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目次
クラウドファンディングに挑戦しています
MAZE研コラムをいつも楽しみに見てくださっている皆様、なかなか新しいコラムが書けなくてすいません。前回のコラムをアップしてから1年が経とうとしています(汗)。
その間に、次男は兄と同じ南アルプス子ども村小学校に入学。この1年間で、「全体ミーティング」というこどもたちによる会議において、前代未聞の連続4回議題に出される(要は、やんちゃということです・笑)という次男らしさ炸裂な話や、やっとやっと宿泊施設のリノベーションに着手したのはいいけれど、金融機関とすったもんだがあった話などなど、コラムにしたいお話はたっぷりあります。
ですが、そういった日常のわちゃわちゃにかまけて、Fecebookへの投稿くらいでお茶を濁してしまい、よいしょ!とこのMAZE研コラムへの筆を取るのがなかなかで……すいません。それくらいわたしにとっては、MAZE研コラムは大切に書きたいものなのですよね。
今日は、MAZE研コラムを書く時と同じような気持ちで、12月の繁忙期、ランチとディナーの営業を終え、へとへとで子どもを寝落ちしないように寝かせつけた後に、チクチクと書き上げていったクラウドファンディングの記事をMAZE研代表の平原さんのお気遣いで、こちらに転載させていただくことにいたしました。
クラウドファンディング? そうなのです! 今年4月14日に古民家一棟貸しスタイルの宿「旅と裸足」をオープンする予定で工事も着々と進んでいるのですが、理想により近づけるためには備品などの購入が必要で、その資金がもう少し足りないのです。
12月最後のクラウドファンディング公開日27日にギリギリ滑り込んで、記事を公開し、みなさんの多大なるご支援で3分の1まで積んできました。目標額は300万円ですが、手数料やリターンの送料などを引くと、手元に残るは約250万円と考え、350万円くらいをわたしたちの目標にしています。
初めてのクラウドファンディングに挑戦する真っ只中にまだあって、クラウドファンディングとはどういうものかと総括する段階ではないのですが、「人生は地続きなんだなぁ」ということをまざまざと感じるかけがえのない時間を過ごしています。
毎日、感謝で泣きすぎていて、このままではゴールにたどり着く前に、心不全で死んじゃうんじゃないかと思うくらい心が大変なことになっています。
前置きが長くなりました。
「長澤」というわたしたちが暮らし、お店をする、この集落のことをクラウドファンディングの記事では書いています。なんでもない田舎のちいさな集落のお話をどうぞ読んでいただけたらと思います。
そして、ご共感いただけましたら、ぜひともご支援や記事のシェアなどしていただけますと幸いです。
東京から八ヶ岳南麓へ家族で移住し、まずはレストランを開業
このプロジェクトページをご覧いただき、ありがとうございます。古民家一棟貸しプロジェクトを進めています、石田恵海です。
わたしは東京・三軒茶屋で4年間、夫でシェフの鈴木信作とともに、年子男児ふたりをヒーヒー言って育てながら、フレンチレストランを運営していたのですが、都心で子育てしながらお店をすることに違和感を持ちはじめ、自分たちの働き方を見直したり、子育て環境などを考えて、東京のお店を閉めて、ここ八ヶ岳南麓に位置する山梨県北杜市に2016年に移住しました。
翌年、ご縁あって素敵な古民家をご紹介していただき、そこで「八ヶ岳ガストロノミー」をコンセプトにしたレストラン「Terroir愛と胃袋」を構えました。その翌年には三男も誕生し、三兄弟を育てながらのドタバタな毎日ですが、なんとか2020年4月で八ヶ岳でお店を構えて丸3年になろうとしています。
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撮影は砺波周平さん
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大きな屋根が特徴のこの古民家でレストランをしています
元宿場町を下ると、耕作放棄された棚田が広がる
わたしたちが、ここ八ヶ岳でレストランとして借りている物件は、築170年の古民家です。「長澤宿」という宿場町だったとってもちいさな集落のなかにある「問屋(といや)」といわれるかつては物流拠点だった場所です。
「長澤」という字のごとく、山と山にはさまれて長い沢になっている窪みにあるエリアの一角に、わたしたちが暮らす家や運営するお店はあり、そのちいさな集落から下っていくと、棚田が広がっています。
今ではほとんど水が張られることがなく、耕作放棄された田んぼの多い棚田です。山にはさまれていることから、朝は日が差すのが遅く、日が暮れるのは早いこともあってか、「半日村」などと表現される地域でもあります。その十分とはいえない太陽を上手く取り入れようと先人たちは知恵を絞り、力を合わせて、棚田をつくり上げたのだろうなということが、手積みされた石段から垣間見ることができます。
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「長澤」は山と山にはさまれた長い沢
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手積みされた石段
集落の“素敵さが通じる“嬉しさ!
わたしたち家族は、このちいさな集落を抜けて棚田の間をゆっくり歩きながら、その先にある「道の駅 南きよさと」まで散歩する束の間をとっても愛しています。こどもたちは田んぼのあいだを自転車で駆け抜けてみたり、脇を流れる水路に隠れる沢ガニ採りを楽しんだり、春になると空に500匹泳ぐこいのぼりを楽しんだり……。
それは、どこにでもありそうで、でもどこにもないような風景で、こどもたちと棚田を歩く時間は、こちらに家族で移住することを決めてよかったなぁとしみじみ思う、ゆたかな時間でもあります。
そんなわたしたちにとって、ここ長澤は愛すべき場所であり、見るべき! 来るべき!といった観光スポットとは言い難いところです。しかしながら、都会からうちのレストランへわざわざいらしてくださるお客さまのなかには「とっても素敵な場所だ」と言ってくださる方が多く、この長澤の“素敵さが通じる”ことが少しずつわかってきました。
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自転車を降りて水路へ駆け寄り、沢ガニがいた!と興奮する我が子たち。菜の花が咲き乱れ、鯉のぼりが飾られる長澤の絶好のシーズン!
空き家になった古民家が手招きしている!?
もともとわたしたちは「オーベルジュ(宿泊できる施設を兼ねたレストラン)」をしたいという気持ちで八ヶ岳へ移ってきました。しかし、当初の予算の関係からまずはレストランをスタートさせ、地域やお客さまとの信頼を少しずつ築いてきました。そのなかで、レストランのナナメ向かいにある古民家が空き家になりました。元寺子屋だったそこもまた大きなお家です。
山梨県は空き家率ナンバー1なんて言われますが、ここ長澤地区も高齢化が進み、空き家も増えている地域。しかも、その空き家は宿場町だったことを反映して、趣きのある古民家であることが多いのです。空き家として置いておくのももったいない。とはいえ、建て壊すことになってももったいない。
かつては寺子屋だったその築120年の古民家は、わたしたちが暮らす家のリビングのソファから屋根裏部分が見えるのですが、そのソファで産まれたばかりの三男に授乳をしていると、そのお家が「おいで、おいで」とわたしを手招きしているような気がしたのです。
そこで、大家さんにお家の中を見せていただくと、五右衛門風呂があり、竈(かまど)があり、レストランにしている問屋の古民家とはまたひとあじ違って、そこには暮らしがしっかりありました。ここを宿泊施設にできたら素敵じゃないか!
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撮影は土屋誠さん
大切な方と時間を慈しむ、サスティナブル田舎ステイ
わたしたちのレストランでも、これまでオーガニックの地元食材やリネン類を使ったり、器などは山梨県内の作家さんたちによるものを採用。また、福祉施設の商品などを積極的に採用するなど「オーガニック」「エコロジカル」「ローカル」「ウェルフェアトレード(社会福祉取引)」といった持続可能な社会につながる商品選択を大切にしてきました。
それと同様に、宿泊施設もラグジュアリーでありながらも「サスティナブル・ステイ」を実現する旅のお手伝いができないかと。かつての宿場町であり、寺子屋だった場所が未来をつくる学びの場であったように、明るい未来をつくるサスティナブルな旅の宿に生まれ変わるのは、もうこれ宿命じゃない?くらいに思いました(笑)。
ただ、生活のあるちいさな集落に、たくさんのお客さんが来て騒がしくなってしまってはいけません。そこで、ゲストハウスのようにたくさんのお客さんをお呼びするのではなく、わたしたちのレストランのコンセプトが「大切な方と楽しむ八ヶ岳ガストロノミー」であるように、ご家族やお仲間など大切な方たちとの時間を慈しむ、1日1組だけの古民家一棟貸しスタイルの宿泊施設にしようと動き出したのでした。
想いを馳せる遊びづくりや、いのちの循環をつくる仕組みも!
コンセプトは「サスティナブル田舎ステイ」。サスティナブルというと、脱ブラやオーガニックなどの商品選択や消費行動を考えがちですが、それももちろん大切なことですし、大切にするのですが、そもそもサスティナブルであるという根本ってなんなのだろう?と考えた時に、「ここにいない誰かであったり、どこかであったりに、想いを馳せること」なのではないかと行き着きました。
そこで、元寺子屋だったこと、庭に「筆塚」と書かれた石碑があることなどから、テーマカラーを「墨色」に。内装は黒色からグレーなどの墨色を基調にすることに。調度品の文机の引き出しには原稿用紙やレターセットを忍ばせるなど、誰かや、どこかに、想いを馳せながら文字を綴る時間を推進。さらに、棚田をゆっくり散歩しながら想いを馳せる時間を贈る、そんな宿づくりをしようと考えました。
そして、これまで排水処理がされていなかった五右衛門風呂は、庭にある池まで水路をつくり、砂利で濾過しながら微生物が分解し、植物が余分な有機物を栄養素として吸収することで、水を浄化する仕組み「バイオジオフィルター」や、宿で出たゴミはミミズを用いることで分解して堆肥にする「ミミズコンポスト」も導入することに。同じ北杜市に暮らすパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんに指導していただきながら、ワークショップ形式で手づくりする予定です。
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パーマカルチャーデザイナーの四井真治さん
寝具のカバー類やタオルは山梨県内のオーガニックコットンを扱う前田源商店さんにお願いし、出来上がったカバー類は、同じく県内にある障害者福祉サービス事業所のみらいファームさんにお願いして、お茶&煤による草木染めでグレーに仕上げていただいているところです。
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みらいファームさんでの草木染め
また、物置だった小さな小屋も改造し、宿のチェックインカウンター機能として、宿泊されるお客さまや地域の方のサードプレイスとしても使えるカフェ「yusan」を併設。宿やレストランでも使っている八ヶ岳の作家さんの器などの販売、ピクニックセットをレンタルできるシステムで、コーヒーを持って棚田を散歩する「棚田コーヒー」というサービスを始めようと考えています。
田んぼには水が張られることはほとんどない棚田ですが、それでもかつてはここに水が張られた当時に想いを馳せることはできるのです。
プロジェクトを通しての「長澤地区」への想い
長澤は、空き家に高齢化に耕作放棄地……と、本当にどこの田舎にもあるありふれた課題が転がっているちいさな集落です。ですが、本当にここにはどこにでもありそうで、でもどこにもないような心に響いてくる風景がまだ残されています。
宿泊施設をすることで田舎あるあるな課題解決をしよう、などとはわたしたちはまったく思っていなくて、でも、この集落や棚田の景色を愛でながら散歩をする人がいるという事実が、地域にとって少しでも誇りや自信や暮らし甲斐といった、目には見えないけれど確かにあるものに変化をもたらすことができたとしたら、こんなうれしいことはないなと、そう思うのです。
多くの方をお迎えできる宿泊施設ではありませんが、訪れてくださった方とていねいなお付き合いをする、そんな場でありたいと思っています。プロジェクトに共感くださる方との出会いやつながり、準備へのお力添えともに、ぜひ大切なご家族やお仲間とここ長澤に訪れていただきたい。そんな思いでクラウドファンディングに挑戦いたしました。みなさまのご支援を心よりお待ちしております!
- 屋号:旅と裸足
- 場所:山梨県北杜市高根町長澤504
- オープン予定:2020年4月14日
- 宿泊料金:25,000円(1名)~
- 収容人数:10名
- 間取り:寝室2部屋、ロフト、リビング、囲炉裏、土間キッチン、竈(かまど)、薪ストーブ、五右衛門風呂、猫脚のバス、トイレ、庭
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設計士の坂野由美子さんのスケッチ
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リノベーションする古民家の平面図と立面図
築120年の趣きを残しつつも、テーマカラー「墨」を基調にモルタルなどを使ったおとなっぽい仕上げを大切にして、和と洋がミックスされたなつかしさと新しさの両方を感じる空間づくりをしています。
「サスティナブル田舎ステイ」をかたちづくるプロのみなさんをご紹介!
最後に、わたしたちが目指す「サスティナブル田舎ステイ」な古民家宿づくりを支えてくださるプロのみなさんをここにご紹介します。
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■設計は様々な素材や色やアイテムでぐいぐい提案してくださる
SPLUS ONEの坂野由美子さん
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■施工はていねいな仕事と細かい確認をしてくださる
丸正渡邊工務所のみなさん
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■いのちの循環の仕組みづくりはパーマカルチャーの視点で指導してくださる
ソイルデザインの四井真治さん
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■ロゴやショップカードなどデザインは
BEEKの土屋誠さん
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■宿の雰囲気を素敵に伝えてくださるWebデザインは
鈴木啓太さん
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■寝具は日本を代表するホテルや旅館にも多く採用されている
天然素材寝具の石田屋さん
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■シーツやタオル類は山梨県内でオーガニック製品・生地を取り扱う
前田源商店さん
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■寝具カバーやパジャマなどを草木染めしてくれる
障害者福祉サービス事業所のみらいファームのみなさん
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■お部屋でくつろぐ部屋着のデザインは
telyouの岩坪美恵さん
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■ヘア・ボディケア製品は高品質な国産オーガニックの
BIO HOTELS JAPANの中石さん
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■スキンケア製品は長野県の自然栽培の植物を使った
暮らしっく村の太刀掛美紗さん
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■暖簾は甲府で明治40年創業の
西染物店4代目の西清志さん
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■古民家での味噌づくりなど里山暮らし体験を提案してくださる
里くらの浅川裕介さん
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■長澤の棚田再生にも注力し、収穫体験などをコーディネートしてくださる
ファーマンの井上能孝さん
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■棚田コーヒーの終着点であり、同じ長澤のパートナー企業
「道の駅みなみ清里」運営のアルプス代表の金丸滋さん
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■宇宙に思いを馳せながら、宿でぜひ楽しんでいただきたいビールを
つくっているうちゅうブルーイングの楠瀬正鉱さん&鈴木ルミコさん
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■宿の朝食のサラダとしてぜひお客様に召し上がっていただきたい
オーガニック野菜を育てるクレイジーファームの石毛康高さん
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■八ヶ岳の湧き水で育った鱒や岩魚を宿の囲炉裏で召し上がっていただきたい
養殖業を営む川魚専門店みやまの大柴明光さん
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■美味しすぎるので、宿の冷蔵庫に常備するドレッシング
フェリチタドレッシングの松本千佳さん
クラウドファンディングページ
<プロジェクト終了要項>
・オープン完了予定日
2020年4月14日
・建築・改修場所
山梨県北杜市高根町長沢504
・建築・改修後の用途
1日1組限定の古民家一棟貸しスタイルの宿泊施設として活用
*旅館業簡易宿泊所登録について
消防の検査済み。保健所に図面などの提出および相談済み。
1月6日~20日の間に旅館業簡易宿所営業として申請予定。
石田 恵海(いしだ えみ)
1974年生まれ。ビオフレンチレストランオーナー&編集ライター
「雇われない生き方」などを主なテーマに取材・執筆を続けてきたが、シェフを生業とする人と結婚したおかげで、2011年に東京・三軒茶屋で「Restaurant愛と胃袋」を開業。子連れでも楽しめる珍しいフレンチレストランだと多くの方に愛されるも、家族での働き方・生き方を見直して、2015年9月に閉店し、山梨県北杜市へ移住。2017年4月に八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」を開業した。7歳と6歳と1歳の3男児のかあちゃんとしても奮闘中!
Terroir愛と胃袋
つくるめぐみ代表
得意なテーマは自ら実践する「田舎暮らし」「女性の起業」「自由教育」。八ヶ岳ガストロノミーレストラン「Terroir愛と胃袋」女将であり、「自分らしい生き方」などをテーマとした編集・ライターでもあり、三兄弟の母でもあり、こどもたちをオルタナティブスクールに通わせている。「誰もが、オシャレしてメシ食って恋して仕事して、最期まで自分を生きられる、自立した社会づくりに貢献すること」を理念に活動。2020年より古民家一棟貸しの宿、棚田を愛でながらコーヒーを楽しむカフェ・ギャラリーも開業する。
→ Terroir 愛と胃袋