国宝土偶が集結する「縄文展」に沸く東京国立博物館で、土偶女子代表 譽田亜紀子さんのトーク&折り紙作家 COCHAE 武田美貴さんの土偶折り紙イベントに参加してきました!
縄文時代を現代につなぐ立役者、ふたたび登場
こんにちは。mazecoze 研究所のひらばるです。 昨年お話をうかがった、土偶女子代表で文筆家の譽田亜紀子(こんだあきこ)さんを 覚えていますか?土偶女子代表の譽田亜紀子(こんだあきこ)さんが教えてくれた、土偶と縄文時代に学ぶ、いまを生きる力
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“誰かを想うパーソナルな祈りの対象”であった土偶や、縄文時代人の命の再生と共生への感性について教えてもらって、深く感銘を受けました。
あれから数ヶ月、あれよという間に縄文・土偶ブームが到来!
7月からは上野にある東京国立博物館で「縄文-1万年の美の鼓動」(縄文展)が開催され、縄文時代の出土品の中で6 件ある国宝の全てが揃い、入場者は20 万人を超えたのだとか(8月17日現在)。
しかも、国宝6件のうち5件が土偶で、誰もが一度は教科書で見たことがある「中空土偶」、「仮面の女神」、「縄文の女神」、「合掌土偶」、「縄文のビーナス」が集結しているのです!
メディアでも連日のように縄文について取り上げられ、解説をする譽田さんをこの夏何度もテレビや雑誌でお見かけしました。
土偶や縄文時代を現代につなぐ通訳者として突き進まれていてまぶしいです!
折り紙から土偶が生まれる!?
そんな中で譽田さん、7月に7冊目となる新刊を発行されました。その名も『折る土偶ちゃん‒作って発掘・縄文おりがみ‒』(折り紙ユニット COCHAE(コチャエ)さんとの共著)。 本の中には国宝5体を含む全20 種類の土偶折り紙が内蔵されており、解説を楽しみながら説明の通りに折り紙を折ると、ユニークな「土偶ちゃん」が誕生してしまうというもの。ポップでディープとはこのことですね。 ためしに娘(4歳)と一緒に「チビーナス」を折ってみたところ、紙が立体になった途端、なんとも愛嬌あるオーラを放つように。娘も「こじぞうちゃん~」と喜んでおりました。 家のそこここに土偶折り紙が転がるようになった頃、譽田さんから「親子参加型のイベントをやるので娘ちゃんといらっしゃいませんかー」とお誘いが。 小中学生とその親を対象に、土偶について学びながら折り紙を折るイベントとのことで、私たちも子供と一緒に潜入してきました!夏休みの自由研究にも。隅々まで中空土偶を観察
8月3日、国立博物館の中にある「TNM&TOPPAN ミュージアムシアター」で開催された「見て、知って、折って、VR トークイベント&親子折り紙教室」。 “夏休み自由研究応援!”というイベントの会場は、小学生くらいのお子さんと親御さんで大にぎわいでした。 せっかくなので、子供の視線で子供を撮ってもらおうと、かねてから撮影の腕に定評がある保手濱の息子・コウタ氏(小3)にカメラマンを依頼。maze研も夏休みバージョンです。 さて、いよいよイベント開始。 譽田さん「みなさんこんにちは! 土偶ってそもそもなんなのか知ってる人ー!」 会場「はーい!」 譽田さん「お、結構いるね。土偶が作られたのは縄文時代と言われる時代です。どれくらい昔か知ってる?」 指名されたお子さん「1万年以上前!」 譽田さん「すごい! 拍手! そうなんです。みんなのおじいちゃんおばあちゃんを100人くらいずーっとずーっと遡っていくと、だいたい縄文時代に到着します。自分たちの100人前は縄文時代人くらいの距離感だとイメージしてください」 縄文時代の人と自分たちの命がつながっていることをイメージできたことで、会場の子供たちが話に集中していくのがわかります。 続いて当時の食べ物、洋服、土器の用途など、縄文人の暮らしぶりについて説明があり、話題はいよいよ土偶に! 譽田さん「狩りの成功を願ったり、お母さんたちが無事に赤ちゃんを産めるようにお祈りをしたりするため作られたのが土偶だと言われています」 譽田さん、さっと中空土偶の等身大パネルを取り出します。 譽田さん「この中空土偶、国宝なんですけど、北海道の一般の方の家庭菜園のじゃがいも畑から出てきました」 会場「えー!?」 その名の通り中が空洞で、最も薄いところは5mm ほどだという中空土偶。両足のつながった部分には管があり、火入れの際に空気が全身を巡るように工夫されているのだそう。縄文時代人の技術と緻密さに会場から「へー」とか「すごーい」とざわめきが聞こえてきます。 イベントでは「VR(バーチャル リアリティ)」が駆使され、シアターに映る中空土偶が、正面から背中、足のうらまで360 度見られるようになっていました。 グーンと近寄って顎の下につぶつぶ模様があるのを発見できたり、断面図やCTスキャンを撮ったものまで。隅の隅どころか中までまるごと観察できて楽しい! 譽田さん「中空土偶は男だと思う? 女だと思う?」 「この顎の模様はなんだと思う?」 投げかけられた質問に、子供たちは思い思いに回答していきます。 譽田さんによる質問の答えは、中性的な見た目の中空土偶は、男女どちらかわからないし、性を超越した存在なのかもしれない、ということでした。 顎のつぶつぶ模様も、髭か刺青かわからないのだそう。ただ、顎にはおそらく赤い漆が塗られていて、赤は縄文時代人に取って命を表す色だったため、中空土偶はとても大切にされていたであろうことを教えてくれました。 「土偶についても縄文時代についても、わかっていないことがほとんどなんです。私の役割は、この子たちやこの時代を、子供からお年寄りにまでわかりやすく伝え、興味を持ってもらうことかなと思っています」 前回の取材で譽田さんがこうおっしゃったように、足を踏み入れればそこから未知の世界がどこまでも広がる縄文時代。でも、好奇心と想像力さえあれば、わからないことさえ楽しみになります。その一歩を後押しして、子供と親までも新たな世界へ誘ってくれるようなお話だなと感じました。子供たちの手から続々生み出される、折る土偶ちゃん
イベントの後半は、折り紙デザイナーのCOCHAE 武田美貴さんによる折り紙教室です。書籍『折る土偶ちゃん』の折り紙は、COCHAE さんがデザイン・考案したもの。天才ですね。 COCHAE さんの説明を聞きながら、先ほどの中空土偶をみんなで折っていきます。 お子さんたち、譽田さんの解説で身近なものになった中空土偶が自分の手で立体的になっていく様子を楽しんでいましたよ。 それにしても、子供たちが折り紙をペタペタやっている風景を眺めていると、縄文人が土を練りながら土偶を作っている様子にも見えてきて……。折る土偶ちゃんって実は、計算され尽くした本なのでは。これはまた、譽田さんにお話を聞きに行かねばです! そんなこんなで大盛況のうちにイベント終了。 土偶との距離が一気に縮まった娘は、毎日のように「中空土偶って知ってる?」と保育園の友達や先生たちに絡んでいるようです。ミニ土偶女子の一丁あがり。 あの会場で、同じような土偶キッズがたくさん誕生したのではないでしょうか。彼らがまた新しい縄文・土偶の扉を開いていってくれるのかもしれませんね。 縄文ブームがくるずっと前から土偶たちとの対話を重ねてきた譽田さん。より広く多くの人に知られるようになった今も変わらぬ姿勢で、縄文を愛し伝えているのがとても印象的でした。mazecoze研究所はこれからも、譽田さんとユニークな土偶たちを追っていきます!譽田亜紀子さんブログ https://lineblog.me/kondaakiko/ 『折る土偶ちゃん‒作って発掘・縄文おりがみ‒』(朝日出版社) 譽田亜紀子・COCHAE著 https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255010762/ TNM&TOPPAN ミュージアムシアター VR作品『土偶 美のはじまり』(9月30日まで上映) http://www.toppan-vr.jp/mt/ (撮影:コウタ)
研究員プロフィール:平原 礼奈
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。