〈ノウフク×〇〇〉花の木農場Ⅳツクルプロジェクト
※この記事は、ノウフクWEBの「ノウフクマガジン」で掲載されたコラムを、mazecoze研究所でも転載するものです。
目次
天野雄一郎と申します!!
みなさんこんにちは。ノウフク・ラボ運営チームの天野です。
いきなりですが、初めてのコラムなので少し自己紹介をさせて下さい。
普段は、鹿児島県の右の下、本土最南端は南大隅町にある社会福祉法人白鳩会が運営する花の木農場で働いております。花の木農場は農福連携を約50年前から続けていて、38haもの広大な敷地で、障がいを持つ130名もの利用者さんが、日々、農業や畜産、加工部門でのプロダクト作り、レストランの接客などに励んでいます。
とっても素晴らしい農場です。
全国から多様な方々(変人?!)が集まり様々なプロジェクトを進めているこのノウフクの活動には、私自身は3年前くらいから参加しており、ノウフクの持つ可能性と価値に魅了され、ノウフクに居場所を見出した一人でもあります。
出身は福岡県。県内の普通高校を卒業し、専攻の経済学をろくに学ばず世界を放浪ばかりしていた大学時代を経て、卒業後は大手の旅行会社で働きました。そこでは10年ほど、教育旅行や法人旅行、グリーンツーリズムなど様々な経験をいたしましたが、働き過ぎたのか、何なのか。心も体も病気になってしまったのです。自分の病を機に、「人にとっての豊かさって、何なんだろう」と考え始めるようになりました。たくさん悩みましたが、思い切って仕事を辞め、家族4人で移住する決断をし、紆余曲折を経て、花の木農場の末席に加えて頂くことになったのです。
在住の錦江町(きんこうちょう)ではまちづくりの活動にも携わっています。
そして、身近な変革のため、来年、地元の仲間と共に起業予定です。
ノウフクの仲間と共に、私がお伝えしていきたいこと。
前置きが長くなりましたが、そんな私天野が担当するコラムでは、花の木農場が実践している又は私個人で考えている「ノウフク×〇〇」の〇〇の部分を、探求や挑戦や迷いや違和感やモヤモヤをストレートにお伝えしながら、本音をお届けしていきたいと思います。
農業、福祉、そして、現在暮らしている町からしても、私はヨソモノです。
それによって孤独を感じたり、自信を失ったりしてしまいそうになることもままありますが、同時に、「ヨソモノマインド」を忘れたくないな、とも思うのです。それは、例えばノウフクの価値が多様な方々の関わりによって輝きを増し続けているように、ヨソモノで在り続けることが、既存の価値を再構築する上で視点や視座を加えることもあると信じているからです。
さて本題。ノウフク×地域
さて、今回は「ノウフク×〇〇」の〇〇の部分を、「地域」にしてみたいと思います。
このテーマ、広すぎるし深すぎるし事例も多すぎると思うので、もしかしたら1回では終わらず、別の回まで引き延ばしてしまうかもしれません。単発の回では答えが出ずにモヤモヤしたまま終わることもあろうかと思いますが、そのモヤモヤも大切にしながら、モヤモヤの正体を、皆さんと一緒に探求できればと思っています。
答えを出すことを一旦手放して、多様性の時代ならではの「正解のなさ」を楽しみたいと思います。逃げではありませんよ…。
地域活動という言葉の違和感。
唐突ですが、「地域活動」という言葉、よく見かけませんか?私はその言葉にが、ずっと違和感がありました。
「それって、地域との間に壁が存在しているってことじゃないの?」
考えれば考えるほど、モヤモヤです…。
長年、地域活動という名のもとに、地域のみな皆さんと一緒に活動をしてこられてきた事業所のみなさんも多いかと思います。そのこと自体を否定しているわけでは決してなくて、うすーいけれど、ぼんやりとしているけれど、地域活動という言葉自体に、確かに存在する仕切りのようなものが見えるのです。
それは一体何なんだろう?
音が壁を作る?
地域に働きかける側の言葉に、見えない壁が見える。違和感を覚える。私の中のモヤモヤが顔を出す。
地域共生を謳う福祉側が地域活動という言葉で逆に地域との壁を作っているのではないか。そんな意識がどこかに潜んではいないか。
そんなことはないという嬉しい反論も多そうですし、私の知る福祉の世界の方々 は涙が出るほど優しい方ばかりなので、あまりこんな仮説をたてたくはないのですが、ヨソモノの私は、ついついそんなことを考えてしまうのです。
私の現時点での答えは、答えというほど大したものでもないのですが、「ただの言葉の聞こえ方の問題ではないか」ということ。要するに、正体はただの「音」なんです。音が、壁を作っている。それが、意識の奥の小さな隙間に入り込んでしまっている。
ただの音であるならば、もし、私に実践の場が与えられる時が来たら、その音自体を変えてみよう。問われるのはネーミングセンスだけだ。そんな単純で軽率な考え方の自分にも、モヤモヤモヤモヤ…。
脱・地域活動。ごちゃまぜな場をつくってみた。
花の木農場は離れた場所にⅠ~Ⅲまであります。農場Ⅰには、農地のほかにグループホームやレストラン、通所施設や入所施設、職員寮が立ち並び、Ⅱには主にミニトマトやオーガニック茶のほ場が、Ⅲには養豚場が、ざっくり分けるとⅠ~Ⅲはこんな感じで構成されています。
先述したように、私は個人的にまちづくりの活動もしておりますが、仲間で地域おこし協力隊でもあるY君が、隣町に地域の交流拠点として、とっても素敵なゲストハウスを運営しているんです。そのゲストハウスの裏には、荒れまくった耕作放棄地がありました。
ある日そのY君を車に乗せて花の木農場を案内しながら、これからの町づくりについてあれやこれやと熱く話していたところ、「花の木農場Ⅳをつくろう。ゲストハウス裏の耕作放棄地を活用して、地域の困りごとに多様な人たちが関わる遊びのような活動をしよう」となったのです。器の大きな法人からはすぐに許可が出て、私自身の実践の場も無事、与えられることとなりました。
「『〇〇するべき』が存在せず、また、完成を目的にせず、地域で暮らす多様な参加者が農場をつくるプロセスの中から生まれるコミュニケーションや、新たに発見されるであろう価値を観察しよう」そんな長くて欲張りなコンセプトの下、「花の木農場Ⅳツクルプロジェクト」がはじまったのです。(音を、変えてみました)。
普段は職員と利用者さんという関係性で過ごしている私たちにとって、地域の方々と接すること自体恥ずかしながらあまりなく、どんな活動になるのだろうと、心配でドキドキでした。
障がいを持つ利用者さん、花の木農場の職員、地域おこし協力隊、地元農家、ゲストハウススタッフ、役場職員、子ども達、ゲストハウス滞在者という多様な方々が参加した第1回目は、お互いの自己紹介から始まり、草を払ったり、木を切って運び出したりする作業をおこないました。
心配は杞憂に終わりました。
「完成を目的にせずプロセスを大事にする」という明確なコンセプトがあったので、作業を全くせず座って話し込む人たちがいたり、突然利用者さんが「集合ー!」と叫んだと思ったら、しぶとい根っこを「大きなかぶ」さながらにみんなで協力して抜き始めるという謎のイベントが始まったり、終始自由な笑いだらけの活動となりました。
地域の方からは、次のような嬉しい言葉も聞かれました。
「正直、障がい者のことを知らなかった。今日参加してみて思った。彼らこそ、地域の宝だ」
嬉しい反面、残念ながら私たちが「相手を知る。知ってもらう」という出発点にすら立っていなかったのだと、痛感することとなりました。モヤモヤの正体は、ここにもありました。私たち自身の中に…。
幸先の良いスタートを切れたからか、活動は今でも続いていて、先日8回目を終えたばかりです。今ではみんな顔なじみになり、花の木農場に訪れたときには、また、買い物に行くなどして偶然出会ったときには、お互いに挨拶を交わす仲になりました。
違和感を問いに、問いを小さな挑戦に変える。
結局、かっこいいことは何もしていません。
利用者さんたちが自然体で頑張っただけ、楽しんだだけ、あるがままに、いつものように過ごしただけ。町民さんが、あるがままを受入れてくれただけ。
私たちがしたことといえば、地域活動ではなく「〇〇プロジェクト」というネーミング(音)を変えたこと。時間と空間と仲間、いわゆる3つの「間」を変えてみたこと。そして、三方良しを意識して実践したこと。この3つだけです。
言葉からくる違和感を問いに変え、小さな挑戦や実践に変えてみた一例として、共有いたしました。何かの参考になれば、また、「こんな実践もあるよー」とご教示頂けることがあれば、とても嬉しく思います。
プロフィール:天野 雄一郎
社会福祉法人白鳩会花の木農場(総務)。ノウフクJAS検査員・ASIAGAP指導員。農福連携技術支援者。大隅半島ノウフクコンソーシアム役員(事務局)。一般社団法人イマココラボ公認。2030SDGsファシリテーター。錦江町まち・ひと・『MIRAI』創生協議会理事。農福連携やSDGsの文脈でローカルでの場づくりや組織づくり、連携から創発されるプロジェクト運営を行う。
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