こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。
maze研で「井手先生の脳科学最前線! 感覚過敏・鈍麻から広がるグラデーションな脳の世界」の連載を進めてくださっている、井手正和先生(国立障害者リハビリテーションセンター研究所・脳機能系障害研究部研究員)。
マスクでの外出が定着したこの日々の中で、井手先生は、マスクの着用に困難がある人がいること、そして、その一因となっている感覚過敏について、専門家の立場から様々な媒体を通じて科学的観点の解説をされています。
先月は、西日本新聞に掲載された記事が話題になりました。
「マスクが着けられない…「感覚過敏」の苦悩 わがままと誤解も(2020/6/19 西日本新聞 くらし面 新西 ましほ記者)」
今週、7月16日(木)のNHK「おはよう日本」でも、感覚過敏によるマスク着用の困難についてクローズアップされ、先生も感覚過敏の解説や実験場面の紹介をされるそうです!
「“がまん不足”などと言われて理解されないこの特性が、科学的解明が進められている脳の生理過程から起こることを、多くの方に知ってもらいたい」と井手先生。
先生の思いに反応するように、マスクに苦しさを感じている人やその周りにいるたくさんの人が、記事や情報を拡散されています。
mazecoze研究所の連載「井手先生の脳科学最前線」についても、記事を発信する目的や意味を、井手先生とプロジェクトメンバーで改めて確認しました。先生のコメント、ご紹介したいと思います^^
井手先生より
「TVや新聞での発信が、多くの方の目に触れて、社会に理解を浸透させていくことができるのはうれしいことです。
一方で、一部だけ切り取られて伝わってしまうことも懸念しています。
感覚過敏に注目が集まっていますが、この症状の理解が広がる時、必ずその病態を科学的に説明することとセットでないと、また別の誤解を生むことにつながると思います。
発達障害がある方の感覚処理障害は、過敏だけが起こるわけではなく、ほとんどの場合は鈍磨がセットになっています。これは、感度が高くなっているだけではなく、入力を知覚する過程での調節が定型の方と違っていることが大きな要因だと思われるので、過敏も鈍磨も起こりやすくなるのです。
mazecozeさんでは、感覚過敏や感覚鈍麻について、様々な側面から丁寧に内容を詰められるので、こうした大切な部分をしっかりとフォローしながら、発信・保管していくことができると感じています。
実際に、mazecozeさんの記事の影響が様々なところであって、今回の取材にも繋がっていると思います。
医学生の団体から活動のアドバイザーを依頼されて、何で僕に声かけたの?と聞いたら、mazecoze研究所の記事を読んでと言っていました^^
潜在的に感覚過敏は関心が高まっていたと思いますが、mazecozeさんの記事や、皆さんの声があって、今回大きく注目されたのだと思います。どうもありがとうございます。
感覚は誰もが違うものなので、自分にも理解できることと感じてもらうことは大切なのですが、自分もそうだからたいしたことないと捉えられたりすることにもつながります。
これからもっと発信力を持って、情報をフォローしながら、より広く一般の方に伝えられたらと思っています。ぜひ、引き続きよろしくお願いします!」
井手先生は、記事の制作・編集過程にもじっくり関わってくださり、感覚についての研究を様々な視点から惜しみなく教えてくださっています。
研究することにとどまらない、「研究結果を自ら伝え知ってもらうことで社会を変えていく」という先生の信念から、いつも多くの学びをいただいています。
井手先生も触れられていた、「感覚鈍麻」についての記事を、現在制作中です。引き続き一次情報にこだわって、丁寧にまとめていきたいと思います!
連載を通じて、目には見えない感覚の多様性を理解できるきっかけづくりに、そして、誰もが自分らしく生きられる世の中への一助となることを願って。
●英語版「Dr. Ide’s brain science forefront」
井手正和先生
専門:実験心理学、認知神経科学、神経心理学
発達障害者の感覚処理障害(感覚過敏・感覚鈍麻など)の神経生理基盤を明らかにすることを目的とし、心理物理と脳イメージング法を用いた実験を行う。
>研究室webサイト
mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。