最も自由な人たちVOL.7〜全国と繋がりたいスペシャル!!〜(2020.9.13)開催レポート| NPO法人ポパイ山口 光さん
目次
「最も自由な人たち」開催レポートが届きました!
こんにちは。mazecoze研究所です。
先日お知らせしたイベント「最も自由な人たち」のレポートを、認定NPO法人ポパイの山口光さんが寄稿してくださいました!
最も自由な人たちVol.7~『チケット制リモートライブ 全国とつながりたいスペシャル!!~』とは?
東海地区において様々なハンデに負けず表現することに情熱をもち熱心に創作、表現活動している人たちと共鳴する人たちによるバリアフリーを基礎としたチャリティアートエンターテイメント
最も自由な人たちとは?
台風と共に名古屋の猛烈な暑さが過ぎ去った9月13日(日)、「最も自由な人たちVOL.7〜全国と繋がりたいスペシャル!!〜」を無事開催することができました。
「無事」と書くのは本当にそんな状況だったからで、5月の開催予定を9月に延期、準備開始の段でコロナ拡大のため無観客リモート配信に変更、すると8月愛知県は緊急事態宣言再びで会場に来られない出演者をVTR出演に切り換えて……と度重なる変容を乗り越えたのです。
このイベントは元々、三重県松阪市の障がい福祉事業所希望の園と会場のLive&Lounge Vioの発案から始まったもので、私たちポパイは協力団体として参加しはじめました。
美術的なアートにはすでに力を入れていたものの今は各地でパフォーマンスをするダンス集団ウゴクカラダもポパイ座銀河団もまだ結成前の頃です。
数年して共催者となり、さらにしっかりと運営に携わるようになりました。その間6年に私の目に映っていたのは、このイベントに魅了される人の増殖でした。
音楽活動をやっていなかった事業所が触発されてバンドを始めたり、上司を説得して出演したり、お客様が「想像している福祉と違った!!」と驚いて翌年にはお友達やご家族と来てくださったり。
なぜなのか? それは、出演者のパフォーマンスが超ぶっ飛んでいるから!に尽きます。
特に知的障がいのあるパフォーマーは空気を読むなんてしないで素で表現するので、それに圧倒されるというか腹の底の方をグワッと掴まれるような感覚になるのです。
いきなりあんなに直球で来られたら逃げられなくて真正面で受け止めるしかなくて、知らぬ間に虜になって、その客席の反応を受けてパフォーマンスがどんどん刺激的になる増強スパイラル。
……それが魅力だというのに今年は開催が難しいとなった時はとても残念でした。でも、実は私はコロナ自粛中からネット上を賑わすようになったリモート配信にもとても魅力を感じていたのです。
表現することができる人・観ることができる人が増えた、世間が障がい者に近寄ったと。だからすぐさま「無観客リモート配信に切り替えましょう!」と提案しました。
7月に差し掛かってからの変更だったし皆不慣れだし、細かな調整に時間と労力を要してイベント告知が直前にまでずれ込みましたが、これまでにポパイのアート活動で仲良くなったオランダやオーストラリアの仲間たちが観てくれると連絡をくれた時、やはり違った可能性があると実感しました。国内の遠方の方もたくさん観てくれて(もちろん近くの方も)、まさに「全国と繋がりたいスペシャル!!」を実現したのでした。
私、山口 光の活動と感想
私は個人的に歌手・パフォーマーをしてきていて、その経験を活かしつつポパイの事務局スタッフ・パフォーミングアーツ担当として勤務しています。
今回のイベントには運営スタッフとしても関わっていますが(助成金申請なども真面目にやってます。今回も文化庁文化芸術活動の継続支援事業補助金をいただきました)「司会ユニットまなミネぴかりん」とバンド「キノコたち」で登場もしました。
「まなミネぴかりん」は3年前に結成してこのイベントや他事業所のお祭りなどの司会を務めています。
志の高い二人から「次のミーティングはいつですか?」「県外からも依頼が来ますか?」「海外進出はいつですか?」としょっちゅう聞かれ、次の機会を獲得するのも仕事のうち。
司会時の逸話も沢山あって、小休止にまなみんの姿が見えないと思ったらお祭りの屋台でもぐもぐ食べていたとか、ミネミネが大好きなお馬のレースを優先して当日来なかったとか、最後のしめの一言を求めたらまなみんが「生活困窮者や貧しい健常者もちゃんと暮らせるように、銭のポーズ!!」と摩訶不思議なポーズを披露したり、ミネミネが「最悪でした。早く帰りたいです。」と凍りつくようなことを言ったりとか。
その二人の間でなんとかイベントを進行すべくトークをするのが最高にスリリングで最高におもしろい。
「キノコたち」はプライベートの音楽活動なのですがミネミネもメンバーで、ライブ会場のカフェに約束の5時間も前からコーヒーも注文せずに座っていてびっくり。
私がお店のスタッフさんに謝ると「大丈夫ですよ」と優しく対応してくれます……というのは知り合いのお店だからですが、内心ヒヤヒヤしながらもそういう人や場所を増やしていきたいと小さな炎を燃やしています。
二人とも、あらゆるイベントが中止となって久々の出演に本当に嬉しそうで、いつもに増して気合が伝わってきました。
知的障がいがあるからといって表現の機会を失う無念さがわからない訳ではありません。人前で表現をすることが好きな人は誰だって場が欲しいのです。
私たちスタッフはその情熱に応え機会を創出すること、そしてともに味わうことが大切だし腕の見せ所です。そうして臨んだ今回の無観客リモート配信をどう説明したらメンバーに伝わるか、各出演者のサポーターは考え工夫したことでしょう。
私もできるだけわかるようにと二人に説明しました。でも終わってみて思うのは、やってみなければわからなかったということ。特に会場からライブをお届けしていた私たちは、映像配信オペレーターの指示でカメラの前で待ち構え、次の出演者の準備が整うまで目の前のお客様の反応が無い中トークで繋ぎ、VTR出演者の映像をスマホで確認しチャットにリアクションし感想を述べたりする、なんてやったことのないことをやった訳ですから。
もちろん他のスタッフも要領を得ない中目まぐるしく動き回り見守り、終わった時は皆放心状態でした。一生登ることのなかったかもしれない山に障がいのあるメンバーが連れて行ってくれたな〜とこれまで度々感じてきました。今回も難所いっぱいだけども爽快な登山でした。
総括……と次のイベント告知!
「障がいはその人にではなく社会にある」とよく言いますが、パフォーミングアーツは障がいを取り払うというよりはぴょーんと飛び越えたり、時には気づかずにその上で好き放題やってたりするイメージです。
「やろう」「やりたい」と描いたことに向かって、失敗しようがあの手この手でトライし続けることが肝。そこから逸れて、がんばっていることにフォーカスがいくと、アートはアートでなくなり、福祉は福祉でなくなります。
そもそも福祉とは幸せのこと。その人の幸せにアートが位置付けられるなら、まだ見ぬ山にも登ろうではないか!そんな風に意気揚々としてきます。
配信音がイマイチだったとの意見があったり、うまくチケットが入手できずお手間をおかけしたりと反省点は多々ありますが、初の取り組みにご参加くださった皆様、本当に本当にありがとうございました。
応援を糧にして次の一歩を踏み出します。
次回は12月6日、Do it !!〜音楽で世界を変えようって本気っすか!?〜の開催が決定しています。障害者芸術文化活動支援普及事業 東海・北陸ブロック事業 ジャパン・ミュージックブリュット・フェス vol.1という壮大な企画。
全国の仲間にひっぱられ、私はまた愉快痛快な登山道を歩むことでしょう。
特定非営利活動法人ポパイ
2006年3月より名古屋市北区で障害者の生活支援を行っている。
「もーやーこ(=この地方の方言で「わけっこ、持ち合い」などの意味)」をキーワードに障害者が住み慣れた環境で主体的に生活し、社会参加できるよう様々な角度からサポート。将来を明るく豊かなものとして捉えられるような支援を目指し活動している。
>webサイト
山口 光/やまぐちひかる
歌手、パフォーマー、NPO法人ポパイ事務局・パフォーミングアーツ担当。
2000年よりフォークバンドに参加し、'05年よりソロ活動開始。'08年、オランダ人ミュージシャン、テュラ・ヘラード氏制作「小さなこどもと親のためのCD」日本語版制作に携わり、『おうちうた』と命名、音楽ユニットクジララでちいさなひとたちに音楽を届けている。
また、ミュージシャンを始めダンサーなど様々なアーティストとの共演・企画・作詞・朗読・海外公演、障がいのある人とのパフォーマンスや合唱、プロジェクトのオーガナイズを行なっている。
(寄稿・画像提供 山口光)