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第3回:みんなと違う世界に生きている… 発達障害者の感覚過敏・感覚鈍麻って?

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第1回:知ってるようで知らない… 発達障害者ってどんな人?
第2回:あるときは鬼才、あるときはうっかりさん。発達障害の過集中・注意散漫って?
第3回:みんなと違う世界に生きている… 発達障害者の感覚過敏・感覚鈍麻って?


発達障害者の中には、感覚過敏や感覚鈍麻という症状・特性を持っている人がいます。感覚過敏は2017年に入ってNHKでもとりあげられるなど、徐々に話題を呼んでいますね。今回は当事者の私が、発達障害者の感覚過敏・鈍麻の実態について語ります。

前半で知識的なことをざっと説明し、後半で「職場にこんな人いるいる!」というようなわかりやすい例を挙げて、相互理解のとっかかりとしていこうと思います。

発達障害者の感覚過敏・感覚鈍麻とは?

感覚過敏とは、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)が敏感すぎることをいいます。感覚鈍麻とは、これらの感覚が鈍感であること。
感覚過敏・感覚鈍麻は心身の疾患・障害やストレスなどでも起こることがありますが、ここでは発達障害者のケースに触れていきます。

感覚過敏

いわゆる普通の人なら負担に感じないような五感の刺激を、感覚過敏を持つ発達障害者は「やり過ごす」ことができません。ごく普通の刺激を、耐えがたい苦痛として感じることも。

視覚:
PC画面や照明、太陽光などをまぶしすぎると感じます。刺激を痛みとして感じる人も。

聴覚:
普通の人には耐えられるレベルの音を耐えがたい騒音と感じたり、普通の人には聞こえない高さ・大きさの音が聞こえたりします。自分に必要な音声情報だけを抽出して聴くこと(カクテルパーティー効果)が苦手で、音声会話を苦手とする人も多いです。

嗅覚・味覚:
ささいな匂いに耐えられず、吐き気や頭痛を起こしたりします。味の濃い・強いものが苦手な人が多いです。感覚の許せる範囲のものしか食べられないため、極端な偏食に陥る場合も。

触覚:
ちょっとした皮膚刺激に不快を感じやすいので、着られる衣服が限られる人が多いです。小さなころから掃除や砂遊びを嫌ったり、食事中に頻繁に口もとを拭く人、口内の不快感から偏食を起こす人もいます。

※宇樹の感覚過敏について詳しくは、こちらの拙ブログ記事で書いています。

【発達障害者の感覚過敏】私の苦手な場所・刺激一覧と対処・環境調整方法 – decinormal


感覚鈍麻

たとえば、聴覚と視覚は敏感なのに、痛みや疲れには鈍感だったりして、自分の身体の状態に気づけない人がいます。
ある部分が過敏な一方ほかの感覚が鈍感で、頭の中をいつも特定の刺激に支配されていて不安感があるため、落ち着く刺激を自分に繰り返し与えることで対処しようとする人も。これがいわゆる常同行動(周囲からすると無目的に見える同じ行動を繰り返すこと)につながったりします。

感覚過敏と感覚鈍麻は表裏一体

過去記事で「過集中と注意散漫は表裏一体」という話をしましたが、実は感覚過敏と感覚鈍麻もほぼ表裏一体と考えてよいと、私は思っています。

発達障害者が体感している感覚過敏の世界は、たとえば「目の前で強いフラッシュが焚かれて、そのまぶしさ以外何も見えなく/感じなくなる」感じだといえるかもしれません。

あるひとつの刺激が強すぎる形で脳みそに入ってくる。その刺激が脳みそを支配してしまって、ほかのものが見えなく/感じなくなる。つい、しばらく目をおさえてうずくまりたいような気分になる。あるいはつい叫んでしまう。

私は、感覚過敏と感覚鈍麻は「感覚処理のアンバランス」という一言で言い表せるものかもしれない、と思っています。発達障害者の「困った言動」の根本には、こうした「感覚処理のアンバランス」があるのかもしれません。

感覚過敏・感覚鈍麻の原因は? 進む研究

発達障害者の感覚過敏・感覚鈍麻の原因はまだ特定がされていませんが、ここ数年、関連の研究はめざましい勢いで進んでいます。

発達障害者の感覚過敏は脳・神経系の機能不全から来るのではないかということが言われており、これが現在最も広く普及した信憑性の高い仮説となっています。

むしろ「感覚過敏が発達障害を作っている」?

自閉症を含む発達障害者の「変わった言動」は長年、まず心理学的な理由がある→ 「自らの世界に閉じこもろうとする(自閉する)」 という順序で起こる、つまりいわゆる心の病だと考えられる傾向がありました。

しかし、2013年に発表されたDSM-5(アメリカ精神医学会による診断基準の第5版)の発達障害のくだりには、感覚に関する記述が追加されました。これは小さいながらも画期的なできごとでした。これをきっかけに、日本でも発達障害と感覚の関連についての研究がどんどん進められるようになりました。

2017年になって出版されたこちら↓の本では、「むしろ感覚過敏が自閉症を形成するのではないか」という仮説のもと、とても興味深い考察がなされています。感覚過敏は自閉症の結果ではなく、むしろ感覚過敏が各種の自閉的症状・特性(こだわり、コミュニケーション障害、常同行動など)のベースなのでは、という立場です。

私は当事者として、この仮説はかなり本質を突いているのではないかと感じています。私が生きるうえでもっとも困っているのは感覚過敏・感覚鈍麻であり、「私自身のこの感覚世界が、私を現代社会の中で生きづらくしている」という体感を持っているからです。

※こちらの本についての詳しいレビューは、拙ブログ記事にて紹介しています。

「自閉症と感覚過敏」レビュー・感想前編 むしろ感覚過敏が自閉症を形成する? - decinormal

あなたの周りのこんな「困った人」、実は「感覚過敏で困ってる人」かも

さて、長くなりましたが、ここからがぜひお伝えしたいことです。
以下に、いかにもみなさんが職場で遭遇しそうなケースを挙げていきます。周囲の「困った人」を「もしかして…?」と理解を試みる手がかりのひとつとしていただけたらと思います。
※感覚過敏があるからといってすべてが発達障害者なわけではない、ということは冒頭にお話しました。また、以下の特徴を持つ人がすべて発達障害者とも限らない、とも強調しておきます。

わがままで我慢がきかず、失礼なように見える

・制服や決められた服装の類を、きついとかチクチクするとか重いとか言って着たがらない

・手が汚れると言って掃除をしたがらない

【触覚過敏?】

・室内や目上の人の前なのにサングラスや色つきのメガネをかけていて、注意しても外さない


・いつもしかめっ面をしている


【視覚過敏?】

・仕事中にイヤホンをしたがる


【聴覚過敏?】


・誰もいないところや部屋の隅で仕事をしたがる


・頻繁にフラッとオフィスからいなくなる


・周囲から見たら理由が見当たらないのに突然怒り出したり怒鳴ったりする


・人前で耳をふさいだり鼻をつまんだりする


・疲れやすく、すぐに体調を崩す


・いつもどこかしらの体調不良を訴えている


・仕事中、すぐにぐったり疲れてしまう。実際に顔色まで悪くなったりする。自己管理に務めるよう言うと反論する


・会話中などに目線を自然に使えない。ぜんぜん相手の目を見なかったり、逆に見つめすぎたり、虚空を見つめていたりする。指摘してもどうもうまくいかない


・室内なのに帽子をかぶりたがる


・職場が雑然としていると神経質になって片付けはじめる。あるいは片付けが極端に苦手


【各種過敏がいろいろあるのかも?】

会話がなんだかうまくいかない

・声のボリューム調整がきかない。内容に関わらず、周囲が振り返るような大声で話したりする。注意しても改善せず、怪訝そうな反応をすることがある

・人の話を何度も聞き返す


・口で言うのではなくメールやチャットにしてくれと要求する


 ・電話応対がうまくできない。メモをとりながら話を聞くのが苦手


【聴覚過敏? カクテルパーティー効果が効かない?】

その他

・姿勢が悪かったり、字が汚かったり、はさみや箸がうまく使えなかったりして、何度注意しても改善しない

・すごい力で人の肩を叩いてびっくりさせたり、ものを強すぎる力で触って壊したりと、力の加減ができない

・貧乏ゆすりやペン回し、ぐるぐる歩き回るなど、規則的に同じことを繰り返すような特有の癖がある

【感覚鈍麻?】

感覚過敏・鈍麻を持つ人は「みんなと違う世界に生きている」

感覚過敏・鈍麻を持つ発達障害者は、ときどき周囲を困らせたり動揺させたりしてしまうことがあります。しかし、彼らは悪気やわがまま、甘えがあってそのようなことをしているわけではありません。単に、いわゆる普通の人とは「違った世界」を体感しているだけなのです。

みんなが互いに「宇宙人」

先日のNHKの特集では、発達障害者の体感している世界がVR(バーチャルリアリティ)機器や再現ドラマでわかりやすく再現され、大きな反響を呼びました。
NHKスペシャル | 発達障害~解明される未知の世界~

映像の力はやはりすごいもので、いままでどれだけ言葉で説明してもうまく伝わらなかった発達障害者たちの世界が、初めて日本の多くの人に共有された歴史的瞬間だったと思います。

ただし、ここで立ち止まってはいけない、とも私は思っています。というのは、今回番組で紹介されたのは一部の典型例にすぎないからです。

発達障害者たちも、発達障害者である前にまず別個の個人たち。100人の発達障害者がいれば、100通りの世界体感があるはずです。実際にTwitterの実況タイムラインでは、「私はこうではない」という声も多数聞かれました。

さらに突き詰めれば、「100人いれば100通りの世界体感」というのは、発達障害者の枠の中だけでなく、すべての人間に言えることですよね。

私たちは、なんとなく「私とあなた、私とあの人の見ている世界はおおむね同じはずだ」と思い込んで生きているだけ。本来、誰かが見ている世界を、ほかの誰かがつぶさに体感することは、(少なくとも今のところは)できません。 私たちはそれぞれが共に同じ人間であると同時に、互いにひとりずつが孤独な「宇宙人」どうしでもあるのです。

個人どうしとして立ち止まって考えれば、みんなが生きやすい

誰かがぱっと見、理由がわからないような変わった言動をしたとき、「この人には私と違った世界が見えているのかもしれない」と、ほんの一瞬立ち止まってもらえればと思います。

わたしの常識、あなたの常識、世間の常識。そういう大きな枠で自分や相手を判断してしまうのではなく、常に一対一の個人どうしとして皆で互いに歩み寄っていける世界が、私の理想です。

社会はひとりひとりの個人の集合体。どんな他者を目の前にしたときも、相手の生きる世界、価値観、生き方をまずは想像し、尊重することが、結果的に「ヘンな人も普通な人もみんなが生きやすい社会」を運んでくるのではないかと思います。

宇樹 義子(そらき よしこ)

フリーライター。成人発達障害(高機能自閉症)の当事者。30代後半。
30を過ぎて発達障害が発覚。その後、自分に合った生き方・働き方を求めて在宅のフリーランスとしてのキャリアをスタート。翻訳者を経てライターへ。
現在打ち込んでいる趣味はフラダンス。動物がヨダレが出るほど好き。
ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けて発信中。

decinormal - 成人発達障害当事者のブログ

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