生き方や価値観を尊重されるのは人間だけなのか
「日本写真芸術専門学校」3年制写真科フォトソーシャルビジネスゼミ(PSBゼミ) × mazecoze研究所 特別企画!
フォトソーシャル科の学生さんたちに、“いま自分がもっとも関心があるソーシャルトピックス”について取材・執筆していただきました。
- 導入:いまを生きる若者たちと考える多様性とそのアクション
- 第1弾:生き方や価値観を尊重されるのは人間だけなのか(この記事)
目次
生き方や価値観を尊重されるのは人間だけなのか
はじめまして。日本写真芸術専門学校フォトソーシャルビジネスゼミ2年の大竹理菜と申します。
今回記事を書かせていただけるということで、私が大好きな動物に関して書いてみたいと思います。授業で多様性ということを学んだ時「生き方や価値観を尊重されるのは人間だけなのか」という疑問を感じました。
多様性とは、性別や人種、年齢、障害、価値観、などのことです。これを言葉や文字にできるのは人間だけですが、犬や猫などの生き物たちにも多様性というものは当てはまるのではないかと思います。
それは私が保護動物に興味を持っているから、余計に感じたのかもしれません。
保護動物・地域猫を知ったきっかけ
私が保護動物を知ったのは志村けんさんの「天才!志村どうぶつ園」という動物番組です。小さい頃から動物が大好きだったので、この番組が大好きでした。
その中で『保護動物』をテーマにしたコーナーがありました。そこで、殺処分という現状を知り、心や体に傷を負った動物の存在を知りました。それまでは、犬は人が好きという勝手な考えを持っていました。番組の中で志村さんが保護犬に優しく声をかける姿、無理はせず動物優先で行動する姿を見て、私も動物と真摯に向き合うことを心がけたいと思いました。
それから保護動物や殺処分について調べたり、考えたりするようになりました。ペットショップで子犬や子猫が売れている一方で、多くの犬や猫が殺処分されている現状を知りどうにかしたいという思いが強くなっていきました。
そして高校生の時、近所で弱った子猫を見つけて保護しました。病院へ行くとお腹に大量の虫がいることが判明し、治療が始まりました。時にはうんちまみれになりながらお世話をし、今では、元気に過ごしています。
しかし、私は犬を飼ってみたかったので猫は想定外でした。家族も猫を飼った経験がなかったので猫について必死に調べました。調べて行く中で、地域猫という存在を知りました。そこから、地域猫活動についても調べるようになりました。
地域猫との出会い
地域猫というのは、TNR活動とも呼ばれ、
Trap(トラップ) :飼い主のいない猫を一度捕獲し、
Neuter(ニューター):去勢避妊手術をした後、
Return(リターン) :元いた場所に戻す活動です。
手術の印に耳にV字のカットを入れます。手術の麻酔中にカットするので痛みはなく、その後の生活にも支障はありません。このカットされた耳の形がさくらの花びらのように見えることから別名「さくら猫」とも呼ばれています。
手術をするのは可哀想という人もいます。しかし、その一方で多くの猫が殺処分されているという現状があります。今を生きる一代限りの命を見守っていく活動です。
この活動を知ってから家の近くにいる猫が地域猫だということを知り、地域猫活動をしている方にお話を聞いたりして、家の近くにいる地域猫をお世話するようになりました。
また、学校の研修で長野県の小諸市に行った際には、小諸市で活動されているボランティアの方にお話を聞いたり、一斉手術の現場を見学させていただいたりしました。
一斉手術というのは、ボランティア団体や個人が手術したい猫を連れてきて、獣医さんが流れるように手術していく現場でした。獣医さんのご都合で不定期にはなるのですが、1日に20〜50匹の手術をしているそうです。
この活動に関わってきたことで感じた一番の問題は、地域猫という存在がまだまだ浸透していないことだと思います。
ボランティアさんのお話を聞く中で「生まれた子猫を川へ捨てていた」という現場がありました。当事者の方は決して猫が嫌いだったのではありません。 お世話していた猫が子猫を産み増えてしまい、近所からどうにかしてくれと言われ、どう対処していいかわからず、仕方なく川へ捨てていたのです。
猫の問題を抱えた方の多くは、手術や地域猫という手段を知りません。多くの方は猫たちを保健所に連れて行かれ殺処分されてしまうと思っているのです。
なので、この活動をより多くの人に知ってもらう必要があると思います。
>参考:公益財団法人どうぶつ基金
>参考:公益財団法人日本動物愛護協会
わんだん邸との出会い
専門学校に入学し、私たちに出た課題は「自分の好きなテーマで取材をする」というものでした。
私は動物についてやりたいと思ったので、家の近くで保護動物について取材ができないかと探しました。その頃、ちょうどコロナが流行していて取材先に断られ続けていました。そんな中、取材を快諾してくださったのが「わんだん邸」でした。
わんだん邸はオープン型の保護犬のシェルターで、実際に保護犬と触れ合ったり、遊んだり、おやつをあげたりすることができます。
そこではわんだん邸にいる犬たちが保護された経緯を教えてくださいました。
例えば、日本の各地域にはまだ野犬がいて、法律で保護しないといけません。そこで保護され保健所に収容された子。飼い主のアレルギーや離婚、看取りたくない、想像と違った、など理不尽な理由からもう飼えないと飼育放棄された子。飼い主が亡くなり取り残されていた子。不妊手術をしないまま繁殖し増えてしまい、手がつけられない状態になった多頭飼育崩壊現場にいた子。ペットショップで売られている子犬を産むだけのために飼育されていた元繁殖犬の子。など、様々な理由で保護されていました。
お話を聞いていて、私にも何かできることがないかと思いました。一つはこの現実を写真やSNSなどでより多くの人に知ってもらうことです。
そして、わんだん邸では掃除やお散歩などお世話のボランティアを募集していることを知り、ボランティアに参加するようになりました。
ボランティアに参加することで、犬たちとの距離が段々と縮まることを実感できました。近づいてこなかった子が撫でさせてくれるようになったり、普段見せない行動をしたり、発見と感動の連続でした。
わんだん邸で実際に心や体に傷を負った犬たちと接し、お互いに理解しあうことが大切だと感じました。
犬を人に慣れさせるのではなく、人間がその子を理解し、長い時間をかけてお互いに歩み寄ることで、信頼や絆が生まれることを知りました。
あらゆる生き物にも多様性を考えるべき
多様性という言葉は人間が使うものですが、あらゆる生き物に必要なものなのではないかと思います。
あらゆる生き物はそれぞれ生き方や価値観を持っているものだと思います。そしてそれを人間が強制することは違うと思います。
私は地域猫や保護動物のことを考えたり、実際に接してみることで生き物が人間に合わせるのではなく、お互いがお互いのことを受け入れ、思いやる関係になることが大切だと思いました。
そして、この多様性を言葉や文章で伝えることができるのは人間だけだと思います。なので、生き物が含まれた「多様性」が広がっていくことで、不幸な生き物が減り、生き物たちと共生していけるのではないかと思います。
プロフィール 大竹理菜
東京都小平市出身。小学校の頃に写真に興味を持ち始める。撮影した写真を友達に渡した時、喜んでもらえたのをきっかけに写真の仕事を目指すように。
高校では、廃部寸前だった写真部に所属し、初期メンバー4人から卒業時12人まで増やす。
小さい頃から動物が好きで、子猫を拾ったことから保護動物に興味を持つ。
保護動物に興味を持ったことから、写真やデザインを使い地方活性や問題解決をしていく方法を学べるこのフォトソーシャルビジネスゼミを選択する。
家では2匹の保護猫、そして家の周りの地域猫をお世話している。
「わんだん邸」という保護犬のシェルターでお世話のボランティアをしながら、撮影や取材を進める。