現場のプロは見た!? 華々しく進められている「女性活躍」ホントのところ
「働くと暮らすの境界線をまぜこぜに」が合い言葉の当研究所、今回は、激動まっただ中の“ニッポンの働く”が、人事制度とか法令のレベルでどうなっているのか?を探るために、キャリアネタ担当のあべが、とあるセミナーに参加して参りました。
目次
安倍内閣のキモイリ政策は、本当に正しい方向に進んでいるの?
その前にみなさん、この4月1日に「女性活躍推進法」という法律が施行されたこと、ご存じでした? 字面からして、「働く女性の活躍を法律面からも後押ししますよ」という内容なんだろうなぁ、というのはなんとなく想像がつくと思いますが、あべがこのセミナーを聴講しようと思った動機その1は、タイトルが「本当にそれでいいの? 間違いだらけの女性活躍推進」という、インパクト強めのものだったからなんです。組織で働いている女子やそのまわりの方たちも、「なんか気になる〜」って思っちゃいますよね。
歴史は30年ほど遡りまして……
そもそも、ニッポンにおける「女性活躍推進」って(そんな言葉がある国自体少ないんですが)、これまでもいろいろ物議を醸してきた歴史があるわけです。
バブル黎明期(1985年)に「男女雇用機会均等法」が成立しましたが、実際には結婚や出産をあきらめて女性も“男性化”することが、男性と同等に活躍するための暗黙の条件でした。なのに、多くの企業はバブルが崩壊すると、女性の採用を真っ先に手控えたんですよね。そこで、女子たちは知るわけです。「そうか、お国が言う“男女平等”なんて、しょせんは絵に描いた餅だったのか」と…。
その後、ようやく景気回復の光が見えてくると、「女性に優しい会社」を謳う企業が山のように登場し、女性たちをキラキラした言葉で巧みに誘い込みました。けれど、2008年にリーマンショックが起こると、多くの企業から“女性活躍推進室”が消滅するという怪現象が…。そこで、再び女子たちは知るわけです。「そうか、会社が旗振りする“女性活躍”なんて、単なるブランディングなのか」と…。
女子が活躍しないと、ニッポンまじでヤヴァイんです!
けれど、女性活躍の機運が3度目の高まりを見せる昨今、今度ばかりは何があろうと後に引けない事情があります。なぜなら、労働力人口(働いている人、働こうと思っている人)の減少に歯止めがかからず、このままだと1億総共倒れまっしぐら。働く人がいなくなると、経済は当然衰退しますからね。そのため、「今までいろいろ失礼なコトしちゃったけど、これからは女子の皆さんにも本気で働いてもらわないと、ニッポン、まじでヤヴァイんです!!」と、お国も企業も焦っているというわけなんです。
やっと本題に入りますが……
前置きが長くなりましたが、そんな状況をふまえての今回のセミナー。内容はざっくりこんな感じでした。
1,一億総活躍推進の現状と課題
内閣官房一億総活躍推進室企画官 A氏(匿名参戦)
2,サイボウズがブラック企業からホワイト企業に変わるまで
サイボウズ株式会社 渡辺 清美さん
3,女性活躍を阻む「見えない壁」の正体とは?
株式会社ワーク・イノベーション 代表取締役
特定社会保険労務士 菊地 加奈子さん
4,これでいいのか女性活躍! 〜マタハラに関する最新議論〜
弁護士 倉重公太朗さん
5,管理職、旦那に告ぐ! 〜間違いだらけのオトコ達〜
(株)リクルートエグゼクティブエージェント森本 千賀子さん
政府サイドお話、企業サイドのお話、当事者である女性からの声、法律的な視点……いろいろな角度から「女性活躍推進」を考えることができる、そうそうたる顔ぶれの5本立て。さらに、最後は登壇者全員によるパネルディスカッションも行われるという贅沢な構成でした。
なにせ充実の3時間、すべての内容をお伝えすることはできないのですが、特にみなさんと共有したいのは、今回あべがこのセミナーを聴講しようと思った動機その2、“噂のマゼコゼスト”として当サイトにもご登場くださった菊地加奈子さんと、NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀』でも取り上げられ、日本の人事関係者の中にその名を知らない人はいないと言われる転職エージェント・森本千賀子さんのお話です。
「気の遣いすぎ」が働く母の活躍を阻む!?
「女性活躍を阻む見えない壁の正体とは?」と銘打った菊地さんの個別講演は、その“見えない壁”は、時短など“労働の免除”という気配りではないか?という仮定で話が進められました。 育休から復帰したワーキングマザー(以下、WM)は、保育園へのお迎えなどを考慮して定時より1,2時間早く退社する人が多いですよね。でも、「それって本当に当たり前なの?」「すべてのWMが時短勤務を望んでいるの?」と、菊地さんは疑問を投げかけます。
家でも職場でも時間に追われるWMの中には、優先順位の付け方や時間あたりの労働生産性をめちゃめちゃあげて頑張っているのに、「時短勤務をしている」というだけで新人時代のような収入に逆戻りしている人も少なくありません。基本的に働く意欲が高いWM。彼女たちのために企業や上司がするべきことは、時短勤務を勧めたり、仕事が軽い部署への配置転換をしたりといったポイントの“ズレた気配り”ではなく、彼女たちの頑張りや能力の高さをきちんと評価する指標を作ることでは?……というのが、菊地さんの訴えでした。
そのためには、部下の仕事を定量化するなど管理職がマネジメント能力を向上させる必要があり、どこの組織にとってもここがなかなか高いハードルなのですが、「テレワーク導入で通勤時間をなくしフルタイムと同等の扱いにする」、「職務のプロセスを細分化し、各ステージでメンバーがどのように関わったかを分析・評価する」など、時代に即したヒントが次々と提示され、実務に携わる人が未来の組織風土作りに希望を持つことができる内容になっていました。
さすが、多くのクライアント企業の働き方改革を成し遂げてきた職人社労士。Maze研で取材させていただいたときのほんわか母オーラ全開だった菊地さんとは打って変わり、キレのある口調でガンガンしゃべり倒していく様子もめっちゃ男前でカッコよかったです。
「女性部下のトリセツ」を多くの男性上司は持っていない
そして、セミナーのトリとして登場した“もりちさん”こと、森本千賀子さんのお話は、菊地さんにさらに輪をかけて男前。というか、女性活躍推進に対して「男女逆差別だ」といった声が聞こえることもある中、あえて「間違いだらけの男たち」とちょっと挑戦的なタイトルで話を始めるあたり、男前と言うよりキモの据わったオカンという感じで、女子的にはスカッと度120%。
とはいえ、聴講している男性たちがバツが悪そうにしていたのは最初の数分だけ。未だに多くの企業で8割近くを占める男性管理職だけでは、いくら頭をひねっても的外れに終わることが多かった女性メンバーのトリセツポイントを、もりちさんは次々と解説していきます。例えば、
- トップと管理職が本気であることを行動でも示す
- 仕事のプロセスに成長過程をきちんと織り込む
- グッドプラクティスを見逃さずに褒める
- 自由度が高い出産前にできるだけキャリアを積ませる
- 何よりもまず、女性メンバー本人に関心を持つ
これからは、女性の側にも意識改革が必要
講演終盤、上司以上に女性にとって身近な存在の男性、 “夫”たちにも、もりちさんはもの申します。なんたって、「男たちに告ぐ!」ですからね。なんでも、優秀なのに生き生きしていない女性の多くはパートナー選びに失敗しているんですって。そして、「いかにもオレは理解がありますという体で、『キミが働くのは構わないけど、家のこともちゃんとしてね』とか言うのは、いい加減やめてほしいですね」とバッサリいった後、返す刀で女性たちにもメッセージ。「育児や家事は女性がするものという呪縛からさすがに解放されましょうよ。これからは、自分でなければできないことだけに時間とパワーを割いていい。そのことに罪悪感を持たなくてもいいんですよ」。
そもそも、女性活躍ってなぜ必要なんでしょう? 「労働力人口が」「経済の活性化が」「国際競争力が」……と、お題目はいくらでも出てきますが、もっとも大切なことは「女性がゴキゲンなら、会社も社会もたいていは明るくなる」からだともりちさんは言います。「そのための女性活躍推進であり、ダイバーシティなんです」と、コトの本質を思い出させてもらってセミナーは終了しました。
こちらのセミナー、前出の弁護士・倉重公太朗さんが社労士、税理士、企業人事担当者といった実務者向けに開催している「労働法実践塾」というシリーズものなのですが、今回はスペシャルバージョンということで、Facebookなどで広く一般にも参加者を募ってくださいました。
営業や事務、制作職などで、普段、人事実務に関わる機会が少ない人でも、こういった機会に労働法規なり人事実務の実際を知ることは、気づきを得たり、自分の労働環境や働き方を見つめ直すきっかけにもなると思います。仕事に情熱を注いでいる実務者のかたがたのお話は、小難しいコトなんて少しもなく、熱くて愉快でとっても興味深いものでした。みなさんも、気になるセミナーやシンポジウムがあれば、どんどん参加してみてくださいね。