English

意味なんかなくていい!思いのまま電子工作を続けてきた女の子は、唯一無二の存在になった(2/3)

mazecoze研究所 │ 2018.04.12

←前の記事 (1/3)

アナログとデジタル技術をミックスさせた珍しい工作ワークショップを続けている矢島さん。なんでこんなこと始めたの?に迫ります!

好きなものを作り続けることで、切り開いた道のり

もともとパソコンが好きで、高校時代はファッションショーの映像を作ったり軽音楽部で打ち込みをして過ごしていたそう。なんと、パソコンやソフトの操作はほぼ独学だとか。好きなことなら工夫しながら学んでいけるって、乙女電芸部のワークショップの原点はこのあたりにありそうですね。

高校卒業後は慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)に入学し、インタラクションデザインを専攻した矢島さん。

矢島さん:音楽系も映像系もあるし、なんか面白い事できそうな大学だなと思って。インタラクションデザインというのは関係性のデザインのこと。 人と人、人と物などの関係を情報環境を使ってどう変えていくかということを研究していました。

今でこそ、世界中の人がスマホを使って常に情報と繋がっていますが、矢島さんが大学入学した2008年はiphone 3Gが発売した年。デバイスを介したコミュニケーションなんてほとんどされていない時代でした。

矢島さん:新しいデバイスを作って日頃の生活を豊かにするということをいつも考えてました。そこで「いい声マイク」という、声の波形を分析していい声かどうかを判定する装置を開発したのをきっかけに、その装置を応用して子ども向けのワークショップを開催するようになりました。

事前に俳優さんの声などをサンプリングして導いたいい声アルゴリズムと、マイクに入る声を比較してリアルタイムに判定する

矢島さん:動物や職業になりきって普段とは違う声をマイクに向かって出してもらって、いい声が出せた動物と職業を組み合わせてオリジナルのモンスターが生まれるというシステムを作りました。例えば象のコックさんとか梟のスチュワーデスさんとか、自分だけのモンスターが作れるんです。

自分の声で作ったモンスターをカードに。ここでもアナログとデジタル技術のミックスが

矢島さん:大人より子供の方が新しい技術をすんなり受け入れてくれて素直な反応を返してくれるので、研究成果の検証としてワークショップを始めました。
これも声の出し方によって出てくるモンスターが変わるので、色んな声の出し方してみたり。大人だと恥ずかしがってやってくれないので(笑)。そんな反応が嬉しくて、ワークショップは続けています。

インタラクティブデザインって言われると、なんだか難しいことしてるように思うけど、こういうのなら楽しいし身近に感じられますね!

矢島さんが卒業制作で作ったのが、こちらの「おにぎリズム」という作品。

おにぎりが上手に握れていると音が鳴るそう。ここらへんからよくわからなくなってきました

矢島さん:きれいな三角形のおにぎりを握るには120度ずつ回転させる必要があります。なのでごはんの中に地磁気センサーを入れて、120度の回転ができるとクルッと音が鳴るシステムを作りました。

だんだん理解が追いつかなくなる保手濱

えーと、発想が斜め上すぎて混乱してきましたが、そんな私をよそに矢島さんは続けます。

矢島さん:でもお堅い大学の研究だけだとフラストレーションが溜まってしまって…。もっと自由にものづくりをするために乙女電芸部を立ち上げたんです。

えっ。おにぎりなんとかだけでも充分やわらかいと思うのですが…?

「何を言ってるのかな?この子は」焦る保手濱

矢島さん:ほら、おにぎリズムは一応日本の伝統的な手仕事をアーカイブするという意図があったんで、意義があるものなんですよ。
でも被るとなでなでしてくれる帽子というのを作ったら先生から「意味わかんない」って言われてしまって…女子はみんななでなでして欲しいじゃないです。その欲望を叶えるために作ったんですけど…

帽子の中にモーターが組み込まれており、かぶるとなでなでしてくれる「なでなで帽子」

矢島さん:大学での研究って新規性や有用性が求められるし、他の人も再現できるものじゃないといけないんです。つまり「私にしか出来ないこと」はNGなわけです。
でも私は、ただ「可愛い」とか「楽しい」ものに技術を使いたいなって思って。意味がなくてもいいから好きなものを作ろうと始めたのが、乙女電芸部なんです。

嬉しそうに語る矢島さん

その後東京藝術大学大学院の映像研究科に進学した矢島さん。思いのままのものづくりをさらに突き進みます。

矢島さん:これはプラグに寄生するフェルトの生き物。私たちも、今や電源や情報と繋がっていないと生きられないじゃないですか。この子たちも同じなんです。

矢島さん:私たち、電気を常に使っているけど、電気がなんなのかよく知らないで使っていますよね。だから電気を食べてみました。うどんのつゆに電極を入れて、私がうどんを食べると電気がつく仕組みです。

芸大らしくよりアートに、より意味わからなくなってきましたね!逃げ出したい気持ちを抑えて質問を続けます。このままアーティストになろうとは思わなかったのでしょうか?

矢島さん:芸大では才能ある人達がたくさんいたので、自分はアーティストになるのは無理だなと思ったんですよね。賞をとったりもしてないし。私はテクノロジーの分野の中で表現をしていけたらなと。

矢島さんの歩んできた道は、技術も表現も、王道ど真ん中ではなくちょっと脇のほうを歩いてきたみたい。だからこそ既存の価値観にとらわれないものづくりや他分野との組み合わせが自由にできているんですね。

次回はそんな矢島さんが今、どんなものを作っているのか聞いてみましたよ!

(photo:木内和美 text:保手濱歌織)

次の記事 (3/3)


乙女電芸部 http://otomedengeibu.com/
合同会社techika http://techika.jp/
取材協力:DMM.make AKIBA https://akiba.dmm-make.com/

ページトップへ戻る