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第1回:土はどこからやってきた?

©︎柿内未央
 

農業は想像力だ! 自然栽培コラム、始めます!

こんにちは! 明石農園の明石誠一です。
埼玉県入間郡三芳町で、自然栽培の農家をやっています。
代々の農家ではなく、2003年に脱サラして新規就農しました。
自然とかかわる仕事がしたい。追求した結果、行き着いたのが、縁もゆかりもない農業でした。
実家は都内のマンション。初めは土地なし、お金なし、ツテなし、技術なし! 何もかもがゼロからのスタート。よくここまで続けてきていると、振り返ってみると思います。

そんな私ですが、かねてから活動を共にしているmazecoze研究所のひらばるさんに飲み会の時にやや強引に誘われて、ここでコラムを書くことになりました(笑)
常々「農業に必要なのは想像力だ」「タネがあれば自由だ」と言っているのですが、「それを生き方とつなげてコラムで書いて欲しい」と。

農業は、目に見えない世界です。
できた野菜を見て、環境にふれて、感じ取る。壮大な自然のしくみの、分かり得ないことばかりの中で、「きっと」、「だろうな」と察することを積み重ねて、核心に近づいていく日々。そしてそれは、人の生き方にも深い示唆を与えてくれる、そう実感しています。

これから自然栽培を根っこに、人の生き方や共生社会について思うことなど、書いていきたいと思います。よろしくお願いします!

土と人との見えないつながり

©︎柿内未央

タネは固定種で農薬、肥料を使わない生物多様性を活かした栽培のことを自然栽培と言います(ちなみに自然栽培の中にも、色々な捉え方や実践方法があります)
なんのこっちゃ? 固定種? 肥料を使わないで野菜が育つ? 生物多様性で栽培? 「怪しいなぁ…」、と思うのが普通。
でも、できるんです。自然の森や林に誰か肥料を撒きに行きますか? 誰も肥料を撒かずにあんなに大きな木が育つ?
「そりゃそうだよ、森は自然で植物だもの。落ち葉も落ちてくるしね。野菜は収穫していくから養分が減っていくはず」
その通りです。森は自然です。でも野菜も植物、自然なんです。ちょっとした自然の摂理を利用すれば地力の回復はできます。

そう言えば、我々人間もヒト科の哺乳類。自然から生まれた生物ですね。
よく「人工」と「自然」を対比させることがありますが、ヒトは自然の枠を超えることは決してあり得ません。私たちは自然の一部なんですね。

「自然の摂理を利用して、地力を回復させる、ってどうやるの?」
その答えの前に、「土」ってどうやってできたのでしょうか?

まず、地球には初めから土が張り付いていたのでしょうか? 答えはNoです。
ネット動画でも見ることができますが、地球は隕石がぶつかり合ってだんだん大きな惑星になっていきました。初めはマグマのかたまり。隕石の中に含まれていた水分が、マグマの熱で蒸発。マグマが冷やされて溶岩となりました。雨が降って海が生まれ、火山活動で陸地が生まれていきます。

そして……その上にいきなり土が「ドカッ!」と……
降ってはきません。

では、まず初めに岩に取り付く植物はなんでしょうか? それは、苔や地衣類です。苔はいつまでも青いように見えますが、実は少しずつ枯れています。枯れた植物はいつの間にか無くなっていますが、どこへ行っているのでしょうか?「風で飛んで行った?」「細かくなって見えなくなった?」これまで、何万年と地球上でどれだけの枯れた枝葉が出てきたのでしょうか?それらはどこへ行ったのでしょうか?

それは虫や微生物が食べているのです。
虫も我々と同じくお腹が空いたら食事をしています。食事をすると、出るものもありますね。私たちと同じものが出てきます。「フン」と言ったりします。
「虫のフンが土?!そんなバカな!?キッタネー!フンを触っていたのかー!」
実はそうなんです。すいません(私が謝っても、これが自然の摂理)。

土は、生物多様性からはじまる小宇宙

「虫のフンが土」。
では、土はどうやって増えていくのでしょうか?
溶岩に苔や地衣類が生え少し土ができます。少しできた土に雑草のような草(1年生草本)が生えます。さらに土が増えます。今度は根が残って葉を茂らせる多年草が生えます。多年草は生育が早いのでどんどん土が増えていきます。すると次は低木が生えてきます。更に土が増えていき、次は落ち葉が落ちる広葉樹が生え、そして1年中緑のままの常緑樹が生え、最後に極相林というこれ以上変わらない安定した状態になります。

このように、徐々に生える植物の種類が変化していくことを、生物学では「植生遷移」と言います。野菜と呼んでいる植物は雑草(1年生草本)や多年草のことを言います。だからそのステージの土を準備してあげれば、野菜は育つという訳です。

虫のフンが積み重なった状態を農業専門用語で「団粒構造」と言います。土に隙間のある、ホロホロと触ると気持ちのいい柔らかさの土です。そして、虫の腸内にも私たちと同じく腸内細菌がたくさんいます。そんな虫の腸内を通って出てきた土10gの中に1兆個もの生命体がいるのです(農学者 横山和成氏談)。まさに小宇宙ですね。「土の中は99%解明できていない!」と、土壌学者さんが言っていました。
なんと!全くわかっていない世界なんですね。

家庭菜園を始めたばかりの人に起こるあるあるですが、先輩家庭菜園家のみなさまに「あーしたらいい、こーしたらいい」と言われるので、どれが正解かわからなくなる〜。と、よく聞きます。諸先輩方は善意で言ってくれているので、そこはありがたく聞いてください。でも言っていることはまちまち、いろんなことを教えてくれます。
実は農家の方々も10人いたら10通りのやり方があります。つまりみんな分からないっていうことだと思うんです。「え!分からずにやっているの?!そんなことで日本の食料を任せていいのか!?」
でも、大丈夫です。長年の経験からこうやったらこうなると言うのは分かる。データ化もある程度することができます。でも、毎年同じようにやっても、同じようには育たない。これは農家さんの正直な言葉です。それぐらい分からない世界がみなさんの立っている足元に広がっているのです。
「ワーオ!まさに小宇宙」

そして実は、足元にいる天文学的数の微生物が植物に養分を与えています!

植物に必要な三大栄養素は「チッソ、リン酸、カリ」です。土壌中にリンは1万年分、カリは数千年分存在していることが分かっています。チッソは窒素固定菌という微生物が空気中のチッソを土の中に固定して、植物に供給してくれます。肥料を入れなくても植物は土壌微生物によって養分供給され、二酸化炭素と水と光合成で育つことができるんです。これが肥料を入れなくても野菜(植物)が育つ理由です。今でも新しい窒素固定菌は発見されているんですよ(99%未知なる世界ですからね〜)。

微生物はその代わりに植物からお返しもいただいているのです。これを共生関係と言います。お互いさま、持ちつ持たれつな関係ですね。微生物が多様なほど、植物がよく育つというデータの相関関係も出ています。だから生物多様性は大事なんですね。

人間も、自然の一部。すぐそこに迫る可能性

©︎柿内未央

しかし! 2019年4月にBiological Conservation誌で発表された論文共著者でシドニー大学の環境生物学者フランシスコ・サンチェス=バイヨ氏は「昆虫はあと100年で全滅」の可能性を指摘しました。
蛾やミツバチがいなくなったら、植物の受粉が出来なくなります。土を作る虫がいなくなったら、土はできません。昆虫がいなくては生物は死に絶えることになります。
私たちは地球で生活もできないのに、違う星へ移住して、そこでは永続的な生活ができますか?
今ある足元を自然の摂理から学び、より良いものを選択しましょう。一人一人が選べば、変わります。

「効率」をもっとよく深く考えてみませんか?
薬で害虫を殺すことが効率的なのか?自然の摂理を利用することが効率的なのか?
害虫は土を作ってくれていたんですよね!答えは見えていると思います。

さて、次回はタネについて。お楽しみに!

明石 誠一

明石農園代表
あかし野菜
タネは固定種で農薬、肥料を使わない生物多様性を活かした自然栽培農家。農業サイドから福祉やコミュニティ作りを行なっている。
畑や林でのイベント主催、農業指導、共著書籍も出版。明石農園が舞台となるドキュメンタリー映画「お百姓さんになりたい」も2019年より全国で上映されている。林の演奏会や家庭菜園をコミュニティの場としてさらに拡大中。大学までサッカーに夢中。美術好き。3児の父親で、晩酌が楽しみ。お休みは家族でキャンプ。
(写真:©︎柿内未央
http://tomomusubi.com

mazecoze研究所 ダイバーシティのミカタ
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