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2019年11月「ノウフクJAS」の認証開始! 農福連携商品の社会的価値を認める初めての日本農林規格が、農福連携の推進とエシカル消費を後押しする。

平原 礼奈 │ 2019.11.28

持続可能な共生社会を生み出す農福連携!

こんにちは。mazecoze研究所のひらばるです。 私の中で今年最も夢中になったキーワードが「ノウフク・農福連携」なのですが、みなさんはご存知でしょうか? 農福連携は、「農業分野の後継者不足や耕作放棄地といった課題の解決」と、「障害がある人の働く場づくりや賃金の向上、心身の機能回復」などを同時に実現し、その循環の中で持続可能な共生社会を生み出す取り組みのこと。 今年4月には、内閣官房長官を議長とする省庁横断の「農福連携等推進会議」が設置され、6月に「農福連携等推進ビジョン」が取りまとめられるなど、いま国をあげて推進されています。 ここ数年で農福連携の機運が高まっていますが、数十年前から実践している事業所も全国にあり、農業、福祉それぞれのより良い連携のあり方が日々探究されています。 農福連携を通して多様な人の居場所と出番ができ、地域コミュニティが活性化し、生きる上で欠かせない作物も育まれるなど、とにかくうれしいことが続々と起こるすごいしくみなのです! 私もノウフクに関わる人をつなぐ民間プラットフォーム「日本農福連携協会」さんや、共生型の社会的事業を創出する「日本基金」さんと一緒にノウフクPROJECTに関わらせてもらっていますが、知れば知るほどその先がある奥深い世界で、もう引き返せない感じになっています。  
○ノウフクとは ノウフクは、農福連携を農業と福祉の連携よりも広い概念で捉えたもの。 ノウ=農林水(業・教育・文化)=「自然」 フク=障がい者・触法者・生活困窮者・高齢者等あらゆる人(多様性)=「人」
○ノウフクPROJECTとは 行政、生産者、事業所、地域コミュニティ、企業、コーディネーター、販売者、消費者などをひとつながりに結び、ノウフクのビジョンや情報の共有、販売、ブランディングまで、それぞれの取り組みが効果的に連動するようにデザインし、持続可能な共生社会を実現するプロジェクト。
ノウフクPROJECTのことは改めて書きたいのですが、今回は、農福連携の取り組みが拡大する中、今年11月から認証がはじまった「ノウフクJAS」について紹介します!

「ノウフクJAS」=農福連携商品の社会的価値を認める初めてのJAS

2019年3月に制定され、11月より認証事業がスタートしたのが「ノウフクJAS」。正式名称を「障害者が生産行程に携わった食品の農林規格(平成31年3月29日農林水産省告示594号)」といいます。 日本農林規格(JAS)とは、食品の品質や生産方法を保証する規格のこと。つまりノウフクJASは、「農福連携商品の社会的価値を認める初めてのJAS」なのです! 特筆すべきは、モノそのものでなく、生産のプロセスに対して認証がつくという点。障害のある人が、農林水産物の主要な生産工程に携わっていることが認証のポイントとなります。

出典:農林水産省WEBサイト農林水産省 食料産業局   農福連携によって生産されたノウフク生鮮食品やノウフク加工食品を対象に定められるノウフクJAS。 農福連携の推進を後押しし、多様な人材を包摂する社会の実現に寄与すること、そして、人や社会・環境に配慮した消費行動であるエシカル消費への関心が高い購買層に訴求していくことが期待されています。

日本基金WEBサイトより。ノウフクJAS認証事業者になると、商品にノウフクロゴ付きのJASマークを貼ることができる

2020東京オリパラ食材の調達基準では、多様な人の包摂と参画を促す共生社会の構築を図るという観点から、「障害者が主体的に携わって生産された農産物」が推奨されていて、ノウフクJASの認証を受けた農産物もこれに該当するそうですよ。 選手村でノウフク食材が振る舞われたら素敵ですねー!

「ノウフクJAS」第1号の認証はこの4事業者! コメントもいただきました!

2019年11月1日。認証事業者のみなさんと、農林水産省末松事務次官の懇談会

  令和元年11月1日、「ノウフクJAS」第1号の認証事業者として、全国から4事業者が認証されました! 認証を受けたのは、こちらの事業者さんです。  
1:株式会社ウィズファームさん 長野県松川町で、リンゴやリンゴジュース等の生産加工2:株式会社ひだまりさん 長野県松川町で、リンゴやリンゴジュース等の生産加工3:山城就労支援事業所「さんさん山城」さん 京都府京田辺市で、お茶やえび芋等の生産加工4:特定非営利活動法人すまいるさん 愛知県春日井市で、ナスやオクラ等の生産
ウィズファームさんと、さんさん山城さんは、ノウフクPROJECTでも大変お世話になっており、代表のお二人に、ノウフクJAS認証を受けての思いや意気込みを聞いてみました! 株式会社ウィズファーム 森下 博紀 代表取締役販路拡大、利用者の工賃アップ、農業後継者不足の担い手となるため、認証取得させていただきました。認証取得後、地元の温泉宿泊施設“信州まつかわ温泉清流苑”様が、りんごを買い上げてくれるようになったり、認証取得の効果が出てきており、嬉しく思っております

ノウフクJAS認証シールでおめかししたウィズファームさんのりんご

  山城就労支援事業所「さんさん山城」新免 修 施設長認証を受けるには、これまで経験値的に取り組んでいた作業を体系化する必要があり、それは障害者にとっても“わかりやすい就労環境”の整備にも繋がると考えます

さんさん山城さんでは、京都えびいも、田辺茄子、万願寺唐辛子、鷹の爪、抹茶、濃茶大福、濃茶クッキー、京番茶などたくさんの商品を認証を受けた

森下さん、新免さん、コメントをいただきありがとうございました^^ 第1号認証事業者についての詳細は、農林水産省のプレスリリースもご覧ください。 ○出典:農林水産省WEBサイト「ノウフクJAS」の第1号の認証について 今回、ノウフクJASの創設を提案し、認証機関にもなっているのが、前述の日本基金さん。規格の実現に向けてみなさんもんのすごい頑張っていらしたので、やっと認証事業がスタートしてさぞやほっとされているだろうと思いつつ、先日代表理事の國松さんに会ったら、もう次の展開に向けて突き進まれていました。さすがです。

「ノウフクJAS」の認証事業者になるためには?

  さいごに、ノウフクJASの認証事業者にはどうやったらなれるのか?について。 認証のためには、農産物の生産行程(システム)の中に農福連携の概念を取り入れつつ、そこで生産された農産物が生産行程管理者の認証の技術的基準に基づいて生産されているかなど、書類審査→実地検査→判定というプロセスを経て法的に適合していると認められる必要があるそうです。 ノウフクJASについてもっと詳しく知りたい方や、認証を検討されている事業者さんは、下記の情報もご覧ください! ○ノウフクJAS 認証取得の流れ認証に向けた「ノウフクJAS 生産行程管理者講習会」全国で開催中日本農林規格「障害者が生産行程に携わった食品」(ノウフクJAS)について いまも、数事業所さんが認証に挑戦されているそうで、もうすぐあちこちでノウフクJASの認証マークを見かけることができるかもしれません。 その時はぜひ手にとって、そして味わってみてください!
研究員プロフィール:平原 礼奈

mazecoze研究所代表
手話通訳士
「ダイバーシティから生まれる価値」をテーマに企画立案からプロジェクト運営、ファシリテーション、コーディネートまで行う。
人材教育の会社で障害者雇用促進、ユニバーサルデザインなどの研修企画・講師・書籍編集に携わった後に独立。現在多様性×芸術文化・食・情報・人材開発・テクノロジーなど様々なプロジェクトに参画&推進中。

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