【我が社のmaze道〜セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社編〜】
第1回:新しい家事時代の幕開け。世界初、全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」がいよいよ始動!
第2回:“世の中にないモノを創り出す技術集団”は、想像以上にまぜこぜだった!
●セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
根底にはまぜこぜ発想
前回、ランドロイドの開発ストーリーを中心にうかがいましたが、企業間連携といい、新たな技術へのチャレンジといい、まぜこぜを恐れない風土がセブン・ドリーマーズさんにはあるようです。創業者であり、技術者でもある阪根社長ご自身にそのルーツがあるのでしょうか? 「個人的な事をいうと、アメリカで大学院に通っている時に、自分なりには頑張ったんですけど、やっぱり世の中には天才がいるんだなというのを目の当たりにしました。こりゃかなわんなと。その時、自分一人にできることはたかが知れている、自分がやるよりもっと上手にやれる人や能力が高い人と一緒にやったほうがいいな、と思えるようになりました」 阪根社長が25歳くらいの時に培った、より優れたものを受け入れる土壌が、急成長する会社の根底にしっかりと根付いていたのですね。 「たとえば、僕らは完全に技術者なので、デザインとかブランディングとか、重要性だけはわかっていても、どうやればいいかわかりませんでした。そんな時にライゾマティクスの斎藤社長と出会い、作品を見てあまりに衝撃的にかっこよくて、“よくわかんないけどぜひ組ませてください!”と頼み込みました。向こうとしても“あんたたちだれ?”みたいな感じなわけですが」 ライゾマティクスさんといえば、超売れっ子クリエイター集団ですが、阪根社長、当時極秘プロジェクトであったランドロイドの話を少しだけチラつかせ、見事ライゾマティクスさんのハートを射抜いたのだとか笑 「ちなみに、“我々はお金がありません”と言ったら、“出世払いでいいですよ”と。斎藤社長、男前ですよね笑」 強力なパートナーを得て、セブン・ドリーマーズさんの商品はどれも、シンプルでありながら強い意志を感じるデザインとして生み出されました。 セブン・ドリーマーズさんの設立のきっかけについてもうかがいましょう。創業2011年、設立2014年、さらに、起源1957年とあります。 「話すと少しややこしいのですが、ランドロイドの構想を考え始めた2005年には、まだセブン・ドリーマーズは存在していませんでした。その頃は、父親が脱サラして起こしたベンチャー企業で働いていたんです」 2000年にアメリカから帰ってきた阪根社長は、大企業向けにコンポーネントを研究開発する技術系ベンチャー企業に入社。それから3年後には、「お前社長できそうだな」と社長の座を託されます。ちなみに、前社長のお父様は、新たな仕事をするためまた次のステージに進まれたのだとか。親子揃って攻め攻めです。 継いだ会社は安定していたものの、技術があるのに消費者に直接モノを届けられないことに寂しさを感じたと言う阪根社長は、B to Cの事業に向けて動き出したのだそう。それが、2005年にスタートした「プロジェクトX」、現在のランドロイドだったのです。 では、セブン・ドリーマーズさんの起源1957年とはお父様が興した会社のことなのでしょうか? 「それが違いまして。2008 年にスーパーレジン工業という会社と出会ったんです。創業主が80 歳を超えて引退するので、会社を買いませんかという話でした」 スーパーレジン工業は、コンポジットマテリアルの研究開発と成形加工を手がけ、その素材が人工衛星のボディに使用されるなど、宇宙航空分野で世界に貢献する会社。M&A後、阪根社長は2社の社長を兼務した後、2011年にセブン・ドリーマーズを立ち上げ、スーパーレジン工業を子会社化しました。 「スーパーレジン工業の航空技術を唯一使っているのがゴルフのカーボンシャフトなのですが、ナステントもランドロイドも技術のルーツは父の会社にいた時の研究で、それを買い取った形です。ちなみに父の会社はいま姉が継いでいます」 セブン・ドリーマーズさんの歴史も、阪根社長ファミリーの歴史も実にユニーク。イノベーションが起こった影には、その時々のご縁とまぜこぜありだったのですね。技術者6割、働き方はフレキシブル
わずか1年で人数が約3倍になり、現在社員数が90名弱というセブン・ドリーマーズさん。社員さんの特性や、働く環境・風土について聞きました。 「社内の6割が技術者です。営業の担当でも技術系バックグラウンドの社員が多いですね。技術に疎いとなかなか営業戦略を描けないというのもあるかな。子育て中の女性技術者や、海外から応募してきた人もいますよ」 技術者中心のベンチャー企業と聞くと、若手社員さんがほとんどなのかと思いきや、年配の方も多く、熟年の渋い雰囲気漂うチームもあるのだとか。年齢も特性も多様な社員が働く中で、特徴的なしくみや制度はあるのでしょうか? 「どこにいても仕事はできる、という精神が社にありますので、フレキシブルな働き方は全然OKとしています。今も、時短勤務している男性社員や、関西在住で週2は在宅勤務 、週3は東京に出勤という社員もいますよ」 フェイスtoフェイスで仕事を進めることを大事にしつつも、社員からの申告があれば、良い方法を一緒に考え、形式にとらわれない働き方も受け入れているのですね。 昨年の4月からは、成功報酬制度も導入。完全に欧米スタイルではないものの、ボーナスの比率をかなり高めに設定しました。半年の成果を反映する仕組みにしたところ、社員のモチベーションが底上げされ、社風にあっていると感じているそうです。 技術力を武器に、唯一無二のものづくりを突き進めるセブン・ドリーマーズさん。現在も、極秘プロジェクトがいくつか進行しているそうで、人々の生活を豊かにしてくれる次なるイノベーションが起こる日が楽しみでなりません。 新しい取り組みも気になるし、本物のランドロイドも見たいしで、これからもまぜこぜ研究所では、セブン・ドリーマーズさんを追っていきたいと思います!(取材・文:ひらばるれな)●セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
研究員プロフィール:平原 礼奈
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。