【我が社のmaze道〜セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社編〜】
第1回:新しい家事時代の幕開け。世界初、全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」がいよいよ始動!
第2回:“世の中にないモノを創り出す技術集団”は、想像以上にまぜこぜだった!
●セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
洗濯物をロボットが畳んでくれる時代がついに来た!
積み上がった山を見てため息。1日でも放置しようものならしわっしわ、すかさず次の山ができてまたため息。非常に地味な作業ながらしっかりと我々の時間を奪っていくものといえば、洗濯物畳みです。 そんな日々の中、飛び込んできたのが「全自動衣類折りたたみ機が開発された」と言うとんでもないニュース。しかも、今年度には「β版の予約受付開始予定」とあるではないですか。家事を頑張りたいのに面倒臭さが勝ってしまう研究員ほてはま&ひらばる、差し込んだ一筋の光に食らいつき、発明元の「セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社」さんを突撃取材してきました!「妻のひと言から生まれた」
8月某日。酷暑の中、汗だくになりながらセブン・ドリーマーズさんを訪ねると、阪根信一社長と販売促進部の星田翔太さんがわざわざエントランスまでお出迎え。 今回、社長自ら取材にお応えくださるとのことで、事前調査でのキレッキレなイメージ(先入観)に緊張していましたら、なんとも柔らかな物腰で紳士的で話しやすくて、なぜかこちらの雑談にじっくり耳を傾けていただく展開に。 ひととおりペチャクチャ喋らせてもらった後、やっと気づきました。机の上に、噂の全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」1/7模型があることに! これから私たちの家事に革命を起こしてくれるこのランドロイドは、一体どんな瞬間に生まれたのでしょうか。 「きっかけは、妻のひと言です。B to Cのビジネスを始めようとアイデアを探していた時、自宅で洗濯物を畳む妻に、“家で使うもので何か欲しいものある?”と聞いてみると、“そりゃ、全自動衣類折りたたみ機に決まってるじゃない”と笑」 3歳から17歳まで、4人のお子さんの父でもある阪根社長。毎日の洗濯物の量はすさまじいはずです。なんでも、4人家族で一人が家事を担当した場合、その人生において約375日を洗濯物の畳み・分配・運びの時間に費やすことになるのだとか。実に1年以上! 「セブン・ドリーマーズは “世の中にないモノを創り出す技術集団”というコンセプトのもと、3つのクライテリアをクリアするものを作るために活動しています。一つ目は、今の世の中にはないもの。次に、人々の生活の役に立つもの、生活を変えるようなもの。そして3つ目が、技術的なハードルの高いものです。 この3条件をクリアするものであれば、分野を問わず挑戦しているのですが、全自動衣類折りたたみ機はまさにその全てが叶うものでした」 たしかに、「全自動衣類折りたたみ機なんて作れるはずがない」と思い込み過ぎて、あったらいいな、なんて思いもしませんでした。それをさらりと「欲しい」と言えちゃう奥様も、「じゃあ作ろう」と実現させてしまった阪根社長も、常識を無視した絶妙の公私混同っぷりにしびれます。11年間極秘の「プロジェクトX」
セブン・ドリーマーズさんが展開する3つの事業のうち、ランドロイドは唯一未販売ながら、最も長い歴史を持つものなのだそう。スタートは2005年に遡ります。奥様の言葉から着想を得た阪根社長は、社内でも極秘の「プロジェクトX」を立ち上げ、数名の技術者とともに全自動の洗濯折り畳み機を作り始めました。その時の社員さんの反応は? 「いやー、まさかできるわけがない、そんなことに俺を巻き込むなよ、ヤバイんじゃないか社長は、みたいな感じで、とにかくドン引きでしたね笑 “本当に難しいテーマで5年ぐらいはかかると思うけどもやろうよ!”と皆を必死で説得しました」 そこから完成までは、5年をゆうに超えて約11年! 試作機を山のように作りながらも突破口が見えなかった4、5年目には、チームから去っていく人もいたのだそう。 「洗濯物を前に置いたらぱたぱたっと畳む機械はできていたんですけど、それでは意味ないなと。乾燥機から出して、外から取り込んで山になった洗濯物を、ごちゃっと放り込めばキレイに畳まれて出てくるようなものでないと、家事がラクにはならないですよね。でも、人間だとこれはTシャツ、これはパジャマとわかりますが、今の世界最高技術を使っても、これがTシャツの欠片だとは識別できないんですよ。ハードルは相当高かったです」 洗濯物をぽいっと放り込めばピシッとなって出てくるなんて、聞けば聞くほど夢物語。でも、それが可能になったから私たちにランドロイドのニュースが届いたのですよね。 今年度に販売予約を開始予定の2017年モデルは、引き出しに乾いた洗濯物を入れると、中でロボットが1枚1枚形を認識してきちんと畳み、それが上の棚に上がってくるというもの。衣類やタオル類はもちろん、子ども服まで識別可能なのだとか。さらに今後は、家族の衣類を登録しておくと仕分けしてくれるモードなんてものも搭載されるそうですよ。中に社員さんとか入ってないですよね?生活者ニーズ追求の先に
驚きなのは、ランドロイドに組み込まれたロボティクスの技術と画像解析は、社内の技術者さんがもともと有していたスキルではなかったということ。 「ど素人集団だったので、余計に時間がかかっちゃいました」とさらりとおっしゃいますが、世の中にないものを創るだけでなく、必要とされる技術も1から学び育んでいくなんて、かなりの勇気と根気が必要なはず。なぜそこまでしてチャレンジするのでしょうか? 「僕も技術者で、大学ではシーズを作る基礎研究をやっていました。でも企業って、ビジネスを世界に広めて役立てていかないと意味がないですよね。だからうちではもうシーズ研究はいいと。基本的な考え方として、先ほどの三つのクライテリアをクリアするもので、生活に関連したニーズから始めようと決めています。そこで求められる技術は、何であっても挑戦しようと」 これまでドラ○モンでないと解決できなかったようなことでも、技術力とアイデアで現実のものにしてしまう。その源泉には、徹底的な「生活者ニーズ」の追求がありました。 ランドロイドも、あくまで家電となり得ることをイメージして設計されているため、完成して終わりではなく、これからもさらなる進化を遂げる予定なのだそう。 ランドロイド、2019 年モデルになると、洗濯乾燥機と一体型になるのだそうです。つまり、洗い、乾燥、畳みまで完全全自動! 空いた時間で何しましょう〜。 それを可能にしたのは、企業間連携でした。セブン・ドリーマーズさんは今年4月11日にパナソニックさんと大和ハウスさんとの合併会社「セブン・ドリーマーズ・ランドロイド株式会社」を設立。 パナソニックさんと連携することで、洗濯乾燥機の技術連携が可能となり、大和ハウスさんと組むことで、ホームビルトインモデル(家を買った時にすでにランドロイド付き!)が実現する。それを見越しての合併でした。 ランドロイドの存在が世に公表されたのは昨年の6月のこと。それから1年も経たずに大企業との合併を成し遂げるなんて、あまりにも急展開ではありませんか? 「2005年のプロジェクトXの時からイメージしていたことです。ただ、なかなか技術ができないので、公開できる状況になるまでに10年かかってしまいました。公開後、ありがたいことにトントン拍子で話が進んだのです」 なんと、ランドロイド情報解禁日の2015年6月1日にパナソニックの副社長が来て、一通り説明をすると、「ぜひ一緒に取り組みましょう」と即決だったのだそう。 「“今のロボティクスや人工知能技術を駆使してもできないと諦めていたことを、いちベンチャーが作ったというので半信半疑で来ました”とおっしゃいました。そして、仮にできても、産業用ロボットアームという片腕で最低150万円くらいするものを使っていたら、すぐに帰ろう、と話していたそうです。でもランドロイドを見て、ものすごくシンプルな構造で、これはいずれ家庭用にできると判断してくださって」 社員さんが心配そうに見守る中での商談後、「組もうって言われちゃったよ〜」と一同大いに盛り上がり、阪根社長、ちょっと自信を深めたのだそうです笑 この連携により、ゆくゆくは洗濯乾燥機との一体モデルが30万円以下で作れるようになるそうですよ。さらに次段階のホームビルトインモデルでは、洗濯物を畳んで仕分けしたあと、タンスまで搬送してくれるところまで想定しているとのこと。夢のような未来がもうすぐそこに。一生懸命働いてお金貯めておきます! それにしても、世の中を大きく変えるイノベーションの起点となった奥様もさぞや、お喜びのことでしょう、との問いかけに、 「妻には早く持ってこいと言われています」 と阪根社長笑 奥様にプレゼントできる日が楽しみですね! いよいよ気になるセブン・ドリーマーズさん、次回はその歴史や働く環境についてうかがいます! (取材・文:ひらばるれな)●セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
研究員プロフィール:平原 礼奈
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。