はじめまして。たがやすの鍋田成宏です。
今月は、私の日々の暮らしや思い描いていることを少し紹介させていただきます
私のこと
私は、大学卒業後、地方公務員(建築技師)として働き始めましたが、結婚を機に妻が生まれ育った錦江町に移住し、この土地で妻と子どもたちと暮らしていきたいと思い転職もしました。
今は移住してからは5年が経ち、現在は、町内の桑原組という建設会社で建築設計と施工の仕事をする傍ら、たがやすの活動と、時々コーヒー豆を販売したりしています。
妻とこども2人に猫2匹と日々慌ただしくも充実した生活を送っています。
豊かさを感じられる暮らし
移住や転職を決めたのは、結婚や出産が大きなきっかけではありましたが、もうひとつここで暮らしていきたいと思うきっかけがありました。
それは、「ここって豊かだな」と感じたことでした。
初めて訪れたときは、その時暮らしていた場所と比較するとコンビニまでは10kmと遠いし、居酒屋は近くにないし、映画館も図書館もない。便利さや都市部での娯楽的な要素が少なくて”何もない場所だなと”と感じていました。ですが、気づいていなかっただけで、暮らしていると生きていくために本当に必要なものは全てありました。むしろ、今まで暮らしていくためには必要だと感じていた”便利さ”というものは、本当は要らなかったんだと感じるくらいに。
ぼくが感じた豊かさは、生きていくために本当に必要なものであって、いのちのつながりだと思います。
それは、“続いてきたこと、続いていくこと”を感じることができたとも言えるかもしれません。
例えば、朝起きると鳥のさえずりが聞こえたり、近くの畑で野菜が採れたり、きれいな山並みを見ながら自然とのつながりを感じたり。何気ない風景に妻が語る幼少期の思い出が重なることで大切な風景に一変したり、そこにまた少し大きくなった子どもの姿を重ねて想像したりして時間のつながりを感じたり。
いのちという続く仕組みを家族や友人このまちのおかげで体感することができました。
こうした経験を重ねる中で、建築に関わる仕事をする自分自身が目指すべきものも変わってきました。そこに住む人が豊かさを感じられるような暮らしを設計すること。自然や地域、人とのいい関係を築けるような住まいや暮らす場としての地域をつくりたいと思うようになりました。
暮らしと建築
建築、特に住宅は、暮らしの場であると同時に暮らしと文化をつなぐ役割を担っているもののひとつだと考えています。
季節を感じられる庭や窓辺を設けること、家族が自然と集まるリビングをつくることは、その建物に住む人々の暮らしに豊かさをもたらしてくれると思います。しかし、「豊かさ」とは、建物そのものだけで完結できるものではないと思います。
地域の中での人と人とのつながりや、日々の暮らしから生まれる文化も、暮らしに大きな影響を与えます。そのため、住まいそのものを設計するだけでなく、地域全体のつながりや、文化を形成するものも意識することで、建物としての設計ではなく、暮らしの設計ができてくるのではないかと考えています。
暮らしをつくり、文化をたがやす
暮らしとは、衣食住に限らず、働くこと、趣味を楽しんだり、子育てや介護など、私たちの人生そのものだと思います。日々の暮らしが積み重なり、集まることでやがて文化となります。
暮らしや文化を、建築だけではないもっと広い視点から捉えることができて、さまざまな角度からのアプローチができると面白いだろうし、そうすることでひとによって違うそれぞれの”豊かさ”にもより近く寄り添っていくことができるのではないかと考えています。
たがやすの中や外からそれぞれの得意分野を持ち寄って、
お互いの分野を行ったり来たりしてみることで、通じている本質が見えたり、
違う価値観や考え方を共有し、認め合うことで豊かさが生まれるきっかけとなったり。
異なるものが混ざり、複雑につながりながら文化をつくっていく。
続いてきた文化、続いていく文化は暮らしに良い影響をあたえ、豊かさにつながっていく。
建築という枠に捉われず、その先にある豊かな風景を見ることができたらと思っています。
(文・画像提供 鍋田成宏)