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第3回:外国人留学生が日本に失望する最大の理由とは?

mazecoze研究所 │ 2016.03.14

こんにちは。説法するマルチリンガル、株式会社ソーシャライズ・社長の中村拓海です。
さて、前回のコラム「変わりつつあるニッポンの評価」の内容にご質問をいただいたので(ありがとうございます!)、今回はそれにお答えしようと思います。

そもそも、人はなぜ留学をするのか?

いただいたのは、「外国人留学生は、結局ニッポンの何に失望するのか?」という質問でした。では本題に入る前に、「なぜ、人は留学をするのか?」というそもそもの話から考えてみましょう。


例えば、日本人に人気の留学先は、アメリカやイギリス、オーストラリアです。それは、「英語を勉強するため」に留学したいという人が多いからです。日本人の留学先としては、中国や台湾も人気です。理由は、「中国語や台湾語を勉強したいから」です。つまり、留学する人の目的の多くは、「語学留学」なわけです。

では、なぜ、語学を習得するために、高いお金や貴重な時間を使ってまで留学をするのでしょう?答えは、それらを費やすだけの“見返り”があると思うからです。英語や中国語が話せたら、世界中でビジネスができる可能性が広がります。英語を操れる人とそうでない人との間には大きな生涯年収の開きがある、なんてデータも見かけますよね。

日本語って実はかなり変わった言語です

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彼らは何を求めて日本に来るのか。

日本にやってくる留学生も理由は同じ。日本語を話せるようになることの“見返り”を求めて、日本語が話せる自分になるためにやってくるのです。彼らは、何らかのタイミングで日本の工業製品やマネジメントシステムに触れ、「日本で仕事ができるようになれば、経済的に成功できるに違いない!」という確信があるからこそ、日本語なんていう汎用性も国際性もない、ヘンクツな言語をわざわざ学びに来ているのです。

みなさん、自覚がありますか? 日本語って常用文字が3種類もあって、同じ文字でも複数の読み方があって読みによって意味まで変わってくる。しかも、その判断は文脈からしか判断することができず、地方に行けば“方言”というバリエーションまである。そして、それだけ苦労をした末に身につく難易度の高い言語でありながら、日本という辺境地域でしか通用しない言語なんですよ!?

もちろん、中には日本の文化や歴史が好きすぎて留学している人もいます。日本で観光三昧をしたいがために、留学ビザを取得して長期滞在を狙っているケースですね。

夢のスタートラインにすら立てない現実

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「経済的成功」を求めて日本へやってくる。

話がそれましたが、つまり、目的意識を持って日本にやってくる留学生の多くが、「経済的な成功」を最終的に目指しているわけです。だから、「頑張って日本で稼いで、自分や家族の暮らしをよくするぞ!」とか、「アジアで目覚ましい発展を遂げた日本で、自分も成長して成功しよう!」とか、来日前の留学生はテンション高く、とてもポジティブなイメージで日本を見ています。

でも人間とは、期待値が大きいほど叶わなかったときの失望が大きいもの。現在の日本では、彼らの夢はほとんど叶いません。日本で成功するどころか、日本企業への就職自体、できない場合が多いのです。だから、外国人留学生は日本に失望するのです。何百万円のものお金と、何年もの時間をかけて日本語を勉強したにもかかわらず、就職すらできず、失意のうちに母国へ帰る人の姿を僕は数え切れないほど見てきました。仮に、なんとか日本企業に就職できた留学生も、ムダな残業や評価基準が不明瞭な人事考課に強い不満を抱いています。

最近、とあるメキシコ人に言われました。
「日本で働けるのは日本人だけだヨ。タクミの志はわかるけれど、ヘンに外国人を巻き込まない方がいい。みんな、日本を嫌いになってしまうヨ…」———結構、ヘコみました。

留学生にとって日本は「実りのない最果ての島」?

経済産業省が外国人留学生(&元留学生)を対象に行った「日本の生活および就労の魅力度の評価」というアンケートがあるのですが、この資料には、先に述べた現状がハッキリと現れています。


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このグラフを見てもわかるとおり、日本に住むことに魅力を感じている留学生(&元留学生)はなんと8割以上。ニッポン、大人気です。ところが、日本で働くことに魅力を感じている留学生は、ほんの2割しかいません。それどころか、「魅力的ではない(あまり魅力的ではない+全く魅力的ではない)」という留学生が実に半数にものぼるのです。

訪日観光客が増加している昨今、もしかすると「日本の労働力不足は、外国人労働者によっていつでも補うことができる」と考えている人がいるかもしれません。けれど、日本にやってくる外国人留学生は減少傾向にあります。 日本は、観光客にとってはおもしろい国です。でも、海外の学生たちには「実りのない最果ての島」という認識が広まりつつあるのかもしれません。

中村 拓海(なかむら たくみ)

1990年生まれ。株式会社Sociarise代表。
自身の経験から、外国人留学生の積極的採用・積極活用の新時代を創る事業構想を思い立ち、東京外国語大学在学中の2014年11月に起業。2015年7月にグローバル人材に特化したマッチングサービス“Worldot”をスタートさせる。日本語、英語のほか、ウルドゥー語、ヒンディー語、インドネシア語、ベトナム語の6カ国語を操るマルチリンガル。趣味は海外放浪、お菓子づくりと掃除。
ダイレクトリクルーティングサイト Worldot

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