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第2回:あるときは鬼才、あるときはうっかりさん。発達障害の過集中・注意散漫って?

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第1回:知ってるようで知らない… 発達障害者ってどんな人?
第2回:あるときは鬼才、あるときはうっかりさん。発達障害の過集中・注意散漫って?


発達障害者の中には、過集中や注意散漫といった傾向を持っている人がいます。最近は少しずつ認知が広がってきましたが、まだ実際にどういう感じなのかイメージがつかめない人も多いでしょう。今回は発達障害当事者である私が、発達障害者の過集中・注意散漫の実態について語ってみたいと思います。

発達障害者の過集中・注意散漫とは

過集中と注意散漫について、まず定義や実態などを説明します。

過集中

過集中とは文字どおり「集中しすぎる」こと。発達障害者の中には、いったん集中するとちょっと尋常じゃないほどの集中力を発揮し、短時間で周囲を圧倒するほどのパフォーマンスを上げる人がいます。

その代わり彼らは、過集中の最中は周囲のことに目が向かなくなります。声をかけても返事しなかったりすることも。声かけに気づいていても返事する気にならないほど集中している場合と、集中しすぎていて本当に気づいていない場合とがあります。

空腹や尿意、疲れなどといった身体からのサインにも気づきにくくなるので、セルフケアに失敗することも。生活リズムが乱れたり、身だしなみや掃除などがおろそかになったり、体調を崩してしまったりといったことの原因にもなります。

過集中の最中、本人は無自覚のうちに膨大なエネルギーを使っているので、過集中が途切れたとたんにグッタリのレロレロになってしまいがち。一度こうなるとしばらくの間まったく頭が働かなくなります。猛烈な眠気や頭痛などに襲われて、少し眠らないと回復しない、などということにもなります。

過集中のある人が身近にいたとして、周囲の人が抱きがちな印象の例は、「いったん『神』が降りてくるとわき目もふらず鬼気迫る勢いで仕事する天才肌」といったようなものが近いかもしれません。

注意散漫

注意散漫とは、注意を向けるべきところに注意を向けることができず、集中ができない状態のことです。

たとえばA,B,Cと3つの刺激が存在したとします。このとき、
  1. Aだけに注意を向けなければいけないときにBやCに気をとられてしまう

  2. ABCすべてに並行的に注意を向けなければいけないのに、Aだけしか見ていなかったり、BやCだけしか見ていなかったりする

こんな感じで「注意が散らかってしまう」ことが注意散漫です。
大人の発達障害者にありがちな注意散漫の例としては、上の1,2に対応して以下のようなものが挙げられます。

    • 周囲の物音や雑念に気を取られて社長の講話が頭に入ってこない
    • 作業中、頭の中がふっとどこか別のところに飛んでいって手が止まってしまう
    • 書類に誤字脱字などのケアレスミスが多く、何度注意されてもあまり改善することができない
    • 運転中、どこか一方にしか注意を向けられないため、車を頻繁にこすったりぶつけたりする

    • 複数の品を料理しようとすると、何か焦がしたりお皿を割ったりやけどしたりする。料理中に話しかけられると何か失敗する


    • 電話を受けたときにうまくメモをとることができない(話をしながらメモをとる行為がキャパオーバー)


    • 来客にお茶を出そうとしていて、同時にそつなくふるまおうとすると、何もないところでつまずいて転んだり、平らなところでお茶をこぼしたりと失敗する

こうしたいろいろな失敗の例の中には、発達障害者にときどきある特有の身体の不器用さやコミュニケーション障害、対人緊張などの二次障害、などといったものが複数絡んでいるものもあります。しかし全体的に、いわゆる「おっちょこちょい」「うっかりさん」「ケアレスミスの多い人」の印象に当てはまる傾向がだいたいは注意散漫だ、と思っても差し支えないでしょう。

※注意散漫のある人のすべてが発達障害とは限りません。日常に差し支えがあるほどの注意散漫がある場合にはなんらかの障害と言っていいことが多くはなるかと思いますが、これも確実なことは専門の医師の診断によります。また、うつ病や認知症などでも注意力が低下することがあります。

過集中と注意散漫には表裏一体の面も

過集中と注意散漫は、実は1枚のコインのように表裏一体のようなところがある、と私は考えています。

というのは、こういうことが言えるからです。
ABCがあるうちのAに注意する・集中するというのは、BCへの注意・集中を捨てる(BCに対して注意散漫になる)ということ。

たとえば、PC作業(A)に過集中している人は、自分の作業の内容はつぶさに認識できても、外から声をかけられたとき(BC)にまったく聞こえない。
運転中に視線の先の野良猫(A)に気をとられ、頭の中が猫のことでいっぱいになっていたら、前の車(BC)に追突してしまう。
こんなふうに、Aに100%集中しながら、BCに100%集中するなどというのは、原理的に不可能なわけです。

発達障害者の中には、「いったん○○をさせれば抜群にできる有能な人なのに、ふだんはボンヤリしたりダラダラしたりしてばかりでまったく使えない。やる気が足りないのではないか。バカにしているのか、けしからん!」というような印象を与える人がいたりします。それはもしかすると、周囲にはその人の過集中モードと注意散漫モードの両側面が見えているということなのかもしれません。

歴史的な物理学者のアインシュタイン博士は発達障害を持っていたのではと言われていますが、彼にも過集中と注意散漫の傾向があったようです。ある日彼が考えごとに集中しているとき、声をかけても揺さぶっても腕組みをして座ったままピクリとも動かなかったため、死んでいるものと勘違いしたお手伝いさんが大騒ぎしたエピソードや、彼が身だしなみに無頓着で、よく穴のあいたソックスにボサボサ頭だったというエピソードが伝わっています。
※『アインシュタイン』(講談社学習コミック アトムポケット人物館) 2002

あっ、リス!

ネットを使う発達障害者、特にADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向の強い人たちの間では最近、注意が散漫になることを「リスが通る」「あっ、リス!」などと表現することが流行っています。

これは、注意散漫傾向のある人が話しているときにリスを見つけてしまうと話の途中で唐突に「あっ、リス!」と叫んで話をすっ飛ばしてしまうことが多い、という話から出たもので、米国発のADHD自虐ネタであると思われます。

リスは北米大陸ではごくありふれた動物で、街中や公園のあちこちにチョロチョロしています。日本でいうところのスズメやハトぐらいの感覚です。そこからすると、「あっ、リス!」の感覚すごくわかります。私も人と話しているときにスズメやハトを見つけたら「あっ、スズメ!」「あっ、ハト!」って叫びますもん。

時間あたりのパフォーマンス計測不能! フリーダムすぎる脳みそ

2017年になって「プレミアムフライデー」の導入が始まったことをきっかけに、ネットを中心に「働く人の1時間あたりの作業効率」についての話題が広がりつつあります。

この流れの中で、働く発達障害者の界隈では「発達障害者のパフォーマンスは時間ベースでははかれない」という議論が盛り上がりました。

これに私も同感です。他の人のことについては断言できませんが、少なくとも私については、「1時間あたりのパフォーマンスは計測不能」ということがはっきり言えます。

たとえば私は、得意分野の記事などは過集中モードに入ってしまえば1時間に3000字程度の記事を、ほぼ誤字脱字なく、あとからの編集・校正の必要がないほどのクオリティで仕上げてしまうことがあります。

では、たとえば1日8時間書いて、3000×8で1日に24000字書けるかというと、まったくそんなことはありません。

1時間に3000字の高クオリティの記事を書き上げるような過集中を起こしたあとは、たとえばそのあと数時間、眠ったり、出かけたり、何か別のことをしてクールダウンをしないと、まったく頭が動かなくなってしまいます。文字通り、熱くなった頭からプスプスと煙が出ているような感じになってしまうのです。

また、数時間のクールダウンを経たあとでも、同じ日にまた過集中レベルのパフォーマンスをあげられるかというとそんなことはありません。翌日にまた過集中を起こせるかというとそうでもありません。

そんなわけで、私は1週間とか1ヶ月とかの長めのスパンで見たときに初めて、均(なら)してみると普通の人とトントンぐらいの作業量をこなせているだけであって、1時間ごとの作業効率なんて、人と比べて0%から300%ぐらいまでのばらつきがあるわけです。

だから私にとっては、時給で働くことや、「1日○時間勤務すること」を必須条件に雇用されるような働き方をすることはなかなか難しいのです。

発達障害者には自由な・新しい働き方が向いている?

そんなわけで、私は本当に紆余曲折を経て、「自分にはフリーランスとしていろいろなクライエントさんと業務委託契約を結ぶ働き方がベストだな」と思うに至りました。

ご満足いただける、あるいはそれ以上のクオリティのものを納期内に納品さえできればこちらのもの。1日の半分以上寝ていようが、間にネットサーフィンしようが、週に3日遊びまくろうが、お風呂上がりに全裸で書こうが、なんの問題もないのです(全裸はあまり関係ないですが笑)。

発達障害者には、1日にきっちり何時間働いて、その間にきっちりコンスタントにパフォーマンスを上げて、という枠がなじまない人も多いのかもしれません。

いわゆるフリーランスや起業家といった、自由な働き方、新しい働き方を自分で組み立てていく生き方は、比較的発達障害者に合っているように思います。起業家やクリエイターのような職種で強烈な個性を発揮して輝いている人の中には、発達障害グレーゾーンの人もけっこういるのではないかと、私は踏んでいます。

発達障害者も含めたすべての人たちに、できるだけぴったりの働き方が用意されること、そのため雇用側の人たちも「前例のないこと」にどんどんチャレンジしていくこと。こうしたことが普通の世の中になるよう、私も自分にできることをしていきたいと思っています。

宇樹 義子(そらき よしこ)

フリーライター。成人発達障害(高機能自閉症)の当事者。30代後半。
30を過ぎて発達障害が発覚。その後、自分に合った生き方・働き方を求めて在宅のフリーランスとしてのキャリアをスタート。翻訳者を経てライターへ。
現在打ち込んでいる趣味はフラダンス。動物がヨダレが出るほど好き。
ライターの仕事のかたわら、個人ブログ「decinormal」を運営。自身の経験をもとに、発達障害者や悩みを抱えた人に向けて発信中。

decinormal - 成人発達障害当事者のブログ

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