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新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」レポート!

mazecoze研究所 │ 2020.12.10

視覚障害者からの問いかけ」体験レポートが届きました!

こんにちは。mazecoze研究所です。
先日お知らせしたタキザワケイタ氏率いるPLAYWORKS Inc.による「視覚障害者からの問いかけ」体験ワークショップのレポートを、ゆみこさんが寄稿してくださいました!(画像はご参加の方に許可をとっていただき掲載しています)

ワークショップ発案のきっかけは?

2020年12月上旬、一般社団法人PLAYERS主催の新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」に参加しました。いったいどんなオンラインワークショップなのでしょうか?体験レポートをお届けします。

PLAYERSとは?
一般社団法人PLAYERSとは、「一緒になってワクワクし 世の中の問題に立ち向かう」をスローガンに活動する、多様なプロフェッショナルからなるプロボノチームです。本業はデザイナー、エンジニア、コピーライター、広報、弁護士などさまざま。メンバーには障害のある方もいて、それぞれの専門性を活かして活動されています。今回新しくスタートした「視覚障害者からの問いかけ」は、視覚障害のあるメンバーにより発案されたそうです。

発案のきっかけは?
本ワークショップは、「視覚障害のある」人からの問いに、「視覚障害のない」人が答えるという、新感覚のダイアログワークショップ。PLAYERSのメンバーで視覚障害のある中川テルヒロさんが、自身の「視覚障害者は健常者から質問されることは多いが、逆はほとんどない」という経験から着想を得て開発したのだそう。

「視覚障害者からの問いかけ」を発案者の中川テルヒロさん

【中川テルヒロ氏 プロフィール】
一般社団法人PLAYERS 理事
後天性かつ進行性の視覚障害のため、左目が全盲、右目の視野が健常者の1%という状態。ライフコーチとして主にクライアントの恋愛・結婚の悩みをサポートしている。また、PLAYERSのメンバーとして社会課題の解決に取り組んでいるほか、ユニバーサルマナー検定の講師やソフトウエア開発を行なっている。

日本点字制定記念日である11月1日に活動を本格スタートし、点字プレスリリースを制作するなど、視覚障害のある方への情報発信も積極的に行われています。

点字プレスリリース

「視覚障害者からの問いかけ」スタート!

今回のオンラインワークショップでは、オンラインビデオツール「Zoom」を使用しました。参加者は、視覚障害のない人8名、視覚障害のある人4名の合計12名でした。

最初に、PLAYERSリーダーのタキザワケイタさんから、「視覚障害者からの問いかけ」に関して簡単な説明があり、次にファシリテーターをつとめる中川テルヒロさんの進行により、参加者全員が自己紹介を行いました。

PLAYERSリーダー タキザワさんによる趣旨説明

【プログラム概要】

  • 参加者の自己紹介
  • 視覚障害のある人の座談会
  • 視覚障害のある人と視覚障害のない人の対話(グループを入れ替えて3回実施)
  • 気づきの共有

視覚障害のある人の座談会

自己紹介の後、「視覚障害のある人の座談会」がはじまりました。中川さんの「普段どんなデバイス(パソコン・タブレット・スマートフォン)を使っていますか?」という問いかけからスタート!

弱視の男性は、普段はパソコンとiPhoneを使っているそうです。iPhoneでは、「VoiceOver」という画面の読み上げ機能を使いますが、パソコンでは読み上げ機能は使わず、画面の拡大や解像度の変更をしているとのことでした。他には、「Envision AI」というアプリを使い、本などを撮影し文字の読み上げを行うこともあるそうです。

弱視から全盲になった女性は、らくらくホンを使用し、見えていた時は白黒反転機能、見えなくなってからは音声読み上げ機能を使っているそうです。また、パソコンでは、「PC-Talker」という音声読み上げソフトを使っています。今回のワークショップは、iPadから参加しており、そちらでは「VoiceOver」機能を使っているとのことでした。他にも「OrCam(オーカム)」という、メガネに取り付けることで、文字の読み上げや顔の認識、色の識別などの視覚情報を伝えてくれる音声デバイスを使うこともあります。人に助けてもらう時は、相手の都合により待ち時間が生まれることがありますが、「OrCam(オーカム)」があることで、一人時間が有意義に過ごせるそうです。

もう一人の全盲の女性は、iPhoneの「VoiceOver」や、家族がいないときは、「Be My Eyes」というアプリを使っているそうです。「Be My Eyes」は、アプリに登録したサポーターと呼ばれるボランティアの人が、ビデオ通話を通じて視覚的支援を提供するボランティアアプリです。視覚障害のある人が困った時にコールを鳴らすと、サポーターの方とつながり、ビデオ通話を通して必要な支援を受けることができます。他にも「Seeing AI」というアプリを使って、文字の読み上げや色の識別、お金の識別などをすることもあるそうです。

一言で“視覚障害”といっても、弱視や全盲などその程度はさまざまです。同じ弱視であっても、様々な見え方があり、困りごとにも個人差があります。使用しているデバイスについても、3人それぞれの生活スタイルや見え方に応じて選択されていることがわかりました。

視覚障害のある人の座談会の様子

次に、本ワークショップの発案のきっかけとなった、中川さんの「視覚障害者は健常者から質問されることは多いが、逆はほとんどない」という経験にもとづき、「視覚障害があることで、目の見える人から質問をされることはありますか?」という話題へ。

弱視の男性の方は、「どんなふうに見えるの?」と聞かれることが多いそうです。よく聞かれる質問のため、答える内容については定型文ができてしまい、「駅のホームの電光掲示板は見えるが、行き先までは見えない」と答えているとのことでした。

弱視から全盲になった女性は、見えていた時の方がよく質問をされたそうです。現在は、見えなくなってからもピアニストとして演奏活動をしているため、「どうやってピアノを弾いているのですか?」と聞かれることが多く、「まず、middleCの延長線上におへそがくるように座って…」と答えているとのこと。

もう一人の全盲の女性は、小学校などに講話に行くことがあるため、子どもたちから日常生活に関して、「メイクはどうしていますか?」「お料理どうしていますか?」と質問されることが多いそうです。日常生活に関しては、視覚障害があってもワンポイントをプラスすれば自分で出来ることは多いため、障害のある人の暮らしを知ってもらうためにも、子どもたちとの交流は重要だとおっしゃっていました。

街なかで視覚障害者に声かけをしたことはありますか?

ここまで視覚障害のない参加者は、マイクをミュートにしてお話を聞いていたのですが、中川さんから参加者に対して、「街なかで視覚障害者に声かけをしたことはありますか?」との問いかけがありました。参加者は、Zoom の投票機能により、「ある」「ない」を選択します。

「Zoom」の投票機能によるアンケート

参加者全員で問いを共有することで、今後の対話のメージを膨らませました。この後のグループに分かれての対話では、どのような「視覚障害者からの問いかけ」があるのでしょうか?

どのような対話が行われたの?

いよいよ、「Zoom」のブレイクアウト機能でグループに分かれ、20分の対話を行います。視覚障害のある人1名に対して、視覚障害のない人2名の4グループに分かれ、メンバーをシャッフルして、合計3回行われました。

最初のグループでは、先ほどの「街なかで視覚障害のある人に声かけをしたことはありますか?」という問いかけを深く掘り下げる形で対話が展開しました。「視覚障害のある人を見かけた時に、どのような考えを巡らせますか?」「『視覚障害のある人に声かけをしたことがない』と答えることに罪悪感を感じますか?」「視覚障害のある人に声かけをして、『大丈夫です』と断られることは怖いですか?」との問いかけがありました。視覚障害のある人が助けを求める場合、助けてくれる人がどこにいるかがわからず、闇雲に声をかけることもあるそうです。一方、目が見える人の場合、周囲を見渡して助けてくれそうな人を探し、相手と目を合わせ会釈をしてから話しかけることができます。そうしたあたりまえの違いについて、あらためて気づくことができました。

2回目のグループは、「視覚障害のある人に対するイメージはどのようなものですか?」という問いかけからはじまりました。次に、「観光地に行った」という設定で、「スカイツリーってどんな感じですか?」「東京タワーってどんな感じですか?」「東京都庁ってどんな感じですか?」という、ユニークな問いかけがありました。それぞれが自分の記憶をもとに、視覚障害のある人にもわかりやすく伝わる表現を考えました。最後は、「数年付き合っているパートナーが、ある日突然目が見えなくなったら、この先どうしますか?」「視覚障害のある人を恋愛対象としてみることはできますか?」という、自分ごととして深く考えさせられる問いかけでした。

3回目のグループでは、まず「障害のある人は身近ですか?」という問いかけがありました。問いかけをした全盲の女性は、人生の大半を弱視で過ごし、さらに日本とアメリカの両方で暮らしてきたそうなのですが、日本特有の経験として、「本当に見えないのですか?」と疑われるような質問をされることがあったそうです。そうした経験から、「弱視であることに疑いをもつ人の気持ちはわかりますか?」「視覚障害があることを疑わないのはなぜですか?」「障害を証明できるものをもっていたら疑うことはなくなりますか?」という問いかけがありました。最後に、見える人から「弱視を疑う人はどういう関係性ですか?」という逆質問が出るほど、外見からはわからない障害への理解について考えさせられる問いかけでした。

気づきの共有

最後に、参加者全員でふりかえりを行いました。その一部をご紹介したいと思います。

■視覚障害のある人

  • 長いようで短かったです。幸せな気分になりました。
  • 気になっていたことを素直に聞いてみました。初めて話す方には聞きづらいことも聞けたのでよかったです。
  • 2時間半というプログラムの中で、参加者同士が対話を重ねることで、お互いの距離が縮まっていくことを感覚的に感じることができました。楽しかったし感動しました。

■視覚障害のない人

  • グループにわかれて、3回もじっくり話すというのは新鮮な体験でした。視覚障害のある人によって問いかけの内容が全く違ったので、気になっていることはそれぞれ違うことがわかりました。視覚障害があっても同じ人間であり、それぞれの性格や感性が違うということを感じることができました。
  • 楽しくてもっとお話したいと思いました。とてもよいプログラムだと思うので、例えば中高生などに参加してもらうと、より効果があるのではないかと思いました。
  • 普段から仕事で視覚障害のある人の支援をしていますが、問いかけを通じて、今までいかに自分ごととして考えていなかったということに気づかされました。今後の支援の方向性などにも新しい気づきがありました。
  • 視覚障害のある人に対しては、見える人の立場から視覚障害のある人を理解しようという、上から目線のアプローチになりがちなので、立場が逆転するのは衝撃的な体験でした。
  • 参加前はどんな質問をされるのか不安もありましたが、参加してみたら楽しかったです。あっという間で時間が足りないくらいでした。

最後に

新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」は、体験ワークショップも開催しています。読者の皆さまも、ご自宅や学校、会社から、オンラインで気軽に参加してみませんか? 詳細や参加の申し込みについては、下記Webサイトをご覧ください。

「視覚障害者からの問いかけ」体験ワークショップ今後の予定

【日にち】2021年1月26日(火)/2021年2月16日(火)
【時間】18:30〜21:00
【会場】Zoom
【参加者】健常者6名/視覚障害者3名
【参加費】無料
【公式Webサイト】 https://toikake-blind.jp/

最後になりますが、ワークショップでご一緒した皆さま、楽しい時間をどうもありがとうございました!

寄稿・画像提供 ゆみこ)

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