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コクヨ株式会社【第2回(全3回)】
「やりたいならやってみなよ!」 
チャレンジ歓迎な社風が切り込む働き方の本質

mazecoze研究所 │ 2016.05.30

【我が社のmaze道〜コクヨ株式会社編〜】
第1回:リーディングカンパニーが世に送り出す“ソウイク”とは!?
第2回:「やりたいならやってみなよ!」 
チャレンジ歓迎な社風が切り込む働き方の本質
第3回:文房具LOVER垂涎! 最新&限定商品がズラリの 「コクヨハク2016」潜入レポート


「働いている人が素敵。懐の深い会社です」

前回お話をうかがった片桐友美さんのアーツ&クラフツ事業部は、社内ベンチャー制度の公募から生まれた部署。メンバーの「こんな仕事をしたい!」という思いと、「その中で発揮できるコクヨらしさってなんだろう?」という会社愛をまぜ合わせた結果、絵本のようで、文具のようで、おもちゃのようで、どれでもない。という、ユニークでクリエイティビティあふれる創育商品たちが生まれたのでした。

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大所帯だった前部署での意思決定方法と現在のベンチャー企業的な働き方、両方をひとつの会社で経験できたことはとても良かったと話す片桐友美さん

片桐さんいわく、「コクヨって、やりたいことを『やりたい、やりたい』と言い続けていると、『じゃぁ、やってみれば?』と、チャレンジを受け止めてくれる土壌がある。働いている人みんなが素敵で、懐が深いんです」とのこと。「ときには、物事が上手くいかないときもありますが、先輩たちはよく『失敗するなら前に転べ』言っていますね。転ぶにしても前のめりなら、とりあえず今より後退はしてないから!という考えのようで(笑)」
こんな風にチャレンジを後押ししてくれる社風だからこそ、コクヨの社員さんはイノベーションが起こしやすいのだと納得です。

最新オフィス環境で上演されるワーカー活劇!

そんな、高いモチベーションや発想力、創造性がものを言う仕事柄、自らの事業内容を生かしつつ、コクヨさんはとても先進的なオフィス環境の構築に取り組んでいるんです。

例えば、前回記事のラストに登場した、こちら↓↓↓が、実は“オフィス”だったということも相当驚きでしたが、

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普段は打合せをしたり資料作成をしたりする社員さんの姿が見られます

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いや、ここで仕事したら普段とは違うアイディアが絶対降ってきますって!

さらに社屋内には、コクヨさんの“今”を存分に結集させたライブオフィス「SHIPP(Shinagawa Practical Place)」が設けられていて、さまざまな企業さん、建築士の方やインテリアデザイナーさんなどから見学の予約が引きも切らないとか。

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「SHIPP」の愛称にちなんで船のモチーフが多数。OPENBAYは、他部門のメンバーがどんな話し合いをしているのか敢えてわかるようにしつらえたプレゼンテーションルーム

このライブオフィスの“ライブ”という言葉には「活きたショールーム」という意味が込められていて、つまり、コクヨの社員さんたちが本当にここで働いていて、それを見学することで、最先端のオフィス環境や働き方がリアルに体感出来ちゃう場だというのです。社員さんが考案した実験の場で自らが被験者になり、その課程をオープンにする———ミッションに対する振り切った誠実さに、maze研メンバー、おどろきが隠せません。
しかもこの取り組み、昨日今日に始まったことではなく、なんと1969年から続いているというから二度びっくり。maze研メンバー、まだ生まれてませんから(一部を除く)。

優良製品につながる、10年後、20年後を探る視線

そんなこんなで、社員食堂もご覧の通りのステキ空間。ここでは、ひと通りライブオフィス巡りを終えた私たちを、とある女性が出迎えてくれました。

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ランチタイムのピークが過ぎた社員食堂にはPC持参で作業をする人の姿もちらほら

コクヨ株式会社ワークスタイル研究所の河内律子さん。コクヨさんが発信するワーキングマザー向けサイト『WorMo’(ワーモ)』の編集長であり、プライベートでは5歳の息子さんのお母さんでもあります。

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【河内律子(かわち・りつこ)さん】教育出版社で編集企画業務を経験し、’07年コクヨに入社。RDIセンターMANABI LAB.(旧)のプロジェクトリーダーとしてさまざまな世代の“働きにつながる学び”を研究しながら、’13年に「WorMo’」を立ち上げる

コクヨさんの熱心な研究者気質が、いかにも凝縮されていそうな「ワークスタイル研究所」のミッションは、会社の大きな事業領域である“働く”と“学ぶ”を調査・研究すること。新しい技術や世界中の政治や社会の動きを探ってこれからの不確実な未来を予測しながら、そこで求められる考え方、スキルや働き方を考えることなんですって。「そういった研究が、営業サポートにつながったり、商品開発のためのエビデンスになったりするんです」。

前職での経験を生かし、コクヨさんに転職した当初は未就学児の“学び”に特化した研究をしていたという河内さん。「社会に出て“働く”ようになっても“学び”は必要だし、子どもたちの“学び”の先にも『どういう人材になるべきか?』など、“働く”を見据えた試行錯誤がある。研究するほど、“学ぶ”と“働く”の間に明確な境界線はないな」と、感じるようになってきたそう。そんな折り、育休復帰をしてご自身も仲間入りをした、“ワーキングマザー(以下、WM)”という存在が琴線に触れるようになってきました。

まず必要なのは、働く母の助けとなる知恵と経験を集めること

はじめ、河内さんは「WMが抱えている、すでに顕在化している問題———さまざまな制約があって自分自身のキャリア育成が出来ないーーーをクリアするために、効率よく働ける方法や便利に使える商品を提案していくことが、コクヨの事業にとってプラスになる」と考えていました。「そのために、WMが自身のキャリア育成のために時間を使う“学び”、そしてWMの多くが高い関心を持っている子どもの“教育”について研究を進めれば、これまでの自分の知見も活かせるだろうと思っていたんです」。

けれどその発想は、ご自身が仕事と育児の両立生活を続けていくうちに少し変わってきました。これまで、さまざまな経験を仕事で積み重ねたうえ、両立支援策が進んでいるコクヨでWMになるのだから、何の問題があるのだろう。出産前の河内さんはそうと思っていたと言います。「ところが、実際に母になってみると、子育てってこんなにも思い通りに行かないものかと!(笑)。しかも、以前のようなアウトプットが出来ていない自覚がある分、会社にだんだんものが言えなくなっていったんです。『こうでしょ!』と思っても、今の私にはできないしなぁ……、なんて思って意見を引っ込めてしまったり」

FireShot Capture 58 - はたらく私も あそぶこどもも もっと笑顔に I WorMo'(ワーモ) - http___www.wormo.net_

先輩WMや識者のインタビューなどを通して育児と仕事を両立する効率的な方法を探る「WorMo’」。名前の由来は「workとmotherをmore !」 働くことが育児にプラスになり、育児が働くことにプラスになる毎日を応援したいという思いが込められているそう

「でも、そんな私らしくない働き方を続けても、自分にはもちろん、会社にだってマイナスですよね。やっとそんな風に思えるようになったとき、ふと、他のWMたちはどうしているんだろう?と気になったんです。仮に『社内にロールモデルがいない』という人でも、世の中にいるたくさんのWMの経験や知恵を集めることが出来たら、私のようなジレンマや両立にまつわる問題はもっと早く解決できるようになるのでは? ———この思いつきこそが、『WorMo’』の始まりでした。

研究に没頭しているだけでは得られなかった多様な視点とつながり

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「会いたい!話を聞きたい!という人にどんどん会っています。職権を最大に活かして(笑)」

「『WorMo’』を立ち上げてから、社外の方とお話しする機会が増え、そこからのご縁でさらにつながりが広がりました。本来、研究職って外界との接触が希薄なんです。いつのまにか、そこの組織の色に染まってしまっていたりして……。それが、日常的にいろいろな人の価値観に触れられることで、自分自身の風通しがすごくいい。違う考え方も『アリだね!』と受け入れられる自分が、とても豊かだなぁって感じるんです」と、河内さん。僭越ながらそのお気持ち、よーくよーくわかります!

価値観の違いを受け入れることが本当のダイバーシティ

とはいえ、「WorMo’」が立ち上がってまもなく丸3年。この春、河内さんの働くワークスタイル研究所は、新たなWebメディアを立ち上げました。4月1日に「女性活躍推進法」が制定され、女性が働き続けるための法整備は一歩前進。フォーカスする対象をワーキングマザーだけに限定するのではなく、次のステップに進む時期が来たと判断したのだといいます。
「介護がある人、障害がある人、国籍が違う人……。これほど多様な人たちと未来を共に働くために、個人も組織も、もっともっと考え方や行動を柔軟にしないといけません」。それに、と河内さんは続けます。「『日本人はみな同じような考え方をする』と思っている人も少なくありませんが、人の価値観って実はとても多様。それは、日本人であってもです。だから、『人と自分は違う』という前提が当たり前の社会を作ることが、本当のダイバーシティではないかと強く思っています」

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個人のパフォーマンスや組織力を上げるために“学ぶ”と“働く”を融合した情報を発信する「MANA-Biz(マナビズ)」。いずれ「WorMo’」もマージしたいと考えているそう

だから、新メディア「MANA-Biz」が対象にするのは、“すべての働く人”。その名前からもわかるように、もともと河内さんが考えていた、“学ぶ”と“働く”をまぜこぜにする試みがついにはじまったのです。今後、河内さんたちの研究の先に生まれる製品やサービスは、きっと未来の働き方を象徴するものになるはず。そう思うと、今から研究の成果があらわれるのが楽しみですね。
河内さん、お忙しいところありがとうございました!

(撮影:吉永和志/取材・文:阿部志穂)

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