
2020.1.更新
まずは、うわさの三姉妹の皆さまのご紹介から!
長女の井上さやかさん。
次女の松下紗由美さん。
三女の井上祐巳梨さん。
--プロフィールを聞いただけで、井上三姉妹、何なのすごい、と圧倒されてしまったのですが。皆さんはどのようなきっかけで、STEAM教育に取り組まれているのでしょうか?
紗由美さん「この事業を始めたきっかけは、シリコンバレーに住む姉のさやかからの情報でした」
さやかさん「私の住んでいるシリコンバレーでは、毎週のようにSTEAM関連のイベントが開かれています。
4年前に息子が生まれてから、これからはこういう教育が大事なんじゃないかと、同じ年代の子をイギリスで育てていた紗由美に話していました。実験やおもちゃなど、私の子どもが体験したことを、妹の子にも試してもらったりして」
紗由美さん「そうして3姉妹の中でSTEAMの情報を流すようになったんです。このSTEAMのおもちゃよかったよ、サイエンス×アートの実験してみてこれはよかった、などみんなでシェアして」
--数年前から、すでに姉妹間でSTEAMを実践されていたとは。皆さんが母になり、子育て当事者として教育への関心が高まったことがきっかけだったのですね。
祐巳梨さん「掛け合わせなんですよね。全く違うものを掛け合わせて、アイデアやイノベーションを生みだしていく。文系は文系、理系は理系ではなく横断的に、プロジェクトベースで体験を通じて学んでいけるのが特色だと思います」
紗由美さん「保育園や幼稚園児からでも取り組めるんですよ。文系や理系の境目がまだない年頃なので、化学実験を見てそれが理科という概念がくるより先に、こんなことができるんだ、楽しい! という体験が、後々学びになっていきます。なので、STEAM教育をはじめるのは、早ければ早いほどいいなと感じています」
祐巳梨さん「夏にはSTEAM-JAPAN主催で、ミニサマースクール というイベントを行いました。アイスに塩をつけると、のりのような作用になるんですけど、積み木のようにして遊んだり。重曹に酢をつけると化学反応でシュワシュワするので、それでアートの作品を作ってみよう、とか」
--いま「ART」という言葉を教育やビジネスやいろんなところでよく聞くのですが、正直その意味をうまく消化できていません。先ほど0から1を生み出す力という言葉もありましたが、STEAMのARTはどのような捉え方をしたら良いのでしょうか。
祐巳梨さん「学芸大学の先生と話していて私も腑に落ちたのですが、ARTのAの部分は、あるべき姿、こうなったらいいなという姿に向かう、ビジョンを作っていく力であると。それ以外のサイエンスやテクノロジーは、今こうあるよねというところを学んでいくという話でした。
0から1を作ったり、クリエイティブをするところではやはりARTが重要で、国もSTEMではなくてSTEAMの推進で動き出したのには、これからビジョンを作っていかなくてはいけないというところがあるからだと感じます」
紗由美さん「アートはアーツで、リベラルアーツも含まれていると、経産省も定義しています。教養という意味を持つリベラルアーツと考えると、すべてが入ってくるんですよね。音楽とか演劇とかもっと幅広い要素が含まれてくるし、いろんな方向に可能性が広がるなと思います」
祐巳梨さん「AI時代をどう生きるか? を考えるときに、ARTのあるべき姿を作るというのがより重要になってくると思います。
先日、STEAM JAPANのインタビューで、アーティストのスプツニ子さんに“未来を切り拓くための、クリエイティビティ”をテーマにお話をうかがったのですが、AI時代に必要な人材というのは、課題設定や、ゴールを作ることができる人だとおっしゃっていました。課題に対して最短距離で進むのはAIが一番早い、けれどビジョンや課題の設定は、AIにはできないと。そこにもやはり、ARTの力が強く必要になってくると思います」
--ここまでうかがって、皆さんはSTEAM教育を日本と世界から循環させる活動をされているんだなぁと感じたのですが、それぞれの強みはどのように掛け合わせているのでしょうか?
紗由美さん「長女のさやかは、戦略、ストラテジーですね。GEという会社でエネルギーのコンサルタントとして事業企画に携わっていたり、世界リーダーシッププログラムに選ばれたり、ヨーロッパとアメリカ色々なところで働いた経験があり、頭脳派です(笑)」
さやかさん「ストラテジー(笑)」
紗由美さん「私は、8年前からイギリスで暮らしていますが、ロンドンの人材会社で、多様性のある異なる教育を受けている国の人たちが集まって、ひとつのプロジェクトを行なっている状況を見てきました。そうした現状と、姉からのSTEAMの話がマッチし、次世代にぜひ推進していきたいと強く思いました。
思ったことを行動に起こすことが何より好きなので、3人の中で一番行動派だと思います(笑)」
祐巳梨さん「私はARTの部分がとても大事だなと感じているので、その部分を中心に、ですかね。自社事業でも、社会人のためのクリエイティブスキルアップのプログラムを提供しているのですが、私としては、STEAMを幼少期から学生までやっていただくのと、社会人はクリエイティブのスキルアップみたいな形で、0から1を生み出す楽しさを、もっとたくさんの人に伝えていきたいと思っています」
--みなさんそれぞれに全く強みが違って。一体どんな環境でお育ちになったのでしょう。
紗由美さん「小学生くらいの頃から、家族旅行に行くとなると、企画書を出せと母に言われていました(笑)そして、祖母の前でプレゼンするんです。おばあちゃんに選ばれた人が300円もらえると。いつも姉がもらっていたんですけど(笑)」
祐巳梨さん「常識をうたがったほうがいいよ、みたいなことはよく言われてきましたね」
紗由美さん「私は、行動をしなさいとよく言われていました。考えて動かないのは、何もしていないのと同じだ、みたいな」
さやかさん「え、そんなの言われてたっけ(笑)」
紗由美さん「あれ、私だけに言われた? もしかして。みんな違うこと言われてたのかな(笑)」
--お母さま、すごくないですか。
きっと、皆さんの特性をよくご存知で、その感性に合わせた言葉がけをされていたんですね!
最後に、mazecoze研究所は “あなただけの自由を後押しする”というコンセプトで、いろいろなダイバーシティの視点を発信しています。皆さんにとって、自分にとっての自由はどのように実現していくものなのか、ぜひお聞かせください!
祐巳梨さん「自ら考えて作り出すことができれば、それはもう誰にも邪魔されない自由になると思います。自分で生み出して、自分の舵は自分で握るということが、すごく重要なんじゃないかなと。そう考えると、STEAMの、知識を知るだけではなくて自分で体験しながら作る、ということにもつながっていきますね」
紗由美さん「自分の選択肢が、人生をつくっているという自覚を持って行動することでしょうか」
さやかさん「自分で尺度を持って、やりたいことは何なのかを常に見つめ直して、自 分に正直に進んでいくことだと思います」
--みなさんご自身の自由のあり方が、まさに今、STEAM教育推進という形で表現されていてとても素敵です。今日は、貴重なお話をありがとうございました!
お話をうかがうまで、自分には縁がないもののように感じていたSTEAM教育。 ところがお話を聞いていくうちに、ものすごく身近で、また、子どもだけでなく自分自身にとっても、物事の見方を広げ深め、体験や行動を後押ししてくれる方法なんだなぁと実感しました。教育と名がついてはいるけれど、あらゆる人の人生を豊かにしてくれる取り組みだと思います。知れてよかった! それぞれの多様な視点をかけあわせ、こまやかに大胆に、世の中を変えるために動いているみなさんの活動は価値深く、三姉妹が織りなすSTEAM教育にこれからも目が離せません。引き続き、mazecoze研究所でも追っていきたいと思います! さやかさん、紗由美さん、祐巳梨さん、ありがとうございました! (撮影協力:kana 取材・執筆:ひらばるれな)
目次
話題の「STEAM教育」について、教えてもらいました
こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。 みなさんは「STEAM(スティーム)教育」って、ご存知ですか? 検索すると、「Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習するSTEM(ステム)教育に、 Arts(芸術、リベラルアーツ)を加えた教育手法」とか、「現実の問題を解決に導く力や今までにないものを創造する力を育む教育」などとでてきます。 2018年6月に公開された文部科学省の「Society5.0に向けた人材育成」では、STEAM教育を推進する方針が出され、経済産業省も、2018年8月に「学びと社会の連携促進事業」として、学びのSTEAM化等の強化に新規で18億円の予算案を概算要求。東京都は2019年7月に発表した「重点政策方針2019」の中で、プログラミング教育やSTEAM教育、グローバル教育など、子どもたちの個性や可能性を伸ばす教育の推進を掲げています。 日本全体が、STEAM教育に前のめり。 とても重要な新しい教育なんだろうとは思いつつ、いまいち具体的にピンとこないまま、誰かSTEAM教育についてわかりやすく教えてくれないかなーと思っていましたら、いらっしゃいました。 以前、型にはまらないアメーバーな働き方についてお話をうかがったBarbara Poolの井上祐巳梨さんから、「シリコンバレー、イギリス、日本に住まう三姉妹が、STEAM教育をこれから推進していきます!」という情報が! しかもその三女が井上さんだというではないですか(笑) 早速、普段は海外に暮らすお姉さまたちが一同に帰国するタイミングにお邪魔して、お話を聞いてきました!世界を股に掛けSTEAMに取り組む三姉妹、現る!


さやかさん、ご経歴がすごすぎますが、柔らかな佇まいのとっても素敵なお姉さま。
井上さやかさん
アメリカ シリコンバレー在住。 東京大学工学部を卒業後、ゼネラル・エレクトリック(GE)のエネルギー事業部にてテクニカル・コンサルタントを経て戦略企画・マーケティングマネージャーを担う。 その後独立し、カリフォルニア州・シリコンバレーに本拠を置く、Eneleap Consulting代表取締役社長。エネルギー・自動車・機械学習の3つの分野に特化し、世界的大企業、急成長ベンチャー企業、研究機関等の戦略立案及び事業開発コンサルティング等を行う。Silicon Valley Steam Education Association代表。
取材当日の朝にイギリスから日本に一時帰国された紗由美さん。成田空港から直接来てくださったのに超お元気!
松下紗由美さん
イギリス在住、Managing Director。今回のSTEAM事業部では、中心的な役割を担う。 筑波大学卒業後に三菱UFJ銀行にて法人営業に従事した後、2012年渡英。ロンドンの人材紹介会社を経て、英国企業の日本企業へのセールスサポートをきっかけに、国を超えた市場拡大のキャリアをスタート。多国籍なメンバーと共に、欧州を中心とした海外マーケティング、広報、販路支援、イベント運営等を実施。 2019年、経済産業省『「未来の教室」実証事業』採択。新しい次世代STEAM教育「教職員向け研修サービス」事業統括責任者。mazecozeではもうお馴染みの祐巳梨さんは、新たにSTEAM事業部を立ち上げていました!
井上祐巳梨さん
日本大学芸術学部在学中から地域の町おこしイベントや、2,000人超を動員する学生最大級アートイベントの立ち上げを代表として行う。芸術学部奨励賞(最優秀表彰)受賞。2009年大手広告代理店の株式会社アサツー ディ・ケイ入社。2013年オーストラリア政府のキャンペーン「The Best Job in the World(世界最高の仕事)」では、世界60万人から日本人唯一の25名の中に選出。同年6月に株式会社Barbara Pool 設立、代表取締役に就任。 クリエイティブプロデューサーとして、全国の地域のブランディング、クリエイティブ事業などを展開。2019年、(株)Barbara PoolにてSTEAM事業部を立ち上げ、経済産業省『「未来の教室」実証事業』で、新しい次世代STEAM教育事業を推進中。母たちが推進するSTEAM
紗由美さん「だんだん情報が溜まっていく中で、私たちだけで溜め込んでおくのはもったいないよねと話すようになって。じゃあ、世界各国のSTEAM教育の最新情報や、実践のヒント、世界のSTEAM人材へのインタビューなどの情報を発信していこうと、STEAM-JAPANというwebサイトをまずは簡易に作りました」 (※STEAM-JAPAN は、2019年11月中旬リニューアルOPEN予定!)
“世界最先端のSTEAM教育の情報が分かる!” STEAM-JAPANシリコンバレー・イギリスを中心としたSTEAM KIDSライターや、STEAMに興味がある日本の大学生たちが中心になって情報収集・ライティングしているのだそう!
STEAM教育は、好きを突き詰めた横断的な学び
取材させていただいた、託児もできるビジネス長屋「RYOZAN PARK」。シェアオフィスの上の階にはプリスクールがあり、お子さんたちとSTEAMのワークショップも開催しているのだそう。

STEAMミニサマースクール より。写真は、4色の色水と重曹で泡立つ「シュワシュワアート!」ワークショップ。アートと科学の学びの様子。

ぬか漬けを、つけているんですけど……ス、STEAM……?
--STEAM=プログラミングとか、ICTとか、理系の何かだと思い込んでいたので、目から鱗です。 ちなみに私の娘はいま料理に興味があって、ぬか漬けを一緒に漬けているんですが、あれもSTEAMっちゃえるんでしょうか? 紗由美さん「うんうん、そうだと思いますよ(笑)どうやったらもっと美味しいぬか漬けが作れるか。そのために必要な発酵の仕組みを学んだり。親もわからなかったら、ぬか漬けの工場見学に一緒に行って、専門家に聞いてみよう、とか。どんどん広げていけますよね。親も一緒に学んでいく楽しみがあるのではないでしょうか」 さやかさん「STEAMの全ての項目を満たしている必要もなくて、状況に合わせて柔軟に展開していけるのもいいところだと思います」国によっても求められるSTEAMのあり方は違う。日本では?
日本、すごいよーと、紗由美さん
ARTのとらえかた。AI時代をどう生きる?

多様な強みと、それぞれの自由

お話をうかがうまで、自分には縁がないもののように感じていたSTEAM教育。 ところがお話を聞いていくうちに、ものすごく身近で、また、子どもだけでなく自分自身にとっても、物事の見方を広げ深め、体験や行動を後押ししてくれる方法なんだなぁと実感しました。教育と名がついてはいるけれど、あらゆる人の人生を豊かにしてくれる取り組みだと思います。知れてよかった! それぞれの多様な視点をかけあわせ、こまやかに大胆に、世の中を変えるために動いているみなさんの活動は価値深く、三姉妹が織りなすSTEAM教育にこれからも目が離せません。引き続き、mazecoze研究所でも追っていきたいと思います! さやかさん、紗由美さん、祐巳梨さん、ありがとうございました! (撮影協力:kana 取材・執筆:ひらばるれな)
研究員プロフィール:平原 礼奈
mazecoze研究所代表
編集者・手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。