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ハウスメーカーが挑む前代未聞の地方創生って?

mazecoze研究所 │ 2016.06.15

こんにちは!保手濱です。今回はある企業さんが、本業の枠組みをぴょーんと超えたまぜこぜな取り組みをしていると聞きつけて、取材してきましたよ!
舞台は千葉県野田市の光葉町。都心から電車で1時間ほどの、比較的新しい一戸建てが並ぶ、静かな住宅街です。

次々と手を挙げて夢を語る住民たち!一体なにが!?

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ある週末の自治会館に集まる100名近くの住民たち。「みんなの本を貸し借りできるミニ図書館がやりたい!」という70代の男性、20年後も続くサークル活動をしたいという30代男性など、次々と夢を語ります。
これは昨年末から月に1度開かれている「光葉町ミライ会議」。若手からシニア層まで、この街に住むさまざまな人たちが集まり、街の未来について話し合ってきました。ここで決まったのは、街中にコミュニティスペースを作るということ。11月のオープンに向けて、着々と話し合いが進められています。

主催しているのは自治体ではなく、ハウスメーカー

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この会議を主催するのは、自治会でも住民の誰かでもありません。この街の住宅を販売していた、ポラスグループで戸建て分譲事業を展開する中央グリーン開発という会社です。
埼玉や千葉の、広〜い土地を買って、そこに一戸建てが並ぶ街をまるごと作り上げて販売しています。「リゾート」や「カフェ」など街ごとにテーマを決め、内装もそれに合わせて作り上げていくオリジナルの手法がファミリー層に人気のハウスメーカーさんです。収納や動線が工夫された「子育てママの理想の家」シリーズなんてのもあるみたいです。

家を作るだけじゃ終わらない、ポラスのCSV活動

光葉町はもともとポラスが10年前に販売を開始した街で、住宅は全て完売しています。今後新規販売の見込みはないのです。そんな街で何をしようとしているのでしょうか?普通はなんかやるなら新しく売る家がある街でやりますよね?プロジェクトを担当しているポラスグループ中央グリーン開発株式会社 横谷薫係長に聞いてみました。

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プロジェクト担当の横谷係長。

「都心と違って郊外の住宅地は住民の移動が頻繁には起きません。そのため街は住民たちと共に歳をとっていきます。光葉町も同じで、販売当時は小さかった子どもたちもが高校生・大学生になり、じきに都会に出ていくかもしれません。高齢化・人口減少時代に突入するこれからは、売って終わりの販売戦略だけでは継続が難しい。一度出て行った子どもたちが戻ってきたい、また住みたいと思える街づくりをしていくことが、企業価値を高め、厳しい時代でも支持していただける理由のひとつになればいいと考えました。そのために、本来は5宅地の分譲に立て直して事業完了の予定だった弊社の元販売事務所を有効活用できないか、というところからプロジェクトがスタートしました」

もう完売した土地だけど、その街がいつまでも活き活きと価値を持ち続けると、結果的にその街を作ったポラスグループの企業価値も上がるっていうことですね!
こういった活動はCSV活動といって、本業の中で社会的価値を果たすことで企業価値を上げていくことを指します。本業とは別の領域での社会的活動を指すCSR活動から少し進化した形のものですね。

最近よく聞く「地方創生」という言葉。日本各地で町おこしのための取り組みがされていますが、たいていはその地域の地方自治体が主体で進めていくそう。今回みたいなポラスという一企業が単独で進めていくケースは、全国的にも珍しいみたいです。

「住民たちを当事者に」ポラスのポリシー

もともとポラスでは、住民たちの交流イベントを主催するなど、コミュニティづくりに積極的に取り組んできました。2年前からは、住民が自分たちで交流イベントを開催する場合にポラスがサポートを行う制度「マチトモ!」をスタート。住民たちは「主催者側」になることで今まで以上にモチベーションが上がったそうです。現在でもこの制度は続いていて、ポラスの住宅地は全国的にも住民コミュニティが盛り上がっているという評価だとか! 家を売るだけじゃなくて、そこに住む人たちのこれからの暮らしも考えているなんて、ほんとに素敵です。

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「マチトモ!」制度を利用した住民交流イベント。各住宅地で住民たちが積極的に開催している

街の未来は自分たちで作る!

そういった経験から、今回のプロジェクトも住民たちには積極的に関わっていってもらう方向で始まりました。会議中はポラス側の意見は全く出さずに、住民主体で進めていくことに。
でも、ゴールも見えていない、何をするのかも決まっていないところからスタートするのは、さすがのポラスでも初めての試み。進め方は完全に手探り状態です。

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見えないゴールに向かってひたすら話し合う住民たち

参加者が伸び悩む時期もありましたが、ポラススタッフは総動員で、それぞれが当時販売を担当した家などに直接足を運びチラシを渡して呼びかけていきました。
横谷さんのところには、住民から「この街を寝に帰るだけの場所にはしたくない。頑張ってください」というメールも届きました。
始めは20名程度だった参加者も、4回目にはついに100名近くに!!

そして「世代を問わず交流ができる場が欲しい」というニーズが見えてきました。「親子カフェ」「ワークショップができる場所」「みんなの図書館」「夜はお酒が飲めるところ」など、具体的な案も出て、「私がやります」と手を挙げる住民たち。ポラスの想いが、住民たちの「自分ごと」に変わった瞬間でした。

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会場に入りきらないほどの人数に!

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次々と想いを口にする住民たち

住民たちが気づいた「この街に足りないもの」

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住民とポラススタッフ

光葉町の住民たちが必要としているのは「コミュニティスペース」。世代を問わずいつでも訪れることができて、カフェスペースもあって、お茶を飲んだりおしゃべりしたり、手仕事のレッスンもできたり、本の貸し借りをしたり…。飲食店が極端に少ない光葉町では、自宅以外でこんな風にゆっくりできる場所がないのです。一人暮らしのお年寄りは、スーパーに買い物に行ったら後は家に帰るだけ。小さい子どもがいるお母さんは、公園が使えない雨の日は行き場所に困ります。会社員は都内でお酒を飲んで、電車に揺られて帰るとそのまま帰宅。「もう一杯」をするところがないのです。
度重なる会議で、足りないのは「コミュニケーションの機会」だと、住民たちが気づいたのです。

一緒に歩んでいける飲食店さんを募集中

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この建物の1階がコミュニティスペースになる予定。

住民たちの理想のコミュニティスペースを作ろう!と動き出したポラス社員たち。現在はその事業を運営してくれるテナント事業者を募集中です。内装も住民たちとDIYリノベーションで作り上げ、運営も住民たちとともにやっていく、なんとも新しい形の店舗運営!
横谷係長は言います。
「こうした形の飲食店経営は、正直効率も悪いし面倒だと思われるかもしれない。でも街の人たちが求める場所を、一緒に作り上げていくことを魅力に感じてくれる事業者さんもいるはずです。そんな方を探しています!」 店舗づくりや運営はもちろんポラスが全面サポート。家賃も3年間は相場の4分の1の価格での貸し出しで、内装の初期費用もポラス側の負担だそう。
新しく面白い、ワクワクする取り組み!関心のある事業者の方は、ぜひ募集要項をご覧ください!
募集要項はこちら

(取材・文:保手濱歌織)

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