第3回:息子たちの学校生活で実感した「子どもの幸福度世界一位」の秘密
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オランダから、こんにちは。2019年もよろしくお願いいたします。私の今年の抱負は、ブログを毎日更新すること、そしてオランダ語を上達させることです。今のところ、どちらも三日坊主にはならずに継続できているので(笑)、引き続き頑張ります!!
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さて、前回の最後に「イエナプラン校に拘らなくなっている自分に気が付いた。」と書きました。今日はそのことについて詳しく書いていきたいと思います。
ライトに学校を選べる嬉しい制度
長男は半年前、イエナプラン校からオランダ語専門の特別支援校に転校しました。結論から先に言うと、転校をさせて、本当に良かったです。そして、実を言えば、移住した時すぐに今の特別支援校に入学させればよかったと思っています。もちろん、すべて結果論なのですが、子どもの合う・合わないもありますし、オランダの特別支援教育、そして学校教育全般が、子どもにとっても、親にとっても、居心地が良く、真っ当に成長出来るものだと確信するに至ったのです。
長男が約7ケ月間通っていたイエナプランスクールには、毎週1回エルマという別の学校の先生が、長男含む何人かの児童のためにオランダ語を教えに来てくれていました。そのエルマに、「このまま3年生に進級するのは難しいだろう」と言われ、彼女の所属する特別支援学校を見学することにしました。
朝から30分弱ほど見学してみると、とても雰囲気が良くてびっくり! 校長先生に「転校させたいと思います」と伝えました。
すると「じゃあ、試しに来週の火曜と木曜の午前中だけ通ってみたらどう?」と言われました。なんと「お試し登校」が出来るらしいのです! 言われたとおり火曜と木曜だけ新しい学校に行き、ほかの曜日は元の学校に行きました。長男も気に入ったようで、転校を決意。それを伝えると、転校手続きの細かいこと(がそもそもあるのかどうかすら分かりませんが。笑)は全て校長先生同士の電話1本で済ませてくれました。
そんなわけで、長男はとても簡単に転校をし、ちょうど入学する学校を決めなければいけない時期だった次男も一緒に入学をしました。新しい学校では、長男と次男は同じクラス。長男が張り切って、次男の面倒を見ていました。次男に「先生の話を聞くんだよ」と言ったり、先生に「弟が水を飲みたがっている」と伝えたり、とても頑張っていたようです。
転校前は少し緊張していたようでしたが、転校してからは一度も「学校に行きたくない」と言わなくなりました。
そして、いつの間にか、オランダ語の歌を口ずさむようになりました。
オランダの小学生は忘れ物をしない? ストレスフリーな学校生活
夏休みを挟んで9月になると、長男だけが進級し、3年生になりました。3年生の教室は机が前向きに並んでいる、日本の学校と同じような雰囲気です。オランダの学校でも日本と同じように6〜7歳頃から「読み・書き・計算」が始まります。長男は日本にいれば4月に入学して「読み・書き・計算」を習う予定だったので、待望のスタートです!
さて、ここでなぜ学校が「居心地が良い」と感じるかをまとめておきます。
まず学校に持って行く荷物がとても少ないです。毎日持って行くものは、10時のおやつとランチのみ。ランチは簡単なサンドイッチなので、親の負担も少ないです。
教科書も文具類もすべて学校からの貸し出しで、子どものレベルに合わせたカラーのワークブックをたくさん貰えます。日本の子どもたちと違って、「忘れ物をした(から怒られる)!」ということは皆無です。体育のある日は着替えや靴を持って行きますが、小さいうちは忘れたらそのままやればいいという程度。「小さなうちから忘れ物をしないように躾ける」という感覚がないのでしょう。
また、「クラスサービス」という日本の学校でいう日直のような係が輪番であります。小さいうちは教室の電気を付けたり消したり、ドアを押さえたりする係です。たったそれだけの仕事ですが、係の日の子どもは誇らしげに先生のそばに立っています。大きくなると、帰りに残って簡単な掃き掃除をします。毎日の掃除は清掃業者が来てくれるので、全員でやることはありません。
休み時間は校庭でたっぷり遊びます。体育は週1~2回体育館で行うので、校庭は遊ぶ為だけの場所(もちろん自然観察や算数を外でやることもあります)。学年によって、外で遊ぶ時間が違うので、少ない人数でたっぷり遊べます。息子は毎日サッカーをするのを楽しみにしています。
チャイムはありません(学校によっては朝や休み時間の終わりだけ鳴らすところはあるようです)。クラスサービスの子が鳴らしたり、たまたま先生の近くにいた子がお願いされることもあります。子どもたちは、時計を見て行動します。腕時計をしている子もいます。
オランダの学校は宿題が出ないというのは有名かと思います。宿題がないからこそ、子どもたちは学校ではしっかり学習をし、家に帰ると遊んだり身体を休ませたりするということを納得しているように見えます。
総じて、やらなければならないこと、そしてやってはいけないことのルールが少ないので、子どもたちはのびのびと生活しています。
一人ひとりに合わせて進めてくれる学習指導
そして、肝心の学習についてです。長男が算数やオランダ語のワークブックを持って帰るたび、その都度元教員の目線で観察しているのですが(笑)、たとえば算数ならば足し算や引き算を、何問かやってみて出来ていたら次に進むというやり方です。日本のように同じような問題を何回も何回も、もう出来るのに繰り返しやるということはあまりなさそうです。逆に苦手な科目があれば、算数それだけ前の学年のものを学習し直したり、得意ならもちろん上の学年のものを学習することもあります。
また、算数もオランダ語もパソコンやタブレットを使ってゲーム感覚で問題を解けるようです。「家でもあのオランダ語のゲームがやりたい」と言われて、先生に聞いてみましたが、学校用の教材なので家には持ち帰れませんでした。
長男は、読み書きと算数は苦労していないようですが、聞いて理解したり、話したりするのにはまだまだ苦労をしています(親と一緒です。笑)。それでも、アシスタントの先生と1対1で話す練習をしたり、時には学年が上の子たちと一緒に算数の授業を受けたり、本当に手厚く指導をしてもらっています。
全体として、「子どもに合った」学校を選んで入学出来るというのは本当に良い制度であると実感している今日この頃です。オランダの学校は公立でも私立でも、在籍している子どもの人数によって国から教育費が支給されているので、授業料も教材費も無償。文房具すら支給、貸し出しです。遠足もバスに乗って、楽しそうな子ども遊園に行きましたが、交通費などの徴収は一切ありませんでした。
オランダの子どもたちの幸福度が世界一位であるのは、「子どもが親と一緒に夕飯を食べられるから」「親が忙し過ぎないから」という意見もありますが、日本に比べると、学校が本当に柔軟で余裕のある制度になっていると実感しています。
親が忙し過ぎないことについては、次回詳しく書いていきたいと思います。
川崎 知子(かわさき ともこ)
東京都墨田区出身。東京都の公立小学校で担任として11年間勤務。
2009年、リヒテルズ直子氏と尾木直樹氏の対談本「今、開国の時、ニッポンの教育」を読み、オランダの教育を知る。同年より、上越教育大学の西川純教授が提唱する『学び合い』も実践。2011年より、日本イエナプラン教育協会の千葉支部としての勉強会をイエナカフェという名前で開始し、墨田区や江東区では親向けにも開催する。2015年にオランダでのイエナプラン研修に1週間参加し、イエナプランの学校の子どもたちの自然に学ぶ姿に改めて感銘を受ける。教室にベンチを置いて、いつでも輪になって話し合いが出来るようにするとともに、自分たちで時間割を作ったり、学び合ったりするブロックアワーを実践。
2013年、長男の育休明けには育児短時間勤務を取得。2人の息子の育児をしながら仕事をする上で、イエナプランを実践することが「働き方」にも好影響であることを実感し、2017年7月の「学校働き方フォーラム」で「子育て中でも働きやすくなる方法」として紹介。
2017年9月より、夫と息子たちとともに、オランダに移住。長男をイエナプラン校に通わせながら、研究を続けている。オランダにて、イエナプラン専門教員資格取得。
イエナラボ
オランダより愛をこめて~教育と子育てと日々の暮らし~