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夫と子どもを引き連れてオランダ移住!元教員のチャレンジ日記、始まります!

mazecoze研究所 │ 2018.09.25

mazecoze研究所読者の皆さん、初めまして。川崎 知子と申します。
昨年の9月に長年住んだ日本を離れ、オランダに移住を実現! 私の夢を叶えるために夫は会社を辞め、子どもたち2人も付いてきてくれました。現在は家族4人でオランダのホーヘフェンという田舎町に居住しています。

オランダの青い空。気持ちいい!

家族で公園へ行くことが増えました!現在、長男6歳。次男4歳

移住の理由は2つ。
1つは、3ケ月かけて行われた日本の教職員向けの「イエナプラン専門研修」に参加するためです。もう1つは、この4月から日本の小学校1年生になる息子を、日本の公立小学校に入学させないで済むようにするためです。
と、書き出しから過激なことを書いてしまいましたが、私は元小学校教員です。11年間、東京都の小学校で働いてきました。

「いいクラス」ってどんなクラス?思い悩んだ教員時代に出会った「イエナプラン」

教員時代。満面の笑顔ですが、苦しかった時期。

教員になったばかりの頃は、「先生の言うことを聞くクラス」が「いいクラス」だと思っていました。いわゆる「指導が行き届いている」と言われる概念です。先輩の先生の言うことは聞くのに、自分の言うことは聞かない子どもたちに対して、イライラすることもありました。威厳が欲しいとも思いました。指導力不足と思われることや、保護者からのクレームを恐れていたせいもあったと思います。いつも翌日の授業をどうしたら良いか悩み、こんなんじゃつまらないだろうな、と思いながら授業をしていました。日曜日の夜はとても憂鬱でした。

そんな私が2009年に出会ったのが「イエナプラン」です。きっかけは、あの尾木ママとリヒテルズ直子さんの対談本である『今、開国の時、ニッポンの教育』です。その本の中で、初めてオランダの教育を知り、イエナプラン教育を知りました。リヒテルズ直子さんが帰国する度に、講演会に通い、イエナプラン教育の魅力にハマっていきました。

教室は教わる場所ではなく「生活の場所」

私が当時、一番惹かれていたのは、教室を「リビングルーム」と呼ぶことです。「教わる場所」ではなく、「生活する場所」、そしてリラックスできる場所という意味合いにとても惹かれていました。
でも、イエナプランを教室で実践するのは無理だと思っていました。異年齢学級でもないし、ガチガチの時間割があるし、イエナプランに欠かせない相談できる同志が校内にいないし……。
しかも、日本人同士でサークル対話(全員で輪になって話し合うこと)をやっても、慣れている人だけがたくさんしゃべったり、「何か言った方が良い」という何となくの義務感を感じたり、そんなに居心地のいい空間ではないような気がして……日本人の文化には馴染まないとさえ感じていました。

それでも、イエナプランをもっと学びたくて、「イエナカフェ」という勉強会を開催しつつ、出産・育児に追われること数年・・・2015年の夏に、遂に、オランダでの1週間のイエナプラン研修に参加することになりました。

カフェのようにくつろぎながら対話して学べる場所を目指して「イエナカフェ」開催

その研修は、私にとって、大きな転換期でした。

安心して「そこにいられる」ことから始まる教育

居心地の良さと仲間の大切さを認識した研修最終日の集合写真

研修は、オランダのイエナプラン校の元校長先生が講師を勤める研修施設で行われました。その研修施設は、森の中にあります。窓が大きくて緑を眺めることができ、ソファがあり、花が飾られ、いつでもお茶が飲めます。居心地の良さを意識して作られた空間です。30人程の日本人の参加者で、イエナプランで大切にしている「サークル対話」を何回も体験しました。

サークル対話の様子

研修3日目の朝、サークル対話中のことです。話している内容には正直まったく興味が湧かず……(ものすごい失礼だけど、でも、それまでに講師の先生が作り上げてくれた雰囲気は素晴らしかったし、とにかくその講師の先生はすごい人です!!!)でも、頭の中でいろーんなことを考えました。

あーなんか自分のことを客観的に見つめたり、じっくり考える時間が私には足りなかったんだなあ……。

そうか、教室でも、「考えなさい」とか「紙に書きなさい」とかじゃなくて、もっと自由に考え事をする時間があってもいいし、全員が興味をもつ話題なんて中々難しくて、それでも、友達のちょっとした一言が心に響くこともあるし、考えるきっかけにもなるし、何か言いたくなったら言えばいいし、言いたくなかったら言わなくてもいいんだなあ。

居心地がいいなあ。
ってことがすーっと腑に落ちたのでした。

だから、小さい頃から、「先生の話を黙って聞く」とか「手を挙げて発言する」っていうことよりも、まず「そこにいる」ことに安心感をもって、そして、もし何か言いたいことがあったら言って、でも自分のことだけじゃなくて、周りの子のことも考えるっていうことが大事なんだと思うのです。

さて、研修中には2日、現地のイエナプラン校に見学に行く機会がありました。

リラックスしながらも自立しているイエナプラン校の子どもたちの姿に感動!

1日目のイエナプラン校の様子を一言で表すと、「1日中が落ち着いた休み時間」
子どもたちも、先生たちも、とてもリラックスして自然。一人ひとりが自分で考えて行動している。
入学してすぐの4歳の子たちでさえ、先生が何も言わなくても、自分でトイレに行ったり、荷物を取りに行ったり。とても、とても自立していると感じました。
そして、高学年の子たちは一人ひとりが自分の時間割を持って、自分の学習に集中している。まさに理想的でした。

自分のできること「以上」をやろう

こんな教育がしたい。でも、すぐには無理。出来ることからやろう。週に1回のサークル対話とか、週に1日時間割を自分で決めるとか……。 そんな風に考えた私は、最終日、2校目のイエナプラン校の校長先生の言葉でさらに大打撃を受けます。

その言葉とは……
「多くの人は、自分に出来ることをやろうと言う考え方をする。そうやって、自分の枠をどんどん狭めている。だから僕は、こう考えるようにしているんだ。出来ること以上のことをやろう、って。」

この言葉を聞く数秒前まで「出来ることからやろう」と思っていたのに、出来ることからじゃダメだ、日本でイエナプランを実践するのが難しいのは分かっている、それでも、出来ること以上のことをやっていかなくては、と強く心に刻みました。

その言葉で、帰国後すぐに、小学校2年生のクラスで実践を始めました。毎日サークル対話をし、時間割を子どもたち一人一人が作ることにも挑戦しました。日本で実践をすることは思った以上に大変でした。相談出来る方は日本全国に何人かいましたが、学校も学年も違く、みんなが試行錯誤でした。でも、その試行錯誤がとても楽しかったのです。そして、それまでは授業を考えるのが大変で仕方なかったのですが、授業を考えることが本当に楽しく、クラスにいることが本当に楽しくなりました。

いつでも「サークル対話」が出来るようにベンチを置き、時間割を子どもたちが作って学習

そんな生活を続けて丸1年経った頃、やはりオランダでもっともっとイエナプランを学びたい、と思うようになりました。「休職」の申し出もしましたが、公的な大学機関などでないと休職は不可、とのことで退職を決意しました。
長くなってしまったので、今回はここまでです。これからイエナプランのこと、オランダでの生活のこと、家族での移住のこと、息子のことなどを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします!

川崎 知子(かわさき ともこ)

東京都墨田区出身。東京都の公立小学校で担任として11年間勤務。
2009年、リヒテルズ直子氏と尾木直樹氏の対談本「今、開国の時、ニッポンの教育」を読み、オランダの教育を知る。同年より、上越教育大学の西川純教授が提唱する『学び合い』も実践。2011年より、日本イエナプラン教育協会の千葉支部としての勉強会をイエナカフェという名前で開始し、墨田区や江東区では親向けにも開催する。2015年にオランダでのイエナプラン研修に1週間参加し、イエナプランの学校の子どもたちの自然に学ぶ姿に改めて感銘を受ける。教室にベンチを置いて、いつでも輪になって話し合いが出来るようにするとともに、自分たちで時間割を作ったり、学び合ったりするブロックアワーを実践。
2013年、長男の育休明けには育児短時間勤務を取得。2人の息子の育児をしながら仕事をする上で、イエナプランを実践することが「働き方」にも好影響であることを実感し、2017年7月の「学校働き方フォーラム」で「子育て中でも働きやすくなる方法」として紹介。
2017年9月より、夫と息子たちとともに、オランダに移住。長男をイエナプラン校に通わせながら、研究を続けている。オランダにて、イエナプラン専門教員資格取得。
イエナラボ

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