん:本当みんなにボロクソ言われたよね。多分僕が全然すごい気にしない人間だから今「UDトーク」ができてると思いますよ。じゃなきゃ途中でやめてます。僕、寝たら全然忘れるんでそういうのは、心臓に毛が生えてるぐらいなんで。
音声認識ってのは、多分皆さん考えているようなものではなくて、人工知能みたいなもんじゃないんですよ。辞書検索みたいに、この言葉を入れたら、これに一番近いものを出してくるっていうだけなので、一番点数が高いものが出てくるので。たえば今さっきからまぜこぜ研究所って出ないですよね。平丸さん(本当はひらばる)の名前も出ないですよね。これって辞書に入ってないからなんですよ。
でも逆に、登録すれば簡単に出るんです。もう辞書と同じです。
青木さん:はい。登録しました。これでmazecoze研究所。mazecoze研究所って出します。平原さんも登録したので出ると思います。
法人契約だったら、法人のアカウントに対して一括で登録することもできます。組織名とかそういうのは想定して登録した方がいいですね。あと各自の端末アプリ中でも登録できるので、自分しか使わない言葉とか、自分の名前なんかはそちらで登録しておいてもいい。何かで使うときは両方の辞書が交わって一緒に使えるので、自分用にカスタマイズと団体での共通の単語登録と2 個に分けて使うのがいいかなと思います。
だいたい全部できる無料プランと、法人プランの違いは
ひらばる:ここで今「法人契約」と言う話が出ましたので、ぜひ青木さんにはPR も含めて。「UDトーク」ってまず無料のアプリがあるんですよね。その無料のアプリと法人プランの違いだったり、こういうふうな企業さんぜひ使ってくださいっていうのを教えてもらってもいいですか。
青木さん:よくこれどこでお金を稼いでるのかなというふうに言われるんですけども、まずこれって誰が使うかで考えると、聴覚障害の人が使うわけじゃないんですよ。よく障害者支援とか自立支援とかって、障害者本人が使うものって多いんですけども、聴覚障害の人が自分で使うのって少ないんですよ。補聴器とか、筆談ツールとかですよね。こういうコミュニケーションツールで誰が持たなきゃいけないかって考えると、周りの人なんです。友達とか、家族とか。
福祉器具って高いじゃないですか。補助金が出るとかそういうのもあって多分ね高いんですけども。
周りの人って、一般の人なんでお金は払わないんですよね。で。アプリでも大体無料がスタンダードになってきているので、だったら「UDトーク」は障害者の周りの普通の人が使うんで、まず無料であるべきだなと思いました。
じゃないと広がらない。無料で全部使えるわけではなくて、コミュニケーションでは、他の事は足りるというところで機能制限をつけてます。それはアプリの中の課金とかで解除していけるんですけども、大体無料のもので、普通のコミュニケーションが全部できるように作ってあります。
機能制限できることの制限をしないってことも結構重要で、そうしないと想像できないですよね。実際にやってみないと、例えばこういう機能があるんですよって話をしても、やっぱり体験しないとわからないんですよ。うん。なので「UDトーク」は全部できます。しゃべって筆談で書いたりだとか、バーコードでつないだりとか。
青木さん:ここからもっとビジネスの話になりますけども、やっぱり一般企業とかそういう営利目的で使う場合に関しては法人契約をして、次からちゃんとサポートと一緒に提供しますよっていうふうなビジネスをやってます。
あとやっぱり音声データですよね。このしゃべった音声データの行き先って皆さん気になるんですよ。うん。Google にしてもApple にしても全部音声認識機能が中にありますけれども、あれは全部、セキュリティー管理の元に音声認識をやってる会社が保存をして音声認識の向上のために再利用をしていたりします。LINEとかFacebook も全部同じで、無料で使ってるアプリってのは情報を払ってますよ。でも、法人契約の場合は、この音声に関しては音声認識用に保存をしません。なので、セキュリティーとかコンプライアンスとか、そういう問題を会社でクリアできますよっていうところを売りにしてます。
ただこれも時代の流れとともに、もう来年ぐらいに議論してない可能性はあります。こういうのデータというのは全部収集して蓄積していって再利用するってことが当たり前になってきてるので。
阿部:ただ、日本企業だとそういうことに関してものすごくハードルが高いというか。
青木さん:はい。はい。あります。なので、法人契約の導入が今すごい進んでいます。去年から法人向けプランを始めたんですけど、1年間で50社ぐらい契約が取れて。始めは1年に5社ぐらい取れればいいかなと思ってたんで。やっぱりすごいニーズがあるというか、それでどんどん契約が決まってて。やっぱり4月からの障害者差別解消法のあおりもあって、どんどん契約件数は増えている感じです。はい。
阿部:高いハードルを逆手にとって法人契約を伸ばしてらっしゃるってことなんですね。
障害者対応からインバウンド対応まで境界線なし
ひらばる:あと、語学の話もぜひ教えてください。
青木さん:はい。今ってやっぱり障害者用にって形で導入しているところが多いですけども、なかなか障害者の対応だけでお金を出すというところで見ると、もちろん出してるところはいっぱいあるんですけども。予算は出づらいってのが現状です。
自治体もそうですけども、UDトークはさっきも言いましたように、議事録をとったりだとか、あとは講演とかをわかりやすいようにできるというふうなことで障害者対応以外の価値っていうのをうちの方で売りにしてますと。
でも今一番ビジネスをしやすい、お金を出しやすいのは何かっていうと、もうインバウンド対応です。外国人対応窓口とかでもちろん営業の人なんかでも、そのやりとりをするのに使えますってなると。
世の中の通訳機能の開発をしている会社って、外国人対応との障害者の情報バリアフリー対応で分けて考えてるんですよ。何か外国語対応というと、日本語が入ってないんですよ。
でもよく考えると日本人なのに日本語が通じないって難聴者ですね。聴覚障害者ってことは外国人対応で全部まかなえるんです。だから「UDトーク」には翻訳機能も付いています。
青木さん:日本語と英語の同時翻訳をすれば、今この場所に英語がわかる人と聴覚障害がある人が同席したって同じものでわかりますよね。各自の手元で翻訳設定もできるので、同じ場所にもちろんフランス人、アメリカ人がいても、同じもので全部対応ができるんですよ。
外国人対応と情報バリアフリーってのを一緒に考えていけば予算も出やすいし、対応していきやすいというところで、翻訳機能も「UDトーク」につけてPR をしています。
ひらばる:まさに、開発視点がまぜこぜですね。分けすぎなんですよね、世の中。
青木さん:うん。うん。だからこれだとお金が出しやすくなるわけですよ。結局お金が出しやすくなったとこに、障害者対応もつけてあげればいいわけなんですよね。うん。名目は何でも良くて、結果的によくなればいいんですよ。別に障害者対応がすごい正しいことだから、これがメインじゃなきゃいけないなっていうのは、僕はくだらないと思うので。
ひらばる:まぜこぜが立ち上がったのも同じで、いろんな境界がありすぎて逆にがんじがらめになって、いろんな人が暮らしにくさや働きにくさを感じていると。まぜこぜだったら痒い所にも手が届いて皆が良くなるっていう。そんな感じでやってるので、青木さんの視点には共感しまくりですよっていう。
青木さん:ありがとうございます。
阿部:そもそも境界線を作るっていう発想がないんじゃないですか、青木さんって多分。
青木さん:はい。それはあると思います。境界線を作る前に作っちゃってるんですよ、モノを。多分一般の会社だったら、マーケティングしてどこにターゲットがあるからこういうものを作ろうという発想なんですけども。僕ホントにプレスリリースとかを待てないぐらい作って出したいんですよ。
なので営業戦略とかっていうのは一応僕の中ではあるんですけどもやっぱり普通のそういう戦略とは違うんですよね。とりあえず使えるものは使って。
たとえば「UDトーク」の今の翻訳とかにしても恐らく精度は、7割8割ぐらいですよ。でも別にだからと言って世の中に出していけないわけじゃなくて、7割8割も使えるし、まずそれを出してみましょうと。それで使いたい人は使ってくださいと。
とにかく面白いものは作って出すことによって、それを使えるっていう判断をする人がいたら使っていいという、そういう感じですよね。
ただ、アプリに関してはいろんなものを全部入れすぎるとバランスが悪くなるので、そこには注意しながら開発をしてます。以前からのユーザーの使い勝手が変わらないようにとことがやっぱり大前提なので。うん。それが変わらないように新しい機能を付けるっていうところは非常に難しいですよね。実際に組み込むのはすごい簡単だけども、そこの部分に非常に悩んで開発して、時間をかけることってのはあります。うん。
開発秘話を聞けたところで、次はよりディープな青木さんへと迫ります。次号もどうぞお楽しみに!
(ライティング:UDトーク/取材・編集:ひらばるれな)
後編→
プロフィール:青木 秀仁(あおき ひでひと)さん
Shamrock Records(シャムロック・レコード)株式会社 代表取締役。
作曲家、編曲家、プログラマ。アイリッシュミュージシャン。奥様と二匹のワンコ、さくらさん、もみじさんと暮らしている。ラーメンが好き。
Shamrock Records http://shamrock-records.jp
UDトーク http://udtalk.jp
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。