「新卒は即戦力にならない」は昔の話。鍛え抜かれた学生があなたの会社にも?イマドキ大学生のキャリア教育
まぜ研保手濱です。ここのところPTA以外なにもしていないと思われがちですが、子育ても仕事もしてますよ!
さて、「mazecoze」をキーワードにこれからの働き方・暮らし方を研究しているまぜ研ですが、どんな会社に取材に行っても課題として聞くのが「新卒採用・教育」。不安定な国際情勢や、崩壊するかもしれない資本主義経済など、色々と先行き不透明な昨今。ががーっと作れば売れた時代は終わり、急激なスピードで変化する市場やニーズを見極め柔軟に対応する力が必要と言われています。
言われているのはわかるけど、じゃあそれってどんな人?有名大学を出ていたり資格を持っているからいいとは限らないよね。理想論ばかり飛び交うなか、とても実践的なキャリア教育を行なっている大学があると耳にして、行ってきましたよ。レポします。
やってきたのは東京工科大学の蒲田キャンパス。ここでデザイン学部の2年生向けに行われている「キャリアデザインⅠ」の授業に潜入しました。
こちらの授業では、クラスを4〜5人のグループに分け、それぞれ社会課題を解決するための架空のプロジェクトを作っていくという取り組みをしているそう。この日は前期の総まとめとして、最終プレゼンを行う日でした。
テーマとしている社会課題は「友人の写真を許可なくSNSにアップしてしまう」「違法なJKビジネスの横行」「子どもが不適切な動画に触れる」など、自分たちの身近にあるものが中心。
行き当たりばったりな解決案を発表するのではなく、アンケートをとったり統計を引っ張るなど、課題自体への掘り下げや質疑応答の進め方が、かなりハイレベルです。
いったいどのようにしてこのカリキュラムが組まれているのでしょうか?担当の講師の方々に聞きました!
お話を伺ったのは東京工科大学の兼任講師、佐藤宏樹先生と竹丸草子先生。大学講師のほかにも様々な活動をされています。
目次
佐藤宏樹先生
特定非営利活動法人こととふラボ 代表理事
東京工科大学 兼任講師
帝京大学短期大学 非常勤講師
小田原短期大学 非常勤講師
NPO法人16歳の仕事塾 ファシリテーター
team social design creative 代表
産官学民連携プランナー
文部科学省所管一般財団法人生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー
大学では社会学(広告メディア、マーケティング領域)を専攻後、大学院にて経営学(マーケティング、ベンチャー経営領域)を修了。難関大学専門予備校にて校舎マネジメント、公益法人にて産官学連携・新卒リクルートサービスの運営、フリーランスを経て、現職。新卒から現在まで10年間様々な立場で学生世代と接し続けてきた経験をもとに、複数の大学にてキャリアデザイン・環境経営を教える。また、主に学生に対して働く際に必要となる意識醸成やスキルアップ研修、新入社員研修に携わる他、都立高校にキャリア教育を展開するNPO法人にてファシリテーターとしてキャリア教育ワークショップに従事。その他、地域活性化を目的としたワークショップ、プロジェクトの企画・運営など、年間100回以上の場作りに携わる。
竹丸草子先生
特定非営利活動法人こととふラボ 理事
NPO法人芸術家と子どもたち コーディネーター
NPO法人ワークショップデザイナー推進機構 理事
東京工科大学 兼任講師
デザインユニットつむり 代表
文部科学省所管一般財団法人生涯学習開発財団認定ワークショップデザイナー
セレクトショップの開発・店舗運営会社、雑誌・広告の制作ディレクターとして制作会社勤務を経て、現在はフリーランスの教育コーディネーター、ファシリテーター、コーディネーター。企業や団体、地域行政へ向けてワークショップデザインやファシリテ―ションを行う。高校・大学ではキャリアデザインの授業を担当。保育園から大学・企業まで、かかわる範囲も人々も様々ではあるが、「発見、楽しむ、感じる」のプロセスを大切にした学びの場づくりをしている。
授業全体が「自分を知る」ためのワークショップ!
保手濱:佐藤先生、竹丸先生、どうぞよろしくお願いします。お二人はこちらの講師のほかにも、ワークショップデザイナー推進機構の事業に携わっていたり、学びの場を提供するNPO法人「こととふラボ」の運営をされていたりと、“人の学び”に関して幅広く活動をされているんですね。それがこの授業に反映されている部分はあるのでしょうか?
佐藤:この授業では「社会の中での自分のあり方を知る」ために、対話の分量をかなり増やして、話し合いながら自分たちで答えを見つけていく形式にしています。
保手濱:チームを組んで、プロジェクトを作って、発表するというのが大きな流れですよね。
佐藤:チーム組んで、プレゼンして、フィードバック受けて、考えてブラッシュアップしてもう一度プレゼン。それを2回、3回繰り返すんですよ。ポスターセッション、中間プレゼン、最終プレゼン。
東京工科大学「キャリアデザインⅠ」カリキュラム
第1回:ガイダンス 授業の目的、進行について、チーム作業を行うための準備
第2回:チーム作業 題材とするテーマの決定
第3回:チーム作業 ポスター製作
第4回:ポスターセッション ギャラリーウォーク形式
第5回:チーム作業 ポスターセッション振り返り、レポート作成、スライド作成
第6回:チーム作業 レポート作成、スライド作成
第7回:中間プレゼン
第8回:中間プレゼン
第9回:中間プレゼン
第10回:チーム作業 中間振り返り、最終発表準備(レポート修正,スライド修正)
第11回:チーム作業 最終発表準備(レポート修正、スライド修正)
第12回:最終プレゼン
第13回:最終プレゼン
第14回:最終プレゼン
第15回:前期振り返り(個人・チーム・クラス全体)、相互評価、CDⅡへの導入
保手濱:私の中での「授業」って、教授が教壇で専門的なことを教えてくれるようなイメージなのですが、このカリキュラムは全然違いますね。
竹丸:そうですね。授業というより、全15回をひとつのワークショップと思ってますからね。
佐藤:まずは仲良くなるためのアイスブレイク的なことをして、そこからどうやっていくと課題をクリアできるか、という流れで組んでいます。全部自分たちの中から出てくるもので進めてもらうんです。
竹丸:教えるというよりは、ファシリテートしてる感じですね。「教えることはないよ」って最初に言っちゃいます。
保手濱:それぞれのグループがどの社会課題をテーマにするかって、先生たちのほうで方向付けはするんですか?
佐藤:興味を持つ分野が似ている学生同士でチームを組んでもらいます。そのきっかけだけ与えて、あとはご自由にどうぞというスタイル。もちろん段階的に考えるための仕掛けはありますけど。自分たちの興味関心がチーム内での共通点。それにつながる世の中のことは何だろうと考えていくんです。より広い目で見ると社会課題に繋がっていきます。
保手濱:最初は身近なところからでいいんですね。
佐藤:そうですね。結局はいかに自分ごとにできるかなんで、一番最初はそこじゃないと。例えば大人数で遊ぶのが好きっていうグループだったら、その延長線上にある不具合ってどんなことが考えられるかな?と問う。すると「大人数で遊んだあとに残るゴミって問題じゃね?」「パリピの、大変じゃね?」という風につながってく。じゃあそれを良くするために自分たちならなにができる?という感じで進めていきます。
保手濱:それだと自分たちが好きなことをより良くするために考えるわけだから、やってて楽しいですよね。
私は最終プレゼンだけを見させてもらったんですが、その前のポスターセッションや中間プレゼンも、完成させたものを発表するんですか?
佐藤:形としてはその時点での完成版を使って発表します。それをフィードバックしあってポスター、中間、最終と段階的に深めていきます。自分たちのことに意見をもらって、人にも意見するという経験は、学生はそれまであまりしてきてないんですよ。だから最初は苦手なんですけど、あえて強制的にさせていきます。内容はポジティブなフィードバックを主にしてるんです。アドバイス的な。ダメ出しではなく。
「イエス、アンド」のルールで前向きな連鎖が起こる
保手濱:授業を進めるにあたって何かルールとかはあるんですか?例えばダメ出しはしないとか。
竹丸:「イエス、アンド」。いきなり否定はしない。なにかネガティブなことを言うときも、一度肯定してから返すというルールにしています。
保手濱:それは子育てにも言えますね。
竹丸:まあそんな感じですからね(笑)。
佐藤:ちょっと大きいけどね(笑)。
保手濱:そのルールがあれば、フィードバックもいい雰囲気で進みますか?
佐藤:そうですね。それぞれ前向きなフィードバックを貰って、次に生かします。そうすると授業のあとにtwitterとかで「いいコメントたくさんありがとうございます」みたいな感想がたくさん出ます。ポジティブな意見を貰ったので当たり前なんですけどね。自分たちのやったことに対して、人から長々とフィードバックをもらえるのって、それ自体が嬉しい。で、嬉しかったことは誰か他の人にもやってあげようってことでうまく循環していくんです。
保手濱:それがさっきおっしゃっていた「対話」ですか?
佐藤:これはチームを超えた対話ですね。チーム内では作業をぐいぐい進めていく中での対話を重視しています。チームはリーダー・サブリーダー・書記・フェローと4つの役割を決めてそれぞれの立ち位置で進めていくんですが、やっていくうちに問題がめちゃくちゃ起きるんですよ。それぞれモチベーションも仕事の進め方も違いますし。そういうのも自分たちでクリアしていくことが、社会で生きる力を身につけることにつながるんです。
人生を生き抜く力は経験から身につく自己肯定感
保手濱:この授業の狙いはズバリなんですか?
竹丸:今の時代は、色々な人と協働していくという流れがますます加速しているので、その時にどうするのかを自分で選べる力をつけてほしいというのが一つ。就職したその先に、何かあっても倒れないで、どうやって自分が生きてくかを選べる力をつけてほしい思っています。
保手濱:例えばリストラとかですか?
竹丸:そう、何があるかはわからないので。キャリアアップしていくときも、自分が何を選んでいくのか、どの方向に行くのかを自分で選んで行くことができるようになってほしい。学生から就職して、その先も見据えてのトランジションが重要。でも、じゃあ何かを教えればいいかというと、こうすれば絶対に大丈夫という答えはないんです。自分で見つけなければいけない。そのための授業です。 なんというか、根拠のない自信を持っている学生を増やしたいんですよね。
保手濱:根拠のない自信があると?
竹丸:何があっても多分、生きていける。「よくわかんないけど大丈夫!できる!」みたいな。
保手濱:自己肯定感ってことですかね。
竹丸:そうですね。何か目に見えるような技術や資格じゃないんだけど、「やれる!」って思えるようになるのって、きっと経験でしかないんです。どれだけの経験を貯められるかという。
それは大学内にいるだけではできないし、一人だと難しい。どんどん外に出て行かないとそういう経験は積んでいけない。
保手濱:この授業を受けることで、外へ出て行けるようになるんですか?
竹丸:この授業では、その準備をしてるんだろうなと。
佐藤:大学でキャリアの授業っていうと、就職活動のやり方を教えたり、就職させるのが目的になってしまいがち。それは内定率とか、大学というシステム上仕方ないんですけど、僕らの場合はその先のことを考えてやっていきたいと思っています。社会で生きていくためのキャリアデザイン。
保手濱:つまりただ単に大きくて名の知れた会社に入ることをゴールにしちゃうと、ダメ?
佐藤:なぜそこなのか、そこで何をしたいのか。目的があって選ぶならいいんですけど。その目的を持ってそのために行動できるようにするのがこの授業の狙いでもありますね。
保手濱:私たちが学生の頃って、偏差値のなるべく高い大学に入って、評価の高い企業に就職するだけみたいな、価値観が一定の数値で測れちゃうような感じでしたよね?でも今はそうじゃなくなっていますよね。
佐藤:そういう価値観があっても良いと思いますけどね。でもそれだけじゃない。社会のシステムがそれだけで動いてるんならそれでいいんですけど、最近はいろんな価値観が混ざって、一定の価値観による社会構造は破綻してきているので。
竹丸:「これをしないといけない」と言ってくる人はまだまだ多いんですが、それ以外の道でもいいんだぞということを、学んでほしいし見つけてほしい。決めつけないように生きていってほしいんです。
そうすると色んな場所で色んな人とやっていかなきゃいけない。その時にどれだけ自分の経験を自分の言葉でしゃべれるかってすごく大事なんです。
最初の授業で、経験で感じて学んだ「ことば」を得ていくこと、自分のことばで話せるようになることが、授業のねらいだと学生と共有します。
対話を通じて自分の中と外を俯瞰して見られるように
保手濱:この授業を受けて学生さんたちの意識が変わっていくのは感じますか?
佐藤:「プレゼンテーションが上手くなった、好きになった」というコメントをよくもらいますね。プレゼンというのは自分の考えを自分の言葉で人や社会に伝えることです。それには社会においての自分の立ち位置を知ることが第一歩。社会とは授業の中でいうとチームのこと。チーム作業でそれを身につけていっているんだと思います。この「社会の中での自分の在り方」を個人個人が自分たちなりに見つけることも実はこの授業の狙いの1つなんです。
保手濱:この授業を受ける前はそれができなかったんですか?
佐藤:人前で喋るのが苦手な子はかなりいます。批判されたり怒られたらヤダ、怖いというのがあるみたい。失敗したくないんですよね。でも、この授業ではそこを全部シャットアウトする。どんどん喋らせて、ポジティブなフィードバックをがんがんしていきます。講師からだけじゃなくて学生同士のフィードバックも。授業の最後にテストをして「ハイ、何点」みたいな、一方通行的な授業とちょっと違う部分ですね。
保手濱:そうやっていくと「聞いて聞いて!」みたいになる?
佐藤:なりますなります。褒めてもらえると嬉しいじゃないですか、みんな。喋りやすいように安心感のある授業づくりにはこだわってます。安心安全な場づくり。
保手濱:あとはプレゼンを見て思ったんですが、みんなアンケート取ったり調査結果調べたりとか、課題設定にエビデンスをきちんと持ってきていますよね。そしてそれに対する解決案を提示してる。他の人が見ても理屈で納得できるような内容に仕上げていました。あの辺はどうやって教えてるんですか。
竹丸:相当言ってますね。
佐藤:「世の中にある社会的信頼性が高いデータをもってきて、それをもとに考えろ」ってのはかなり言っていて、それができてないとフィードバックの時にあれはちょっとぬるいからもっとこうしたほうがいいとかがみんなから返ってくる。
保手濱:「チーム作業で社会における自分のあり方を知る」は内面を、「確実な情報を出すことで説得力をつける」は自分の外の世界を、どちらもきちんと見るということですね。
竹丸:ちゃんと内と外を見ながら、経験していくと自分で考えて決められるようになるのではないかと。自分のキャリアの道を選ぶときに、鼻が利くようになってるというのがキャリアデザインの最終目標。私は光が見えるっていう言い方をしてるんですけど。進みたい方向が明るく見える感じでしょうか。
そのために必要なのが経験知。「ち」は値じゃないんですよ、知る。経験知がどれだけあるかっていうのがやっぱり大事。
保手濱:嗅覚。勘というか。
竹丸:俯瞰して見れる力、引いた視点でね。メタで見れることが重要だと思う。
保手濱:俯瞰して見るのは社会の中での自分の立ち位置を?
竹丸:それもそうだし、今自分がどんな段階にいるのかとかも。例えばなんにでもがーっと手を出す時期ってありますよね。とりあえず全部やってみる!みたいな。それって「今はそういう時期なんだ」って分かってやってるのと、ただ流されてるのって違うので。それが俯瞰して見れてるか見れてないかの違いですね。
保手濱:この授業を経験すると、社会に出てからも困難を乗り越えられるのでしょうか。
竹丸:自分のやったことを受け入れてもらえて、さらにブラッシュアップしていくことで、自分自身への肯定感がどんどん出てくるようになります。肯定される経験がないままよりは余裕が出るので、これから先なにかトラブルがあったとしても対処できるようになるんじゃないかと。なってほしいと思ってます。
保手濱:土台ですね。それが根拠のない自信ってことですね。
佐藤:まあこの授業って、肯定されるからといって別に甘いところで浸かってるわけじゃなくて、彼らは彼らですごい苦労してます。短い時間の中で課題仕上げて、チームのもめ事を何とかしていくわけだから。あとはチーム作業やフィードバックによって、きちんと伝えたら相手も変わるんだという経験もしている。いろんな壁を対話をしながら協力して超えていく、その過程で他者がどんな風に考えるのかを知り、その違いを知った上で、どう関わっていけばいいのかを体験を通して学んでます。まさに経験知。だからきっと大丈夫です。もしかするとこういう子たちがいっぱいになると、それこそ本当のダイバーシティな世界になる。俺らみたいなおじさんたちが頑張って付いてかなきゃいけない時代になるでしょうね(笑)。
保手濱:ここはデザイン学部なので、クリエイター志望の学生さんも多いと思いますが、一人でやる仕事につくとしてもこういう経験は大事ですね。
竹丸:まあ一人でやる仕事というのは存在しないですからね。
保手濱:まあないですよね、そんな仕事。でもなんかあるような気がしちゃうんですよね、特にデザイン学部とかだと、一番あこがれる存在がどっかのアーティストで。
佐藤:ないない(笑)。
保手濱:ないですね(笑)。
佐藤:そういうのがないよっていうのを伝えることもこの授業のベースにはありますね。どんな仕事でも必ず人と関わる。いやなやつがいたとしても、一緒に働いていかなきゃいけないこともあるっていうのを。その時に受け身になったり諦めたりせずに、どう接して、その中でどんな役割を担っていけるのか。それらを自分なりに考え、行動していくことが重要だよって。
授業を受けたら本当に変わった!学生さんの声
先生方、ありがとうございました!授業については色々聞いたけど実際どうなのよってことで、昨年度同じ授業を受けた学生さんたちにお話をうかがいました!
こちらの授業には「メンター制度」というものがあり、学生が講師のサポートとして授業に入ります。彼らは今3年生で、キャリアデザインの授業は昨年度に受講済み。今年はメンターとして、チーム作業のアドバイスやプレゼンへのフィードバックなど、斜め上の存在として関わっています。
保手濱:こんにちは。みなさんは去年キャリアデザインの授業を受けたことで、できるようになったことや変わったことはありますか?
梁川くん:自分のプレゼンに対する考え方が、する方も聴く方も変わりましたね。はじめはプレゼンって聴くのはまだしも、自分でするのはヤダなって思っていて。
保手濱:なんで嫌だったのですか?
梁川くん:なんか言うと怒られるかもしれないとか。でもキャリアデザインの授業では、先生が褒めるのが上手だから段々とプレゼンに対する苦手意識がなくなっていきました。今はもちろんまだ怖いのはありますけど、自分の意見をちゃんと言えるという自信がついたから前向きに取り組めるようになりました。
保手濱:それって今何かするのに役に立ってますか?
梁川くん:例えば授業で毎週自分の作品について説明する機会があるんですけど、キャリアデザインの授業受けたから、きちんと説明できるようになりましたね。受けてなかったらやばかったなって思います。
藤川くん:僕の場合、キャリアデザインの授業を受け始めた2年生の始めの頃は、自分の中で何かを変えてかないとまずいような、追われるような感覚がある時期だったんです。でも「変える」といっても自分のマイナスな部分を治すという後ろ向きな方向でしか考えられなくて。佐藤先生の授業を受けて、良い部分を伸ばしていくと結果的にはマイナス部分もプラスに転向しているということに気づきました。全体的な底上げにつながっていくというか。
保手濱:いま自分の良いところを聞かれたらなんて答えますか?
藤川くん:何事も楽しもうとできる部分ですかね。こうやってインタビューされるのも元々は得意な方じゃないんですけど、話すのは好きだから「じゃあ何話そうか」って切り替えができるようになったり。これもキャリアデザインの授業を受けて変わったところです。
神岡くん:僕はそれまでは、面接とか人前で話すことが「自分を相手から評価される場」だと思っていたけど、そうじゃなくて「自分をアピールできる場」だと思って楽しめるようになりました。自分のことを知ってもらえるんだったら、それは緊張するんじゃなくて楽しんだほうがいいなって。
井上さん:私はキャリアデザインの授業で、相手にいかに伝えるか、どういう言葉でいえば伝わるかを考えて、構成して、プレゼンすることを学んだので、普段の会話でも自分の考えを適切な言葉に置き換えて伝えることで、ちゃんとしたコミュニケーションが取れるようになってきたと思います。
保手濱:授業を受ける前は自分の考えを伝えるときどうでした?
井上さん:もちろん考えて喋るんですけど、考えたそのままを言っちゃって「んー?」みたいな(笑)。今思うと相手とのすれ違いもよくあって、ちゃんと伝わらなかったなっていう経験もたくさんありました。
保手濱:何が変わったんでしょうね。
井上さん:相手のことを第一に考えて、調べたり、どういう言葉を持ってくるか決めて、ストーリーを構成するということが身についたんだと思います。あと、それができるってわかったことが自信にもつながりました。今までは自分の作品をアピールする時も自信がなさそうにしていたけど、自分の言葉でしっかり伝えられるようになりました。
保手濱:みなさん先生たちの思惑通りの答えですね。これ仕込んでませんよね?(笑)
ここから社会に巣立っていく学生たちは、どんな未来を作ってくれるのでしょうか?乞うご期待です!
(撮影:木内和美 取材・執筆:保手濱歌織)