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第11回:自分らしくあれる大地

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八ヶ岳南麓にある有機農家「井上農場」さんで開催された農園キャンプ。広大な農地に空、八ヶ岳も美しく見える

目指すは、古民家オーベルジュ!

このコラム、一応「開業ストーリー」という位置づけなんですが、笑っちゃうくらい開業話を書いていなくてすいません。

現在、私たちが暮らしている明野での開業のお話を白紙にしてから、私たちは土地や建物の売り物件をいくつもいくつも見てきました。しかし、レストランと宿泊スペースと自宅、それとこちらは車社会なので駐車場は必須。この条件をクリアする土地と建物を購入しようとすると、私たちの身の丈ではとっても難しく、そんななかでもお話が進んだものもあるのですが条件に納得いかず、結局、途中で頓挫したこともたびたび……。

こちらに移住された方に言わせると「こっちに来て、まだ1年も経っていないんでしょ? まだまだ!」らしいのですが、東京時代からのお客さまに「どんな状況?」なんて期待していただくと、やっぱり焦るわけです。

そんな矢先、なかなか物件が決まらない状況を心配した生産者の方から、築170年の古民家をお持ちの方を紹介していただきました。今まで見てきた古民家とはレベルの違う素晴らしい状態で保存してある圧巻の古民家。しかも駐車場に自宅にできる家も付いている。そんな素敵な物件を貸していただけるお話になったのでした。

山梨は全国空き家率ナンバー1といわれていて、家を人に貸すことに対して消極的です。「家を売る」はいっぱいある。でも「家を貸す」は信用できる人にしかしない。ですから、「貸す」というお話をいただけたということは、こちらに家族で暮らして、少なからず信用をしていただけるようになった証しではないかと考えています。

というわけで現在、この古民家を一部改築して開業できるよう建築会社さんとお話を進めているところです。もう少しお話が進みましたら、こちらでも写真を含めて紹介させてください。今度こそお話が頓挫しないようにがんばりまーす!

農園レストランの実現

さて、そんなお店を持つ前に、私たちがこちらでかなえたかった夢をひとつ実現しました。「農園レストラン」です。畑というロケーションにテーブルとイスを並べ、そこでディナーを提供したい、という夢がいち早くかないました。

農園キャンプ 畑に泊まろう!」という企画で、東京からご家族連れやワンちゃん連れなど総勢50名近い方が有機農家「井上農場」さんの農場に集まってそこにテントを張り、夏野菜の収穫や地元野菜などを使ったディナーと朝食を楽しむ1泊2日です。

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そのディナーのお料理をシェフの夫が担当させていただき、おまけにこどもたちもキャンプに参加させていただきました。メニューでは井上農場さんのお野菜に地元産の鹿肉、八ヶ岳湧水鱒など、新鮮でおいしい八ヶ岳産の素材をほとんど使用。アウトドアでの料理やサービスはまだまだ勉強すべきところがいっぱいありますが、次への学びも多く、とっても楽しい1泊2日でした。

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明野産の鹿肉や八ヶ岳湧水鱒、主催の井上農場さんや浅川農園さんのオーガニック野菜をつかったディナー。朝食は梨北米を竹で炊いて、地元の平飼い卵を使った卵かけご飯と手前味噌を使ったお味噌汁

東京時代の保育園の長男のクラスメイトファミリーも参加してくれたこともあり、こどもたちはいつも以上に自由に畑を裸足で走り回って真っ黒になり、夜は電池切れのように遊び疲れて爆睡。はじめての場所や人に消極的になりがちな長男は積極的に、いつも自由な次男はより野生化していて、いいぞいいぞ!と見守りながら、軽やかな達成感と疲労感と楽しさがごちゃまぜになり、私と夫はいい感じに酔っ払いになりました(笑)。

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2日間、ずっと裸足で暴れ散らした次男

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井上さんのスケボーに裸足でお友達とニケツして、坂でスピードが出過ぎて負傷して号泣する3分前の長男。ふたりとも大いに笑って走って、こどもを謳歌した

こどもたちがありのままでいられる環境

その農園キャンプでの朝のこと。長い棒を持って雄叫びを上げながら、裸足で全身真っ黒になって走り回る次男(ほとんど原始人)を眺めながら、参加者の方に「どうやったらあんなに自由な感性の子に育てられるんですか?」と聞かれました。思わず泣きそうになりました。いや、後でその言葉を反芻して泣きました。

東京時代、次男はここまで原始人ではなかったけれど、半原始人くらいで(笑)、長男は長男で人ごみやはじめての場所が苦手で、いやなものはいやだということに強い信念のある人で、それぞれ個性の強い兄弟を連れて外遊びに出るのは、私にとってとっても気が重いことでした。

男児たちは早朝から公園に行きたがり、さらに公園をはしごするので、体力的に厳しいのもさることながら、こどもたちのリクエストで渋々、私ひとり子ふたりで広い公園なんかに行った日には、ほとほと疲れ果てていました。

兄弟バラバラに行動するので、広くて人が多いと兄弟ひとりしか見守ることができない。近くで見守れなかったほうの息子が、砂辺でシャベルを振り回して女の子に砂がかかったとその子の母親に怒られたり、「木に登ろうとして危なかったのでよく見てて!」と怒られたり、そういうのがとっても私はしんどかったんですよね。「ありがとうございます」と「すいません」ばかり言っていたような気がします。

こどもたちを放牧させて遊ばせてあげたいのだけど、人の多い公園ではこどもを自由にさせればさせるほど、大人同士の高度な外交コミュニケーションスキルが問われて、「砂場なんだから砂かかるのふつうじゃん!」とか、「木から落ちてケガしたら、上手いことしがみつかないと、木から落ちてケガすることを学ぶからいいじゃん!」とか本音を言っちゃいけないんですよね、親の人は(笑)。

シャベルを振り回していていやな気持ちになったら、本人にやめようよと言ったらいいじゃないとか、木に登って危険そうだったら、あなたが見守ればいい話では? 「地域で子育て」ってそういうことですよね?などと思ったりもするのだけれど、じゃあ自分が逆の立場でいつもできているかと言ったら、そう自信もないわけで……。「だいたいそういうこと言うのって女の子ママなのよね! 男子を育てる大変さがわかんないんだよな」などと思わず毒づいてしまっている自分にひどく嫌悪感を抱いたりもして……。

こどもにとっても、子育てする親にとっても、公園におけるこの人口の高さは、ひとり当たりのパーソナルスペースが狭すぎて、それによってトラブルを生みやすいし、精神的影響もあるんじゃないかな、と。

私たちはお店で、放牧で育った牛や豚、平飼いの鶏の卵などを扱い、動物の尊厳や本来の生き方に近い肥育環境・餌などについて考えさせられているうち、こういった食を扱う私たち自身の生き方はどうなのよ?と自分に問うようになっていました。

たくさんの家畜を狭い飼育舎でぎゅうぎゅうづめで飼育することで、家畜同士がストレスでケンカをし合う。だから尻尾や歯、くちばしなどをカットする。数が多く病気が発生したら一気に蔓延すると危険だから、薬を投与する。早く大きく成長させるために薬を投与する。そういったことが慣例化されている環境。なんだか私たちの生活に似ていない? 私たちは私たち自身で暮らしを密飼い状態にさせていない?と。

東京で暮らすことそのものが密飼いだと表現したわけではもちろんなくて、私たち自身が選択した仕事の仕方や住まい方や暮らし方がそうだということ。そんな自分たちの暮らしぶりを思っていたことが移住した理由の背景にもあるので、この農園キャンプで、こどもたちが広大な大地を好きなだけ笑って走り回り、それを親が安心して放任しておける心の安定に、私はこちらに移住してよかったと心底思いました。

だって、人が密集した公園だと「しつけがなっていない困ったやんちゃ者」になっていた子が、広大な農地だと「自由に育てられている自分らしく生きている子」になるんだもの。こどもたちのありのままの個性を受け入れてもらえる環境は、こどもにとってはもちろんのこと、親にとっても心地よい環境になるんですよね。

だから、SNSで子育てが苦しそうな東京の友人を見ると、思わず「こっちに遊びにおいでー!」と書き込んでいる私がいます。大きな空と大地があれば、こどももおとなも「私はこれでいいのだ」と自分にOKを出してあげられる気がして。

石田 恵海(いしだ えみ)

1974年生まれ。オーベルジュ開業準備中&編集ライター
「雇われない生き方」などを主なテーマに取材・執筆を続けてきたが、シェフを生業とする人と結婚したおかげで、2011年に東京・三軒茶屋で「Restaurant愛と胃袋」を開業。子連れでも楽しめる珍しいフレンチレストランだと多くの方に愛されるも、家族での働き方・生き方を見直して、2015年9月に閉店。山梨に移住し、新たにオーベルジュとして開業する準備に、3歳と4歳の年子男子のかあちゃんとしても奮闘中!
Restaurant 愛と胃袋

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